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温浴施設の入館者数予測(AI)

当てにいく前に、当たったら何を変えるのかを決める

入館者数の予測が金額になるのは、前日までに動かせることがあるときだけです。人の手配、貸しタオルの枚数、浴槽の換水と逆洗浄を置く曜日。この3つから始めます。日帰り温泉・スーパー銭湯の経営者に向けて書きました。

この記事でわかること

  • 予測の出口を先に決めます。あすの入館者数が分かっても、前日までに変えられるものが手元に無ければ、金額はひとつも動きません。
  • いちばん金額に直結するのは人の手配です。北海道最低賃金は令和8年10月1日に1,131円になる見込みで、令和4年度の920円から211円上がりました。
  • 天気を材料にするなら限界も一緒に引き受けます。気象庁の例年値では、北海道地方の「あすの降水の有無」の適中率は82%、あさっては79%です。
  • 浴槽の換水とろ過器の逆洗浄は、公衆浴場における衛生等管理要領で頻度が決まっています。どの曜日に置くかは施設が決められる部分です。
  • 材料は施設の中にあります。券売機の入館記録、曜日と祝日の並び、天気。最初の3ヶ月はExcelで足ります。

入館者数を当てても、変えられるものが無ければ金額は動かない

温浴施設から予測の相談を受けたとき、当社が最初に聞くのは過去のデータではなく、「あすが混むと前の日に分かったら、何を変えますか」です。ここに答えが出ない施設では、どれだけ良い予測を入れても数字が動きません。

日帰り温浴施設で前日までに動かせるものは、だいたい3つに絞られます。1つめは人の手配。受付や清掃に何人置くか。2つめは貸しタオルと館内着の枚数で、リネン業者への納品依頼は前日までに出す施設が多いはずです。3つめは、浴槽の換水とろ過器の逆洗浄を週のどこに置くか。

前の日に分かっても動かないものもあります。浴槽の数と、脱衣所のロッカーの数。設備の上限は予測では変わりません。混む日が分かることで減るのは、人の余りと足りなさ、そして材料の余りだけです。

だから最初にやるのは、過去1年の入館者数を並べることより先に、あすの段取りを誰がいつ決めているかを紙に書き出すことです。決める人と時刻が定まっていない施設では、予測の画面を作っても開かれません。

パートを1人多く呼ぶ判断は、5年で211円ぶん重くなった

北海道労働局が令和8年8月5日に発表した資料によると、北海道地方最低賃金審議会は、北海道最低賃金を56円引き上げて1,131円に改正することが適当である旨を答申しました。効力の発生年月日は令和8年10月1日が見込まれています。

同じ資料に推移が載っています。令和4年度が920円、5年度が960円、6年度が1,010円、7年度が1,075円、そして8年度が1,131円。5年で211円上がりました。

数字に直してみます。1人を5時間呼ぶと、1,131円なら1日あたり5,655円。920円のころは4,600円でした。同じ判断が1日1,055円ぶん重くなっています。迷う日が月に8日あるとして、5年前と同じ勘で外し続けると、年に10万円ほどの差が出る計算です。

足りなかった日のほうは、金額として残りません。番台に列ができたこと、浴室の清掃が追いつかなかったこと。翌日には誰も覚えていません。だから記録の側を先に作ります。人を厚くして余った日と、足りずに回らなかった日を、その日のうちに1行だけ残す。3ヶ月ぶん貯まると、どちらへ倒したほうが得かが見えてきます。

DEMO

あすを幅で置くと、決めごとの差はいくらになるか

あすの入館者数の見込みを下限と上限で入れると、下限で組んだときと上限で組んだときで、人の数と貸しタオルの枚数と人件費がどれだけ違うかが出ます。施設ごとに違う数字はすべて入力欄にしてあります。

あすの段取りの試算|入館者数の幅から人件費とタオル枚数を出す

入館者数の下限と上限、1人が持てる人数、タオルの1人あたり枚数、パートの時給と勤務時間を入れると、下限で組む場合と上限で組む場合の差が金額で出ます。

触って動かせます
計算の中身
入館者数を1人が持てる人数で割って切り上げ、時給と勤務時間を掛けているだけです。予測そのものは行いません。
既定値の出どころ
時給の初期値1,131円は、令和8年度の北海道最低賃金の答申額です。ほかの数字は入れ替えて使ってください。
確かめてほしいところ
幅を広げるほど、下限と上限の差が金額として大きくなります。その差が、いま勘で埋めている部分です。

