EvoQuest
EvoQuest AI発注量予測AI 2026.07

SCENARIO ── CLINIC VACCINE ORDER CASE

何人来るかを読んでも、
頼む本数は決まらない。

内科と小児科をやっている、1日の外来が60人ほどのクリニック。夏のあいだに卸の担当者が来て、今シーズンのインフルエンザワクチンを何本にしますかと聞きます。返品は原則きかない。足りなければ11月の電話を断る。答えの根拠が「去年と同じくらい」しかないところに、シーズンの接種記録から必要な量を読む発注予測AI(EvoQuest AI)と、院長が8月末に本数を確定させる画面(EvoQuest Apps)を組み合わせる開発プランです。

想定領域
発注量予測AI / ワクチン在庫の運用
担当範囲
要件整理・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
1日の外来40〜100人の診療所(内科・小児科・混合)
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

ワクチンの発注は、飲食店の仕入れとは時間の流れが違います。夏のうちに1回だけ数を返して、その数がシーズンいっぱいを決める。10月に打ち始めて、答え合わせが済むのは年末です。しかも余ったぶんは卸へ戻せません。厚生労働省は、返品を見越した大量注文を厳に慎むようにと医療機関に求めています。多めに頼んでおく、という逃げ道が塞がれている発注です

それでいて、決め方は驚くほど素朴なままです。去年の総接種者数を思い出して、少し足すか引くかする。この見積もりが崩れる理由は流行の読み違いより手前にあって、単位のずれから来ています。予約は人で入りますが、在庫は瓶で持つ。13歳以上の方は1回0.5mLなので、1mLの瓶ひとつで2人ぶん。3歳から13歳未満のお子さんは0.5mLを2〜4週あけて2回打つので、同じ瓶ひとつで1人ぶんしかありません。つまり同じ1本が、来た人の年齢によって2人ぶんにも1人ぶんにも化けます。総人数を当てても本数が出ないのは、そのためです。

CHALLENGE

課題

  • 01 決めるのは夏、答えが出るのは冬。卸へ本数を返す期限は8月末で、その時点で手元にあるのは去年までの記録だけ。返品は原則できず、余れば使用期限で捨てることになる。1回きりの決定なのに、根拠が「去年と同じくらい」しか残っていない。
  • 02 人で予約を受けて、瓶で在庫を持つ。13歳以上の方は0.5mLを1回。3歳以上13歳未満のお子さんは、同じ0.5mLを2〜4週あけて2回打ちます。もっと小さいお子さんは0.25mLを2回。1mLの瓶が何人ぶんになるかが年齢で変わるので、来院数の予測だけでは必要な本数に届かない。
  • 03 保存剤の入った1mLの瓶は複数回抜けますが、最初に針を刺してから24時間を過ぎたぶんは使わずに捨てる運用が一般的です。だから1日に何人まとめて打てるかで、瓶あたりの取り切れる量が変わる。予約が2人しか入っていない日に開けると、その日のうちに残りが行き場を失う。

APPROACH

アプローチ

読みを立てる前に、もう決まっているものを引き算します。この時期のクリニックには、確定に近い数字がいくつか転がっています。職域接種を頼まれている事業所からは、夏のうちに人数入りの申込書が届いています。高齢者の定期接種は自治体が期間を決めていて、対象になる方の名簿はカルテの生年月日から出せます。院内のスタッフぶんも動きません。想定例のクリニックだと、シーズン1,100人のうちおよそ4割がここで先に埋まりました。画面はその通りに塗り分けます。緑が確定、青が読みの担当ぶんです。

残りを読むときも、総人数を当てにいきません。出すのは年齢帯ごとの人数です。乳幼児・3歳から13歳未満・13歳以上64歳まで・65歳以上。この4つに分けて幅で出し、それぞれに1人あたりの量と回数を掛けて、必要なmLに直してから瓶の本数へ戻します。材料はカルテの中にあります。定期接種の記録は法律で残すことになっていますし、自費のぶんもカルテに残ります。誰がいつ打ったかは3シーズン以上さかのぼれるはずです。去年打った方が今年も来るかどうかは、その方の通院の続き方から人単位で読めます。読みが上下しても、動くのは終わりの1桁か2桁です。

