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クリニックの発注量予測・在庫システム(AI×Apps)

何人来るかを当てても、頼む本数は決まらない

発注の単位は人ではなく、量です。13歳以上は1回0.5mL、3歳以上13歳未満は0.5mLを2回。同じ100人でも、年齢の構成が違えば必要な瓶の数が変わります。内科・小児科の診療所に向けて書きました。

この記事でわかること

  • 接種量と回数は添付文書で決まっています。6か月以上3歳未満は0.25mLを2回、3歳以上13歳未満は0.5mLを2回、13歳以上は0.5mLを1回または2回です。
  • 1バイアル1mLの製品なら、13歳以上は1本で2人ぶん、3歳以上13歳未満は1本で1人ぶんです。小児の多い医院ほど、同じ人数でも本数が要ります。
  • 一度針をさしたバイアルは、遮光して10℃以下で保存し24時間以内に使うことと添付文書に書かれています。1日に何人まとめられるかが、捨てる量を決めます。
  • 2026年8月26日の厚生科学審議会に出た資料では、2026/27シーズンの供給量は約5,190万回分の見込みで、9月5週の時点でその6割を超える約3,147万回分が出荷される見込みです。
  • 65歳以上の定期接種の対象者は、カルテの生年月日から人数が出ます。予測が必要なのは、そこを引いた残りだけです。

必要な本数は、人数ではなく量から出す

順番は決まっています。まず年齢帯ごとの人数を出し、1人あたりの量と回数を掛けて必要なmLにします。そのうえで、バイアルの本数へ戻します。総人数から本数へ一足飛びに行こうとすると合いません。

量と回数は添付文書に書かれています。6か月以上3歳未満は0.25mLをおよそ2〜4週間の間隔で2回、3歳以上13歳未満は0.5mLを同じ間隔で2回、13歳以上は0.5mLを1回、またはおよそ1〜4週間の間隔で2回です。厚生労働省のインフルエンザに関する資料でも、13歳以上は通常1回接種として案内されています。

ここに1本が何人ぶんになるかの差が出ます。1バイアル1mLの製品を例にすると、13歳以上の方なら0.5mLずつで2人ぶん。3歳以上13歳未満のお子さんは0.5mLを2回打つので、同じ1本で1人ぶんにしかなりません。6か月以上3歳未満なら0.25mLを2回で、1本が2人ぶんです。

例として、内科と小児科をやっている医院で400人に接種するとします。13歳以上が300人、3歳以上13歳未満が80人、6か月以上3歳未満が20人なら、必要な量は150mLと80mLと10mLで合わせて240mL。1mLのバイアルなら240本です。同じ400人でも、13歳以上が200人・3歳以上13歳未満が180人なら290本になります。人数は変わっていないのに、50本増えます。

なお、包装はメーカーと製品で違います。1mLのバイアルが2本入りの製品もあれば、0.5mLのシリンジ製剤もあります。手元の製品の添付文書で、1本の量を先に確認してください。

開けた1本を、その日のうちに使い切れるか

本数の計算がきれいに出ても、そのとおりには減りません。理由は添付文書に書かれています。一度針をさしたものは、遮光して10℃以下に凍結を避けて保存し、24時間以内に使うこと。翌週に持ち越すことはできません。

つまり、1日に何人まとめて打てるかが、実際に使い切れる量を決めます。予約が1人しか入っていない日に1mLのバイアルを開けると、残りの0.5mLはその日のうちに行き場を失います。接種の日をまとめる、予約枠を午前と午後に寄せる。運用でできることは、発注の本数を減らすことに直結します。

保管の条件も添付文書にあります。凍結を避けて10℃以下、有効期間は製造日から1年です。定期接種実施要領も、接種液の貯蔵について、所定の温度が保たれていることを温度計で確認できる冷蔵庫等を使う方法によることと定めています。多めに抱えるほど、期限と温度の管理も増えます。

減らせる無駄

開けたバイアルの残り。接種の日を寄せる、小児の2回目の予約を同じ曜日に集める。予約の入れ方を変えるだけで動きます。

減らせない無駄

シーズン末に手元に残った未開封分。ここは発注の段階でしか動かせません。だから夏の見積もりが効きます。

今シーズンの供給は、どうなっているのか

2026年8月26日の厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産・流通部会)に出た資料では、2026/27シーズンのインフルエンザワクチンの供給量は約5,190万回分の見込みとされています。0.5mL換算の数字で、経鼻の製剤を含む合算です。参考として載っている近年の定期接種の実施者数は、令和4年度から6年度の平均で約1,965万人です。

