EvoQuest
EvoQuest DX業務システム / 在庫・期限管理 2026.07

SCENARIO ── PHARMACY DEAD STOCK CASE

調剤室の棚で眠っている薬を、
期限が切れる前に動かせる台帳に変える。

処方箋1日40枚・採用1,200品目規模の調剤薬局向けに、レセコンの調剤実績と卸の納品データを突き合わせて「90日動いていない薬」を金額と使用期限の順に拾い上げ、近隣薬局への分譲・卸への返品相談・発注の停止までを1本の記録で追える在庫台帳を、こう設計します。レセコンは置き換えません。発注を自動化する話でもありません。眠っている薬に、期限が近づく前に気づくためのシナリオです。

想定領域
業務システム / 医薬品在庫・期限管理
担当範囲
要件整理・画面設計・開発・定着支援
想定対象
処方箋1日40枚前後・採用1,200品目規模の調剤薬局
想定期間
設計〜運用開始 約 2〜3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

不動在庫は、薬局が悪いから増えるのではありません。近隣の複数の医療機関から処方箋を受ける「面」の薬局は、採用品目がどうしても膨らみます。一般名処方なら同じ成分でも規格違い・メーカー違いが棚に並ぶ。2021年から続く出荷調整で「あるうちに」と多めに取った薬もある。そこへ処方元の採用変更や患者さんの転院が重なると、昨日まで動いていた薬が、誰にも気づかれないまま止まります。採用1,200品目のうち2割が90日調剤ゼロなら240品目。1品目の在庫が平均2,000円分としても、約48万円が棚で眠っている計算です。しかも毎年4月の薬価改定のたびに、その評価額は下がっていきます。

この想定シナリオで作るのは、発注を賢くするAIではなく、止まった薬に気づいて、出口まで送り届ける台帳です。入庫は卸の納品データ、出庫はレセコンの調剤実績。毎日の手入力なしで「90日動いていない薬」が金額と使用期限の順に並び、そこから近隣薬局への分譲、卸への返品相談、発注の停止という3つの出口のどこまで進んだかを、1品目ずつ追える形にします。ガイドラインで決まっている譲渡・譲受の書面と3年保存も、この台帳の中で完結させます。

CHALLENGE

課題

  • 01 不動在庫は「何も起きない」から気づけない。欠品ならその日の患者さんの前で分かるが、動かなくなった薬は誰も困らないまま棚に残る。気づくのは棚卸か期限チェックのとき——多くの場合、期限まで半年を切っていて、分譲に出しても引き取り手がつかない段階になっている。
  • 02 期限チェックが月1回・目視の総当たり。調剤の合間に棚を端から見ていくが、1,200品目を1品目10秒で見ても3時間を超える。ヒートの期限印字は小さく、途中で調剤に呼ばれれば「どこまで見たか」が消える。チェックの結果は手書きのメモで、翌月そのメモを探すところから始まる。
  • 03 分譲が電話とFAXと記憶で回っている。付き合いのある薬局に電話で打診し、ガイドラインどおり品名・数量・ロット番号・使用期限を書いた譲渡の書面をFAXで往復させ、双方で3年保存する。1件ずつは回るが、「どの薬を、どこに打診して、返事待ちがいくつあるか」は担当者しか分からない。
  • 04 3月31日の閉局後、薬価改定を控えた棚卸でバラ錠を数えながら「これ、いつから動いてないんだろう」とつぶやく夜がある。レセコンの在庫機能は発注のためのもので、「最後に調剤した日」から棚を並べ直す画面がない。眠っている薬のリストは、結局Excelに手で拾い出すしかない。

APPROACH

アプローチ

最初に決めるのは、レセコンを置き換えないことです。調剤と請求はいまのまま。この台帳がもらうのは、レセコンから書き出す調剤実績のデータと、卸の納品データの2つだけです。毎日の手入力はゼロにして、人が入力するのは月1回の期限チェックと棚卸のときだけに絞ります。ここを逆にして「毎日入力する在庫アプリ」を作ると、繁忙の1週間で確実に止まる。入力が止まっても調剤実績から不動リストだけは正しく出続ける、という順序で設計します。

