EvoQuest

給食施設DX・業務アプリ

検食簿には何を書くのか。施設によって「検食」の意味が変わる

検食簿に書くのは、検食した人と時間、そして味やにおい、異物、加熱の確認結果です。ただし「検食」は、提供前の試食を指す場合と、冷凍でとっておく検体を指す場合があります。給食を出している施設の方向けに、根拠と保存年限、紙をやめる場合の費用まで整理しました。

この記事でわかること

  • 学校給食では、検食は提供30分前までの試食、保存食は−20℃で2週間以上とっておく検体。別々の項目として定められています。
  • 厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルは、その検体のほうを「検食」と呼びます。同じ言葉が、施設によって違うものを指します。
  • 学校給食では、検食を行った時間と検食者の意見を記録します。この基準に基づく記録の保存は1年間です。
  • マニュアルが正面から適用されるのは1回300食以上または1日750食以上。下回る施設も、可能な限り努めることが望ましいとされています。
  • 電子化は厚生労働省の無料アプリから試せますが、対象は小規模な一般飲食店で、検食簿の様式は入っていません。

なぜ「検食」の説明が人によって食い違うのか

検食簿について調べていて、資料ごとに書いてあることが揃わないとしたら、原因はたいてい言葉のほうにあります。「検食」は2つのものを指して使われています。提供前に責任者が食べて確かめる試食と、食中毒が起きたときに原因を調べるために冷凍でとっておく検体です。

この2つをはっきり分けているのが、文部科学省の<strong>学校給食衛生管理基準</strong>です。「検食」と「保存食」を別の項目に立て、それぞれやることを定めています。いっぽう厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルには「検食の保存」という項目があり、こちらでいう検食は、冷凍でとっておく検体のほうを指します。

どちらかが間違っているわけではありません。自分の施設がどの基準を根拠にしているかで、検食簿という帳票が指すものも変わります。様式を直す前に、まず根拠を確かめてください。

小中学校・共同調理場

根拠は学校給食衛生管理基準(平成21年文部科学省告示第64号)。検食は提供30分前までの試食、保存食は−20℃以下で2週間以上の検体で、別の定めです。

保育所・介護施設などの給食施設

根拠は大量調理施設衛生管理マニュアルと、施設種別ごとの通知。マニュアルの本文で「検食」と書かれているのは検体のほうです。試食のことは、施設の運営規程や自治体の指導で定めている場合が多くあります。

一般の飲食店

厚生労働省が一般飲食店向けに出している手引書とアプリに、検食簿は入っていません。求められるのは衛生管理計画と、日々の実施記録、毎月の振り返りです。

検食は誰が、いつまでに行うのか

学校給食ははっきり決まっています。あらかじめ責任者を定めて、児童生徒が食べ始める30分前までに行うこと。共同調理場から配送を受けている学校でも、受け取った学校の側で行います。

この「30分前」には役目があります。異常が見つかったときに給食を止めるためです。基準は、異常があった場合は給食を中止し、共同調理場の受配校は速やかに共同調理場へ連絡することまで定めています。食べ終わったあとに感想を書く帳票では、この役目を果たせません。

保育所や介護施設には、学校のような時刻の定めが国の基準として置かれているわけではありません。多くは施設の運営規程や自治体の指導で決まっています。いま何時に誰が行うことになっているのかを、運営指導を受ける前に文書で確かめておくと安全です。責任者が不在の日に誰が代わるかまで決めておかないと、印の欄だけ空いた検食簿が月末にまとめて出てきます。

検食簿に立てる欄は何か

学校給食衛生管理基準は、検食で確認する内容を具体的に挙げています。ここがそのまま検食簿の欄になります。

記録することとされているのは、検食を行った時間と、検食者の意見です。様式そのものは施設で決められるので、味の感想だけを書く欄しかないなら、下の項目を欄として立て直すだけで監査のときに説明しやすくなります。

