業務アプリ・DX
訪問介護のサービス提供記録は、何を書いて何年残すのか
省令が求めているのは2つです。提供日・内容・保険給付の額を利用者側の書面に残すことと、提供した具体的なサービスの内容等を記録して完結の日から2年間保存すること。ただし保存期間は自治体の条例も確認が必要です。札幌市では訪問介護計画と具体的なサービス内容の記録を、介護給付があった日から5年を経過する日まで保存します。訪問介護事業所の管理者とサービス提供責任者に向けて整理しました。
この記事でわかること
- 根拠は「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」の第19条です。提供日・内容・保険給付の額を居宅サービス計画の書面などに記載することと、提供した具体的なサービスの内容等を記録することの2つに分かれます。
- 省令の第39条は完結の日から2年間と定めていますが、自治体の条例では異なる場合があります。札幌市では訪問介護計画とサービス内容の記録を、介護給付があった日から5年を経過する日まで保存します。
- 記録は電磁的記録で作って保存してよく(第217条第1項)、利用者への交付や同意も本人の承諾があれば電磁的方法でできます(第2項)。紙の複写式である必要はありません。
- 国保連への請求は各月分を翌月10日までに行います。記録票が月末まで事業所に無い運用では、回収から伝送までを10日間で終えることになります。
- スマホ記録への移行では、介護ソフトの既存機能で対応できるかを確認し、専用アプリが必要な場合は開発費と運用負担を比較します。北海道の令和8年度の補助は、在宅系サービスならケアプランデータ連携システムの利用開始が条件です。
省令が求めている記録は2つに分かれる
根拠は、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)の第19条です。第1項は、訪問介護を提供したときに、提供日と内容、利用者に代わって受け取る居宅介護サービス費の額、その他必要な事項を、利用者の居宅サービス計画を記載した書面か、それに準ずる書面に記載するよう求めています。
厚生労働省の解釈通知(老企第25号)は、この第1項の趣旨を「利用者及びサービス事業者が、その時点での支給限度額の残額やサービスの利用状況を把握できるようにするため」と説明し、記載先の例としてサービス利用票等を挙げています。内容の例として示されているのは「身体介護と家事援助の別」です。
第2項がいわゆるサービス提供記録票の根拠です。提供した具体的なサービスの内容等を記録すること、利用者から申出があった場合には文書の交付その他適切な方法でその情報を利用者に提供することの2つを求めています。2枚複写の記録票の控えを利用者宅に残す運用は、この「申出があれば提供する」を最初から済ませている形です。
第1項(利用票側に残すもの)
提供日・内容・保険給付の額、その他必要な事項。記載先は居宅サービス計画の書面か、それに準ずる書面です。解釈通知はサービス利用票等を例に挙げています。
第2項(記録票に残すもの)
提供した具体的なサービスの内容等。何をどの順で書くかの様式は省令に無く、事業所が決めます。当社の開発プランでは、開始・終了の時刻、身体介護と生活援助の区分ごとの実施項目、特記事項、利用者の確認を並べた複写式の様式を想定しました。
何年残すか。紙でなければいけないのか
保存年限は第39条第2項です。訪問介護計画、第19条第2項の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知の記録、苦情の記録、事故の記録を整備し、その完結の日から2年間保存するよう定めています。
「完結の日」が何を指すかは、解釈通知の該当箇所には書かれていません。また、省令の年限は都道府県や指定都市が条例で基準を定めるときの土台で、自治体の条例が別の年限を置いていることがあります。札幌市の条例第42条は、訪問介護計画と具体的なサービス内容の記録を、介護給付があった日から5年を経過する日まで保存すると定めています。札幌市以外でも、道や市町村など自分の事業所の指定権者の条例を確認してください。
紙でなくて構いません。第217条第1項は、省令で書面で行うと規定されている作成・保存などを、書面に代えて電磁的記録で行えると定めています。第2項は、交付・説明・同意・承諾・締結などを、相手方の承諾を得たうえで電磁的方法で行えるとしています。記録票をスマホで作って保存することも、利用者への控えの交付を画面や電子データで行うことも、この条文の範囲です。
