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除排雪業の出動判断(AI)

基準を1センチ上げると、出動は減り、見通しは立ちにくくなる

出動の基準を何センチにするかで、シーズンの出動回数はここまで変わります。札幌の気象庁の観測値で数えると、5cmなら31〜32日、10cmなら15〜21日、15cmなら3〜11日。シーズン契約の値決めと待機の体制を考えている除排雪業者に向けて整理しました。

この記事でわかること

  • 気象庁の札幌の観測値で、11月1日から3月31日までに降雪の深さ日合計が基準を超えた日を数えました。5cm以上は31日・32日・32日、10cm以上は19日・15日・21日、15cm以上は8日・3日・11日です(2023-24、2024-25、2025-26の順)。
  • 基準を上げると出動は減りますが、年ごとの差は開きます。3シーズンの最多と最少の差は、5cm基準なら1日、10cm基準なら6日、15cm基準なら8日でした。回数で採算が決まる契約ほど、基準を高く置くと当たり外れが大きくなります。
  • 公共の道路除雪では10cmが基準として使われています。新潟県は道路除雪の説明で、10cm以上の降雪があった場合に除雪トラックやドーザなどが出動すると書いています。対象は道路なので、駐車場や構内の契約に持ち込むときは測り方の取り決めが要ります。
  • 出動しなかった夜の待機も費用です。厚生労働省のガイドラインは、指示があれば即時に業務に従事することを求められ、労働から離れることが保障されていない状態で待機している時間(手待時間)を労働時間に該当する例として挙げています。
  • 予測を入れて変わるのは、出るか見送るかを選ぶ判断そのものよりも、判断する時刻と、判断に使う材料です。昨シーズンを1日ずつ並べ直すところまでは、Excelと公開データだけでできます。

基準を何センチにすると、シーズンに何回出ることになるのか

気象庁の「過去の気象データ検索」から、札幌の日ごとの「降雪の深さ日合計」を3シーズンぶん取り出して数えました。2023年11月1日から2026年3月31日までです。その日の降雪が基準を超えたら出動する、と決めた場合にシーズンで何回出ることになるかを、実際の観測値で数えたものです。

5cm以上の日は31日、32日、32日。10cm以上の日は19日、15日、21日。15cm以上の日は8日、3日、11日。20cm以上の日は5日、0日、4日でした(2023-24、2024-25、2025-26の順)。

シーズンの降雪の合計は458cm、398cm、517cmです。1991年から2020年までの30年で計算した平年値が479cmなので、この3シーズンは平年をはさんだ普通の並びだと言えます。

基準を5cmから10cmに上げるだけで、出動する日はおよそ半分になります。契約書に書く数字を1つ動かすことが、シーズンの仕事量を半分にしたり倍にしたりする操作になっているということです。

5cm基準

31日、32日、32日。3シーズンでほとんど動きません。出動は多いかわりに、何回になるかが事前に分かります。

10cm基準

19日、15日、21日。公共の道路除雪でよく使われる基準です。最多と最少で6日の開きがあります。

15cm基準

8日、3日、11日。出動は少なくなりますが、年によって3倍以上の開きが出ます。

基準を上げるほど、回数の見通しが立ちにくくなるのはなぜか

小さい雪は毎年ほぼ同じだけ降ります。5cm以上の日が3シーズンとも31日か32日に収まったのは、そのためです。まとまった雪の日数のほうは年によって大きく動き、20cm以上の日は2024-25シーズンには1日もありませんでした。

月で見るともっとはっきりします。10cm以上の日は、2025-26シーズンの1月だけで10日ありました。同じ1月でも2024-25は4日です。1か月の中で倍以上の差が出ます。

これがシーズン契約の値決めに直接効きます。基準を高くすれば1シーズンの出動は減りますが、今年は何回出ることになるのかが事前に見通しにくくなります。平均の回数で値段を組むと、多い年に採算が崩れます。

先に決めておくのは2つです。回数の上限を置くのか、置かずに受けるのか。上限を超えたぶんを別料金にするなら、その1回をいくらにするのか。この2つを書いていない契約が、大雪の年にもめます。

DEMO

基準を動かすと、出動回数と金額がどう変わるか

出動の基準を1cmずつ動かすと、札幌の3シーズンで出動することになる日数が変わります。1回の出動にかかる費用と契約の売上を入れると、シーズンごとに残る額まで出ます。