検食簿は、提供してよいと判断した記録でもあります。項目ごとに異常の有無が残る形にしておけば、あとから「何を見て出したのか」を説明できます。

異物

食品の中に、人体に有害と思われる異物の混入がないか。

加熱と冷却

調理過程において、加熱および冷却の処理が適切に行われているか。

異味・異臭

食品の異味、異臭その他の異常がないか。

一食分の量

一食分として、それぞれの食品の量が適当か。

味付けと見た目

味付け、香り、色彩、形態などが適切か。

嗜好への配慮

児童生徒の嗜好との関連が、どのように配慮されているか。

保存食のとり方で、いちばん間違えやすいところ

保存食は毎日、原材料と調理済み食品を食品ごとに<strong>50g程度ずつ</strong>、清潔な容器に密封して−20℃以下で2週間以上とっておきます。この数字は大量調理施設衛生管理マニュアルと学校給食衛生管理基準で共通です。

間違えやすいのは原材料の扱いです。洗ったり殺菌したりせず、購入した状態のまま保存します。調理済み食品は配膳後の状態です。きれいにしてから袋に入れると、原因を調べるときに使えなくなります。

学校給食基準はさらに細かく定めています。納入された食品の製造年月日やロットが違う場合、複数の釜で調理した場合は、それぞれ保存すること。卵は全て割卵して混合したものから50g程度を採ること。児童生徒に見せる展示食を保存食と兼用しないこと。そして、廃棄した日時も記録します。

2週間たった袋を捨てるところまでが記録です。冷凍庫の中でマジックの日付が消えると、いつ捨てていいか分からない袋が奥に残ります。採取した日と廃棄予定の日を、袋と帳票の両方に残しておくと迷いません。

記録は何年とっておくのか

学校給食衛生管理基準は、この基準に基づく記録を1年間保存することとしています。検食簿もここに含まれます。

大量調理施設衛生管理マニュアルも1年間です。責任者は点検表による点検結果を1年間保管すること、原材料について納入業者が出す検査結果も1年間保管することと定めています。

注意がいるのは介護施設です。衛生の基準とは別に、運営基準の側にも記録の定めがあります。指定介護老人福祉施設の運営基準は、入所者へのサービス提供に関する記録を、完結の日から2年間保存することとしています。検食簿がこちらに含まれるかどうかは自治体の考え方によるので、衛生の1年と運営基準の2年のどちらに合わせるかは、管轄の窓口で一度確かめてください。長いほうに合わせておけば足りなくなりません。

紙をやめるとしたら、いくらかかるのか

まず、無料で試せるものがあります。厚生労働省が2026年6月5日に公開した「HACCP衛生管理記録アプリ」です。衛生管理計画の作成、日々の実施記録、毎月の振り返りを、スマートフォンやタブレットで行えます。サーバーもいりません。

ただし対象は小規模な一般飲食店です。<strong>検食簿の様式は入っていません。</strong>チェック者の登録は3名まで、冷蔵庫と冷凍庫は合計5台まで、記録は端末の中に2年間保存され、2年を過ぎると順次消えていきます。給食施設の記録をこれ1本に載せるのは無理がありますが、自分の施設に何が足りないかを知る道具にはなります。

次の候補はExcelやスプレッドシートです。いまの様式をそのまま作れて費用もかかりません。向いていないのは、複数の持ち場から同時に書き込む使い方です。厨房と検食する人と事務室が同じファイルを触り始めたところで崩れます。

作る場合、費用は機能の数より決めごとの数で動きます。見積もりを出すために必要なのは次の4つです。この4つが決まっていれば、初回の相談で概算まで出せます。

記録の種類をいくつ載せるか

検食簿だけか、検収・冷蔵庫の温度・加熱の中心温度・保存食・調理員の健康チェックまで含めるか。ここが金額にいちばん効きます。

出力する様式

いま監査に出している紙をそのまま印刷とPDFにできることを条件にするか。既存の様式をそのまま渡してもらえれば、見積もりに含められます。

使う端末と場所

厨房のタブレット、検食する人のスマートフォン、事務室のPC。持ち場が増えるほど画面が増えます。

確認欄と印の扱い

画面のタップを印の代わりにできるかは管轄によって分かれます。ここは作り始める前に窓口へ確認する項目です。

小さく始めるなら、どこから切るか

全部を一度に置き換えないほうがうまくいきます。回数の多い記録から先に画面へ移し、月1回の点検のような頻度の低いものは、運用が回ってから足すか判断します。検食簿は毎日つく記録なので、最初に切り出す候補になります。

