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リフォーム業の原価管理は、どこから手をつけるか

工事の途中で案件ごとの粗利を出したいなら、最初にやることは見積を工種ごとに分けることです。分けてあれば、実行予算と原価の実績を同じ区切りで並べられます。ソフトを選ぶのはそのあとです。

この記事でわかること

  • 先に決めるのは、見積の内訳を工種で分けること。分かれていないと、粗利が減った場所を特定できません。
  • 2025年12月12日に施行された改正建設業法で、工種ごとの材料費・労務費などを内訳明示した見積書の作成が努力義務になりました。国の運用方針では、当初と最終の見積書を引渡しから10年間保存するとされています。
  • 追加工事の契約変更は着工前に書面で行うのが原則です。着工した後や工事が終わった後に書面にした場合も、建設業法第19条第2項の違反となる行為事例に挙げられています。
  • 2026年10月1日から、インボイス登録のない外注先への支払いで控除できる割合が80%から70%に下がります。割合は、工事が完了した日で判断します。
  • Excelを続けられるかの分かれ目になるのは案件数より、見積の版と契約変更を後から突き合わせられるかどうかです。

工事の途中で粗利を出すには、何が要るのか

原価管理を調べている方の多くは、完工して経理が集計し終わるまで、その現場が黒字か赤字か分からない状態にいます。困るのは集計の遅さより、気づいたときには次の現場が動いていて、打てる手がないことです。

途中で粗利を出すには、3つの数字を同じ区切りで持ちます。契約した金額、いくらで仕上げるつもりか、いまいくら使ったか。この「同じ区切り」にあたるのが工種です。

国が公共工事を積算するときも、直接工事費は「歩掛×単価」で組み立てます。歩掛は、1平方メートルを仕上げるのに何人日かかるか、という数字です。民間のリフォームでも同じで、解体、大工、電気、内装のように工種で切り、それぞれに材料費と労務費を置きます。

一式でまとめて見積もると、粗利が減ったときに、材料が値上がりしたのか、手間が掛かったのか、追加工事を請求し損ねたのかが分かれません。原価管理の相談がソフト選びから始まらないのは、この分け方が先に要るからです。

契約額

その工事でもらう金額。追加工事が出れば、変更契約のたびに増えていきます。

実行予算

見積の内訳をそのまま持ってきたもの。工種ごとに「いくらで仕上げるか」を置きます。

原価の実績

協力会社への発注、材料の請求書、自社の職人の労務費を、同じ工種に積んでいきます。

2025年12月から、見積書の作り方が変わった

令和6年法律第49号(2024年6月14日公布)のうち2025年12月12日に施行された部分で、見積と契約のルールが変わりました。原価管理に直接効くので先に押さえます。

建設業法第20条は、工事の種別ごとの材料費と労務費、国土交通省令で定める経費、工程ごとの作業に必要な日数を記載した見積書を作るよう努めなければならない、という条文になりました。省令で定める経費として国が挙げるのは、法定福利費の事業主負担分、安全衛生経費、建退共の掛金です。

併せて、通常必要と認められる額を著しく下回る労務費での見積りの提出と、注文者からの見積り変更依頼が禁止されました。違反した建設業者は指導・監督処分、発注者は勧告・公表の対象とされています。原価割れ契約の禁止も、注文者側に加えて受注者側に導入されました。

適正な労務費の考え方は「公共工事設計労務単価 × 歩掛 × 数量」と示されました。労務単価は設計労務単価を下回らないこと、歩掛は責任を持って施工できる水準で計算することが必要とされています。参考までに、2026年3月から適用される設計労務単価は全国全職種の加重平均で1人1日8時間あたり25,834円です。

ここに書いたのは、公表資料に載っている内容の要点です。自社の見積書がこの求めを満たしているか、どこまで直せばよいかは、工事の内容と契約の形で変わります。判断に迷うところは、許可を受けた行政庁の窓口や、建設業に詳しい専門家にご確認ください。

見積書は10年

契約締結にあたって見積書を取り交わした場合、当初見積書と最終見積書を、請負契約書と同じように工事の目的物の引渡しから10年間保存するとされています。

個人のお客様が相手でも

価格交渉で必要な労務費を確保する必要がある場合、個人の発注者が相手でも内訳明示が望ましいとされています。歩掛が秘匿性の高い情報なら、労務費の総額を明記する方法が示されています。

