EvoQuest
EvoQuest AIリネン発注予測AI 2026.08

SCENARIO ── ONSEN LINEN CASE

切らした日のことは、フロント全員が覚えている。
使われずに終わった枚数は、誰も覚えていない。

岩盤浴を併設した札幌近郊の日帰り温浴施設を想定します。平日はおよそ500人、土日は900人。貸しタオルと館内着はリネンサプライ業者との契約で、月・水・金の朝に使用済みを渡し、洗い上がりを受け取ります。ふだんの納品は「回収と同数」でほぼ自動。それで回るのは、きょうもきのうと同じだけ使う週の話です。3連休の前、初雪の週末、館内着のLサイズだけが先に切れる日。判断が要る週にかぎって、判断の材料がありません。券売機の入館記録と納品書の枚数から客層ごとのレンタル率を復元し、品目・サイズ別の貸出枚数を幅で予測して、木曜17時に金曜納品の増減を確定するリネン発注予測AIを、EvoQuestはこう設計します。

想定領域
リネン発注予測AI / 貸しタオル・館内着の在庫と発注
担当範囲
要件整理・データ整備・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
岩盤浴併設の日帰り温浴施設(平日500人・土日900人規模/リネンは外部委託)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

温浴施設のタオルで検索して出てくるのは、リネンサプライ業者のサービス紹介、料金の比較記事、それに販売用タオルの通販です。契約すればタオルは洗われて定期便で戻ってきます。ただ、何枚で回すかを決めるのは施設の側で、その決め方を扱ったページは見当たりません。多くの施設で、開業のときに決めた基準の枚数が、そのまま何年も使われています。

発注の実務は、ふだんは考えなくて済む形になっています。業者は回収した枚数と同じだけを次に納めるので、連絡しなければ「いつも通り」で回る。この自動運転が崩れるのが、土日と連休です。集配は月・水・金で、土日にトラックは来ません。金曜の納品で持ち切れなければ、途中の補充は利かない。しかも冬の温浴は、冷え込みと雪で入館が増える側の商売です。切らした日の記憶は強く残るので、基準の枚数は切らすたびに上がり、下がるきっかけのないまま、使われない枚数の基本料を払い続けることになります。

ここにAIの予測を入れます。ただし、入館者数を当てるだけでは枚数は出ません。平日の常連はマイタオルを持って来るので貸出が少なく、雨や雪の日にふらっと入る人や観光の人は手ぶらセットを借ります。同じ800人でも、客層しだいで貸出は倍近く違う。さらに館内着にはサイズがあって、合計が足りていてもLだけが切れます。だから予測は品目・サイズ別の貸出枚数で出し、出口は木曜17時の一点に絞ります。金曜の納品で土日を持ち切れるかを品目ごとに確かめ、足りない行だけ臨時の増枠を業者へ連絡する。決めるのは支配人で、AIが出すのは枚数の根拠と締切です。

CHALLENGE

課題

  • 01 判断が要るのは週に一度なのに、その一度に材料がない。ふだんの納品は回収と同数の自動運転で困らない。金曜の納品で土日を持ち切れるかだけが判断で、頼りは「去年もなんとかなった」という記憶になっている。連休や初雪が重なる週ほど、記憶は当てにならない。
  • 02 切らした損と余らせた損で、見え方がまるで違う。切らした日はフロントで断った相手のことまで覚えているのに、余った枚数の基本料は月末の請求書の合計に紛れる。だから基準の枚数はピークの記憶に合わせて上がる一方で、下げる話は誰からも出ない。
  • 03 入館者数が分かっても、枚数は出ない。貸出の率は客層と天気で動き、館内着はサイズ別に切れる。券売機の人数から棚の枚数までのあいだに、翻訳がひとつ足りていない。
  • 04 学習の材料は、納品書の控えとレジに残っている。業者の納品書には品目別の枚数が毎回書かれ、レジには手ぶらセットと岩盤浴セットの販売が1件ずつ残る。突き合わせれば貸出の傾向は復元できるのに、ファイルに挟まれたまま使われていない。

