EvoQuest

不動産AI・業務システム

AIが引き受けられるのは、送信の一歩手前まで

反響対応でAIに任せられるのは、希望条件の抽出、在庫との突き合わせ、一次返信の下書き、追客が止まった案件の検知までです。送るかどうかの判断と、その物件をいま案内できるかの確認は人に残ります。賃貸仲介を少人数で回している方向けに、範囲と費用の決め方を整理しました。

この記事でわかること

  • 部屋探しの入口はインターネットが55.8%。ただし問い合わせや内見の申込みまでネットで済ませた人は20.7%で、多くは問い合わせ以降で人と接点を持ちます(国土交通省 令和6年度住宅市場動向調査)。
  • AIが引き受けられるのは、反響文からの条件抽出、在庫との照合、一次返信の下書き、追客の停滞検知の4つ。送信の判断は人が持ちます。
  • 成約済みの物件を速やかに削除せず掲載し続けることは、おとり広告に当たると国土交通省が通知で示しています。候補を自動で並べるなら、在庫の鮮度が前提条件になります。
  • 反響メールは氏名や連絡先を含む個人データです。生成AIに入れる前に、入力内容が機械学習に使われないことの確認が要ります(個人情報保護委員会の注意喚起)。
  • 費用は範囲で決まります。ポータルの通数、在庫データの形、どこまでを画面にするか。この3つが決まれば概算は出せます。

反響対応のどこまでをAIに任せられるのか

反響対応を一つの塊として考えると、AI化の話は「全部任せるか、やめるか」になります。実際には工程が分かれていて、機械が向いている部分と、担当者にしかできない部分がはっきり分かれます。

機械が向いているのは、届いた文面から条件を取り出すこと、在庫と突き合わせること、返信の文章をゼロから起こす手間をなくすこと、そして時間が経った案件を拾い上げることです。どれも下ごしらえの工程で、判断そのものは含みません。

逆に、その物件をいま案内できるのか、この人にどの部屋を勧めるのか、家賃交渉に踏み込むかどうかは担当者の領域です。AIの出力は下書きとして扱い、送信の前に人が目を通す形にします。

条件の抽出

反響の文面から、エリア・家賃の上限・間取り・入居時期・こだわり条件を項目に分けて取り出します。拾えなかった項目は「要確認」として画面に残します。

在庫との照合

取り出した条件で在庫を絞り、候補を並べます。並べる対象は、いま案内できる状態の物件だけに限ります。

一次返信の下書き

候補と内見の候補日時を入れた返信文を用意します。担当者は直して送るだけになり、白紙から書く時間が消えます。

追客の停滞検知

返信から何日動いていないか、内見の返事待ちが何件あるかを一覧にします。人の記憶に頼らずに、放置された案件が表に出ます。

いま、問い合わせはどこで起きているのか

国土交通省が毎年実施している住宅市場動向調査の令和6年度分に、民間賃貸住宅に入居した世帯の行動が出ています。物件を探した方法は「インターネット」が55.8%で最も多く、「不動産業者」が44.7%と続きます。入口はネットに寄っています。

一方で、インターネットをどこまで使ったかを見ると景色が変わります。「インターネットを通じた情報収集」は61.1%ある一方、「インターネットを通じた問い合わせ、説明会・内見等の申込み」は20.7%。オンラインでの重要事項説明は3.6%、電子署名等を活用した電子契約は1.5%、VRやARを使った内見は0.9%にとどまります。

つまり、探すところまではネットで進み、問い合わせから内見のあたりで人と電話や来店の接点に戻る流れが、まだ多数派だということです。反響が来てから最初の連絡までの時間と、その内容が分かれ目になるのは、この構造が理由です。

この調査は三大都市圏を対象にした調査票配布約600件の結果で、北海道は入っていません。数字は自社の商圏の実測値とは違います。傾向として見てください。

速く返すほど問われる、掲載物件の鮮度

候補を自動で並べる仕組みには、入れる前に確かめることがあります。並べた物件が、本当にいま取引できる物件かどうかです。

国土交通省は令和5年1月12日付の通知で、宅地建物取引業法第32条にもとづくおとり広告・虚偽広告の禁止を業界団体に改めて周知しています。そこでは、成約済みの物件を速やかに広告から削除せずに掲載し続けることは、おとり広告に該当すると明記されています。他の物件情報をもとに賃料や面積、間取りを書き換えて実在しない物件を出すことも、虚偽広告として挙げられています。