粗利が消えるのは、たいてい追加工事のところ

「ついでにここも直して」が現場で決まり、口約束のまま進む。完工してから請求に入れ忘れたことに気づく。ご相談で最も多いのがこれです。国のガイドラインでは、これは請求漏れである前に、法令に触れる進め方として整理されています。

建設業法第19条第2項は、追加工事で当初の契約書に掲げる事項を変えるときは、変更の内容を書面にして相互に交付しなければならない、としています。国土交通省の「発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン(第8版)」は、書面で契約変更をしなかった場合と、着手した後・終了した後に書面にした場合の両方を、同項の違反となる行為事例に挙げています。原則は着工前です。

損益の帰属も整理されています。契約時に見込んだ労務費と実際の労務費の差は受注側の損益で、精算は想定されていません。一方、注文者の都合で設計図書が変わったり施工の対象が増減したりしたときは、協議のうえ契約変更と請負代金の変更が行われるべきとされています。原価の記録に「自社の見込み違い」と「先方都合の変更」を分けて残す価値は、ここにあります。

2026年10月から、外注費の実質的な負担が上がる

リフォーム業は、協力会社と一人親方への外注が原価の大部分を占めます。そこに2026年10月1日の区切りがあります。

インボイスの登録をしていない相手への支払いは、消費税の計算で全額を控除できません。国税庁が示している経過措置の割合は、2023年10月から2026年9月までが仕入税額相当額の80%、2026年10月から2028年9月までが70%。その後も2031年9月まで段階的に下がっていきます。

どの割合を使うかは、課税仕入れの時期で判断します。工事のような役務の提供は、原則としてその役務の全部が完了した日です。国税庁のQ&Aは、9月21日から受けている役務が10月20日に完了し、10月31日に支払う場合は70%で計算する、と説明しています。支払った日ではありません。

大きさの見当をつけるために、条件を仮に置いて計算してみます。外注費が税抜100万円(消費税10万円)の1件で登録のない先へ支払うと、控除できる額は9月完了なら8万円、10月完了なら7万円。差は1万円で、税抜金額の1%ほどです。

原価の記録に外注先の登録の有無がないと、この差が原価に反映されません。工種ごとの実行予算を作るとき、外注先の登録状況と完了予定の月を一緒に持っておくのが実務的です。

ただし消費税の扱いは、経理の方式や取引の形で変わります。ここに書いたのは公表されている割合と判定の考え方までで、自社でいくら負担が増えるかの計算は別の話です。金額の判断は顧問税理士か所轄の税務署にご確認ください。当社は税務の判断は行いません。

DEMO

粗利がどこで減るかを、触って確かめる

工種ごとの上振れ、契約変更をしていない追加工事、インボイス登録のない外注先への支払い。この3つが粗利をどう削るかを、条件を動かして見られる画面を用意しました。

案件別 原価管理|条件を変えて粗利の内訳を見る

架空のリフォーム案件(住宅の水回り改修・契約額680万円)の画面です。左の条件を動かすと、工種別の実行予算と実績、粗利額と粗利率、そして粗利が減った理由の内訳が変わります。

触って動かせます
触れるところ
工種ごとの原価の上振れ、追加工事の金額と契約変更を済ませた割合、外注のうち登録のない先の割合、工事が完了する月の4つです。
理由まで分ける
粗利が契約時の見込みから減った額を、実行予算との差、未契約の追加工事、控除できない消費税の3つに分けて表示します。
月をまたぐと変わる
完了月を9月と10月で切り替えると、経過措置の割合が80%と70%で変わり、控除できない分が動きます。

※ デモの案件名・工種の金額・単価はすべて架空の想定例です。実際の税額は取引の内容と経理の方式で変わります。この画面は考え方を確かめるためのもので、税務の判断に使えるものではありません。個別の適用は税理士にご確認ください。

Excelで足りるのはどこまでか

分かれ目は案件の数で決まりません。ここまでに出てきた保存と突き合わせを、Excelのままで満たせるかどうかです。

見積書は当初版と最終版を引渡しから10年間残し、追加工事は着工前に書面にし、原価は工種ごとに実績を積む。これが別々のファイルに散らばると、数年後に「この現場の最終見積はどれか」が誰にも分からなくなります。