APPROACH

アプローチ

設計の中心に置くのは、木曜17時の確定です。集配が月・水・金なので、金曜の納品が週でいちばん重い。土日、祝日が付けば月曜まで、トラックの来ない日を手元の枚数だけで持ち切ることになります。増減連絡の締切は前日の夕方。業者の工場が翌朝の便の積み込みを組むための締切で、ここは施設の都合では動かせません。だから木曜の夕方に、金曜納品の品目・サイズ別の枚数を確定します。決めるのは支配人で、ふだんの週は「増減なし」を確かめて閉じるだけの1分の画面にします。

予測の前に、決まっている数を固めます。浴室のバスマットとサウナマットは客数に関係なくほぼ定数の交換なので、予測の対象から外します。団体バスと貸切の予約は人数が確定しているので、そのぶんの館内着とタオルのセット数を先に引き当てます。予測が受け持つのは、残りのフリーの入館者が借りる枚数だけです。入館者数の幅は券売機の記録と曜日・天気から出し(入館者数予測AIの開発プランと同じ考え方です)、そこに客層ごとのレンタル率を掛けて、品目・サイズ別の貸出枚数を幅で出します。材料は券売機の入館記録、レジのレンタル券の販売記録、それに業者の納品書・回収伝票の枚数です。

幅のどこで頼むかは、品目の切れ方の重さで使い分けます。館内着と岩盤浴タオルは、切れると岩盤浴の追加料金ごと売り逃しになり、代わりが利かないので上限で頼みます。フェイスタオルとバスタオルは、切れても売店の販売品を貸出に回す逃げ道があるので中央の値で頼み、回した枚数を記録します。サイズはLが先に切れる実績が続くなら、Lだけ上限に倒します。それでも外れる日はあります。切らした品目と時刻、貸せなかった件数をフロントが1タップで残し、その記録が翌週の予測の幅に戻ります。

効果は的中率では測りません。貸せなかった件数にレンタル料を掛けた推計額。館内で洗って戻した回数と、販売品を貸出へ回した枚数。それに、使われないまま契約している枚数です。ピークの日でさえ棚の7割しか動いていない品目が見つかれば、基準の枚数を下げて毎月の基本料を減らせます。切らさないための予測と、余らせている枚数の集計を、同じ画面で扱います。

CONSULTATION

「多めでお願いします」を、サイズ別の枚数に。

切らした日の断りも、使われずに終わった枚数も、いまは数字になっていません。
貸出の傾向は、ファイルの中の納品書とレジの記録から復元できます。
まずは納品書の控え1年ぶんを一緒に数えるところから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。木曜17時の発注確定を中心に、事務所のパソコンとフロントのタブレットで使う前提の構成です。施設名・枚数・金額・契約の条件はすべて想定例で、実在の施設・業者ではありません。

01. 木曜17時、金曜納品の枚数をサイズ別に確定する

週に一度の看板画面。品目・サイズごとに、木曜夕方の手元、金曜朝に戻る枚数、次のトラックまでの貸出予測の幅が並び、持ち切れない行にだけ臨時増枠の提案が出ます。確定すると、業者へ送る増減連絡の文面がそのまま出来上がります。ふだんの週は「増減なし」を確かめて閉じるだけです。

発注確定
設計のポイント
予測を眺める画面にしない。金曜納品で持ち切れるかの判定と、業者への連絡までを1画面で終える。
幅の使い分け
代わりの利かない館内着・岩盤浴タオルは幅の上限で、販売品で代替できるタオル類は中央の値で頼む。
締切の根拠
前日夕方は、業者の工場が翌朝の便の積み込みを組む締切。過ぎると回収と同数の納品で確定する。

02. 残りの枚数と、切れる見込みの時刻をフロントで見る

フロントが毎日いちばん開く画面。品目・サイズ別の棚の残りと、きょうの貸出のペースが並びます。予測より速いペースの品目には何時ごろ切れそうかの見込みが出て、返却済みを館内の洗濯乾燥機で回す、隣のサイズで代用を案内するといった打ち手をここから記録します。貸せなかったときの記録も1タップです。

当日在庫
毎日の画面を集計にしない
残りと切れ見込みという、いま動ける情報だけに絞る。月の集計は月次レポートに分ける。
断りの記録
「貸せなかった」は品目と時刻だけ残す。混んでいる時間のフロントに、文章は書かせない。
打ち手も記録する
販売品を貸出に回した枚数が残っていれば、月末の売店の棚卸しで差異の理由が説明できる。