もう一つ、AIの発注予測から入らないことも決めておきます。発注点の最適化は既製の薬局向けSaaSがすでに強い領域で、そちらが合う薬局には最初の相談でそう言います。うちが作るのは、既製の型からこぼれる部分——近隣の顔見知りの薬局と回している分譲の段取りと、その記録です。打診中・成立・引き渡し済みが誰の目にも見えて、ガイドラインの書面がそのまま出てくる。なお麻薬・向精神薬は譲渡許可の別世界なので、この台帳では最初から対象外に線を引きます。費用も同じ考え方です。棚で眠る数十万円と毎年の廃棄に対して見合う金額か、から一緒に逆算します。

CONSULTATION

棚で眠っている薬、期限が切れる前に動かせます。

「棚卸のたびに動いていない薬が見つかる」「期限チェックが月1回の目視頼み」「分譲の打診がどこまで進んだか分からない」。
レセコンを置き換えずに、調剤実績のデータから「気づく台帳」を作るところから始められます。
要件整理からデータの確認、画面設計、開発、並行運用まで、途中で分業させずにお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する主要画面と、設計で大事にしている考え方です。調剤室のPCで使う台帳が3枚、棚の前で使うスマホが2枚という構成。薬局名・在庫数・薬価はすべて処方箋1日40枚規模の薬局に合わせた想定例です。

01. 不動在庫ボード(調剤室のPC)

レセコンの調剤実績から「90日調剤ゼロ」の薬を自動で拾い、在庫金額×使用期限の順に並べた台帳。期限6ヶ月を切った行は上に浮かび、分譲打診中・返品相談中・発注停止済みの状態が行ごとに分かる。行をクリックすると薬品カルテが開く構成。

台帳
看板の考え方
棚卸のたびにExcelへ手で拾い出していた「動かない薬のリスト」を、そのまま常設の画面にする。
並べ方
金額順と期限順を切り替えられる。廃棄で痛いのは金額、急ぐべきは期限。見る目的が2つあるなら並びも2つ。
気づく時期
90日で拾えば、期限まで1年以上残して分譲に出せる。棚卸で気づいてからでは遅い、を仕組みで直す。

02. 薬品カルテ(調剤室のPC)

1品目の「なぜ動かなくなったか」を見る画面。月別の調剤量が棒グラフで並び、止まった月が一目で分かる。ロット別の在庫と期限、処方元の変化のメモ、分譲・返品・発注停止のボタンをここに集めた構成。

詳細
設計のポイント
「いつから止まったか」と「なぜ止まったか」が並ぶと、次の一手が決まる。処方元の採用変更なら戻ってこない。
ロットと期限
在庫はロット単位で持つ。同じ薬でも期限2026年9月の10錠と2027年4月の100錠では、打つ手が違う。
出口は3つ
分譲に出す・卸に返品相談・発注停止。どれを選んでも、この画面から状態が変わり台帳に残る。

03. 譲渡書と分譲の記録(調剤室のPC)

薬局間譲渡のガイドラインが求める書面——品名・規格・数量・ロット番号・使用期限・両薬局の名称と管理薬剤師——をそのまま画面にした帳票ビュー。打診中→成立→引き渡し済みの進みと、3年保存の記録一覧を同じ画面に置く構成。

帳票
看板の考え方
FAXで往復させていた譲渡・譲受の書面を、印刷してそのまま使える形で画面にする。様式は発明しない。
打診の見え方
どの薬をどこに打診して返事待ちがいくつあるか、を担当者の記憶から台帳に移す。電話は今までどおりでいい。
保存年限
書面の3年保存は画面が数える。紙のファイルを繰らなくても、監査で「この譲渡の記録」がすぐ出せる。

04. 期限チェック(棚の前のスマホ)