Excelを続けるなら、先に3つ決めてください。工種の区切りと呼び方を全案件で共通にすること。見積の版を1つのファイルの中に残すこと。置き場所を1か所に決めること。呼び方が現場で違うと、集計した瞬間に数字が意味を失います。

仕組みにする価値が出るのは、入力する人が複数になったときです。現場監督がスマホから発注を入れ、事務が請求書を消し込み、社長は粗利だけを見る。こうなると共同編集のExcelでは追いつきません。

Excelのままで回る

同時に動く現場が数件で、入力する人が1人に決まっている。

仕組みを検討する

現場から入力したい、協力会社ごとの発注残を追いたい、未請求のまま止まっている入金がある。

費用と期間はどう決まるか

金額は範囲を決めてからでないと出せません。逆に、次の4つが決まれば概算はお出しできます。相談しながら一緒に決めていく項目です。

どこまでを1本でつなぐか

見積と実行予算だけか、発注と請求書の消し込みまでか、着工金・中間金・完工金の入金予定までか。

誰が入力するか

事務担当だけが入れるのか、現場監督がスマホから入れるのか。現場からの入力を含めると画面が増えます。

今の会計ソフトをどうするか

仕訳は今のまま続けて案件別の原価だけを別に持つのか、データを渡してつなぐのか。

過去の案件をどこまで入れるか

進行中の現場だけで始めるか、完工した過去の案件も入れて比べたいか。

まとめ

出発点は工種の区切りを決めることです。見積、実行予算、原価の実績を同じ区切りで並べれば、粗利が減った場所が特定できます。

改正建設業法で、労務費などを内訳明示した見積書の作成が努力義務になり、当初と最終の見積書は引渡しから10年間の保存とされました。追加工事の契約変更は着工前の書面が原則です。

2026年10月1日から、インボイス登録のない外注先への支払いで控除できる割合が80%から70%に下がります。9月と10月をまたぐ工事は完了日で分けて把握します。

この記事の法令と税の部分は、2026年8月時点で公表されている国土交通省と国税庁の資料によります。個別の適用は事情で変わるので、最終的な判断は税理士や建設業に詳しい専門家にご相談ください。

次にやることを1つ挙げるなら、いま動いている現場の見積を開いて、工種ごとに分かれているかを確かめてください。分かれていなければ、そこが最初の作業です。当社では要件の整理から納品まで3か月程度を目安に、案件別の原価管理を業務システムとして作っています。画面の構成は工務店・リフォーム業の原価管理システムにあります。

よくある質問

見積書は何年とっておく必要がありますか?

「労務費に関する基準」の運用方針では、見積書を取り交わした場合、当初見積書と最終見積書を、請負契約書と同じように工事の目的物の引渡しから10年間保存するとされています。当初見積書は設計図書などが整った後に初めて提出したもの、最終見積書は契約内容の明細を示すものです。

追加工事の見積依頼にも、期間の決まりはありますか?

あります。建設業法第20条第3項と施行令第6条により、予定価格が500万円未満なら1日以上、500万円以上5,000万円未満なら10日以上、5,000万円以上なら15日以上とされています。国土交通省のガイドラインは、これが追加工事の見積依頼にも同様に適用されると明記しています。

会計ソフトを使っていれば、原価管理はできていることになりますか?

集計する単位が違います。会計ソフトは決算と税務のために、期間で区切って費用を集めます。原価管理で見たいのは案件ごとの数字で、期をまたぐ現場や同じ月に動く複数の現場を分けて見る必要があります。仕訳は今のまま続け、案件別の原価だけを別に持つ形にすることが多いです。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

いまの見積書を1枚、見せていただくところから。

完工してからでないと粗利が分からない。追加工事を請求し損ねたことがある。12月に変わった見積のルールに、いまの様式で足りるのか判断がつかない。そんな状態でしたら、進行中の1現場の見積書と、原価を集めているExcelを見せてください。工種の区切りが実務に合っているかを確かめてから、範囲と費用をお出しします。法令や税の判断そのものは専門家の領域なので、当社はそれを日々の入力と画面に落とし込むところを引き受けます。北海道内なら事務所に伺います。

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