EvoQuest
EvoQuest AI来店台数予測AI 2026.08

SCENARIO ── TIRE SHOP BOOKING CASE

初雪の予報が出てから、
ピットは増やせない。

ピットが3本、作業する人が4人のタイヤ販売整備店。11月に入ると交換の予約が埋まり、電話を断る日が続きます。断った台数は、どこにも残りません。札幌の初雪の平年日は10月28日ですが、実際の日付は年ごとに動きます。山がいつ来るかを週の幅で出す来店台数予測AI(EvoQuest AI)と、店長が毎週火曜の朝に前倒しの案内先を決める画面(EvoQuest Apps)を組み合わせて、山そのものを10月へ崩す開発プランです。

想定領域
来店台数予測AI / 作業枠と案内の運用
担当範囲
要件整理・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
ピット2〜4本、作業者3〜6人のタイヤ店・整備工場
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

冬タイヤの交換は、店が期限を決められない仕事です。北海道の道路交通法施行細則は、積雪し、又は凍結している道路で自動車を運転するときはスノータイヤを全車輪に装着するなどのすべり止めの措置を講じることを、運転者の遵守事項として定めています。お客さんにとっての締切は雪の日に運転する必要が生じる、その手前です。積もってから動いたのでは間に合わないので、予報が出た週に電話が一斉に鳴ります。

札幌の初雪の平年日は10月28日、旭川は10月19日、函館と帯広は11月1日、釧路は11月7日です(1991〜2020年の平年値)。平年値だけで道内に20日近い開きがあり、実際の初雪はそこからさらに前後します。店の側から見ると、シーズン全体の台数はさほど変わらないのに、それが何週目に集まるかだけが毎年動く。人を足して山に合わせる手は取りにくく、自動車整備業の有効求人倍率は4.55だと国土交通省の資料にあります。増やせないのは枠のほうなので、動かす先は需要の側になります。

CHALLENGE

課題

  • 01 締切を決めるのは天気予報のほう。積雪・凍結した道路ではすべり止めの措置が要ると細則にあるので、初雪の予報が出た週に交換の依頼が集中する。平年日は札幌で10月28日だが、その前後に2週間動く年がある。準備は9月に終えていても、電話が鳴り始める週だけが毎年決まらない。
  • 02 ピットの本数と1台あたりの作業時間は動かない。ホイールごと交換するのか、タイヤを組み替えるのかで所要時間が倍以上変わる。作業者を臨時に増やす手も取りにくく、自動車整備業の有効求人倍率は4.55(国土交通省)。山に合わせて枠を伸ばす前提が、そもそも成り立たない。
  • 03 断った台数が、どこにも記録されない。電話で「今週はもう埋まっています」と答えた回数を数えている店は少ない。翌週に戻ってきた人と、他店へ行ったまま帰ってこなかった人の区別も付かない。失った売上が数字にならないので、案内を早く出すための手間をかける判断ができない。
  • 04 国土交通省は、ホイールの締め付け後、50〜100km走行後を目安に増し締めを行うよう示している。ところがピークの週に交換した車ほど、この案内が抜けやすい。大型車の統計では、令和6年度に報告された車輪脱落事故120件のうち約45%が脱着作業から1ヶ月以内に発生し、約56%が12月から2月に起きている。

APPROACH

アプローチ

確定しているものから数えます。タイヤ預かりの契約をしているお客さんは、シーズンに1回必ず交換に来ます。想定例の店では400台ぶんの契約があり、シーズンの交換台数のおよそ6割がここで決まっていました。台数だけでなく、車種とホイールの種類が契約時点で分かっているので、1台あたりの作業時間まで見積もれます。台数の側はすでに決まっているので、予測が担当するのは、それが何週目に寄るかだけになります。画面もその通りに塗り分けます。

予測は幅で出します。材料は過去3シーズンの日別の作業台数と、気象庁が公表している初雪の日、最低気温が氷点下に入った日です。出すのは10月第2週から12月第1週までの各週について、まだ日が決まっていない台数の上下です。この幅が動かす決定は1つに絞りました。毎週火曜の朝9時、店長が今週どのお客さんへ案内を出すかを決めます。宛先は預かり契約の名簿から選び、まだ日を決めていない人に、空いている平日の午前を先に見せる。返事が入ったぶんは確定へ移り、翌週の幅がその分だけ縮みます。

