EvoQuest
EvoQuest AI入館者数予測AI 2026.07

SCENARIO ── ONSEN VISITOR CASE

雨の日に混む商売だと、支配人はもう知っている。
その見込みを、あすのボイラー運転に生かす。

札幌近郊の日帰り温浴施設向けに、時間帯ごとの入館者数をAIが幅を持たせて予測し、あすの釜の段取りを「早出し」「いつも」「絞り」の3択で前日17時に決める開発プランです。材料は券売機の入館記録、曜日と祝日の並び、気温、降水、降雪、近隣の行事。予測の根拠も並べます。

想定領域
入館者数予測AI / 給湯設備の運転計画とスタッフの配置
担当範囲
要件整理・データ整備・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
札幌近郊の日帰り温浴施設(平日400人・土日800人規模/重油ボイラー)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

雨の日は混む。よく晴れた休日は、みんな外へ出かけるので空く。支配人に聞けば即答が返ってきます。ところが、その見込みが釜の運転計画には反映されていません。朝の火入れは開店の何時間前と決めて何年も同じ、日中の追い焚きも当番の勘。混雑の見込みを、燃料の使用量の調整に生かせていないのがこの業務の困りどころです。

燃料費の高騰は、この数年ずっと温浴施設の首を絞めてきました。重油の単価が上がれば、同じ湯を沸かすだけで去年より支払いが増える。ろ過ポンプは24時間まわり続けます。それでも打てる手はあります。省エネの世界では前から言われていることで、ボイラーは負荷に合わせて運転する、台数を制御する、運転のスケジュールを組み直す、運転のデータを見える形にする。どれも設備を買い替えずにできる話です。ただし「あすの負荷」が分からなければ、負荷に合わせようがない。翌日の見込みがなければ、担当者もどの時間帯の運転を調整すべきか判断できません。

ここに入館者数を予測するAIを入れます。支配人の頭の中にある「雨だから混む」「行楽日和は空く」という感覚は、そのままでは釜場にも当番表にも渡せません。券売機に残っている過去2〜3年ぶんの入館記録を、曜日・祝日の並び・気温・降水・降雪と突き合わせる。そこから、それぞれの事情があすの人数を何人ぶん動かすのかを数字にします。この想定例では、雨の日に入館者が増えます。天気の影響は業種や施設で異なるため、対象施設の記録で確かめます。湯を沸かすのは、これまで通り人の仕事です。AIは、担当者が前日の夕方に運転計画を決めるための予測と根拠を示します。

CHALLENGE

課題

  • 01 混むと分かっている日も、同じ時刻に火を入れている。朝の立ち上げは開店の2〜3時間前という目安が現場にあって、それ自体は理にかなっています。ただ、その2〜3時間が土曜も雨の日曜も同じ幅のまま何年も動かない。動かす根拠が誰の手元にもないからです。
  • 02 余分に焚いた燃料と、目標に届かなかった湯温が、どちらも記録に残らない。焚きすぎた日の重油は月末の請求書に混ざって見えなくなり、湯温が届かずに苦情が出た日は当番の記憶にだけ残る。燃料の使用量も湯温不足が続いた時間も集計していないので、翌週の段取りを直す材料になりません。
  • 03 予測の材料は券売機の中にあるのに、取り出されていない。券売機やレジには入館の時刻が1件ずつ残っています。それを曜日別・時間帯別に並べ直すには表計算での加工が要り、誰かの月末仕事になっている。翌日の運転計画には使えていません。

APPROACH

課題への対応

使う材料は施設の中にだいたい揃っています。券売機やレジから出せる入館の記録に、曜日と祝日の並び。館内飲食の売上も、あとから足せます。外から足すのは気象で、気温・降水・降雪・風のほかに、翌日の予報も材料に入れます。北海道の冬は、この予報の扱いが少し変わります。冷えるほど人が来る一方で、降り方がひどければそもそも車で来られない。どこかに折り返し点があるはずで、それが何センチなのかは施設ごとに違います。当社が決め打ちで置く数字にはせず、その施設の過去のデータから探します。

AIの作りは派手なものにしません。扱うのは2時間ごとの入館者数、つまり数え上げのデータです。曜日・祝日・季節の周期を土台に置いて、気温や天気の影響を足し引きする形から始めます。予測させる単位は、1日の合計にしません。合計人数だけ当てても、釜の段取りは決まらないからです。夕方6時に混む日と、昼過ぎに混んで夜は空く日。同じ800人でも、沸かし方がまるで違います。時間帯まで割ると学習に使える件数も一気に増えて、1年で365件しかなかった記録が2,500件を超えます。作ったら必ず、先月の各時間帯をAIに予測させて実際とどれだけずれたかを支配人と一緒に見ます。幅を狭くして当てにいくより、外したときに理由が言えることを優先します。

