EvoQuest
EvoQuest Apps店頭業務アプリ 2026.07

SCENARIO ── BAKERY CASE

取り置きの電話を、
粉の手でメモしなくていい店にする。

仕込みの途中から鳴り始める取り置きの電話。受話器を肩に挟んでメモを取り、レジ横のノートに書き写し、袋に名前を書いて棚に置く。個人経営のパン屋の取り置きは、だいたいこの形で回っています。お客さんにアプリを入れてもらう話は、いったん置きます。電話は電話のまま、店の中のノートと焼き上がりの突き合わせだけをレジ横のタブレットに置き換える取り置き管理を、うちならこう設計します。

想定領域
店頭業務アプリ / ベーカリーDX
担当範囲
要件整理・画面設計・実装
想定対象
個人経営〜スタッフ数名のベーカリー 1店舗
想定期間
設計〜納品 約 2〜3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

個人経営のベーカリーの取り置き——電話で受けて、レジ横のノートに書き、袋に名前を書いて棚に確保し、受け取りに来たら渡す——この流れを、レジ横のタブレット1台に移す想定シナリオです。軸に据えるのは予約の一覧ではなく、窯出しの時刻。「11時にクロワッサン5個」を受けられるかどうかは、2回目の窯出しが何時で何個焼くかで決まるからです。

範囲は店の中に絞ります。お客さん向けの注文アプリも事前決済も、ここでは作りません。施術の時間枠を押さえる予約とは仕組みが別で、パンの取り置きは「何時の窯出しから何個確保するか」を決める商売です。だからまず、受付とノートと袋の間の書き写しをなくすところから始めます。

CHALLENGE

課題

  • 01 電話は、一番手が離せない時間に鳴る。土曜10時半、ホイロから出した角食を窯に入れた直後にレジへ列ができ、そこへ電話。粉だらけの手を払ってメモを取ると、サイトウさんなのかサイトーさんなのかは聞き取りのまま袋の名前になる。
  • 02 1件の取り置きを、3回書いている。電話のメモ、レジ横の取り置きノート、棚に置く袋の名前と品目。1日15件なら書く回数は45回。書き写すたびに「クリームパン2」が「クリーム2」になり、受け取り時刻が30分ずれる。
  • 03 受けられるかどうかの判断が、焼いている本人にしかできない。「カレーパンの2回目は14時だから、13時の取り置きは無理」。この計算は窯の段取りを知らないと立たず、売場のパートさんは即答できない。「折り返します」が増え、折り返す頃には別の電話が鳴っている。
  • 04 取りに来ない袋が、夕方の棚に残る。名前を書いた角食2斤は店頭に戻しづらく、閉店までそのまま。連絡したのか、していないのかも分からない。翌日には売れないので、残った袋はそのまま廃棄になる。

APPROACH

アプローチ

先に決めたのは、お客さん側には何も新しいことをさせないことです。世の中の取り置きサービスは、お客さんがアプリやLINEで注文する形が主流ですが、毎週電話をくれる常連さんがアプリを入れてくれるとは限りません。電話と店頭は今のまま。変えるのは、受けたあとの店の中だけ。レジ横のノートを、受け取り時刻順に並ぶボードに置き換え、袋には名前の代わりに棚札の番号を書く。受付で入れた1件がボードと棚札にそのまま流れて、書き写しが消えます。

もう一つの軸が、窯出しの時刻を受付の画面に持たせることです。取り置きの正体は「在庫の確保」ではなく「何時の窯出しから何個押さえるか」の約束で、いままでは焼く人だけがその計算を持っていました。品目ごとの窯出し予定と残りが受付に出ていれば、売場のパートさんでも「クロワッサンは11時の窯出しからお取りできます」とその場で答えられる。折り返しの電話を、仕組みの側からなくします。

CONSULTATION

取り置きの電話を、その場で「はい」と言える店に。

「取り置きノートの字が読めない」「焼き上がりが分からず折り返している」「夕方、棚に袋が残る」。
そのままでも商売は回ります。でも、電話のたびに窯の前の手が止まるのはもったいない。
ノートの書き起こしから画面の設計、店頭での並行運用まで、途中で切らずにお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する業務画面のサンプル(想定例)。レジ横のタブレット1台を売場と工房で共有する前提の構成です。店名・お客様名・品目・数量などのデータはすべて個人経営のベーカリーの規模感に合わせた想定例で、実在の店舗ではありません。