出動基準と出動回数の試算|札幌の3シーズンの観測値で試す

出動の基準、1回の出動にかかる費用、シーズン契約の売上、1晩の待機にかかる費用を入れると、3シーズンそれぞれの出動した日数と金額が出ます。日数は気象庁の観測値をそのまま数えたものです。

触って動かせます
計算の中身
その日の降雪が基準以上だった日を数えているだけです。連続して降った日をまとめたり、除雪しなくてよい日を除いたりはしていません。
使っている前提
日ごとの降雪は気象庁の観測値です。金額の欄は入力例なので、自社の数字に置き換えてください。
確かめてほしいところ
基準を9、10、11と1cmずつ動かしてみてください。3シーズンのうち1年だけが大きく動く基準があります。

※ 待機の費用は、出動しなかった日すべてに入力額を掛けた単純な計算です。実際には契約の内容と勤務の組み方で変わるので、自社の給与の記録で確かめてください。

10センチという数字は、どこから来ているのか

道路の除雪では10cmが広く使われています。新潟県は道路除雪の説明で、10cm以上の降雪があった場合に除雪トラックやドーザなどが出動し、新雪を路側に押しのけると書いています。出動する時間帯は、終日確保する路線を除いて基本的に早朝です。

北海道の道路除雪では、夜間除雪を行わない区間の夜間を22時から5時までとしています。路線の区分は交通量で分かれ、1日1,000台が境目です。同じ市内でも、どの道かによって守るべき水準が違います。

国土交通省の土木工事標準歩掛では、道路除雪の作業が新雪除雪、拡幅除雪、路面整正、圧雪処理、運搬除雪、凍結防止、歩道除雪に分かれています。1回出動すると言っても中身は同じではなく、拡幅や運搬は新雪除雪と別の作業として積算されます。契約の1回が何を含むのかも、基準の数字と同じくらい効きます。

民間の契約でこの数字を借りるときに抜けやすいのが、測り方の取り決めです。何を測るか、いつ測るか、どこで測るか。気象台の観測地点と現場では、同じ日でも降り方が違います。ここを書いていないと、大雪の朝の電話で言い分が食い違います。

何を測るか

1日に降った雪の深さか、そのときに積もっている雪の深さか。同じ10cmでも指すものが変わります。

いつ測るか

早朝に作業するなら、判断は前夜か未明です。何時時点の数字で判定するのかを決めておきます。

どこで測るか

気象台の観測値を使うか、現場に物差しを置くか。両方を書いて、食い違ったときにどちらを取るかまで決める契約もあります。

出動しなかった夜の待機は、どこまで会社の費用になるのか

出動した夜の費用は請求できます。見えにくいのは、出なかった夜のほうです。

厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」は、労働時間を使用者の指揮命令下に置かれている時間と定めたうえで、使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)を、労働時間に該当する例として挙げています。

国土交通省の標準歩掛でも、除雪機械の運転手と助手は気象条件(降雪量等)の変化に備える待機作業を行う、とされています。除雪作業世話役の作業には、降雪・積雪等の気象状況および道路交通状況等の情報収集と、気象の変化に対応した除雪機械の配置が挙がっています。雪を見て配置を決める時間は、国の積算のうえでも作業として数えられています。

ですから、今夜は出ないと早い時刻に言えることには金額がつきます。夜中に何度も起きて外を見る運用は、その時間が拘束にあたるかどうかで人件費の意味が変わります。1シーズンで100日を超える夜がこの状態にあることを、下の画面で金額に直せます。

予測を入れると、判断のどこが変わるのか

予測が引き受けるのは、出るか見送るかを選ぶことではありません。選ぶのは社長です。仕組みが変えるのは、判断する時刻と、そのときに手元にある材料の2つです。

気象庁は降雪の予測を公開しています。それをコースごとの見込みに置き換えれば、前夜の決まった時刻に三択を出せます。出る、見送る、何時に見直す。この3つを毎晩同じ時刻に並べるところまでが仕組みの担当です。

迷う夜は多くありません。基準から遠い夜は誰でも判断できます。困るのは基準のすぐ近くに落ちた夜で、上の数字で言えば、10cm基準なら9cmから11cmのあたりです。シーズンに数回しかない、その夜のためにつくります。

