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飲食店AI・飲食DX

シフト作成AIは飲食店でどこまで自動になるか

自動になるのは、希望を集める、候補表を組む、人件費を計算する、この3つです。ピークタイムに何人必要かは店長が決める部分で、そこが決まらないとAIは1枚も組めません。スタッフ5〜20人規模の飲食店向けに整理しました。

この記事でわかること

  • シフト作成AIが引き受けるのは、希望の集約、候補表の作成、人件費と法定チェックの3つです。時間帯ごとに何人必要かを決めるのは人の側に残ります。
  • 一度確定したシフトを店の都合で変えることは労働条件の変更にあたり、本人との合意が必要です(厚生労働省の留意事項、2026年6月19日改正)。
  • 1か月単位の変形労働時間制を使う店は、その月に組める合計時間が「40時間×暦日数÷7」で決まります。31日の月なら177.14時間です。
  • 北海道最低賃金は2026年10月1日から時間額1,131円になる見込みです。残業は25%増、月60時間を超えた分は50%増、深夜と重なると75%増になります。
  • 費用は既製サービスを使うか作るかで分かれます。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は補助率1/2以内、1プロセス以上なら5万円以上150万円未満が対象です。

シフト作成AIは、どこまで自動でやってくれるのか

「シフト作成AI」と呼ばれているものは、大きく3つの作業を引き受けます。スタッフから希望を集めること、条件を満たす候補表を組むこと、組んだ結果の人件費と法定の上限を計算することです。どれも繰り返しが多く、機械に向いた作業です。

一方で、AIが自分では決められない項目があります。木曜の19時に何人立たせるか、ホールとキッチンをそれぞれ何人にするか、といった必要人数です。これは店の売り方と客層で変わるため、店長が数字を入れないとAIは1枚も組めません。

導入して実際に楽になるのは、希望のとりまとめと、組み直しの往復です。LINEや紙で届いた希望を表に書き写す時間、誰かが休みたいと言うたびに全体を組み直す時間が、ここで減ります。

希望の集約

スタッフが自分で希望の日と時間を入力し、締切で自動的に締めます。店長が転記する手間がなくなります。

候補表の作成

必要人数、入れる役割、勤務の間隔といった条件を満たす組み合わせを機械が探し、複数の案を出します。

人件費と法定チェック

組んだ表の総人件費、1人あたりの労働時間、休憩の入り方をその場で計算し、上限を超えそうな箇所を知らせます。

ピークタイムに何人必要かは、誰が決めるのか

ピークタイムに人を厚くしたい、という相談はよくあります。ただ、AIは「ピークが忙しい」ことを勝手には知りません。時間帯ごとの必要人数を、数字として渡す必要があります。

決め方は2段階です。まず時間帯を区切ります。ランチ11時〜14時、アイドル14時〜17時、ディナー17時〜23時のように、店の動きに合わせて3〜5本に割ります。次にその区切りごとに、ホール何人、キッチン何人と書き出します。

ここで来客数の予測がつながってきます。曜日と天気から来客の見込みが立てば、必要人数を毎週固定せず、多い日だけ厚くする組み方ができます。予測は外すことがあるので、「最低2人、できれば3人」のように幅を持たせて置いておくと、当日の調整がしやすくなります。

ピークの人数が足りないまま営業すると、料理の提供の遅れや案内の待ち時間として、そのままお客さんに届きます。シフト作成AIで顧客満足度を保てるかどうかは、結局この時間帯ごとの必要人数を確定前に確保できるかにかかっています。

時間帯の区切り

開店から閉店までを3〜5本に割ります。ランチとディナーの間を分けるだけでも配置は変わります。

役割ごとの人数

ホールとキッチンのように役割で分け、それぞれ何人必要かを区切りごとに書きます。レジを別に立てている店なら、それも1つの役割として数えます。

入れ替えできる人の情報

誰がキッチンに入れるかを登録しておくと、欠員が出たときの入れ替え候補を機械が出せます。

法律で決まっていて、AIでも動かせないのはどこか

シフト制で働く人の扱いについて、厚生労働省が留意事項をまとめています。2022年1月に出たもので、2026年6月19日に年次有給休暇の部分が改正されました。ここに書かれた内容は、どんな仕組みを入れても回避できません。

まず、労働条件通知書に「シフトによる」とだけ書くのは足りません。すでに始業・終業の時刻が決まっている日はその時刻を書くか、原則の時刻を書いたうえで一定期間分のシフト表を一緒に渡す必要があります。就業規則も同じで、「シフトによる」だけの記載では作成義務を果たしたことになりません。