予測は1つの数字にしません。「あす16〜18時 185〜230人」の幅で出します。そのうえで、予測は必ず期限のついた決めごとの形にして出します。あすの運転を「早出し」「いつも」「絞り」の3つから1つ選ぶ、それだけです。3つにはそれぞれ火入れの時刻・2缶目を入れる時間帯・清掃・受付スタッフの出勤時刻がひとまとめに紐づいていて、選べば当番表の側が書き換わります。締切は前日17時。夜勤への申し送りと、パートへの連絡が間に合う最後の時刻から逆算して置きます。時刻を過ぎたら選択肢が消えて「いつも」で確定する作りにして、決め損ねたまま朝を迎えることをなくします。決めるのは支配人です。予測が外れた日には一言だけ理由を残してもらい、次の予測を見直す際に使います。

CONSULTATION

あすの混雑の見込みから、ボイラーの運転計画を決める。

燃料の使いすぎや、湯がぬるいという苦情を減らしたい。
券売機の入館記録と気象データから、混む時間帯を予測します。
データの確認から入館者数予測AIの設計、支配人と釜場が毎日開く画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。AIが予測した入館者数を、どうやってあすの釜の段取りに変えるかを5画面で。前日17時の決定は事務所のパソコンで、朝の当番はタブレットを釜場に持ち込んで見る前提の作りです。施設名・人数・燃料の量や金額はすべて想定例で、実在の施設・実績ではありません。

01. 入館の予測と、釜の段取りを1枚に重ねる

前日の夕方に運転計画を決める画面。横に開店から閉館までの時刻が伸びていて、上の段にAIが予測した2時間ごとの入館者数が幅を持たせて表示され、下の段に釜の運転がそのまま重なります。決めることは1つだけ。あすを「早出し」「いつも」「絞り」のどれで組むか。3つには火入れの時刻と重油の見込みが金額まで付いていて、選ぶと当番表の側が書き換わります。

あすの運転表
設計のポイント
人の波と釜の運転を同じ時間軸の上下に置く。予測を眺める画面にせず、予測と段取りのずれが目で分かる形にする。
決めごとは1つ
画面あたり決めることは1つ。3つの段取りから選ぶだけで、火入れ時刻・2缶目の運転時間・清掃スタッフの出勤時刻がまとめて決まる。
締切の根拠
前日17時は、夜勤への申し送りとパートへの連絡が間に合う最後の時刻から逆算した。過ぎると選択肢が消えて「いつも」で確定する。

02. 決めた段取りを、朝の作業手順に反映する

釜場に持ち込むタブレットの縦画面。前の晩に選ばれた段取りが、火入れ何時、目標の湯温、何時に見にいくか、という手順の並びになって出ています。実測の湯温をその場で打ち込むと、目標値との差がその行に残ります。前日に決めた計画と当日の実測値を、同じ画面で比べられます。

釜場の当番表
設計のポイント
支配人が見る画面と現場が見る画面を分ける。現場に要るのは、何時に何をするかだけ。予測の根拠は支配人の画面に置く。
打ち込みは3タップ
湯温は数字を選ぶだけ。手が濡れている前提で、ボタンを大きくする。
残るもの
打ち込まれた実測は、燃料の使いすぎや湯温不足を振り返るための記録になる。

03. 予測が外れた日を、燃料費と湯温不足の時間で振り返る

ひと月ぶんをカレンダーの形で並べる画面。1日が1マスで、その日の朝・昼・夜に焚いた量が小さな棒で立っています。予測より人が来ずに焚きすぎた日は橙、湯温が狙いに届かなかった日は赤。色の付いたマスにだけ金額と時間が出るので、燃料の使いすぎと湯温不足のどちらが多いかがひと月の並びで見えます。

燃料の集計
設計のポイント
予測の効果を的中率で見せない。余分に使った燃料の金額と、目標の湯温を下回った時間で示す。
金額の出し方
単価は施設が実際に仕入れている重油の単価を入れて計算する。相場の平均値は使わない。
湯温の数え方
当番表に打ち込まれた実測から、目標の湯温を下回っていた時間を集計する。苦情の件数より先に、時間の長さで見る。

