EvoQuest
EvoQuest AI食数予測AI 2026.07

SCENARIO ── RYOKAN BREAKFAST CASE

名簿には38人。でも、食堂に来るのは何人か。
「多めに炊いておく」を、根拠のある見立てに変える。

客室14室の温泉旅館。前夜、フロントの名簿を目で数えて厨房のホワイトボードに「明朝 38」——でも実際に食堂へ来る人数がその数字どおりだった朝は、ほとんどありません。早立ちの工事さんが抜け、連泊の中だるみが抜け、当日の「やっぱり朝食を」が足される。予約台帳と毎朝の消し込みから「来る人数の幅」と「来る時間の山」を読む食数予測AI(EvoQuest AI)に、板場とホールが毎朝使う見立て表アプリ(EvoQuest Apps)を組み合わせる想定シナリオです。

想定領域
食数予測AI / 朝食オペレーション
担当範囲
要件整理・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
客室10〜30室の旅館・ホテル(朝食を自館で提供)
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

宿の朝食には、はっきりした片側の怖さがあります。「足りない」は事故で、「余る」は我慢。だから前夜の仕込みは名簿の人数プラス数人ぶんに倒れ、炊飯器のご飯と寸胴の味噌汁が毎朝すこしずつ余ります。ビュッフェ台のある宿なら、終了30分前に「空にしておけない」と新しい大鉢を出して、ほぼ手つかずのまま下げる——あの一鉢も同じ理屈です。しかも炊飯は朝いちに決め切りで、あとから炊き直す時間はありません。多めに倒すのは、いいかげんだからではなく、外したときの保険がそれしかないからです。

面白いのは、この予測が「誰が来るか分からない」予測ではないことです。スーパーの惣菜やパン屋の見込み製造とちがい、あすの朝食を食べる人の名簿は、前の晩にはもう帳場にあります。プランに朝食が付いているか、連泊何日目か、団体か、チェックインが何時だったか——読みの材料は揃っているのに、毎朝の「来た・来ない」を記録していないから答え合わせができず、目算がいつまでも上手くならない。大手チェーンはICタグやAIカメラで朝食会場の人数を数え始めましたが、あれは数百室の規模で成り立つ仕組みです。客室14室の宿が問い合わせて、届く値段では返ってきません。この想定シナリオは、その「うちの規模じゃ無理」を外すための設計です。

CHALLENGE

課題

  • 01 前夜の目算が、当たらない。名簿は38人でも、早立ちの工事関係が抜け、連泊5日目の中だるみが抜け、添い寝の子どもの数え方がぶれ、当日「やっぱり朝食を」が足される。ずれの記録が残っていないから、どの客層がどれだけ抜けるのか、いつまでも勘のまま。
  • 02 「足りない」が怖くて、全部を多めに倒している。朝食の欠品は宿の事故だから、米も味噌汁も焼き魚も名簿どおりプラス数人ぶん。余ったご飯と、終了前に出して手つかずで下げる大鉢が毎朝の風景になっている。炊飯は朝いちに決め切りで、外しても取り返しがきかない。
  • 03 何人来るかと同じくらい、「いつ来るか」が読めない。団体のバス出発、工事の早出、朝湯のあとの家族連れ——山が重なった朝は焼き場と席が一度に詰まる。ホールを1人で回すか2人頼むかを前夜に決める材料がなく、当日の朝に電話で応援を探すことになる。
  • 04 予約台帳にはプラン・人数・連泊・団体まで全部書いてあるのに、仕込みに使われているのは「合計人数」だけ。毎朝の「来た・来ない」も記録されず、目算の答え合わせができない。大手向けのICタグ・AIカメラの仕組みは、規模も値段も合わない。

APPROACH

アプローチ

使うデータは、突拍子もないものではありません。帳場の予約台帳にある項目(プランに朝食が付いているか・人数構成・連泊何日目か・団体か・チェックイン時刻)と、毎朝の消し込み(どの部屋が何時に食堂へ来たか)。この2つです。消し込みの実績がまだ無い宿は、最初の1ヶ月は紙の名簿にチェックを付けるところから始めれば十分で、その1ヶ月がそのまま読みの土台になります。読みは1個の数字ではなく「38人中32〜35人」のような幅で出します。臨時の早出、子どもの体調、天気——外れる朝は必ずあるからで、外れた朝には理由を一言だけ残してもらい、それが次の読みに戻る作りにします。

もうひとつの軸は時間です。宿の朝は、何人来るかと同じくらい「いつ来るか」で決まります。バスが8時20分に出る団体は7時台前半に固まる。工事の連泊は開店と同時。家族連れは朝湯のあとの8時台。だから見立ては人数の幅と一緒に15分刻みの山で出し、炊き上がりの時刻・焼き場の先焼き・ホールの人数まで翻訳します。そして仕込みは「朝いちに決め切るもの」(炊飯・出汁)と「様子を見て足せるもの」(焼き物・小鉢)に分け、決め切るものは読みの下限で構え、上振れは足せるもので受ける。予測AIの設計(EvoQuest AI)と、板場とホールが毎朝触る画面の設計(EvoQuest Apps)を、うちがまとめて面倒を見る理由はそこにあります。