値打ちの測り方も先に決めておきます。当たった外れたは追いません。予約を締め切って断った日が何日あり、その枠が何人ぶんだったか。使用期限を越えて捨てた本数と、その仕入れがいくらだったか。開けた瓶から捨てたmLが月にどれだけあったか。この3つを金額に直して並べます。想定例の勘定では、余った30本の3万円より、11月に断った48人ぶんのほうがずっと大きい。だから読みは少しだけ多い側へ倒す、という判断が先に立ちます。倒す幅を決めるのは院長で、仕組みはその材料を8月28日までに机の上へ出す係です。

CONSULTATION

8月末に卸へ返す1つの数字に、材料を持たせませんか。

使用期限で捨てた瓶と、11月に閉めた予約枠。どちらも数えていなければ、来年もまた勘で決めることになります。
読みの材料は、カルテに残っている予防接種の実施記録。もう医院の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、受付が毎日見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。夏の発注は院長室のパソコン、シーズン中は受付のカウンターで使う前提の作りです。医院名・人数・本数・金額はすべて想定例で、実在の医療機関・実績ではありません。

01. 10月1日から1月末までを、1本の帯で見る

いちばんよく開く画面。10月の頭から1月末までを週で刻んだ帯に、動かせない予定が刺さっています。職域接種で出張する3日、高齢者の定期接種の期間、学校が休みに入る週、小児の2回目が返ってくる山。その上に週ごとの見込み消費量と、残っている本数の線が重なります。夏は見込みだけの帯として、シーズンが始まると左から実績で塗られていきます。

シーズン尺
設計のポイント
総数の1つの数字を見せない。いつ何本が減るかを時間の上に置く。同じ600本でも、10月に寄る年と12月に伸びる年では打てる手が違う。
確定の予定は刺しておく
事業所の出張接種、自治体の定期接種期間、学校の長期休みなど、日付が決まっているものはピンとして帯に固定する。
シーズン中も同じ画面
夏に見た帯へ実績が上書きされる。残りの本数が線で見えるので、追加を卸へ相談する時期が目で分かる。

02. 8月28日17時、卸へ返す本数を決める

年に一度、この画面で数字が確定します。左は年齢帯ごとの見込み人数で、緑が申込書と名簿で埋まっているぶん、青が読みの幅。中央でmLへ換算し、右で1mL瓶と0.25mLシリンジの本数に割り付けます。下段には多く頼んだとき・少なく頼んだときに失う金額を並べました。数字を触ると両側が同時に動きます。

申込票
設計のポイント
人 → mL → 本数の3段を1画面に並べる。どこで丸めが起きたかを隠さない。
失う金額を左右に置く
余った本数の仕入れ額と、断った枠の推計額。大きさが違うことが見えれば、どちら側へ倒すかを話し合える。
決めるのは院長
読みの数字は上書きできる。上書きした理由を一言だけ残すと、翌年の読みの材料に回る。

03. 何人ではなく、どの年齢が何人か

予測の中身を見せる画面。4つの年齢帯それぞれに、去年の実績と今年の幅、1人あたりの量と回数が並びます。右側は去年打った方の名簿を、今年も来そうかで並べ替えたもの。慢性疾患で毎月通っている方と、去年だけふらっと来た方では戻ってくる確率が違います。受付の職員がその場で丸や×を付けられます。

年齢の読み
設計のポイント
年齢帯を分けた理由は用量にある。区分の境目が3歳と13歳にあるのは、そこで1人あたりのmLと回数が変わるため。
材料はカルテの中
予防接種の実施記録から、誰がいつ打ったかを3シーズンぶん取り出す。新しく入力してもらうものはない。
2回目は追いかける
1回目だけで来なくなったお子さんが毎年一定数いる。その離脱の割合が、小児のmLをそのまま左右する。