04. 気温と天気で、この施設の入館者数がどれだけ変わるか

AIが見つけた影響を確かめる画面。横軸に最高気温、縦軸にその日の入館者を取って過去2年ぶんを点で打つと、冷えるほど増えていく形が平日と土日祝の2本に分かれて出てきます。隣には雪の降り方を横軸にした小さい図。少しの雪なら人は増えるのに、ある量を超えると折り返して落ちるところが見えます。他業種の傾向をそのまま当てはめず、施設の記録から天気の影響を確認するための画面です。

影響の出方
設計のポイント
影響を一覧の数字で置かない。点を打って形で見せる。折り返し点がどこかは、施設ごとに違う。
施設ごとの傾向を示す
雨で増える、晴れて暖かいと減る。こうした想定例の傾向を、グラフと説明で示す。
手で足せる欄
近隣の行事・道路規制・近隣施設の休業など、自動では取り込めない情報を事務所が1行で足せる。

05. 予測・実際・焚いた量を、7日ぶん横に並べる

先週の7日を横に並べて、AIの予測の幅、実際の入館者、選んだ段取り、実際に焚いた重油を縦に積み上げる画面。予測が外れた日には一言の理由が付きます。「近くの体育館で大会」「朝から吹雪で道路が渋滞」。残した言葉はそのまま貯まり、同じ条件が次に来たときに予測の横へ引用されます。

先週の実績照合
設計のポイント
予測が外れた日を責める画面にしない。理由を残して予測を施設に定着させるための画面だと決めて設計する。
週で見る理由
1日ずつ見ると当たり外れの話になる。7日並べると、月曜だけ傾向が違うといった段取りの話に変わる。
次に効く形
貯まった理由は「近隣で大会がある日は夕方が2割増」のように、予測の根拠として画面に引用される。

OUTCOME

導入による変化

変わるのは予測の当たり具合より、段取りを決める時刻と、決めたことが釜場まで届くかどうかです。

01

あすの湯の段取りが、前の日の17時に決まる。当日の作業を始める前に。

Before火入れは何年も同じ時刻。混みそうな日に早めようと思っても、根拠がないので誰にも言えないまま朝が来る。
After前日17時までにAIが時間帯ごとの入館者数を、幅を持たせて予測し、支配人が3つの段取りから1つ選ぶ。選んだ内容はその場で釜場の当番表に反映される。

混雑そのものは均せません。決める時刻を当日の朝から前日の夕方へ動かして、人にも燃料にも手が打てる時間帯へ判断を移す設計です。

02

余分に使った燃料が、月末の請求書から、日ごとの金額へ

Before焚きすぎた日の重油は請求書の総額に紛れて見えない。湯がぬるかった日は当番の記憶にだけ残る。
After予測より人が来ずに余分に焚いた重油はリットルと金額で、足りなかった日は湯温が届かなかった時間の長さで、日ごとに積み上がる。

燃料費そのものが下がると約束はできません。まず、燃料の使いすぎと湯温不足がそれぞれどれだけ起きているかを金額と時間で見えるようにして、段取りを直す材料にします。

03

支配人の頭の中にあった予測が、数字と理由の形で施設に残る

Before「あすは混む」は支配人ひとりの勘。夜勤や新しい社員には伝わらないので、不在の日は前と同じ段取りに戻る。
After予測した人数とその理由が毎日残る。支配人が休みの日も、同じ材料で当番が段取りを組める。

支配人の判断のほうが当たる場面は残ります。だからAIの予測を人が上書きした記録も一緒に残して、どんな日にどちらが効いたかを後から見られるようにします。勘を捨てさせる仕掛けにはしません。

04

混む時間帯の当てが付いて、清掃・受付スタッフの出勤時刻を調整できる

Beforeシフトは曜日で固定。夕方の混雑時に人手が足りず、脱衣所のタオルが切れて苦情になる日がある。
After2時間ごとの予測を見て、混み始める前に清掃の巡回を1回増やすか決められる。前日17時なら、パートへの連絡が間に合う。

まずは人数を増やさず、出勤時刻の調整で対応できる範囲を確認します。人を足す話は、そのあとで構いません。

PROCESS

2ヶ月の進め方

オンラインと施設への訪問を組み合わせて、2ヶ月で納品まで進めます。冬の繁忙期に間に合わせる想定です。支配人だけでなく、釜場と受付の方にも触ってほしい。毎日使うのはその人たちです。