利用者の確認印について、第19条にも第39条にも印を求める文言はありません。運営指導で確認の方法をどう見るかは指定権者によって違うので、電子のサインや確認ボタンに切り替える前に、指定権者にその形で足りるかを聞いておくと後戻りがありません。
記録が月末まで事業所に無いと、10日間に何が詰まるか
国保連への請求には期限があります。介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する命令の第3条は、各月分の請求を翌月10日までに行うよう定めています。記録票が月末の出勤日にまとめて戻ってくる運用では、月初の1日から10日までのあいだに、回収、提供票の予定との照合、実績の確定、ケアマネジャーへの実績の返送、伝送のすべてを済ませることになります。
照合の量は利用者数と月の訪問回数で決まります。当社の開発プランでは、利用者40名、1人あたり月12回の訪問を想定例として置きました。記録票は月480枚で、1枚1分で照らしても8時間です。自分の事業所では先月の記録票の枚数を数えて、照合にかかる時間を見積もります。
記録が届くまでの時間は担当者間の情報共有にも影響します。第19条第2項の記録は、利用者に何をしたかの記録です。特記事項を回収時に初めて共有する運用では、次に訪問するヘルパーへの引き継ぎが遅れるおそれがあります。電話などの連絡とあわせて、記録を確認できる時期も見直します。
直行直帰の場合は、事業所に立ち寄る機会に合わせた回収になりやすいため、記録を共有する方法を決めておく必要があります。原本がヘルパーの手元にあるあいだ、事業所は記録を見られません。訪問後すぐに事業所で記録を確認できるようにすることが、スマホ記録に切り替える目的です。
スマホ記録に変えるとき、何を決めれば見積もれるか
主な選択肢を2つ挙げます。介護ソフトに付いている記録アプリを使うか、記録と照合だけの小さなアプリを作るか。今の請求ソフトに記録アプリがあり、ヘルパーが使えそうなら、まずそれを試すのが早い道です。既存機能で対応できない様式や照合手順がある場合は、専用アプリの開発費と運用負担を比較します。
補助金を利用する場合は、申請先の自治体と年度を確認します。北海道の2026年度の案内には、介護ソフトの導入支援があります。訪問介護ではケアプランデータ連携システムの利用開始などが条件となり、交付決定後に実施する事業の経費が対象です。専用アプリの開発費が対象になるかは、機能や申請区分を含めて事前に確認する必要があります。
2026年9月10日時点で、事前登録の期限である8月31日は過ぎています。登録済みの事業所は、9月17日必着の協議書類提出に向けて、最新の様式と要件を確認してください。事業完了日は2027年2月26日です。未登録の場合は、追加募集の有無を北海道に確認してください。
北海道の2026年度の事業概要では、職員数に応じてライセンス料等が変わる介護ソフトの基準額(機器のみ)は、1〜10名で100万円、11〜20名で150万円、21〜30名で200万円、31名以上で250万円です。職員数で料金が変わらない場合は250万円とされています。定着支援を含む場合などは基準額が異なり、この金額がそのまま支給されるわけではありません。対象経費と補助額の計算は、北海道が公表する最新の要綱・様式で確認します。
EvoQuestにアプリ開発を相談する場合は、次の4点をもとに見積もります。
記録票の様式を変えるか、変えないか
今の複写式と同じ並びにすると、ヘルパーが入力項目を見つけやすくなります。様式を見直したい場合は、先に紙で見直してから画面にします。
予定をどこから取り込むか
ケアマネジャーから届く提供票を手で入力するのか、ケアプランデータ連携システムか請求ソフトから取り込むのか。ここで照合をどこまで自動にできるかが決まります。
利用者の控えをどう渡すか
月ごとに印刷して訪問時にファイルへ足すのか、家族がスマホで見られるようにするのか。第19条第2項の「申出があれば情報を提供する」をどの形で満たすかの話です。
請求ソフトへの受け渡し
確定した実績を表計算のデータで渡すのか、連携の仕組みを作るのか。請求ソフトを置き換えない前提なら、書き出しと取り込みの形式を最初に確認します。