CONSULTATION

朝食の「多めに炊いておく」を、名簿と実績で読む見立てへ。

早立ちで空いた席のぶんのご飯と、終了前に出して手つかずで下げた大鉢。
読みの材料は、帳場の予約台帳と毎朝の「来た・来ない」——もう宿の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、板場とホールが毎朝見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。前夜は帳場のパソコン、当日の朝は食堂脇のタブレットで使う前提の作りです。旅館名・部屋番号・数字はすべて想定例で、実在の宿・実績ではありません。

01. あす朝の見立て

前夜の帳場で開く看板画面。名簿の朝食付き人数の横に「実際に来る読み」が幅で出て、その下に15分刻みの「来る時間の山」が並びます。団体・連泊・家族といった名簿の中身ごとに、AIが何を根拠にそう読んだかが一言ずつ添えられます。

見立て表
設計のポイント
合計人数ではなく名簿の中身から積み上げる。「団体12名は7時台前半」のように、根拠が塊ごとに見える。
幅で出す
読みは「32〜35人」のレンジ表示。強気・弱気の寄せは女将と板場の判断として残す。
時間の山
人数と同じ画面に15分刻みの山。ホールを2人にする朝かどうかが、前夜のうちに決まる。

02. 見立てを仕込み表にする

人数の読みを「米を何升・味噌汁を何リットル・鮭を何切れ先焼きするか」まで翻訳する画面。品目は「朝いちに決め切るもの」と「様子を見て足せるもの」の2段に分かれ、決め切るものだけ読みの下限で構える設計が一目で分かります。

仕込みへの翻訳
設計のポイント
炊飯のように取り返しのきかない品と、追い焼きで受けられる品を最初から分けて見せる。
守る品
アレルギー対応食や子ども用など「絶対に切らさない品」は名簿どおりで固定。攻める品と守る品を宿が選べる。
現場の単位
「32人ぶん」ではなく升・リットル・切れ・鉢。板場がそのまま動ける言葉まで翻訳する。

03. 部屋の消し込みと、追いの判断

当日の朝、食堂の入口で部屋番号を消し込む画面。いま何人来たかが読みと並び、「まだの部屋」の顔ぶれから残りの来場を読み直します。追い炊きするなら何時までに決めるか、ビュッフェ台を大鉢から小鉢に切り替える時刻はいつか——朝の判断が期限つきで出ます。

けさの通り帳
設計のポイント
消し込みは記録のためではなく、けさの判断のための入力。付けたその場で残りの読みが動く。
期限つきの判断
「追い炊きは7時55分までに決める」のように、判断そのものに締切を付けて出す。過ぎたら選択肢から消える。
実績になる
この消し込みがそのまま喫食実績のデータになり、あすの読みの材料に戻る。二度手間の入力はない。

04. 目算と見立ての答え合わせ

見立てが幅に収まった朝・外れた朝を並べ、外れた朝には理由メモを残す画面。客層ごとの「来かたの癖」——工事連泊は開店と同時、団体はバスの45分前、連泊は4泊目から欠けやすい——が宿の言葉で貯まっていきます。ご飯の余りの推移も同じ画面で追えます。

答え合わせ
設計のポイント
外れた朝を責める画面にしない。理由を残して読みを宿に馴染ませるための画面だと最初に決めて設計する。
客層の癖
数字の精度ではなく「うちの客はこう来る」という癖の言語化を成果物として扱う。
余りの記録
炊飯器に残ったご飯を合数で記録するだけの軽い運用。廃棄のグラム計量までは求めない。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、宿の朝が3つの軸で変わる想定です。

01

あすの食数が
前夜の目算から、名簿と実績で読む見立てへ。

Before名簿を目で数えて「多め」に倒すだけ。ずれても記録が残らず、目算は何年経っても目算のまま。
After「38人中32〜35人・山は7時半」の見立てが根拠つきで出て、誰が帳場に立つ夜でも同じ段取りが組める。

女将の目算を否定する仕組みではなく、目算と見立てを並べて答え合わせできるようにする設計。直す権限は宿に残す。

02

仕込みが
「全部多め」から「決め切る品は下限・足せる品で受ける」へ。

Before米も味噌汁も焼き魚も名簿どおりプラス数人ぶん。余ったご飯と手つかずの大鉢を毎朝下げていた。
After炊飯と出汁は読みの下限で構え、上振れは追い焼きと小鉢の2巡目で受ける段取りに変わる。

余りをゼロにする話ではなく、「多めに倒れたまま固定されていた朝」の振れ幅を縮めていく想定。足りない事故への保険は、品ごとの「守る」設定として仕組みの側に残す。

03

朝の山が
来てから慌てるものから、前夜に見えているものへ。

Before団体と早出が重なる朝に焼き場と席が一度に詰まり、当日にホール応援の電話をかけていた。
After15分刻みの山が前夜に出て、ホールを2人にする朝・炊き上がりを早める朝が前日のうちに決まる。