月1回の期限チェックを、棚の並び順のチェックリストで進めるスマホ画面。医薬品のGS1バーコードを読めば期限とロットが手入力なしで入り、期限6ヶ月以内の薬はその場で不動在庫ボードに送られる。中断しても「どの棚まで見たか」が残る構成。

スマホ
設計のポイント
調剤に呼ばれて中断しても、棚単位の進みが残っていれば戻れる。「どこまで見たか」を人が覚えない。
バーコードの使い方
医薬品の包装には期限とロットが入ったGS1コードが印字されている。読めば済むものを、目で読まない。
メモの行き先
手書きメモだったチェック結果が、その場で台帳の行になる。翌月「先月のメモ探し」から始めない。

05. 棚卸モード(棚の前のスマホ)

薬価改定前・決算期の実地棚卸を、理論在庫との突き合わせで進めるスマホ画面。品目ごとに実数(箱・ヒート・バラ錠の端数)を入れると差異だけが残り、数え直すべき棚が分かる。棚卸表はそのまま印刷・PDFにできる構成。

スマホ
設計のポイント
全品目を数えるのは変わらない。変わるのは「数えた結果を夜にExcelへ転記する」仕事が消えること。
バラ錠の扱い
錠・カプセル・g・mLの端数をそのまま入れられる単位設計にする。バラを箱に換算する暗算をさせない。
差異の残り方
理論と実数が合った行は画面から沈み、ズレた行だけが残る。締めの確認が「全部見る」から「差だけ見る」に変わる。

OUTCOME

変わったこと

台帳がひと月の運用に乗ったあと、棚で眠っていた薬のまわりが3つの軸で変わる想定です。

01

止まった薬に気づくのが
「棚卸の夜」から「90日目」へ。

Before動かなくなった薬は誰も困らないまま棚に残り、棚卸か期限チェックで見つかっていた。
After調剤実績が90日途切れた薬が、金額と期限つきで台帳に自動で浮かぶ。

期限まで1年残して気づければ、分譲も返品も間に合う。気づく時期が出口の選択肢を決める。

02

期限チェックが
「目視の総当たりとメモ」から「スキャンと記録」へ。

Before月1回、棚を端からヒートの印字を目で追い、結果は手書きのメモに残していた。
Afterバーコードを読めば期限とロットが入り、期限6ヶ月以内はその場で台帳に送られる。

中断しても棚単位の進みが残る。「どこまで見たか」を覚えておく仕事をなくす。

03

分譲が
「電話とFAXと記憶」から「1本の記録」へ。

Beforeどの薬をどこに打診して返事待ちがいくつあるかは、担当した薬剤師しか分からなかった。
After打診中・成立・引き渡し済みが台帳に並び、ガイドラインの書面と3年保存もそこで完結する。

電話の付き合いはそのまま残す。記録だけを紙とFAXの往復から引き取る。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインでも進められますが、札幌市内・近郊なら調剤室に直接おじゃまして始めます。レセコンから実際にデータを書き出すところから、設計 → 開発 → 並行運用の2〜3ヶ月で進める想定です。

1
MONTH 01 / 要件整理 + データ確認

レセコンから、本当にデータが出るかを確かめる月。

この仕組みの土台はレセコンの調剤実績データです。機種によって書き出せる項目と形式が違うので、最初の月に実際にCSVを出してもらい、不動在庫のリストが組めるかを確認します。あわせて期限チェックと分譲のいまの回し方、付き合いのある卸・近隣薬局の顔ぶれを伺い、最初に作る範囲を台帳と期限チェックに絞って合意します。

  • 管理薬剤師・事務スタッフへのヒアリング
  • レセコンの書き出しデータの現物確認
  • 卸の納品データの取り込み方法の確認
  • 最初に作る範囲と後回しの線引き
2
MONTH 02 / 台帳 + スマホ画面の開発