次に、確定したシフトを後から変えることは労働条件の変更にあたります。留意事項は、店側と本人が合意したうえで行うようにと書いています。あわせて、表を作るときに事前に本人の意見を聞くこと、確定した表をいつまでにどう伝えるかの期限を、あらかじめ話し合って決めておくことをすすめています。

休憩は、労働時間が6時間を超えるなら45分以上、8時間を超えるなら1時間以上を勤務の途中に入れます。注意が要るのは、来客対応をした時間や、いつ呼ばれるか分からない待機の時間を休憩に数えられない点です。休憩そのものは連続していなくても構いません。

労働時間は1日8時間・週40時間が上限で、超えて働かせるには36協定の届出が要ります。1か月単位の変形労働時間制を使う店なら、その月に組める合計時間は「40時間×暦日数÷7」で決まります。31日の月なら177.14時間です。導入には、労使協定か就業規則での定めと、労働基準監督署への届出が必要です。

シフトの通知期限

確定した表をいつまでに、どの方法で伝えるか。留意事項は事前に話し合って決めることをすすめています。

変更を申し出る手続き

期間が始まる前と始まった後で、それぞれ誰がいつまでに申し出るかを分けて決めておきます。

休日の下限

毎週1回、または4週間で4日以上です。4週で数える場合は起算日を就業規則で明らかにします。

同じ人数でも人件費が変わるのはどこか

シフトを組む目的の半分は人件費です。そして人件費は、誰を何時に入れたかで動きます。延べ時間が同じでも金額が違ってくる理由が、最低賃金と割増賃金の2つにあります。

北海道の最低賃金は、2026年8月5日の答申で時間額1,131円への引き上げが適当とされました。効力の発生は2026年10月1日が見込まれています。直近5年で211円、率にして約23%上がっています。去年と同じシフトを組み続けるだけでも、人件費は増えます。

割増賃金は段が分かれています。1日8時間・週40時間を超えた分が25%増、その残業が月60時間を超えた分は50%増です。深夜(22時〜翌5時)は25%増が上乗せされるので、月60時間を超えた残業が深夜に重なると75%増になります。法定休日に働いてもらった分は35%増です。

この段が分かると、シフト作成AIの使いどころが変わります。「人が足りているか」を見るだけの画面ではなく、「この組み方だと今月いくらになるか」を組みながら見る画面にします。特定の人に残業が寄って月60時間を超えそうなら、超える前に別の人へ振り直すほうが安く済みます。

25%増

1日8時間・週40時間を超えた時間外労働です。ここが基本の段になります。

50%増

時間外労働が月60時間を超えた分です。2023年4月から中小企業にも適用されています。

75%増

月60時間を超えた残業が深夜22時〜5時に重なった場合です。深夜の25%が上乗せされます。

35%増

法定休日に働いた分です。月60時間を数えるとき、法定休日の労働時間は含めません。

DEMO

人数を動かすと、今月の人件費がどう変わるか

時間帯ごとの必要人数を1人増やすと、月の人件費がいくら増えるのか。最低賃金と割増賃金の段を入れた計算を、触って確かめられる画面を用意しました。

シフト人件費シミュレーター|必要人数を動かして金額を見る

架空の店「食堂あおば」(38席・札幌市・スタッフ9名)の1か月を試算する画面です。時間帯ごとの必要人数、時給、残業の寄り方を変えると、必要な延べ時間と月の人件費、割増の内訳が変わります。

触って動かせます
触れるところ
ランチ・アイドル・ディナーそれぞれのホールとキッチンの必要人数、平均時給、1人に寄っている残業時間、法定休日に出てもらう時間です。
割増を段で計算
時間外25%増、月60時間超50%増、深夜と重なる75%増、法定休日35%増を分けて集計し、内訳を並べます。
決めるのは人
必要人数は画面が提案するのではなく、店長が入れた数字をそのまま使います。仕組みが出すのは金額と超過の警告です。

※ デモの店舗・スタッフ構成・数字はすべて架空です。時給の初期値には2026年10月1日発効見込みの北海道最低賃金1,131円を使っています。実際の人件費は雇用形態や手当によって変わります。

月いくらから始められるか。見積もりの前に決めること

費用は「既製のシフト管理サービスを使う」か「自店に合わせて作る」かで大きく分かれます。分かれ目は、必要人数の決め方が自店固有かどうかです。時間帯と役割で人数を書くだけで足りるなら既製品で回ります。来客の見込みや仕込みの量と連動させたいなら、作るほうへ寄ります。