出荷の時期も書かれています。9月5週、つまり10月2日の時点で、供給量の6割を超える約3,147万回分が出荷される見込みです。シーズンの序盤に大半が動くので、10月に入ってから足りないと気づいたときには、積み増しに時間がかかります。

同じ資料には、昨年度の取組として、同一のバイアルから複数回の使用が可能とされている製品は取扱い上の注意に留意して効率的に使うこと、供給のペースと昨年度の使用実績を踏まえて必要量に見合う量のワクチンを購入することを医療機関に要請した、と書かれています。今年度も同様の働きかけを行う案が示されています。返品を当てにした多めの発注は、この考え方の外にあります。返品の可否は卸との契約によるので、契約書の条項を先に確認してください。

製剤そのものも変わっています。同じ資料の注記によると、平成27年度から令和6年度までは4価のインフルエンザHAワクチンが供給されていましたが、令和7年度からは3価が供給されています。去年の本数をそのまま持ってくる前に、製品の側も変わっていることは押さえておいてください。

予測が必要なのは、どこからどこまでか

全部を予測する必要はありません。夏の時点で、人数がほぼ決まっている部分があります。

定期接種の対象は予防接種法で決まっていて、定期接種実施要領は、65歳以上の方と、60歳以上65歳未満で心臓・腎臓・呼吸器の機能またはHIVによる免疫の機能に一定の障害がある方に対し、インフルエンザHAワクチンを使用して毎年度1回行うこととしています。この対象になる方の人数は、カルテの生年月日から出せます。

職域で頼まれている事業所のぶんと、院内のスタッフのぶんも、夏の時点で人数が分かります。ここまでを引いた残りが、予測の担当です。予測に任せる範囲を狭くするほど、外れたときにどこがずれたのかを言えるようになります。

記録の話も一度整理しておくと、後で楽です。定期接種の予診票は、市町村長が接種後に回収し、文書管理規程等に従って少なくとも5年間保存することと実施要領に定められています。医院の側で残すのはカルテと接種記録で、これが翌シーズンの見積もりの材料になります。

Excelでどこまで出せて、どこから仕組みにするのか

最初のシーズンは、Excelで足ります。カルテかレセコンから、過去3シーズンの接種者を年齢帯で数えます。6か月以上3歳未満、3歳以上13歳未満、13歳以上64歳まで、65歳以上の4つに分ければ十分です。人数に量と回数を掛けて、必要なmLを出し、バイアルの本数に直す。この記事のデモ画面が、その計算をそのままなぞっています。

次に、去年打った方が今年も来るかどうかを見ます。これは全体の率で見るより、その方の通院が続いているかどうかで見たほうが合います。カルテの直近の来院日を並べれば、Excelでも判断できます。

仕組みにする価値が出るのは、この作業が毎年戻ってくることに気づいたときです。年齢帯ごとの集計、量への変換、確定分の差し引き、期限が近い在庫の並べ替え。手順が同じで、材料だけが毎年入れ替わる作業は、画面にしておくと院長の夏の仕事が1つ減ります。

効果の測り方も先に決めておいてください。当たったか外れたかは追いません。シーズン中に予約を断った日が何日あって何人ぶんだったか、期限を越えて捨てた本数と仕入れの金額はいくらだったか、開けたバイアルから捨てた量が月にどれだけあったか。この3つを金額に直して並べると、翌年の発注を多い側と少ない側のどちらへ倒すかが決まります。

DEMO

年齢の構成を変えると、本数がどう動くか

接種する人数を年齢帯ごとに入れると、必要な量と、1mLバイアル換算の本数が出ます。合計人数を変えずに年齢の構成だけを動かすと、本数が変わることを確かめられます。

ワクチン本数の試算|年齢帯の人数から必要量を出す

年齢帯ごとの見込み人数と、使い切れずに捨てる見込みを入れると、必要な量と発注の本数が出ます。接種量と回数は添付文書の記載をそのまま使い、それ以外の係数は置いていません。