不動在庫ボードと棚前のスマホを、同時に作る月。

不動在庫ボード・薬品カルテ・期限チェックのスマホ画面を並行して開発します。月の後半には実データを流し込み、「90日で拾う」基準が棚の実感と合うかを管理薬剤師に確かめてもらいます。拾いすぎても拾い漏れても使われなくなるので、この基準合わせに一番時間を使います。

  • 不動在庫ボード・薬品カルテの開発
  • 調剤実績・納品データの取り込み処理
  • 期限チェックのスマホ画面とGS1コード読み取り
  • 実データでの「拾う基準」の調整
3
MONTH 03 / 分譲記録 + 並行運用

譲渡書までつないで、ひと月回してから任せる月。

譲渡書と分譲記録の画面を仕上げ、実際の分譲1件を書面まで通してみます。期限チェックはいまの目視と1回並走させ、拾い漏れがないことを確かめてから移行。棚卸モードは次の薬価改定前の棚卸に間に合う形で引き渡し、運用開始後の微調整までを含めて納品です。

  • 譲渡書・分譲記録の画面と印刷様式
  • 分譲1件を実際に書面まで通す試運転
  • 期限チェックの並行運用と基準の最終調整
  • 棚卸モードの引き渡しと運用開始

FAQ

よくある質問

  • Q1 レセコンにも在庫管理機能があります。それでは足りませんか?
    発注のための在庫管理としては足ります。レセコンの在庫機能は「切らさないための発注点」を見る道具で、そこは置き換えません。足りないのは逆側です。「最後に調剤した日」から棚を並べ直して、動かなくなった薬を金額と期限つきで拾う画面は、多くのレセコンにありません。この台帳はレセコンの調剤実績データをもらって、その逆側だけを受け持ちます。
  • Q2 費用はどのくらいかかりますか?
    最初のヒアリングのあと、台帳と期限チェックに絞った構成と、分譲記録・棚卸モードまで含めた構成の2案を金額付きでお出しします。判断の物差しは「棚で眠っている金額」です。不動在庫が数十万円分あり、毎年の期限切れ廃棄が続いているなら、それに見合う金額かどうかから一緒に逆算します。中小企業のIT導入に使える補助金の対象になるかも、そのときの募集要件を一緒に確認します。
  • Q3 発注もAIで自動化できませんか?
    できますが、順番の問題だと考えています。発注点の予測や自動発注は既製の薬局向けサービスがすでに強い領域なので、そちらが合う薬局には最初の相談でそう言います。ただ、発注をいくら賢くしても、すでに止まった薬は減りません。まず「気づいて、出口に送る」仕組みを作り、発注の最適化はそのあとに既製サービスも含めて選ぶ、という順番をお勧めしています。
  • Q4 分譲の書面は、この画面のもので大丈夫ですか?
    薬局間の譲渡・譲受については業界団体のガイドラインがあり、品名・規格・数量・ロット番号・使用期限・両薬局の情報を書面に残して双方で3年保存することが求められています。画面はこの記載事項に沿った様式で作り、印刷してそのまま使える形にします。ただし麻薬・向精神薬は譲渡許可などまったく別の規制の世界なので、この台帳では最初から対象外です。運用開始前に、管轄の保健所への確認事項も一緒に整理します。
  • Q5 いまExcelで不動在庫のリストを作っています。移行できますか?
    できます。というより、そのExcelが一番の設計資料です。どの項目を拾っていて、どの並びで見ていたかに、その薬局の判断の仕方が全部残っているからです。いまのリストを取り込んで初期データにし、拾う基準(90日にするか180日にするか)も、Excelでやってきた感覚に合わせて調整します。過去分をさかのぼって打ち直す作業は要りません。

棚で眠っている薬、期限が切れる前に動かせます。

「棚卸のたびに動いていない薬が見つかる」「期限チェックが月1回の目視頼み」「分譲の打診がどこまで進んだか分からない」。
レセコンを置き換えずに、調剤実績のデータから「気づく台帳」を作るところから始められます。
要件整理からデータの確認、画面設計、開発、並行運用まで、途中で分業させずにお手伝いします。