同じ通知は、不当景品類及び不当表示防止法第5条第3号と、不動産の表示に関する公正競争規約第21条でも禁止されていることを併記しています。仕組みで反響対応を速くするほど、案内できない物件を勢いよく送ってしまう危険が上がります。

ですから当社は、申込みが入った時点で候補から外れる状態を先に作ります。物件データに「案内できる・できない」の欄を持ち、そこが更新されない限り候補に出さない。地味ですが、ここが崩れると速さは危険に変わります。

反響のデータをAIに入れる前に確認すること

反響メールには氏名、連絡先、勤務先、入居時期といった個人情報が並びます。これをそのまま外部の生成AIサービスに貼り付ける運用には、確認すべき点があります。

個人情報保護委員会は令和5年6月2日に注意喚起を出しています。個人情報取扱事業者が生成AIに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを十分に確認すること。さらに、本人の同意を得ずに個人データを含むプロンプトを入力し、それが応答結果の出力以外の目的で扱われる場合は個人情報保護法違反となる可能性があるため、そのサービスが入力内容を機械学習に利用しないことを十分に確認することとされています。

実務では二段構えにします。学習に使われない契約形態で使うこと。そのうえで、条件の抽出には氏名や連絡先を渡さず、希望条件の記述だけを渡す設計にすること。個人を特定する情報は自社の管理画面に残し、外に出す範囲を最小にします。

追客のメールにも別の決まりがあります。総務省と消費者庁の資料によれば、広告宣伝メールはあらかじめ同意した相手にのみ送れるオプトイン方式が原則で、取引関係にある者などが例外として挙げられています。同意の記録は最後に送信した日から1か月(措置命令を受けた場合は1年)保存する必要があり、送信者の氏名または名称、受信拒否の通知先、住所などの表示義務もあります。

反響への返信そのもの

問い合わせへの回答は、広告宣伝を主な目的とする送信にはあたりません。ただし物件の紹介が主になる一斉配信は、別の扱いになる余地があります。

おすすめ物件の定期配信

同意にもとづく配信として設計します。配信停止の導線をメール内に置き、停止の通知を受けたら以後は送らない仕組みにします。

記録の残し方

誰が、いつ、どの方法で同意したかを画面に残します。手作業の名簿では、後から確認できません。

いくらかかるのか。見積もりの前に決める3つ

金額は作る範囲で変わります。条件の抽出と下書きまでの仕組みと、追客の管理画面まで含めた業務システムでは規模が数倍違います。相談の前に決めておいていただくと早いのは、次の3つです。

決まっていない状態でご相談いただいても構いません。その場合は、まず直近1週間分の反響メールを見せていただき、条件が機械で取り出せる形かどうかを確かめるところから始めます。ここで文面のばらつきが分かると、範囲の見当がつきます。

期間の目安として、当社が公開している賃貸仲介の反響対応AIの開発プランでは、設計から納品まで約3〜4か月を想定しています。第1段階だけなら、それより短い範囲で区切ることもできます。顧客情報の持ち方から整理したい場合は、北海道で顧客管理を相談する前にもあわせてご覧ください。

なお、契約まわりを電子に寄せる話は別に検討できます。国土交通省のマニュアルによれば、媒介契約書、重要事項説明書、賃貸借契約書、REINS登録証の4種は電子書面での提供が可能で、電子契約にした場合は印紙税がかかりません。ただし相手方からの事前承諾、改変防止措置、重要事項説明書は説明の前に交付という条件が付きます。

ポータルの数と反響の通数

どのポータルから、月に何件届くか。メールの形式が何種類あるかで、抽出の作り込みが変わります。

在庫データの形

物件情報が表計算ソフトにあるのか、業務システムの中にあるのか。案内可否の欄が今あるかどうかも確認します。

どこまでを画面にするか

抽出と下書きまでか、追客の一覧まで含めるか、月次の集計まで載せるか。第1段階から始めて足す形にできます。

効果は「返信までの時間」と「書く時間」で測る

AIを入れる効果を成約率で語ると、話が検証できなくなります。反響から成約までは物件の条件も市況も絡むので、どこが効いたのか切り分けられないからです。当社は、自社で測れる2つの数字を先に取ることをお勧めしています。

