EvoQuest
EvoQuest DX業務システム / 預かり品・店頭業務 2026.07

SCENARIO ── DRY CLEANING SHOP CASE

ラックに掛かった400点の行き先を、
台帳をめくらずに答えられる店にする。

1日30伝票、工場併設の個人クリーニング店を想定します。紙タグも預り証も、いまのまま残します。そのうえで受付のタグ打ちから棚入れ、お渡しの点数照合、長期未引き取りの連絡までを1本の台帳でつなぐ。その仕組みを、この記事で描きます。レジも、工場の洗い方も変えません。「渡し間違い」と「取りに来ない冬物」。店頭のこの2つに絞ったシナリオです。

想定領域
業務システム / 預かり品・引き渡し管理
担当範囲
要件整理・画面設計・開発・定着支援
想定対象
1日30伝票前後・工場併設の個人クリーニング店
想定期間
設計〜運用開始 約 2〜3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

土曜の夕方5時、レジ前にお客様が3人。先頭の方は預り証を忘れていて、「名前は佐藤、出したのはたしか先週の水曜」。複写式の店控えを1枚ずつめくって探すあいだ、後ろの2人が上着を脱いで待っている。クリーニング店の預かり品管理のつらさは、こういう数分の積み重ねです。1日30伝票・1伝票平均3点なら、店に入ってくるのは毎日およそ90点。ほぼ同じ数を渡して、店の中には常時ラック4本・400点近くが掛かっています。その1点1点の「誰の・どこに掛かっている・いつ渡せる」を支えているのが、紙タグの番号と手書き台帳と店主の見覚えです。

この開発プランで作るのは、宅配クリーニングのシステムでも、会員アプリでもありません。受付で打っているタグの番号に、品目・棚位置・仕上がり日をひも付けてデータにする。土台はそれだけです。そのうえに、お渡しのときの点数照合、預り証を忘れたお客様の名前検索、仕上がり予定日を過ぎた品の連絡リストを載せる。店頭のタブレット1台とPC1台でつなぎます。タグ打ち機も、複写式の預り証も、レジも今のままです。

CHALLENGE

課題

  • 01 渡し間違いは、起きる条件が店頭にそろっている。同じ苗字のお客様が同じ週に出す。タグの0715-041と0715-047は、夕方の混みの中では同じに見える。5点お預かりのうちズボンだけ工場に残っているのに、袋が4つそろっていると全部渡した気になる。弁償の額はクリーニング事故賠償基準で計算できても、常連のお客様は静かに来なくなる。
  • 02 預り証を忘れたお客様には、店控えをめくって応えるしかない。名前と「たしか先週」を頼りに複写伝票の束をさかのぼる。電話の問い合わせも同じで、「もう仕上がってますか」のたびに台帳と仕上がり棚のあいだを往復する。聞かれてから探す時間が、そのままレジの列になる。
  • 03 春に出た冬物が、秋まで掛かりっぱなしになる。4月に持ち込まれたダウンやコートの一部は、雪が降る頃まで引き取りに来ない。店が無料の保管庫代わりになり、ラック1本100点として、受け取りが1ヶ月遅れる品が1割あるだけで数十点ぶんの掛け場所がふさがる。どの品が仕上がりから何日過ぎたかは、台帳の日付を1行ずつ数えるしかない。
  • 04 4〜6月の衣替えは、受付そのものが詰まる。持ち込みが普段の倍になり、1点ずつの手書き複写とタグ打ちでカウンターが止まる。急いで書いた伝票は品目や加工の書き漏れが起きやすく、繁忙期のミスがいちばん高くつく時期に、いちばんミスの出やすい書き方をしている。

APPROACH

アプローチ

先に、変えないものを決めます。紙タグとタグ打ち機、複写式の預り証、レジ。タグの番号体系を変えると工場との突き合わせが崩れて店が止まるので、いまの番号をそのまま台帳の背番号にします。最初に作るのは受付の1点だけ——タグ番号・品目・棚位置・仕上がり日をデータにすること。入力が増えて受付が遅くなったら本末転倒です。品目は手書きではなくパッドから選ぶ形にします。合格ラインは「いまの手書きより遅くならない」こと。ここを超えられない設計なら、画面のほうを作り直します。

