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調剤薬局の在庫判定・業務システム(AI×Apps)

棚で止まった薬は、返品と分譲でどこまで動かせるのか

在庫調整のための返品は、国の流通改善ガイドラインが卸と薬局の双方に慎むよう求めています。現実的な出口は、近隣の薬局への分譲と、発注の停止です。動かない薬が棚に増えてきた薬局に向けて書きました。

この記事でわかること

  • 厚生労働省の流通改善ガイドラインは、在庫調整を目的とした返品を、卸と薬局が互いに慎むべきものとして名指しで挙げています。返品を出口の前提には置けません。
  • 薬局から薬局へ譲るときは、品名・ロット番号・使用の期限を含む8項目を書面に記載し、記載の日から3年間保存します。根拠は薬機法施行規則第14条です。
  • 麻薬だけは別の制度です。あらかじめ麻薬小売業者間譲渡許可を共同で受けた薬局のあいだでしか動かせません。
  • 令和8年度の薬価改定は4月1日から適用され、改定率は薬剤費ベースで4.02パーセントの引き下げでした。棚に置いたまま年度をまたぐと、その分だけ受け取れる額が下がります。
  • 最初の一歩は、レセコンから最終調剤日と在庫数を書き出し、90日動いていない品目を金額の大きい順に並べることです。ここまではExcelでできます。

動かなくなった薬は、卸に返せるのか

先に答えを書きます。在庫を減らす目的の返品は、国のガイドラインが慎むよう求めているので、出口として当てにはできません。返品不能と指定された医薬品があるかどうかも含め、まず卸との契約の返品条項を確認してください。

根拠は「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」です。令和6年3月1日付で改訂され、厚生労働省大臣官房医薬産業振興・医療情報審議官と保険局長の連名で出ています。この中に、卸売業者と保険薬局等とも互いに慎むこととして、7つの返品が並んでいます。

7つのうち5つは、厳格な温度管理を要するもの、有効期限を経過したもの、開封されたもの、汚損・破損したもの、契約で返品不能と指定されているものです。残る2つが在庫管理に直接ひびきます。価値や安全性が損なわれているおそれがあると合理的に認められるものと、在庫調整を目的とした医薬品の返品。後者には脚注がついていて、例として「月末に返品して、翌月に買い戻す行為」が挙げられています。

この項を置いた理由も本文にあり、安定供給、不動在庫・廃棄コスト増による経営への影響、偽造品流通防止の3つが並んでいます。棚で眠る薬のコストは、国の側も課題として認識しています。

返品の道が完全に閉じているわけではありません。同じガイドラインのモデル契約書には、回収指示が行われた商品や外観が明らかに変わった商品を返品できる条項があります。品質側の事情に限られる、と考えてください。

卸に相談してよい場面

回収がかかった、納品直後に数量違いが分かった、外観が変わった。品質と納品そのものに関わる事情なら、契約の条項として道が用意されています。

相談しても通りにくい場面

処方元の採用が変わった、患者さんが転院した、規格違いを取り過ぎた。在庫調整にあたるため、ガイドラインが慎むべきものに挙げています。

近隣の薬局に譲るとき、何を記録して何年残すのか

実務で使える出口が、薬局から薬局への譲渡です。近隣の薬局に声をかけ、期限に余裕のあるうちに引き取ってもらう。ここには記録の決まりがあります。

薬機法施行規則第14条は、薬局開設者が医薬品を譲り受けたとき、および他の薬局や医療機関に販売・授与したときに、8つの事項を書面に記載するよう定めています。品名、ロット番号(ロットを構成しないものは製造番号)、使用の期限、数量、譲受けまたは授与の年月日、相手方の氏名または名称・住所・連絡先、それを確認するために提示を受けた資料、取引の任にあたる人が相手方の従業員であることなどを示す資料の8つです。

保存年限は同条第4項にあります。この書面は記載の日から3年間保存します。譲る側と譲り受ける側の双方に義務がかかるので、片方だけが控えを持つ状態は避けてください。

項目がここまで細かいのは、厚生労働省が平成29年10月5日に出した施行通知(薬生発1005第1号)が示すとおり、同年1月のC型肝炎治療薬の偽造品流通事案を受けた改正だからです。同じ通知は電磁的記録でも差し支えないとしているので、FAXの控えを綴じる運用から台帳の画面に移して構いません。