1つは、反響が届いてから最初の返信を出すまでの経過時間です。導入の前に2週間分でも測っておくと、後で比較できます。もう1つは、返信1件あたりに実際にかかっている時間です。物件を探して、文面を組み立てて、送るまでの合計を計ってみてください。

この2つが分かれば、下書きが用意された状態との差を金額に置き換えられます。下の画面で、自社の件数と時間を入れて確かめられます。

DEMO

一次返信にかけている時間を、触って確かめる

反響の件数と、1件の返信にかかっている時間を入れると、月あたりの作業時間と人件費の目安が出ます。下書きが用意された状態の時間も自分で入れる形にしているので、他社の実績値を借りずに、自社の数字で確かめられます。

反響の一次返信にかかる時間の試算

月の反響件数、1件あたりの所要時間、下書きから直して送る場合の所要時間、時給を変えると、月と年の作業時間と金額が動きます。

触って動かせます
触れるところ
月の反響件数、いまの1件あたりの所要時間、下書きから送る場合の所要時間、担当者の時給の4つ。
計算の中身
件数と時間を掛けるだけの算術です。効果の割合をこちらで置いてはいません。入れた数字がそのまま結果になります。
使いかた
所要時間は感覚で決めず、数件でよいので実際に計った値を入れてください。試算の確からしさはそこで決まります。

※ 画面の初期値は入力例です。実績値ではありません。金額は入力した時給から機械的に計算したもので、削減できる時間を保証するものではありません。

まとめ

反響対応でAIが引き受けられるのは、条件の抽出、在庫との照合、一次返信の下書き、追客の停滞検知までです。送信の判断は担当者に残ります。

速さを上げる前に、掲載物件の鮮度と、反響データの扱いを固めてください。成約済みを載せ続けることはおとり広告に当たると国が示していますし、生成AIに個人データを入れるなら学習に使われないことの確認が要ります。

次にやることを1つだけ挙げるなら、直近2週間の反響について、届いた時刻と最初に返信した時刻を並べてみることです。そこに何時間の開きがあるかが、仕組みで詰められる幅の目安になります。

よくある質問

反響そのものが減っています。AIを入れれば増えますか。

届く件数は掲載の内容と条件で決まるので、AIを入れても反響の数は増えません。効くのは、届いた反響を取りこぼさない側です。返信までの時間を短くする、追客が止まった案件を拾う、担当者が休みでも同じ手順で回る。まず自社の反響が何件あって、そのうち何件が返信のないまま終わっているかを数えてみてください。取りこぼしが多いなら効果は出ますし、そもそも件数が少ないなら掲載側の見直しが先です。

既製の追客システムを買うのと、自社に合わせて作るのは、どちらがよいですか。

既製品で回るなら既製品が早いです。判断の分かれ目は、自社の反響の流れが標準的な形に収まるかどうかにあります。管理受託と仲介が混ざる、法人契約の割合が高い、社内の承認手順が独特といった事情があると、既製品の項目に合わせて業務のほうを変えることになります。当社にご相談いただく場合も、まず既製サービスで足りるかを一緒に確認します。足りる場合はそう申し上げます。

AIが作った返信文を、そのまま送っても問題ありませんか。

送信前に人が確認する形をお勧めします。理由は文章の質だけではありません。案内できない物件を挙げてしまうと、宅地建物取引業法上のおとり広告の問題に触れる可能性があるからです。国土交通省の通知では、成約済み物件を削除せずに掲載し続けることが該当例として挙げられています。物件の状態を確かめられるのは現場の担当者なので、そこは人の工程として残します。

スタッフが1人か2人でも導入する意味はありますか。

少人数のほうが効きます。接客中に届いた反響に手が回らない、夜の問い合わせが翌朝まで残る。人数が少ないほど、この取りこぼしが直接損失になります。作る範囲を条件の抽出と下書きだけに絞れば、規模も小さく収まります。最初から追客の管理画面まで作らなくても構いません。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

まず、1週間分の反響メールを見せてください。

ポータルからの反響に接客中は返せていない。追客の状況が担当者の手元にしかない。AIで何かできそうだが、個人情報の扱いが不安で踏み出せない。そんな状態でしたら、直近1週間分の反響メールと、いまの物件データの形を見せていただくところから始められます。条件が機械で取り出せる形かどうかを確かめてから、範囲と費用をお出しします。北海道内なら店舗に伺います。

反響対応の相談をする (新しいタブで開きます)

メールで質問だけでも:info@evoquest.jp 解説記事一覧へ戻る