04. 2人ぶんの予約で、1mLの瓶を開けるか

シーズン中に受付が開く画面。その日の予約を年齢で並べ、必要なmLと、開ける瓶の本数を出します。開封後24時間の残り時間つき。半端が出そうな日は、当日枠を1人だけ開けるか、翌日の予約を前へ寄せるかの埋め方が候補に出ます。断るときも、次に空いている枠がその場で言えます。

きょうの瓶
設計のポイント
廃棄を責める画面にしない。半端が出そうな時点で、埋める先を先に見せる。
24時間の線
最初に針を刺した時刻から数える。翌日に持ち越せる瓶と、その日に使い切る瓶を分けて表示する。
断りも記録に残す
予約を閉めた日と、そこで断った人数を数える。この数字がシーズン後の勘定にそのまま乗る。

05. 捨てた3万円と、断った16万円

1月末に開く答え合わせの画面。上段は3つの数字だけです。使用期限を越えて捨てた本数と仕入れ額。予約を閉めて断った枠の人数と、その接種料の推計。開けた瓶から捨てたmLの合計。下段は週ごとの見込みと実績のずれで、外れた週にはメモが付きます。流行の立ち上がりが2週間遅れた年は、そう書いてあります。

シーズンの勘定
設計のポイント
的中率を出さない。捨てた金額と断った金額の2つを並べ、来年どちら側へ倒すかの話し合いに使う。
週ごとに見る
シーズン合計が合っていても、11月に切れて12月に余った年は失敗として数える。時期のずれを平均で隠さない。
理由が言葉で貯まる
「近隣の小学校で学級閉鎖」「事業所が接種を中止」。外れた週のメモが、翌年の申込票に注意書きとして出る。

OUTCOME

変わったこと

予測を当てに行く話ではありません。8月末に返す1つの数字に、どれだけ材料を持たせられるか。狙いはそこです。

01

去年の総数から少し足し引きしていた見積もりが、年齢帯ごとの幅とmLの積み上げになる。

Before「去年が1,050人だったから、今年は1,100人ぶんくらい」。人数から本数への換算は頭の中で、根拠は誰にも共有されていない。
After4つの年齢帯を幅で出し、用量と回数を掛けてmLへ。1mL瓶と0.25mLシリンジの割り付けまで画面に残る。翌年は今年の数字が出発点になる。

積み上げても総量が大きく変わるとは限りません。変わるのは、外したときにどこが原因だったかを翌年に言えるかどうかです。

02

申込書と名簿で埋まる4割を先に固め、読みが担当するのは残りだけ

Before職域接種の申込書は事務の引き出し、定期接種の対象者はカルテの中。発注のときに全部を思い出せる人はいない。
After事業所の人数と対象者名簿を8月の時点で画面に集め、確定として緑で埋める。青い幅が担当するのは残った6割ぶんになる。

職域接種の人数は前年並みで届くことが多く、当日の欠席で1割ほど減ります。確定として扱いつつ、その目減りぶんは幅に含めています。

03

多く頼んで余った損と、足りなくて断った損は、大きさが違う。

Before余ったワクチンの廃棄は目に見えるので責められる。断った電話はどこにも記録が残らないので、数字にならない。
After捨てた本数の仕入れ額と、閉めた予約枠の推計額をシーズンごとに並べる。想定例では3万円と16万円で、5倍以上の開きがあった。

この開きは医院ごとに違います。自費の接種が中心か定期接種が中心かで単価が変わりますし、近くに打てる医院が多い地域なら断った方は戻ってきません。数字を出す意味は、その差を院の言葉で確かめられることにあります。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインとクリニックへの訪問を組み合わせて、3ヶ月で納品まで進めます。8月末の申込に間に合わせる必要があるので、5月に始めて7月に納めるのが基本の並びです。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + 過去の接種記録の棚卸し

去年の本数がどう決まったかを、まず言葉にする月。

卸の担当者とのやりとりと、申込の締切。納品が何回に分かれて届くかまで含めて、院長と事務長から聞き取ります。あわせて電子カルテから予防接種の実施記録を取り出し、年齢帯と回数で並べ直せるかを確かめます。職域接種の申込書と定期接種の対象者名簿がどこにあるかも、この月に洗い出します。