当社が想定している期間と費用の出し方
当社の開発プランでは、利用者40名・登録ヘルパー10名規模を想定して、設計から公開まで約3ヶ月としています。1か月目に今の記録票と提供票を利用者名などを伏せた見本で確認して画面に起こし、2か月目にヘルパーのスマホ画面とサービス提供責任者の照合画面を並行して作り、3か月目は紙の記録と併用して確認しながら、実績の確定とケアマネジャーへの返送まで仕上げます。
費用は、記録票と今日の訪問だけの構成と、照合・実績確定まで含む構成の2案を金額付きで出し、必要な機能と導入する順番を相談します。画面の構成は訪問介護のサービス提供記録票アプリの開発プランで紹介しています。初回の相談と概算の見積もりは無料です。
まとめ
省令が求める記録は2つです。利用票側に提供日・内容・保険給付の額を残すこと(第19条第1項)と、提供した具体的なサービスの内容等を記録すること(第2項)。省令上の保存期間は完結の日から2年間(第39条)ですが、札幌市のように対象記録の保存期間と起算日を別に定める自治体があります。省令だけで保存期間を判断せず、指定権者の条例を確認します。
電磁的記録は第217条で認められています。紙の複写式である必要はなく、利用者への控えの交付も本人の承諾があれば電子でできます。指定権者の条例の年限と運営指導での確認の扱いだけ、切り替える前に確かめてください。
次にやることを1つ挙げます。先月分の記録票が訪問の日から何日後に事業所へ届いたかを、利用者10人分だけ数えてください。その日数と、予定との照合・実績確定にかかる時間を確認し、請求準備や引き継ぎに間に合うよう回収・共有のタイミングを見直します。
よくある質問
記録の保存は、本当に2年で足りますか。
省令の第39条第2項が定めているのは「完結の日から二年間」です。ただし、この年限は都道府県や指定都市が条例で基準を定めるときの土台で、自治体の条例が別の年限を置いていることがあります。指定を受けている自治体の条例で確認してください。保存期間の起算日や対象記録も指定権者に確認し、期間終了後の取扱いを含めて事業所のルールを定めます。
ヘルパーのスマホで記録すると、利用者の確認印はどうなりますか。
省令の第19条にも第39条にも利用者の印を求める文言はありません。第217条第2項は、交付や同意などを相手方の承諾を得て電磁的方法で行えるとしているので、画面へのサインや確認ボタンに置き換えること自体は条文の範囲です。ただし運営指導でどう見るかは指定権者によるので、切り替える前に確認しておいてください。当社の開発プランでは、日時と操作した人がセットで残る形にしたうえで、紙に印が要ると言われた場合に備えて月末に印刷して押せる様式も残しています。
記録アプリを入れるには、今の請求ソフトを変えないといけませんか。
請求ソフトに付属する記録アプリを使う場合は、そのソフトの契約が前提になります。今のソフトに記録アプリがあるなら、まずそれを試すのが早い道です。当社が作る場合は請求ソフトを置き換えません。ヘルパーの記録から実績を確定するところまでを画面で作り、確定した実績は、今の請求ソフトが取り込める形式と項目を確認したうえで出力します。書き出しと取り込みの形式を最初に確認するので、請求ソフトの名前と利用中の機能をお手元に用意していただけると話が早く進みます。
ケアプランデータ連携システムは、使わないとだめですか。
省令上の義務ではありません。ただし北海道の令和8年度の介護テクノロジー導入支援事業費補助金では、在宅系サービスは令和8年度内にこのシステムの利用を開始することが補助の条件に入っています。補助を使って記録を電子化するなら、実質的にセットになります。提供票の予定をデータで受け取れると、ヘルパーが送信した記録との照合を機械に任せられる範囲が広がるので、記録アプリを入れるなら一緒に検討する価値があります。
先月の記録票が訪問から何日後に届いたかを数えてみてください。
月初の10日間が照合と請求で埋まっている。原本が月末までヘルパーの手元にある。記録アプリを探してみたが、今の複写式の様式と合わない。そんな状態でしたら、今使っている記録票と提供票について、利用者名などを伏せた見本と1か月の件数をお知らせください。今の請求ソフトの記録機能で足りるのか、記録と照合だけを別に作ったほうが早いのかを切り分けます。北海道内なら事業所に伺い、月初の照合の作業を見せてもらうところから始めます。