記録も残します。出た日、見送った日、そのときの予測と実測、苦情の有無。1シーズン貯まると、翌年の契約で基準を交渉する材料になります。当たり外れを競うのとは別に、基準を1cm動かすと回数と金額がどう変わるかを、自社の数字で示せるようになります。

いくらから始められて、何を決めれば見積もれるのか

最初にやることに費用はかかりません。気象庁の過去のデータは誰でも取り出せます。昨シーズンの日ごとの降雪をExcelに並べ、基準を5cm、10cm、15cmと変えて日数を数える。それだけで、いまの契約が何回ぶんの仕事なのかが出ます。この記事に置いた画面が、まさにその計算をするものです。

そこまで済ませたうえで仕組みにするなら、見積もりに要るのは3つです。コースがいくつあるか。材料にする気象のデータをどこまで使うか。判断の結果を誰がいつどこで見るか。この3つが決まれば概算を出せます。逆に、ここが決まらないうちの金額は当てになりません。

費用の内訳の考え方は、AI開発の費用の記事に分けて書いています。試す費用、作る費用、使い続ける費用の3つに分かれ、最後の1つを見落とすとシーズンが変わったところで止まります。

期間は、雪が降る前に間に合うかどうかで決まります。仕組みが正しく動いているかを確かめられるのは、実際に雪が降る12月から3月のあいだだけです。今シーズンに間に合わせたいなら、コースの数と使うデータを決めるところまでを秋のうちに終わらせておく必要があります。

小さく始めるなら、対象を1コースに絞ります。1シーズンだけ実際の判断と並べて動かし、合っていた夜と外した夜を数える。合わなければそこで止められる大きさにしておきます。

まとめ

札幌の3シーズンを数えると、出動の基準5cmで31〜32日、10cmで15〜21日、15cmで3〜11日でした。基準を上げると出動は減り、年ごとの差は開きます。

契約で先に決めるのは、測り方(何を・いつ・どこで)、回数の上限、上限を超えたぶんの単価です。この3つが書いていない契約は、大雪の年のもめごとの元になります。

出なかった夜の待機も費用です。判断を早い時刻に確定できれば、この時間が短くなります。

次にやること。昨シーズンの日ごとの降雪を並べて、いまの基準だと何回だったかを数えてください。契約の話は、その数字が出てからのほうが早く進みます。

よくある質問

気象台の観測値と、うちの現場の降り方が違います。それでも使えますか。

使えますが、そのまま当てはめないでください。気象台は市内の1か所の観測です。現場に物差しを1本置いて、同じ日の値を1シーズン並べると、気象台より何割多いか少ないかの傾向が出ます。その差が分かってから、契約の基準を気象台の値で書くのか現場の実測で書くのかを決めてください。北海道の道路除雪でも路線ごとに区分が分かれているように、場所によって条件は変わります。

シーズン契約に回数の上限を置くべきですか。

どちらでも構いませんが、置かないなら多い年で採算が合うかを先に確かめてください。この記事の画面に1回の出動費用と契約の売上を入れると、3シーズンそれぞれで残る額が出ます。最も多い年で赤字になるなら、上限を置くか単価を上げるかの二択です。上限を置くなら、超えたぶんの1回いくらを契約書に書いておきます。

過去の記録が手元にありません。何から集めればいいですか。

気象のデータは公開されていて、さかのぼって取り出せます。手元に必要なのは、実際に出動した日が分かるものだけです。請求書の控え、日報、給油の記録、応援を頼んだ会社とのやり取り。どれか1つでも日付が並べば、気象のデータと突き合わせられます。1シーズンぶんあれば、いまの運用が実際には何センチで動いていたかが見えます。

仕組みを入れると、除雪の作業そのものは減りますか。

減りません。降る雪の量は変わらないので、出動しなければならない夜は同じだけあります。短くなるのは、決めるまでにかかる時間と、決められないまま人を拘束している時間です。あわせて、翌シーズンの契約を自社の数字で組み直せるようになります。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

いまの基準だと何回だったのか、を数えるところから相談できます

手元にあるのが昨シーズンの請求書と日報だけ、という段階で構いません。気象のデータはこちらで取り出せます。基準を何センチに置くか、コースをいくつに分けるか、その手前の整理からご相談ください。

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