※ 1人が持てる人数と、1人あたりの貸しタオル枚数は施設ごとに違います。初期値は入力例で、実績値ではありません。自館の記録に置き換えて確かめてください。

天気を材料にすると、どこまで当たるのか

温浴施設の入館者は天気で動きます。雨の日や、大雪の翌日。ただし天気を材料に入れるなら、予報そのものが外れる日も一緒に引き受けることになります。

気象庁が公表している「降水の有無の適中率の例年値」(平成28年から令和7年の10年平均)では、全国平均であすの予報が85%、あさっての予報が83%です。北海道地方はこれより低く、あすが82%、あさってが79%とされています。

あすの予報を材料にした時点で、5日に1日ほどは前提の違う日が来ます。ここを隠して1つの数字だけを出す仕組みにすると、外した日に画面ごと信用されなくなります。「あす午後 260〜330人」のように幅で出して、その幅のまま段取りが組めるかを見るほうが実務に合います。

気温も同じです。冬の北海道では、冷え込むほど入館が増える日と、道路が悪くて出足が鈍る日が混ざります。どちらが強く出るかは立地で違うので、よその施設の傾向を借りず、自館の記録から出してください。

混む日と、湯を入れ替える日はぶつけない

予測で動かせる衛生の段取りが1つあります。換水と逆洗浄を置く曜日です。

厚生労働省の「公衆浴場における衛生等管理要領」は、浴槽について毎日完全に換水して清掃することとし、これにより難い場合であっても1週間に1回以上は完全に換水して浴槽を清掃することと定めています。ろ過器と循環配管については、1週間に1回以上、ろ過器を十分に逆洗浄して汚れを排出するとともに、適切な方法で生物膜を除去し消毒することとされています。

週に1回は必ず手を止める作業があり、それを何曜日に置くかは施設の裁量です。入館者数の予測がいちばん静かに効くのがここで、いちばん混む半日とこの作業を離すだけで、当日の人繰りが変わります。

記録の話も一度整理しておくと、あとの手間が減ります。同じ要領は、浴槽水の遊離残留塩素濃度を頻繁に測定して通常0.4mg/L程度を保ち、最大1mg/Lを超えないよう努めること、その測定結果を検査の日から3年間保管することを定めています。レジオネラ属菌の検査は、ろ過器を使わず毎日完全に換水している浴槽水なら1年に1回以上、連日使用している浴槽水なら1年に2回以上、浴槽水の消毒が塩素消毒でない場合は1年に4回以上で、結果の保管はやはり3年間です。基準は10cfu/100mL未満とされています。

毎日の測定値を紙に書いて3年ぶん綴じている施設は多いはずです。入館者数の画面を作るとき、この記録も同じ画面に入れておくと、混んだ日と塩素の値の関係を後から見返せるようになります。記録の保管そのものは義務で減らせませんが、書く場所を1つにまとめることはできます。

材料は施設の中にある。外から買うものは最初は要らない

必要なものは3つだけです。日別・時間帯別の入館者数、その日の天気、曜日と祝日の並び。

入館者数は券売機かPOSの記録にあります。書き出せる形は機種で違うので、まず取扱説明書かメーカーに、日別の売上明細を表計算ソフトで開ける形にできるかを確認してください。できない機種でも、レジ締めの日報が紙で残っていれば、1日の合計から始められます。予測に要るのは、いつ何枚の券が出たかだけで、お客さん個人の情報は使いません。

天気は気象庁のサイトから、過去の気象データもこれからの予報も手に入ります。曜日と祝日の並びはカレンダーです。この段階で外部のデータを買う必要はありません。

最初の3ヶ月はExcelで足ります。直近1年の日別入館者数を、平日と土日祝で分け、さらに晴れと雨で分けて、区分ごとの平均といちばん少なかった日・多かった日を出す。これだけで「うちは雨の平日にどれだけ振れるのか」が数字になります。