作らないものも決めておきます。宅配受付・ネット会員・ポイント機能から入ることはしません。レジとタグプリンタが一体になった既製システムが強い領域なので、新品のレジごと入れ替えたい店には最初の相談でそちらを勧めます。当社が担うのは、既製の型からこぼれる部分——工場併設店の「分かれ仕上がり」の管理と、長期未引き取り品の連絡の記録です。費用も同じ物差しで考えます。長期品がふさいでいるラックの本数と、渡し間違い1件の弁償・信用に対して見合う金額かどうかから、一緒に逆算します。

CONSULTATION

レジ横の手書き台帳、そのままで始められます。

「同じ苗字のお客様でヒヤッとしたことがある」「春の冬物がまだラックに掛かっている」「預り証を忘れたお客様の後ろに列ができる」。
紙タグと預り証は変えずに、タグ番号と棚位置をデータにするところから始められます。
要件整理から画面設計、開発、並行運用まで、途中で分業させずにお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する主要画面と、設計で大事にしている考え方です。店頭のカウンターはタブレット、ラック全体と長期連絡の管理はPCという役割分担。お客様の名前・品目・点数はすべて1日30伝票規模の店に合わせた想定例です。

01. 受付・お預かり(カウンターのタブレット)

複写伝票に手書きしていた受付を、品目パッドのタップに置き換える画面。左に預り伝票がそのまま組み上がり、タグ番号は続き番号で自動採番。しみ・ほつれの申し送りは品目ごとに残し、ドライと外注で仕上がり日が分かれるときは受付の時点で2つの日付が出る構成。

タブレット
看板の考え方
画面の左半分は、いま使っている複写式の預り証と同じ並び。書く道具が変わっても、目に入る形は変えない。
受付の速さ
品目・仕上げ・加工はパッドから選ぶだけ。手書きの複写より遅くなるなら、この画面は不合格。
分かれ仕上がり
ワイシャツは金曜、はっ水加工のダウンは来週水曜。日付が分かれることを、お客様に伝える前に画面が言う。

02. お渡し・点数照合(カウンターのタブレット)

預り証の番号か、名前・電話番号で預かり中の品を呼び出し、1点ずつタップして照合してから渡す画面。同じ苗字のお客様は先に候補で並び、工場戻り待ちの品が混ざっているときは「お渡し残あり」を押すまでボタンが変わらない構成。

タブレット
設計のポイント
「4袋そろっているから全部」をやめて、5点なら5回タップ。照合の実演がそのままお客様への安心になる。
預り証を忘れたら
名前・電話番号・受付日のどれからでも引ける。店控えの束をめくる数分を、検索の数秒にする。
渡し残の扱い
ズボン1点が工場戻り待ちなら、その1点だけ残してお渡し記録に残る。「渡したつもり」を仕組みで消す。

03. 保管ラックボード(事務スペースのPC)

店のハンガーラックをそのまま横向きのレール図にして、掛かっている品をタグ札の列で見せる看板画面。仕上がりから30日・90日・1年のラインで札の色が変わり、レールの空きも一目で分かる。札をクリックすると右に品物と連絡状況の詳細が開く構成。

PC
看板の考え方
台帳の行ではなく、ラックに掛かった札の並びをそのまま画面にする。店の人が毎日見ている景色に合わせる。
色の意味
30日・90日・1年は思いつきの区切りではなく、連絡を始める線と、事故賠償基準で扱いが変わる線。
衣替えの前に
繁忙期に掛け場所が足りなくなる前に、「どのレールを空けられるか」をこの画面で決められる。

04. 長期お預かりリスト・連絡記録(事務スペースのPC)

仕上がり日から30日を過ぎた品を日数順に並べ、電話・ハガキの連絡をボタンで記録する画面。行をクリックすると右にその品の連絡のいきさつが時系列で開く。電話がつながらない・番号が変わっているお客様は印を付けて、次の手段に進める構成。