触って動かせます
計算の中身
人数に接種量と回数を掛けて必要な量を出し、バイアルの容量で割って切り上げるだけです。
使っている前提
接種量と回数は添付文書の記載です。1本の容量は変えられるので、手元の製品に合わせてください。
確かめてほしいところ
合計人数を変えずに、小児と成人の比率だけを動かしてみてください。本数の差がそのまま在庫の差になります。

※ 廃棄の見込みは入力した値をそのまま使っています。実際の廃棄は、1日に何人まとめて打てるかで変わるため、過去のシーズンの記録から医院ごとに確かめる必要があります。

費用と期間は、何を決めれば見積もれるのか

見積もりを出すために決めることは3つです。カルテやレセコンから年齢帯別の接種記録をどう取り出すか、画面を発注の時期だけで使うのかシーズン中の在庫の管理まで含めるのか、そして院内のパソコンに置くのかクラウドに置くのか。ここが決まれば金額を出せます。

期間は、要件の整理から納品までおおよそ3ヶ月を目安にしています。ただしこの業務には季節があります。夏に本数を決める画面を使いたいなら、逆算して春に始めることになります。今からなら、まず今シーズンをExcelで通し、記録を整えながら来年の夏に間に合わせる進め方が現実的です。

補助金を使う場合は対象の形に注意してください。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は補助率2分の1以内で、医療法人も常時使用する従業員の数が300人以下なら申請の対象に入っています。ただし補助対象経費は、IT導入支援事業者が提供し、あらかじめ事務局に登録されたITツールの導入費用と決められています。医院に合わせて作る開発費をそのまま当てにはできません。

まとめ

本数は人数から直接は出ません。年齢帯ごとの人数から必要な量を出し、そこからバイアルの本数へ戻します。同じ人数でも、小児が多い医院ほど本数が要ります。

開けた1本は24時間以内に使い切ることが添付文書に書かれています。予約の入れ方を変えるだけで、捨てる量は動きます。

予測が担当するのは、定期接種の対象者と職域とスタッフを引いた残りです。全部を当てにいく必要はありません。

次にやることを1つ挙げます。過去3シーズンの接種者を、年齢帯で数えてみてください。去年の本数の根拠が「去年と同じくらい」しかないなら、その1回の集計が今年の発注をいちばん動かします。

よくある質問

去年と同じ本数を頼むのでは、なぜいけないのですか。

いけないわけではありませんが、根拠としては弱いです。年齢の構成が変われば同じ人数でも必要な本数が変わりますし、令和7年度からは供給される製剤が4価から3価に変わっています。去年の本数を出発点にするなら、せめて年齢帯ごとの接種者数を数えてから増減を決めてください。

余ったワクチンは卸に返せますか。

返品の可否は卸との契約次第なので、契約書の条項を確認してください。国の資料に書かれているのは、供給のペースと昨年度の使用実績を踏まえて必要量に見合う量を購入してほしい、という要請です。返品を前提にした多めの発注は想定されていない、と考えたほうが安全です。

小児の多い医院ほど本数が必要になるのはなぜですか。

3歳以上13歳未満のお子さんは0.5mLを2回打つためです。1mLのバイアル1本が1人ぶんにしかなりません。13歳以上の方は0.5mLを1回なので、同じ1本が2人ぶんになります。人数だけを見ていると、この差が抜け落ちます。

予約の入れ方を変えると、本当に廃棄が減るのですか。

添付文書に、一度針をさしたものは24時間以内に使うことと書かれています。1人だけの日に開けた1mLのバイアルは、残りを翌日に回せません。接種の日をまとめれば、開けた本数そのものが減ります。どれだけ減るかは医院の予約の入り方によるので、過去のシーズンの記録で確かめてください。

仕組みを作るのは、1シーズンで元が取れますか。

断言はできません。判断の材料になるのは、期限を越えて捨てた本数の仕入れ額と、予約を断った日の人数です。この2つを1シーズン記録してから決めても遅くありません。記録を取ること自体はExcelでできるので、まずそこから始めることをお勧めしています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

発注の本数を、根拠のある数字にするところから相談できます

去年の本数の根拠が思い出せない。期限切れで捨てた本数を把握していない。この段階からで大丈夫です。過去の接種記録から何が出せるかを一緒に確かめるところから始めます。

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