Excelで手が止まるのは、区分を細かくしていったときです。曜日別、天気別、時間帯別、連休の何日目か。割るほど1区分あたりの日数が減って、平均が当てにならなくなります。ここから先が、仕組みに任せる範囲になります。

費用と期間は、何を決めれば見積もれるのか

金額を出すために決めることは3つです。1つめ、入館記録をどう取り込むか。券売機やPOSから自動で受け取るのか、月に1度、人がファイルを置くのか。ここが費用をいちばん動かします。

2つめ、画面を何の決定に使うか。人の手配だけに絞るのか、貸しタオルの枚数と換水の曜日まで含めるのか。決定を1つ足すごとに、画面と確認の手間が増えます。3つめ、誰がいつ見るか。前日の何時に、支配人が見るのか番頭が見るのか。担当と時刻が決まらないまま作ると、開かれない画面ができあがります。

期間は、要件の整理から納品まで3ヶ月ほどを目安にしています。ただし温浴施設には季節があります。冬の混み方まで材料にしたいなら、少なくとも一度は冬を越した記録が要るので、逆算すると春から夏に着手することになります。

補助金を当てにするなら、対象になる形かどうかを先に確かめてください。登録済みのITツールの導入費用が対象になる制度では、施設に合わせて作る開発費は同じようには扱われません。仕組みと使える場面は、当社の記事「AI開発の費用はどう決まるか」に整理してあります。

小さく始めるなら順番があります。まず3ヶ月、Excelで区分ごとの平均を出しながら、外した日の理由を1行ずつ残す。次に、その記録で人の余りと足りなさを金額に直す。仕組みを作るかどうかは、その金額を見てから決めても遅くありません。

まとめ

予測の出口を先に決めます。前日までに動かせるのは、人の手配、貸しタオルの枚数、換水と逆洗浄を置く曜日の3つです。

効果は当たった率ではなく金額で見ます。人を厚くして余った日と、足りずに回らなかった日を、その日のうちに1行残すところから始めてください。

天気は使える材料ですが、北海道地方のあすの降水の適中率は82%です。1つの数字で出さず幅で示して、外した日の理由が残る作りにします。

次にやることを1つだけ挙げます。直近1年の日別入館者数を、平日と土日祝、晴れと雨の4つに分けて平均を出してみてください。その4つの数字の開きが、いま勘で埋めている幅です。

よくある質問

券売機の記録が日ごとの合計しか残っていません。それでも始められますか。

始められます。1日の合計だけでも、平日と土日祝、晴れと雨で分ければ、区分ごとの平均と振れ幅は出ます。時間帯別が要るのは、開店直後と夕方で人の配置を変えたいときです。まず1日の合計で3ヶ月試して、時間帯まで割りたくなったときに記録の取り方を変える順番で構いません。

予報が外れた日は、どうすればいいのですか。

その日の記録に理由を1行残してください。「予報は雨だったが昼から晴れた」「近くの学校が休みだった」。この1行が3ヶ月ぶん貯まると、予報以外に何が効いているかが見えてきます。外した日を無かったことにすると、次の判断が良くなりません。

館内の食堂の仕込みも、同じ予測で決められますか。

そのまま使うことはできません。入館者数と食堂の注文数は、比率が季節や時間帯で変わるためです。まず入館者数に対して食堂の注文が何割だったかを記録して、その比率が安定しているかを見てください。安定していれば入館者数から掛け算で出せますし、ばらついているなら食堂側の記録を別に取る必要があります。

AIを入れないと、入館者数の予測はできませんか。

できます。曜日と天気で分けて平均を出すところまではExcelで十分で、施設によってはそれで段取りが決まります。仕組みを検討する目安は、割りたい区分が増えて表計算では手が回らなくなったときと、判断する人が交代しても同じ手順で決められるようにしたいときの2つです。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

あすの段取りを、勘のほかにもう1つの材料で決められるようにします

券売機のデータをまだ書き出したことがない、混む日に何を変えているか説明したことがない。その段階からで大丈夫です。手元の記録で何が出せるかを一緒に確かめるところから始めます。

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