既製サービスの金額の目安を1つ挙げると、リクルートのAirシフトはスタッフ1人あたり月330円(税込)、スタッフ2人以下の店は一律月990円(税込)で、初期費用は無料です(2026年8月時点の公式料金)。スタッフ10人なら月3,300円です。まずここから試して、足りない部分を確かめられます。

作る場合の見積もりを出すために、先に決めておくと話が早い項目が4つあります。逆に、この4つが決まっていない状態で金額だけを聞かれると、どこの会社でも幅の広い数字しか返せません。

費用を抑える道として、国の補助金があります。デジタル化・AI導入補助金2026の通常枠は、補助率1/2以内(条件を満たせば2/3以内)で、1つ以上の業務プロセスを持つソフトウェアなら5万円以上150万円未満が補助額の範囲です。ソフトウェアの購入費に加えて、クラウドの利用料が最大2年分、導入設定やマニュアル作成、導入研修、保守サポートも対象に入ります。ただし事務局に登録されたITツールであることが条件で、申請の締切が回ごとに決まっています(日程は公式サイトで確認できます)。

小さく始めるなら、1店舗・1か月ぶんの希望収集からです。スタッフが自分で希望を入れる形に変えるだけで、店長の転記作業はなくなります。そのあとで候補表の自動作成、人件費の集計と順に足していけば、途中で止まっても前の段階が手元に残ります。

1. スタッフ数と役割の数

何人を、いくつの役割に分けて管理するか。5人と30人では画面の作り方が変わります。

2. 必要人数の決め方

曜日で固定するのか、来客の見込みから毎週変えるのか。ここが開発量をいちばん左右します。

3. 希望の集め方

今どこに届いているか。LINEと紙が混ざっているなら、どちらに寄せるかも先に決めます。

4. つなぐ先

勤怠の打刻や給与計算に渡すのか、シフト表を作るところで止めるのか。

まとめ

シフト作成AIが引き受けるのは、希望のとりまとめから候補表づくりまでと、その表の人件費計算です。時間帯ごとの必要人数を決める作業は店長に残ります。

確定したシフトを変えるには本人との合意が要ります。休憩の入れ忘れや休日の数え間違いは、組んだ直後に画面が知らせます。締めたあとに気づいて直す作業が、ここでなくなります。

人件費は最低賃金と割増の段で動きます。北海道は2026年10月に1,131円へ上がる見込みで、月60時間を超える残業は50%増です。組みながら金額が見えていれば、超える前に振り直せます。

次にやることを1つ挙げるなら、営業時間を3〜5本の区切りに割って、それぞれホール何人・キッチン何人と紙に書き出してみてください。既製品を選ぶときも作るときも、最初に聞かれるのがこの数字です。

よくある質問

シフト作成AIを入れると、店長の作業はどれくらい減りますか?

減るのは、希望の転記と組み直しの往復です。LINEや紙で届いた希望を表に書き写す作業、1人休みが出るたびに全体を組み直す作業がなくなります。残るのは、時間帯ごとの必要人数を決める作業と、確定前に内容を確認する作業です。短くなる幅は、今その2つにかけている時間で変わります。

ホールとキッチンで役割が分かれていても組めますか?

組めます。ただし、誰がどの役割に入れるかを先に登録しておく必要があります。ホール専任、キッチン専任、両方できる人を分けて持っておくと、欠員が出たときに入れ替えの候補を機械が出せます。この登録がないまま人数だけ合わせると、頭数はそろっているのに実際は回らない表ができます。

スタッフ5人の個人店でも意味がありますか?

5人規模だと、候補表を自動で作ること自体の効果は小さめです。効いてくるのは希望の集約と、人件費が組みながら見えることのほうです。希望をスタッフ自身に入れてもらう形にするだけでも店長の転記はなくなるので、まずそこだけを変えて、必要になってから自動作成を足す進め方をおすすめします。

確定したシフトを店の都合で変えたいときは、どうすればいいですか?

厚生労働省の留意事項では、確定した労働日や労働時間を変えることは労働条件の変更にあたるため、店側と本人が合意したうえで行うこととされています。あわせて、期間が始まる前と始まった後のそれぞれについて、誰がいつまでにどう申し出るかの手続きを事前に話し合って決めておくようすすめています。就業規則にまとめて書いておく方法も示されています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

時間帯ごとの必要人数を、一緒に書き出すところから。

時間帯ごとに何人必要かをまだ紙にも書けていない、既製のサービスを試したが希望の集め方が変わらなかった、今月の人件費が締めたあとにしか分からない。そのどれかに当てはまるなら、いまのシフト表を見せてもらうところから始められます。北海道内は訪問、道外はオンラインで対応します。

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