  • 発注から納品までの流れと期限の聞き取り
  • 電子カルテからの予防接種記録の取り出し方の確認
  • 年齢帯の区切りと用量・回数の取り決め
  • 職域接種・定期接種の確定情報の集め方の整理
2
MONTH 02 / 読みの検証 + 申込票の設計

過去3シーズンを読ませて、外れ方の癖を見る月。

取り出した記録で読みを試作し、去年と一昨年の8月時点にさかのぼって、その時の材料だけで何本と答えたかを出します。実際の消費と並べて、どの年齢帯でどちらへ外れたかを確かめる。あわせて申込票の作りを固め、幅をどこまで見せるか、上書きの仕方をどうするかを院長と決めます。

  • 過去3シーズンでのさかのぼり検証と年齢帯ごとの外れ方の確認
  • 幅の出し方と、確定・読みの塗り分けの設計
  • 申込票・シーズン尺の画面の下書き
  • 捨てた金額と断った金額の数え方の取り決め
3
MONTH 03 / 開発 + 申込への並走納品

8月末の申込に間に合わせて納め、シーズン中の画面へ続ける月。

5画面を開発し、今年の申込は仕組みの数字と院長のいつもの見積もりを両方出して並べます。どちらを採るかは院長が決め、選んだ理由を残してもらう。そのままシーズンに入り、10月からは受付が「きょうの瓶」を使い始めます。1月末の勘定までを一度回して引き継ぎます。

  • シーズン尺・申込票・年齢の読み・きょうの瓶・勘定の開発
  • 今年の申込での並走(仕組みの数字といつもの見積もりを併記)
  • 受付向けの当日運用の引き継ぎ
  • 納品 + 外れた週のメモを翌年へ戻す運用の設定

FAQ

よくある質問

  • Q1 電子カルテからワクチンの接種記録を取り出せるか分かりません。
    最初の月にこちらで確かめます。多くの電子カルテはCSVでの書き出しに対応していて、定期接種の記録には保存の決まりがあるので、どこかには入っています。台帳を別のExcelで付けている医院もありますし、紙の予診票の控えしかない場合もある。紙だけのときは、直近3シーズンぶんを読み取って実績の形にするところまで含めてお引き受けします。取り出す先が決まらないうちは開発へ進みません。
  • Q2 うちは定期接種が中心で、自費の患者さんは多くありません。
    それなら幅の出し方が変わります。定期接種は自治体が期間と対象を決めていて、対象者の名簿がカルテから作れるので、確定として扱える割合が高くなります。読みが担当するのは「対象になっている方のうち、今年も打ちに来る方の割合」に絞られる。この割合は前年に打ったかどうかと通院の続き方でかなり見当が付くので、自費中心の医院よりむしろ読みやすい部類です。
  • Q3 卸から希望どおりの本数が入ってこない年があります。
    そこは仕組みでは動かせません。ただ、割り当てが絞られる年ほど、早く数を返した医院から埋まっていきます。この開発プランで変わるのは、8月末に返す数字を積み上げで出せるようになることと、シーズン中の残りが線で見えるので追加の相談を早く切り出せることの2点です。入ってこなかったぶんをどう配るかは別の話で、予約枠を年齢で絞る運用を「きょうの瓶」の画面に足すことはできます。
  • Q4 予測を信じて減らして、11月に足りなくなるのが怖いです。
    そのために、失う金額を左右に並べる画面を作りました。断った側のほうが大きく出る医院なら、読みの幅の上のほうを取るのが正しい選択です。仕組みは幅を出すところまでで、どこを取るかは院長が決めます。初年度は今までどおりの見積もりと並べて出すので、いきなり切り替える必要もありません。2年ぶん並べてから寄せていくくらいで十分だと考えています。

8月末に卸へ返す1つの数字に、材料を持たせませんか。

使用期限で捨てた瓶と、11月に閉めた予約枠。どちらも数えていなければ、来年もまた勘で決めることになります。
読みの材料は、カルテに残っている予防接種の実施記録。もう医院の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、受付が毎日見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。