01. きょうの取り置きボード

レジ横のノートの置き換え先。受け取り時刻の順に取り置きが並び、間に窯出しの時刻が線で入る。棚に確保済みか、窯出し待ちか、時刻を過ぎているかが色と札で分かれ、行を押すと右に詳細と受け渡しのボタンが開く。

看板画面
設計のポイント
並び順は受け取り時刻、区切りは窯出し。店の一日の流れがそのまま画面の縦軸になる。
棚札の運用
袋に書くのは番号だけ。名前の書き間違いと読めない字を、番号の突き合わせに置き換える。
例外の見せ方
受け取り時刻を過ぎた行は列の一番上に繰り上げ、「超過」の札を付けて残す。

02. 電話を受けながらの新規取り置き

受話器を持ったまま片手で入れられる受付画面。品目のボタンに「いま残り」と「次の窯出し」が出るので、受けられるかどうかをその場で答えられる。常連さんは電話番号の下4桁でいつもの内容が呼び出せる。

受付
設計のポイント
会話の順(名前→品物→時間)にボタンを並べ、聞き直しなしで入力が追いつく速さを優先。
受けられるかの判断
窯出し前の品目は「11:30の窯出しからお取り置き」と表示。断らずに時間を提案できる。
常連の呼び出し
毎週の定期分は最初から候補に出す。「いつもの」で通じる電話を、画面でも同じ速さに。

03. 窯出しと引き当て

品目×窯出し回の表。それぞれの回で何個焼き、うち何個が取り置きで押さえられているかが並ぶ。取り置きが焼く数を超えた回は赤くなり、焼き増しするか電話で相談するかをこの画面で決める。

工房
設計のポイント
工房が見るのはこの1枚だけ。売場のボードとは役割を分け、焼く数の判断に絞る。
引き当ての表示
「12個中 取り置き7」の形で常に残りを見せ、店頭に並ぶ数を焼く前に読めるように。
超過の警告
予約が焼成数を超えた回だけ赤くする。問題のない回は静かなまま、目立たせない。

04. 引き取り超過の連絡と持ち越し

受け取り時刻を過ぎた取り置きだけが並ぶ画面。電話した・つながらないの記録を残し、決めた時刻を過ぎたら店頭に戻す。夕方に袋を見て気づくのではなく、過ぎた瞬間に一覧へ上がる。

例外処理
設計のポイント
「超過2時間で店頭に戻す」のような店のルールを画面に書いておき、判断を人から店の決めごとに移す。
連絡の記録
誰がいつ電話したかを1タップで残す。「連絡したっけ?」の聞き合わせをなくす。
戻すときの扱い
店頭に戻した・廃棄した・引き渡したの結果まで記録し、翌月の受け方の参考にする。

05. 定期取り置き(曜日の常連)

「毎週金曜に角食2斤」のような定期分の台帳。曜日ごとの一覧から毎朝のボードに自動で載り、窯出しの引き当てにも最初から入る。お休みの連絡が来たらその週だけ外す。

台帳
設計のポイント
定期分は受付の入力なしでボードに現れる。毎週同じ電話を、そもそも受けなくてよくする。
焼く数への反映
定期の斤数は窯出しの引き当てに最初から乗せ、仕込みの玉数の見当に使える形に。
例外の扱い
「今週は帰省でお休み」はその週だけ休み扱い。台帳自体は消さない。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが店頭に馴染んだあと、取り置きの受け方が3つの軸で変わる想定です。

01

受けた取り置きが
「3回書く」から「1回入れる」へ。

Before電話のメモ、レジ横のノート、袋の名前と、同じ内容を書き写していた。
After受付で入れた1件がボードと棚札の番号に流れ、袋には番号を書くだけになる。

1日15件で45回あった「書く」を15回に。書き写すたびに起きていた欠けとずれを、回数ごと減らす想定。

02

受けられるかの判断が
「焼く人に聞く」から「受付の画面で分かる」へ。

Before窯の段取りを知らないと答えられず、売場のパートさんは「折り返します」と言うしかなかった。
After品目ごとの窯出し予定と残りが受付に出て、誰が電話を取っても時間を提案して受けられる。

断るか受けるかの二択に「11時半の窯出しからならお取りできます」の三つ目を足す設計。

03

取りに来ない袋が
「夕方に気づく」から「過ぎた瞬間に分かる」へ。

Before閉店間際に棚の袋で気づき、連絡したかどうかも人の記憶だった。
After時刻を過ぎた取り置きが超過の一覧に上がり、連絡の記録と店頭に戻す判断がその場で済む。