効果の測り方も先に決めます。1つ目は、断った台数とその推計額。電話や店頭で枠が無いと答えたときに、画面のボタンを1回押してもらうだけで数えられます。2つ目は、ピーク週の残業時間。3つ目は、交換した車のうち増し締めまで戻ってきた割合です。想定例の集計では、11月第2週に断った38台のうち、平日の午前へ案内できていれば入ったはずの台数が22台ありました。この22台を工賃と保管料で金額に直すと、案内を出す手間より大きくなる。材料を出すのは仕組みで、どこまで案内を出すかを決めるのは店長です。

CONSULTATION

11月の山を、10月へ少しだけ動かせませんか。

ピットの本数は増やせません。動かせるとしたら、来る時期のほうです。
材料は、タイヤ預かりの契約名簿と、過去の作業実績。どちらもすでに店の中にあります。
データの確認から予測の設計、受付が毎日見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。受付カウンターのパソコンと、事務所の1台で使う前提の作りです。店名・台数・時間・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. ピット3本の空きと、いま断らずに済む枠

いちばんよく開く画面です。3本のピットを時間帯で並べ、予約と飛び込みが入っている枠、作業の種類ごとの所要時間、いま案内できる直近の空きが出ます。埋まっているときは「次に空くのはいつか」がその場で言えます。断ったときは右下のボタンを1回押すだけで、台数と理由が記録に残ります。

きょうの受付
設計のポイント
予約表を見せるだけの画面にしない。断る前に提案できる枠を、同じ画面の右側へ常に出しておく。
作業の種類で時間が変わる
ホイールごとの交換と、タイヤの組み替えでは所要時間が違う。予約を受けた時点でどちらかを選び、枠の長さを変えて置く。
断りを1回の操作で数える
断った台数と、そのとき案内した代わりの日。この2つが揃うと、シーズン後に取り戻せた台数が計算できる。

02. 10月第2週から12月第1週まで、確定と幅を並べる

週ごとの棒を2色で塗ります。濃い側が日の決まっている台数で、予約済みのぶんと、案内に返事をもらったぶんです。薄い側が予測の担当する幅で、まだ日が決まっていない台数の上下を示します。棒の上には、その週に組める枠の上限が横線で入ります。線を越えている週が、案内を前へ出す対象になります。

週別の見込み
設計のポイント
合計の台数を1つの数字で見せない。何週目に寄るかが分からなければ、打てる手が変わらない。
気象の材料は日付として置く
初雪の平年日と、今シーズンの予報の幅を縦線で重ねる。予報が動いたら線も動き、その週の幅が広がる。
越えた分が案内の量になる
上限線を越えた台数が、前の週へ動かしたい台数。この数字がそのまま次の画面の案内の通数につながる。

03. 火曜9時、今週どのお客さんに案内を出すか

週に一度、この画面で決めます。左は預かり契約の名簿を「まだ案内していない・案内済みで返事待ち・日が決まった」の3つに分けた一覧。右は前の画面から渡ってきた、動かしたい台数と空いている平日の枠です。対象を絞り込んで送信すると、状態が返事待ちへ移ります。送る文面には、その人の車のタイヤ保管場所の番号と、空いている時間帯の候補が入ります。

案内の対象
設計のポイント
一斉送信にしない。全員に同時に送ると、空いている枠に予約が殺到して同じ渋滞が前倒しになるだけになる。
平日の午前から埋める
土日と夕方は放っておいても埋まる。案内で動かせるのは、平日の日中に来られる人だけだと分かった上で対象を選ぶ。
返事が無い人を追いかけすぎない
2回送って返事が無い人は、飛び込みで来る側として幅に戻す。名簿の状態が予測の入力を兼ねる。

04. 交換した車を、走行距離の目安で並べる

交換を終えた車の一覧です。国土交通省が示している50〜100km走行後という目安に合わせて、交換からの経過日数と、ふだんの走行のしかたから見た到達の見込みで並べ替えます。案内を送った日と、実際に増し締めに来た日が同じ行に残ります。来ていない車が何台あるかが、ピークの週ほど増えていくのが見えます。