03. 棚・回収カゴ・工場の3ヶ所で、枚数の行き先を合わせる

契約している枚数がいまどこにあるかの台帳です。品目ごとに、棚の洗い上がり、使用済みカゴ、業者の工場の3つに分かれた枚数が並び、合計が契約の基準数と合っているかを確かめられます。集配のたびに納品書の枚数と数えた枚数のずれをここで記録し、月の紛失・弁償の集計につなげます。

在庫と集配
在庫は3ヶ所に分かれる
棚だけ見て発注すると、工場から戻る枚数を二重に数える。3ヶ所の合計で管理する。
集配カレンダー
月・水・金の便と祝日の休みを先まで表示する。連休の前に、トラックの来ない日が何日続くかが見える。
数えたその場で記録
納品書と検数の差はその場で残す。あとからまとめて照合すると、どの便のずれか分からなくなる。

04. 客層と天気で、貸出の率がどう動くか

予測の根拠を確かめる画面です。横軸に入館者数、縦軸にタオルの貸出枚数を置いて過去1年の日を点で打つと、平日と土日祝で傾きの違う2本の帯に分かれます。同じ人数でも、雨や雪の日は手ぶらの客が増えて貸出が上に外れる。館内着のサイズ構成と、予測が外れた日の記録もここに並びます。

貸出傾向
率で持つ
貸出の傾向は枚数そのものではなく入館者数に対する率で持つ。入館の予測が変われば掛け直せる。
サイズは施設の実績で
館内着のS・M・Lの比率は既製の目安を使わず、この施設の貸出実績から出す。季節の動きも実績で見る。
外れた日の記録
切らした日と大きく余った日にひと言残す。「近くで花火大会」の一行が、来年の同じ週の材料になる。

05. 断りの推計と、動いていない枚数を金額で並べる

月に一度の画面。貸せなかった件数と推計額、館内で洗った回数、販売品を回した枚数、予測が幅に収まった日数が並びます。品目別には、ピーク日の使用が基準数の何割だったかが出るので、動いていない枚数のぶんだけ契約を減らす相談を、根拠の日次データ付きでここから始められます。

月次レポート
両側を同じ画面で
切らした損(断りの推計)と余らせた損(動かない枚数の基本料)を並べ、どちらに倒れているかを月ごとに見る。
基準数の見直し
下げる提案には日次の根拠を付ける。業者への値引き交渉ではなく、契約枚数の整理として出す。
季節で2段に
冬と夏で貸出の水準が違うなら、基準数も2段に分ける相談を数字で始める。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、発注とフロントの仕事が3つの点で変わる想定です。

01

週末の枚数が、木曜17時に決まる

Before連休の前だけ電話で増枠を頼むが、何枚が正しいのかは分からない。「多めでお願いします」の多めは、去年の記憶だった。
After金曜納品で連休を持ち切れるかが品目・サイズ別に判定され、足りない行の枚数だけ臨時で頼む。ふだんの週は、増減なしの確認が1分で終わる。

切らす日がゼロになるとは約束できません。幅の上限を超える日は残る前提で、販売品を回す手順と館内で洗う手順、その記録までを設計に含めます。

02

使われていない枚数が、月ごとの金額で見える

Before切らした記憶のたびに基準の枚数は増え、余っているかどうかは誰にも分からなかった。請求書には合計金額だけが届く。
After品目別に、ピーク日でも動かなかった枚数とそのぶんの基本料が毎月出る。想定例では、基準数の見直しで契約の固定費が月1割強下がる計算です。

下げすぎれば切らします。見直しの提案には必ず日次の根拠を付けて、1品目ずつ、業者と相談しながら段階的に動かす前提です。

03

「貸せなかった」が、記録になって翌週の枚数に戻る

Before断った件数はどこにも残らず、「きのうLが切れた」という申し送りで終わり。次の連休も、同じサイズを同じ時間帯に切らしていた。
After品目・サイズと時刻つきで断りが残り、レンタル料を掛けた推計額が月次に出る。切らした実績のあるサイズは、次の連休の発注が自動で上限に倒れる。

断りの記録はフロントの1タップに抑えます。記録が手間になれば付かなくなり、付かなければ予測は直らないからです。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌市内・近郊なら施設へ伺い、道外はオンラインで進めます。データの多くが紙の納品書なので、最初の月はそのデータ化から。冬の繁忙の前に運用へ乗せたいので、2ヶ月で納品まで進めます。