決めた時刻で店頭に戻せば、名前入りの袋のまま閉店を迎えて廃棄、を店のルールで防げる。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインでやりとりしながら、2〜3ヶ月で設計から納品まで進めます。いまの取り置きノートと並行で使う期間を挟み、店頭の速さに画面を合わせてから一本化する進め方です。

1
MONTH 01 / 要件整理 + ノートの移し替え

取り置きノートと焼き上がり時間表を、そのまま画面に写す月。

いまのノート1ヶ月分と壁の焼き上がり時間表を見せてもらい、品目・窯出しの回・よくある頼まれ方を整理します。ボードと受付画面の下書きを作り、レジ横に置く端末もここで決めます。

  • 業務ヒアリング(2〜3回)
  • ノート1ヶ月分の書き起こしと分類
  • 品目と窯出し回の台帳づくり
  • ボード・受付画面の下書き
2
MONTH 02 / 画面開発 + 店頭の並行運用

ノートと二重につけながら、店頭で試す月。

ボード・受付・窯出しの3画面を作り、まず1週間、いまのノートと並行で使ってもらいます。電話を受けながら入力が追いつくか、売場と工房で画面の見え方はどうか。詰まった箇所をその都度直します。

  • ボード・受付・窯出し画面の開発
  • レジ横での並行運用(1週間)
  • 電話を受けながらの入力速度の調整
  • 棚札の番号運用の取り決め
3
MONTH 03 / 例外処理 + 納品

超過の連絡と定期の台帳まで仕上げて渡す月。

受け取り超過のリストと連絡記録、毎週の常連の定期取り置きを仕上げます。ノートを外して一本にし、品目の追加や窯出し時刻の変え方まで引き継いで納品します。

  • 超過リスト・連絡記録の開発
  • 定期取り置き台帳の開発
  • ノートを外しての単独運用
  • 納品 + 運用引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 パン屋の取り置き管理アプリを作る費用はどのくらいですか?
    決まった定価はありませんが、この想定シナリオのように「ボード・受付・窯出し」の3画面に絞れば、店舗向けの業務アプリとしては小さい部類です。その前に一つ正直な話をすると、既製の取り置きサービスで足りる店なら、作らずそちらをお勧めします。作る意味があるのは、電話の常連さんが主で、変えたいのがお客さんの注文方法ではなく店の中の段取りだ、という店です。初回相談と概算見積もりは無料なので、いまのノートを見せていただくところから始められます。
  • Q2 sacriやLINE予約のような既製サービスとは何が違うのですか?
    既製の多くは、お客さんがアプリやLINEから注文する形を前提にしています。この想定は逆で、お客さんは今まで通り電話か店頭。変えるのは受けたあとの店の中だけです。だから常連さんに使い方を案内する必要がありません。既製サービスと並用して、そちらで入った注文をボードに載せる形にもできます。
  • Q3 ネット注文や事前決済には対応しないのですか?
    最初はあえて作りません。数百円のパンに対して決済手数料と入金管理の手間が重く、電話の常連さんには不要だからです。ボードが店頭に馴染んだあと、遠方からの注文や大口の予約が増えてきたら、その段階で足すかどうかを一緒に判断します。何から作って何を後回しにするか、の順番をうちは大事にしています。
  • Q4 パソコンが苦手なスタッフでも使えますか?端末は何が必要ですか?
    レジ横に置くタブレット1台から始められます。受付は会話の順にボタンを押していくだけの作りにして、手書きのノートより速く終わることを開発中の並行運用で確かめてから一本化します。工房には壁掛けのタブレットか手持ちのスマホで窯出しの画面だけを出す想定で、パソコンは必須ではありません。
  • Q5 補助金は使えますか?
    内容によってはIT導入補助金や小規模事業者持続化補助金の対象になり得ます。ただし公募の枠や条件は年度で変わるため、確実なことは申請時期の要項を見て判断する必要があります。対象になりそうか、スケジュールに合うかの確認からご一緒しますので、補助金ありきでなくても進められる規模から始めるのがお勧めです。

取り置きの電話を、その場で「はい」と言える店に。

「取り置きノートの字が読めない」「焼き上がりが分からず折り返している」「夕方、棚に袋が残る」。
そのままでも商売は回ります。でも、電話のたびに窯の前の手が止まるのはもったいない。
ノートの書き起こしから画面の設計、店頭での並行運用まで、途中で切らずにお手伝いします。