1
MONTH 01 / 現場の見学 + 券売機データの棚卸し + 予測の試作

釜場に立って、湯と人の波を数字にする月。

開店前と夕方の混雑する時間帯にお邪魔して、火入れから閉館までの当番の動きを見せてもらいます。券売機やレジからどの細かさで入館の記録を取り出せるかを確かめ、取り込みの形を決定。過去1〜2年ぶんを2時間ごとに並べ直して気象と突き合わせ、この施設で気温と雪がどう影響するのかを支配人の実感と照らし合わせるところまでをこの月にやります。

  • 火入れ・追い焚き・清掃の動きの見学と聞き取り
  • 券売機・レジからの取り出し方の確認と取り込みの自動化
  • 過去データの2時間区切りでの並べ直しと気象の突き合わせ
  • 3つの段取りの中身と締切時刻の洗い出し
2
MONTH 02 / 運転表と当番表の開発 + 2週間の並走 + 納品

いつもの段取りと並走させて、施設に定着させる月。

運転表・当番表・燃料の集計・実績照合を開発し、先月の各時間帯をAIに予測させて実際とのずれを検証します。並行して、これまで通りの段取りを続けたまま予測を横に置いて2週間走らせ、予測が外れた日の理由を拾って調整。タブレットの置き場所と文字の大きさ、締切の時刻を現場に合わせて直してから本番へ渡します。焚きすぎと湯温不足をどう数えるかの運用ルールも、この月に決めて引き継ぎます。

  • 過去データでの予測の検証と幅の決め方
  • 運転表・当番表・燃料の集計・実績照合の開発
  • いつもの段取りとの並走検証(2週間)
  • 数え方のルール決め・納品・書き残し運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 AIといっても、実際どのくらい当たるものなんでしょうか。
    1人単位で言い当てる仕組みにはしません。「あす16〜18時 185〜230人」のように幅で出して、その幅に収まるかどうかで見ます。温浴施設は曜日・季節・気温・天気でおおよその形が説明できる商売なので、まず過去1〜2年ぶんのデータで「先月の各時間帯をAIに予測させたら実際とどれだけずれたか」を検証してお見せします。そのうえで、この幅なら段取りに使えるかを施設で判断していただく進め方です。外す日があること自体は前提にしていて、予測が外れた日の理由を残す画面まで含めて設計します。
  • Q2 券売機のデータをどうやって取り出すのか、うちの機械では分かりません。
    機種によってやり方が違うので、最初の月に一緒に確かめます。日別・時間帯別の売上明細を表計算ソフトで扱えるデータとして書き出せる機械なら、それをそのまま使えます。書き出せない場合でも、レジ締めの日報が紙で残っていれば、まずは1日の合計と大まかな時間帯から始めて、途中で取り込み方を切り替えることもできます。予測に必要なのは、いつ・どの券が何枚出たかだけです。お客さま個人の情報はいりません。
  • Q3 2ヶ月というのは短くないですか。もっとかかる気がします。
    短くできる理由があります。決めることを1つに絞っているからです。予測を使う目的を、翌日の運転計画を3つから選ぶことに絞って、シフト表や予約や売上管理には手を広げません。画面も5つです。逆に、館内飲食の食数まで一緒に予測したい、系列の複数館をまとめて見たいという話になると2ヶ月では収まりません。その場合は最初の2ヶ月で1館ぶんを立ち上げて、そこから広げる進め方をおすすめします。
  • Q4 うちは源泉かけ流しで、沸かしてはいません。それでも意味がありますか。
    加温や追い焚きが不要な施設でも、入館者数の予測を使える業務はあります。シャワーとカランの給湯、館内の暖房、清掃・受付スタッフの出勤時刻、貸しタオルの用意枚数。いずれも入館者数や混雑する時間帯を参考に準備できます。最初の月に、施設のどの作業に予測を使うかを洗い出すところから始めるので、燃料が主題にならない施設なら清掃や受付などの業務に合わせて設計します。
  • Q5 予測を信じて絞って、湯がぬるくなったら困ります。苦情はこちらに来ます。
    絞る方向の選択肢は、初めのうち画面に出さない設計にできます。まずは「早出し」と「いつも」の2つだけを扱って、2週間ほど並走させて外し方の傾向が見えてから、「絞り」を足すかどうかを施設と相談して決めます。湯温には施設の側で下限を決めていただいて、どの段取りを選んでもその下限を割る計画は組めないようにします。幅の下限で組むような使い方も、最初はしません。

あすの混雑の見込みから、ボイラーの運転計画を決める。

燃料の使いすぎや、湯がぬるいという苦情を減らしたい。
券売機の入館記録と気象データから、混む時間帯を予測します。
データの確認から入館者数予測AIの設計、支配人と釜場が毎日開く画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。