1
MONTH 01 / 納品書のデータ化 + レンタル率の復元 + 運用設計

紙の納品書とレジの記録から、貸出の傾向を復元する

過去1年ぶんの納品書・回収伝票の枚数をデータにし、券売機の入館記録と、レジに残る手ぶらセット・岩盤浴セットの販売記録と突き合わせます。曜日・天気・客層で貸出の率がどう動くか、館内着のサイズ構成がどう振れるかをまず数字にして、支配人とフロントの実感と突き合わせる。あわせて、業者との増減連絡の締切と形式、販売品を貸出へ回すときの手順と値段の扱いを決めます。

  • 施設でのヒアリングと、棚・回収カゴ・集配の見学
  • 納品書・回収伝票(過去1年)のデータ化
  • 入館記録・レンタル販売記録との突合とレンタル率の復元
  • 増減連絡の締切・形式の確認と、切らしたときの代替手順の設計
2
MONTH 02 / 予測の実装 + 5画面の開発 + 並行運用

予測を組み、木曜の確定を2週間並行で確かめる

品目・サイズ別の貸出予測を組み、発注確定、当日在庫、在庫と集配、貸出傾向、月次レポートの5画面を開発します。過去データのさかのぼり検証で、幅が実績をどのくらい捉えるかを確かめたうえで、これまで通りの発注を続けながら木曜の画面を2週間並行で走らせ、提案の枚数と実際のずれを支配人と確認してから切り替えます。フロントの断りの記録と検数の運用も、この期間に決めて引き継ぎます。

  • 貸出予測の試作と、過去データでのさかのぼり検証
  • 5画面の開発
  • 木曜確定の並行運用(2週間)と幅の調整
  • 月次レポートの初回レビュー + 納品

FAQ

よくある質問

  • Q1 納品書は紙の控えをファイルしてあるだけです。それでも作れますか?
    作れます。最初の月にやるのがまさにそのデータ化です。使うのは日付と品目別の枚数の欄だけなので、1年ぶんでも入力は数日で終わります。以後の納品書は、その場で写真を撮れば枚数を取り込める形にします。復元してみて、曜日や天気で説明できる傾向が見つからなければ、その時点で正直にお伝えして設計を見直します。先に傾向の有無を確かめてから画面の開発へ進む順番なので、材料がないまま作り込むことはありません。
  • Q2 リネン業者との契約や、発注のやり方を変える必要はありますか?
    変えません。増減の連絡はいまのFAXやメールのままで、画面がその文面を作るだけです。基準数の見直しも、毎月の根拠を持って相談する話で、契約の形そのものは動かしません。業者側にとっても、連休前の増枠が数字で早めに届くのは工場の段取りに役立つ話なので、一方的に不利な相談にはならないはずです。実際にどこまで柔軟に応じてもらえるかは契約によるので、最初の月に増減連絡の締切と条件を一緒に確認するところから始めます。
  • Q3 予測はどのくらい当たるものですか?
    1枚単位で言い当てる仕組みにはしません。「バスタオル 960〜1,090枚」のように幅で出し、切れ方の重い品目は幅の上限で頼む設計なので、多少の外れは発注の側で吸収されます。導入前に、過去1年のデータで「この設計で発注していたら、切らした日と余った枚数はどうだったか」をさかのぼって検証してお見せします。そのうえで使えるかどうかを判断していただく進め方です。外れる日があること自体は前提で、切らした記録と大きく余った記録を残す画面まで含めて設計します。
  • Q4 タオルは自前の洗濯機で洗っています。それでも意味はありますか?
    あります。予測の中身は同じで、出口が変わるだけです。業者への増減連絡の代わりに、洗濯機を何時に何回まわすか、乾燥が追いつかない時間帯をどう避けるか、という洗い場の段取りが出口になります。自前で洗う施設は「切らしそうなら追加で洗う」が利くぶん、予測の主な役割は連休前の前倒しと、洗い場のパートの入り時刻の調整に寄ります。最初の月の運用設計で、この施設では予測が何を動かすのかを洗い出してから作ります。

「多めでお願いします」を、サイズ別の枚数に。

切らした日の断りも、使われずに終わった枚数も、いまは数字になっていません。
貸出の傾向は、ファイルの中の納品書とレジの記録から復元できます。
まずは納品書の控え1年ぶんを一緒に数えるところから、ご相談ください。