PC
設計のポイント
「いつ・誰が・どの手段で連絡したか」を1点ごとに残す。処分の判断より先に、連絡の記録がそろっていること。
90日と1年の線
事故賠償基準の90日・1年のラインまでの残り日数を品ごとに表示。数えなくても、順番に上がってくる。
はがきの宛名
月に1回の連絡日を決めて、その日のリストから宛名面をまとめて印刷。1枚ずつ台帳から書き写さない。

05. 外注便の出し・戻り照合(バックヤードのタブレット)

皮革・毛皮・ふとんなど専門工場へ出す品の袋詰めリストと、戻り便をタグ番号で突き合わせる画面。戻りが1点足りない伝票はその場で赤くなり、ズボンだけ先に戻った「分かれ戻り」は、お渡し画面側にも自動で印が付く構成。

タブレット
設計のポイント
出すときに袋の中身を確定させておくから、戻りの照合は「読み合わせ」でなく「消し込み」で済む。
足りない1点
戻り便の欠けに気づくのが、お客様が取りに来た瞬間ではなく、荷ほどきの朝になる。
分かれ戻り
上下セットの片方だけ戻った状態を、バックヤードとレジの両方が同じ印で共有する。

OUTCOME

変わったこと

渡し間違いは、気をつけて防ぐものではないと思っています。照合の手を一つ挟むだけで、ほとんど消える。ひと月回したあとの店頭を、3つに分けて書きます。

01

渡すときに、5点なら5回タップする。袋の数と見覚えで渡さない。

Before同じ苗字・似たタグ番号・工場に残った1点が、渡し間違いの条件としてそろっていた。
After預かり中の品を呼び出して、5点なら5回タップしてから渡す。渡し残は記録に残る。

照合の一手間は数秒。弁償と信用に比べれば、いちばん安い保険になる。

02

預り証を忘れたお客さんにも、控えの束をめくらずに答えられる

Before名前と「たしか先週」を頼りに、複写伝票の控えを1枚ずつさかのぼっていた。
After名前・電話番号・受付日のどれからでも、預かり中の品と棚位置が出てくる。

「もう仕上がってますか」の電話にも、台帳と棚を往復せずにその場で答えられる。

03

掛かりっぱなしのダウンが、30日で名簿に載る。気づいたら半年、がなくなる。

Before春のダウンが秋まで掛かりっぱなしでも、台帳の日付を数えない限り見つからなかった。
After仕上がりから30日過ぎた品が日数順に並び、電話・ハガキの記録が1点ごとに残る。

90日・1年の賠償基準のラインも残り日数で見える。連絡した事実が、店を守る記録になる。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインでも進められます。ただ札幌市内・近郊なら、店頭とバックヤードを直接見せてもらいます。タグの振り方も台帳の回し方も店ごとに違うので、まずそこを写し取る。開発と並行運用まで2〜3ヶ月です。

1
MONTH 01 / 要件整理 + いまの道具の現物確認

タグ・預り証・台帳の「いまの回し方」を写し取る月。

預り証の複写が何枚重ねで、タグの番号をどう振っていて、ラックにどの順で掛けているか。この仕組みの土台は店ごとのその決まりごとなので、最初の月に現物を見せてもらって写し取ります。あわせて外注便の曜日と突き合わせ方も確認し、最初に作る範囲を「受付」と「お渡し照合」の2画面に絞って合意します。

  • 店頭・バックヤードでのヒアリング
  • タグ番号・預り証・台帳の現物確認
  • 外注便の出し・戻りの流れの確認
  • 最初に作る範囲と後回しの線引き
2
MONTH 02 / 受付・お渡し画面の開発 + 並行運用

カウンターのタブレットを、手書きと並走させる月。

受付とお渡し照合の画面を開発し、月の後半は手書きの複写伝票と並行で使ってもらいます。確かめるのは正しさよりも速さです。受付1件にかかる時間を手書きと比べて、遅くなっている画面は項目を減らして作り直します。品目パッドの並びも、その店でよく出る品が上に来るように実測で調整します。