混雑を消す話ではなく、山が見えることで打てる手(席の割り・先焼きの開始時刻・応援の声かけ)を前夜に持てるようにする話。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインと宿への訪問を組み合わせながら、設計 → 開発 → 納品を3ヶ月で進める想定です。月の区切りごとに、実際に触って確かめられるものをお渡しし、現場の感想を翌月の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + データの棚卸し

帳場と食堂に立って、「目算」の中身を言葉にする月。

前夜の名簿の数え方から、朝の炊飯・焼き場・ビュッフェ台の補充、下げたご飯の量まで、宿の朝を実際に見せてもらいます。予約台帳がExcelか手書きか予約管理システムかを確かめて取り込み方を決め、毎朝の消し込み運用(最初は紙のチェックで十分)をこの月から始めて、読みの土台になる実績を貯め始めます。

  • 前夜の仕込み決めと朝食業務の見学・聞き取り
  • 予約台帳の中身と取り出し方の確認
  • 「来た・来ない」消し込み運用の開始
  • 読みに使う項目の一覧化と画面の下書き
2
MONTH 02 / 予測AIの試作 + 見立て表の開発

貯まった実績で「読み」を試し、見立て表を形にする月。

1ヶ月ぶんの消し込み実績と過去の台帳で読みを試作し、「先週の朝をAIに読ませたら実際とどれだけずれたか」を検証します。実績がまだ薄いぶんは幅を広めに出して人の判断を厚く残す設計にし、並行して見立て表・仕込みへの翻訳・けさの通り帳を開発。升や切れといった宿の単位への翻訳ルールを板場と一緒に決めます。

  • 消し込み実績と過去台帳での読みの検証
  • 予測レンジと時間の山の見せ方の設計
  • 見立て表・仕込み翻訳・通り帳の開発
  • 動くサンプルで女将・板場と内部デモ
3
MONTH 03 / 並走 + 納品

いつもの目算と2週間並走させて、宿に馴染ませる月。

いつも通りの仕込みを続けながら、AIの見立てを横に並べて2週間走らせます。ずれた朝の理由を拾って調整し、タブレットの置き場所・文字の大きさ・消し込みの動線を現場に合わせて直してから、見立てを本番の段取りに切り替えて納品。外れた朝の記録が読みに戻る運用ルールまで引き継ぎます。

  • 目算との並走検証(2週間)
  • ずれの原因調整と画面の手直し
  • 品ごとの「攻める・守る」設定の作り込み
  • 納品 + 答え合わせ運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 予約管理は手書きの台帳とExcelだけです。データと呼べるものがあるか分かりません。
    台帳に書いてある項目——プランに朝食が付いているか、人数、連泊、団体か——で十分始められます。予約サイトコントローラーや宿泊管理システムを使っている宿ならCSVで取り出せますし、Excel台帳ならその形のまま読み込む作りにします。手書きの宿は、転記がいちばん軽くなる入力の形を最初の月に一緒に決めます。台帳を作り替えるところからは始めません。
  • Q2 「来た・来ない」の記録なんて、いままで取ったことがありません。
    ほとんどの宿がそうなので、そこは前提にしています。最初の1ヶ月は、食堂の入口に置いた名簿に印を付けるだけの紙の運用で始めて構いません。その1ヶ月ぶんがそのまま読みの土台になります。仕組みが入ったあとは、タブレットでの消し込みがそのまま実績データになるので、記録のための残業は発生しない設計です。
  • Q3 うちは朝食を付けたお客さんはほぼ全員食べに来ます。それでも意味がありますか?
    あります。人数のずれが小さい宿では、主役が「何人来るか」から「いつ来るか」と「仕込みへの翻訳」に変わります。団体のバス時刻や連泊の顔ぶれから朝の山を読んで、炊き上がりの時刻・先焼きの枚数・ホールの人数を前夜に決める——食数がぴったり読めている宿ほど、時間の読みが効きます。
  • Q4 ビュッフェではなく、お膳で出す宿でも使えますか?
    使えます。むしろお膳の宿のほうが、1人分ずつ盛り付けるぶん「来ない1人」の無駄がはっきり出ます。読みの仕組みは同じで、ビュッフェ台の補充ナビの部分を、膳を組む数と出す順番の段取りに置き換えます。個室出しの宿なら、部屋ごとの時間指定と山の読みを組み合わせる形になります。
  • Q5 読みを信じて仕込みを絞って、それで足りなくなったら困ります。
    だから全部の品を読みで絞る設計にはしません。品ごとに「攻める・守る」を宿が決められる作りで、アレルギー対応食や子ども用のように絶対に切らさない品は名簿どおりで固定します。まずは余りのいちばん痛い品——多くの宿ではご飯と味噌汁——だけ攻めて、追い炊き・追い焼きの受けを確かめながら広げるのが現実的です。外れた朝の理由が貯まるほど、幅は自然に絞れていきます。

朝食の「多めに炊いておく」を、名簿と実績で読む見立てへ。

早立ちで空いた席のぶんのご飯と、終了前に出して手つかずで下げた大鉢。
読みの材料は、帳場の予約台帳と毎朝の「来た・来ない」——もう宿の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、板場とホールが毎朝見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。