期間は、記録の種類を絞れば設計から運用開始まで3ヶ月ほどが目安です。厨房での置き場所と防水の守り方を決める時間を、最初の月に取っておきます。端末が壊れた日に記録が止まらないよう、紙の予備様式と、復旧してから記録を戻す手順も先に決めます。

画面に載せると業務がどう変わるかは、<a href="/works/foodservice-hygiene-records/">検食簿の電子化・衛生記録システムの開発プラン</a>に画面つきでまとめています。定員50名規模の特別養護老人ホームを想定した内容です。

まとめ

検食簿の中身は、施設が根拠にしている基準で変わります。学校給食衛生管理基準なら検食と保存食は別のもの、大量調理施設衛生管理マニュアルなら検食は冷凍でとっておく検体を指します。

検食は、食べ始める前に終わっていて、異常があれば止められる形になっているかどうかが要です。学校給食では30分前までと決まっています。保育所や介護施設は、施設側で時刻と担当を決めて運用します。

記録の保存は、衛生の基準ではどちらも1年間です。介護施設は運営基準の側にも定めがあるので、長いほうに合わせておくと安全です。

次にやることを1つ挙げるなら、いま使っている検食簿がどの基準を根拠にした様式なのかを確かめることです。運営規程か、過去の運営指導でもらった文書に書かれていることが多くあります。ここが分かれば、欄を足すのか、そのまま画面に移せばよいのかが決まります。

よくある質問

検食は施設長が行わなければいけませんか。

学校給食衛生管理基準は「あらかじめ責任者を定めて」としていて、職名までは指定していません。保育所や介護施設も同じで、誰を責任者にするかは施設で決められます。大事なのは、その人が不在の日の代わりを先に決めておくことです。ここが口約束のままだと、夕食や土日の検食が抜けます。決めた内容は運営規程か衛生管理マニュアルに書いておくと、運営指導のときに説明が早く済みます。

紙の検食簿を電子化して、運営指導や保健所の立入で問題になりませんか。

扱いは管轄と担当者によって差があるのが実情です。国の基準は記録することを求めていますが、紙でなければならないとは書いていません。ですから、作り始める前に指導監査の窓口へ「電子の記録で受けてもらえるか」「確認印はどう扱うか」を聞いておくのが確実です。聞かずに作ると、結局は紙にも書く二重運用になって、現場の手間だけが増えます。

保存食は何食分とればいいですか。刻み食など形態を分けている場合はどうなりますか。

人数分ではなく、食品ごとに50g程度ずつです。学校給食衛生管理基準は、納入された食品の製造年月日やロットが違う場合、複数の釜で調理した場合は、それぞれ保存することとしています。刻み食やペースト食のように形態を分けているとき、どこまでを別の食品として扱うかは施設によって判断が分かれるところなので、管轄の考え方を一度確認しておくと安全です。

1日20食くらいの小さな施設でも、同じ記録が必要ですか。

大量調理施設衛生管理マニュアルが正面から適用されるのは、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上を提供する施設です。それ以外の施設も、可能な限りマニュアルに基づく衛生管理に努めることが望ましいとされています。さらに、1回の提供食数が20食程度未満の給食施設についてはHACCPに沿った衛生管理は適用されない、とこども家庭庁のガイドに書かれています。ただしこの場合も、業界団体の手引書を参考にした自主的な衛生管理は求められます。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

検食簿だけ先に画面にする、から始められます。

検食簿と温度記録が紙で回っていて、運営指導の前に空欄を埋め直したことがある。厨房と事務室で同じことを2回書いている。そんな状態なら、一度お話を聞かせてください。いまお使いの様式をそのまま出せる形にしてから、どこまで画面に載せるかを一緒に決めます。北海道内なら厨房を見に行きます。

記録の電子化について相談する (新しいタブで開きます)

メールで質問だけでも:info@evoquest.jp 解説記事一覧へ戻る