常時取引関係にあるとき

第14条第2項は相手方の住所や連絡先を許可証の写しなどで確認するよう求めていますが、常時取引関係にある相手には求めていません。

確認できないとき

施行通知は、確認ができない場合は譲受および譲渡を行わないこと、としています。初めての相手なら、許可証の写しを先にもらってください。

麻薬だけ、手続きがどう変わるのか

麻薬は同じ調剤室にあっても、別の制度で動きます。薬局間で動かすには、あらかじめ麻薬小売業者間譲渡許可を共同で受けておく必要があります。都道府県の案内では、対象は2つの場合です。共同申請した他の薬局が在庫量の不足のため麻薬処方せんにより調剤できないときと、麻薬卸売業者から譲り受けた麻薬であってその譲受けの日から90日を経過したものを保管しているときです。

運用は都道府県で違います。東京都は許可の有効期限を、許可の日からその日の属する年の翌々年の12月31日までとしています。北海道は、許可業者は許可を受けた日から5年間、許可書を保管することとしています。自分の薬局の運用は、所管の薬務担当課に確認してください。

廃棄も別扱いです。麻薬及び向精神薬取締法第29条は、麻薬を廃棄しようとする者は、品名・数量・廃棄の方法を都道府県知事に届け出て、当該職員の立会いの下に行わなければならないと定めています。ただし書きの例外は調剤された麻薬の廃棄だけで、それも第35条第2項により30日以内の届出が要ります。調剤前の麻薬を、他の期限切れとまとめて処分することはできません。仕組みの上でも別の枠として扱ってください。

棚に置いたままだと、いくら目減りするのか

動かない薬を「そのうち出るかもしれない」と置いておく判断には、値札がついています。薬価が毎年見直されるからです。厚生労働省が公表した令和8年度薬価基準改定の概要によると、官報告示は令和8年3月5日、実施は令和8年4月1日。薬価基準は全面改定され、改定率は医療費ベースで0.86パーセントの引き下げ、薬剤費ベースでは4.02パーセントの引き下げでした。告示数は合計12,272、品目数では15,789にのぼります。

3月までに仕入れた薬を4月以降に調剤すると、保険から受け取る額は改定後の薬価になります。仕入れのときに払った金額は変わりません。全品目が同じだけ下がるわけでもありませんが、平均すれば薬剤費ベースで4パーセント台の幅が、置いておくだけで縮む計算です。使用期限まで動かずに廃棄すれば、仕入額はまるごと出ていきます。効果を測る単位も、品目数より金額に寄せてください。

どこから手をつければ、止まった在庫を分けられるのか

仕組みを買う前に、いまのレセコンでどこまで分かるかを確かめてください。多くのレセコンは品目ごとの調剤実績と在庫数を書き出せます。必要な列は品目名、最終調剤日、現在庫数の3つ。ここに薬価を掛ければ、金額の列ができます。

何日動かなければ止まったと見なすかについて、一般の医療用医薬品には法令の決まりがありません。手がかりになるのが、麻薬の制度が使う90日という区切りです。同じ90日を当てはめれば、使用期限まで余裕を残して拾えます。

並べ方は2つ用意します。金額の大きい順は放っておくと痛い順、使用期限の近い順は急ぐ順です。そのうえで止まった理由を1品目ずつ当たり、採用が戻る見込みが薄いなら分譲、患者さんが継続中なら在庫はそのまま、取り過ぎなら発注の停止と振り分けます。

過去の調剤実績から品目ごとの月あたりの出方を計算しておくと、この振り分けが速くなります。ただし在庫が止まる理由の多くは、採用変更や転院や出荷調整のように過去のデータの外側から来るので、当たり外れを競う使い方には向きません。動きが鈍った品目を金額の大きい順に数品目だけ毎日出し、管理薬剤師が朝に目を通す。分譲に出すか、発注を止めるか、様子を見るかを選ぶのは人の側です。データが出すのは並び順と、期限までの日数だけになります。

ここまではExcelで回ります。当社は調剤薬局の不動在庫管理システムの開発プランで画面のイメージを公開していますが、その前に一度この手順を手で回してみてください。