  • 受付・お渡し照合の画面開発
  • 品目パッド・加工メニューの店別調整
  • 手書き伝票との並行運用と受付時間の実測
  • 遅い画面の項目削減・作り直し
3
MONTH 03 / ラックボード・長期連絡 + 運用開始

掛かっている400点を登録して、任せる月。

ラックボードと長期リストを仕上げ、いま掛かっている品を棚卸を兼ねて初期登録します。以後の新規はお渡しと入れ替わりで自然にデータへ移るので、過去の台帳をさかのぼって打ち直す作業はありません。月1回の連絡日の運用(電話・ハガキの記録と宛名印刷)まで一緒に回してから、店に引き渡します。

  • ラックボード・長期リストの開発
  • 掛かり品の初期登録(棚卸を兼ねる)
  • 連絡日の運用とハガキ宛名印刷の確認
  • 運用開始 + 微調整の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 クリーニング店向けの既製システムもあります。それとどう違いますか?
    レジとタグプリンタが一体になった既製システムは完成度が高く、レジごと入れ替える予算があって型に合う店なら、そちらが早くて安いです。最初の相談でそう判断したら、正直にお伝えします。この開発プランが向いているのは、いまのレジとタグ打ち機を変えたくない店、外注便の分かれ仕上がりや長期品の連絡など、店ごとの回し方に画面を合わせたい店です。作る範囲を預かり品の台帳に絞るぶん、店の決まりごとに細かく合わせられます。
  • Q2 費用はどのくらいかかりますか?
    最初のヒアリングのあと、受付とお渡し照合に絞った構成と、ラックボード・長期連絡まで含めた構成の2案を金額付きでお出しします。判断の物差しは2つで、長期未引き取り品がふさいでいるラックの本数と、渡し間違いが1件起きたときの弁償・信用の重さです。それに見合わない金額なら、やらないほうがいい投資です。中小企業のIT導入に使える補助金の対象になるかも、そのときの募集要件を一緒に確認します。
  • Q3 手書きの台帳と、いまのタグのまま移行できますか?
    できます。タグの番号体系は変えずに、いまの番号をそのまま台帳の背番号として使います。過去の台帳をさかのぼって打ち直す作業は不要です。新しく受け付ける品から台帳に入り、いま掛かっている品は棚卸を兼ねた初期登録で一度だけ取り込みます。お渡しのたびに古い品は自然に減っていくので、1〜2ヶ月で店の中の品はほぼ台帳に載った状態になります。
  • Q4 パートのスタッフだけの時間帯でも使えますか?
    そこを基準に設計します。受付は品目パッドを押していくだけ、お渡しは呼び出して1点ずつタップするだけにして、自由入力はしみ・ほつれの申し送りメモに限ります。合格ラインは「手書きの複写伝票より受付が遅くならないこと」で、並行運用の月に実際の受付時間を測って、遅くなっている画面は項目を減らして作り直します。操作を覚える研修が要るような画面にはしません。
  • Q5 長期未引き取り品は、処分してもいいのでしょうか?
    慎重な扱いが要る部分です。業界のクリーニング事故賠償基準には、お預かりから90日・1年という節目で店の賠償責任の扱いが変わる定めがありますが、それはお客様の所有権が店に移るという意味ではありません。この台帳の仕事は、処分の判断そのものではなく、その手前の記録です。仕上がりから何日経っているか、いつ・どの手段で連絡したかを1点ごとに残しておく。実際に処分を検討する段階では、加盟している組合や自治体の相談窓口に確認することをお勧めしています。

レジ横の手書き台帳、そのままで始められます。

「同じ苗字のお客様でヒヤッとしたことがある」「春の冬物がまだラックに掛かっている」「預り証を忘れたお客様の後ろに列ができる」。
紙タグと預り証は変えずに、タグ番号と棚位置をデータにするところから始められます。
要件整理から画面設計、開発、並行運用まで、途中で分業させずにお手伝いします。