Excelで足りるうち

1店舗、拾い出しは月1回、分譲の相手は数軒。この範囲なら、書き出したCSVを並べ替えるだけで判断できます。

苦しくなる境目

店舗が複数になり、どの店に何が余っているかを互いに見たくなったとき。突き合わせの手間が店舗数の掛け算で増えます。

記録が別々になったとき

拾い出しはExcel、譲渡の書面は紙、打診の経過は担当者の記憶。3年保存の書面と進み具合が別の場所にあると、探す時間が増えます。

費用と期間は、何が決まれば出せるのか

既製の薬局向けサービスで足りるなら、そちらが早くて安く済みます。まずレセコンの取引先に、いま契約している範囲で何ができるかを聞いてください。当社も、既製で足りると判断したときはそうお伝えします。

薬局に合わせて作る場合、当社が概算を出すために確認するのは次の4つです。ここが決まれば、範囲と金額の幅をお伝えできます。

期間は範囲の広さで決まります。拾い出しと一覧に絞れば、設計から使い始めるまでを数か月の単位で見ます。分譲の経過と3年保存の書面まで入れると、その分だけ伸びます。進め方は、一覧だけを先に動かしていまのExcelと並べて数か月使い、合わないところを直してから書面の管理を足す順番を勧めています。

レセコンからデータを書き出せるか

品目ごとの調剤実績と在庫数を、CSVなどで定期的に取り出せるか。ここが自動になるかで日々の手間が変わります。

店舗の数

1店舗か、複数店舗で在庫を融通し合うか。複数なら、どの店の誰が何を動かせるかの決めごとが要ります。

分譲の相手が何軒か

決まった数軒と回すのか、そのつど探すのか。相手が固定なら、記録の様式を先に揃えるだけで楽になります。

記録をいまどこに残しているか

紙のファイルか、Excelか、レセコンの中か。3年保存の書面を電磁的記録に移すかどうかを、ここで決めます。

まとめ

在庫調整を目的とした返品は、流通改善ガイドラインが卸と薬局の双方に慎むよう求めています。実務で使える出口は、近隣の薬局への分譲と、発注の停止です。

分譲するときは、品名・ロット番号・使用の期限を含む8項目を書面に記載し、記載の日から3年間保存します。麻薬だけは麻薬小売業者間譲渡許可と廃棄の届出という別の制度で動くので、仕組みの上でも分けてください。

置いておく判断には値札がつきます。令和8年度の薬価改定は薬剤費ベースで4.02パーセントの引き下げでした。

次にやることを1つ挙げるなら、レセコンから品目名・最終調剤日・在庫数を書き出して、90日以上動いていない品目に薬価を掛けてみてください。出てきた金額が、仕組みにお金をかけてよいかどうかの判断材料になります。

よくある質問

何日動かなければ不動在庫と考えればいいですか?

一般の医療用医薬品について、法令が日数を決めているわけではありません。手がかりになるのは麻薬の制度で、卸から譲り受けて90日を経過した麻薬は麻薬小売業者間譲渡許可の対象になると定められています。同じ90日を当てはめると、使用期限まで余裕を残して拾えます。回転の速い薬局なら60日、季節性の高い薬が多いなら120日と、処方の周期に合わせて構いません。

分譲の記録は紙で残さないといけませんか?

電磁的記録で構いません。厚生労働省が平成29年10月5日に出した施行通知が、書面の保存に代えて電磁的記録の保存を行うことができるとしています。ただし記載する項目と、記載の日から3年間という保存年限は変わりません。台帳の画面で完結させる場合も、8項目が漏れなく残る作りかを確認してください。

1店舗だけの薬局でも相談できますか?

できます。その規模なら、まずレセコンから書き出したデータをExcelで並べ替えるところまでを一緒にやります。出てきた金額を見て、既製のサービスで足りるのか、台帳を作ったほうが早いのかを切り分けます。北海道内であれば直接お伺いし、道外の方にはオンラインで対応しています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

棚にいくら眠っているか、まず金額にしてみませんか。

レセコンから書き出したCSVがあれば、それだけで大丈夫です。90日動いていない品目が何品目あって、そこにいくら乗っているかを一緒に数え、分譲で動かせる分と、発注を止めれば済む分に分けます。仕組みを入れるかどうかは、その金額を見てから決めてください。

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