増し締めの再来店
設計のポイント
交換して終わりにしない。作業のあとに残る仕事を同じ仕組みの中に置き、忙しい週ほど抜ける状況を目に見えるようにする。
記録は次の交換の材料になる
増し締めに来た日と、そのときの締め付けの記録。次のシーズンにこの車をいつ呼ぶかの判断に使う。
未実施の台数を数える
案内を送っても来ない車は必ず残る。割合を出しておくと、案内の文面や送る時期を変えたときの影響が分かる。

05. 断った台数と、ピーク週の残業時間

シーズンが終わったあとに開く画面です。上段は3つの数字だけ。断った台数とその推計額、ピーク週の残業時間、増し締めまで戻ってきた車の割合です。下段は週ごとの見込みと実績のずれで、外れた週にはメモが付きます。初雪が平年より10日遅かった年は、そう書いてあります。

振り返り
設計のポイント
的中率を出さない。上段の3つの数字だけを見て、翌年どこを変えるかを話し合う。
週で見る
シーズンの合計台数が去年と同じでも、11月に断って12月が空いた年は失敗として数える。時期のずれを平均で隠さない。
理由を言葉で残す
「初雪の予報が2回外れて、案内を出す週を間違えた」。こうしたメモが、翌シーズンの火曜の画面に注意書きとして出る。

OUTCOME

変わったこと

予測を当てに行く話ではありません。増やせない枠に対して、来る時期のほうを動かせるかどうか。狙いはそこです。

01

初雪の予報を見てから慌てて動く運用が、10月の第2週から週ごとに手を打つ運用になる。

Before準備は9月に終わっているのに、動き出すのは電話が鳴り始めてから。鳴り始めた時点では、もう平日の午前も埋まっている。
After週別の見込みと上限線を10月頭から見て、越えている週のぶんだけ前へ案内を出す。毎週火曜の朝9時、決めるのに30分もかからない。

前へ動かせる台数には限りがあります。平日の日中に来られる人しか動かないので、想定例では動かしたかった台数の半分ほどでした。それでもピーク週の残業は減ります。

02

預かり契約の400台で台数を先に固め、予測は何週目に寄るかだけを担当する

Before契約の名簿はファイルの中、予約はノート、飛び込みは記憶。シーズン全体で何台来るかを、誰も数えたことがない。
After契約400台と直近3シーズンの実績でシーズン合計を置き、週への寄り方だけを幅で出す。案内に返事が来るたびに日が決まり、幅は縮んでいく。

預かり契約の割合は店によって大きく変わります。契約が少ない店ほど合計の見当も付きにくくなるので、その場合は案内より当日枠の残し方のほうが効きます。

03

断った台数と、交換後に戻ってこなかった車の台数が、はじめて数字になる。

Before断った電話は記憶にも残らない。増し締めの案内も、忙しい週ほど声をかけそびれる。どちらも起きたことすら分からない。
After断りはボタン1回で記録され、増し締めは一覧に残り続ける。シーズン後に、取り戻せたはずの台数と未実施の割合が並ぶ。

数字が出たからといって、翌年すぐに減るとは限りません。意味があるのは、案内を出す週を変えたときに何が動いたのかを、店の言葉で確かめられるようになることです。

PROCESS

2ヶ月の進め方

オンラインと店舗への訪問を組み合わせて、2ヶ月で納品まで進めます。10月の第2週から使い始める必要があるので、8月に始めて9月末に納めるのが基本の並びです。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + 過去の作業実績の棚卸し

去年の11月に何が起きていたかを、数字にする月。

ピットの本数、作業の種類ごとの所要時間、予約の受け方と断り方を店長と作業者から聞き取ります。あわせて過去3シーズンの作業実績を取り出し、日別の台数として並べ直せるかを確かめます。タイヤ預かりの契約名簿がどこにあるか、車種とホイールの情報がどこまで揃っているかも、この月に洗い出します。

  • 予約の受け方、断り方、当日枠の扱いの聞き取り
  • 作業の種類ごとの所要時間の実測と枠の設計
  • 過去3シーズンの作業実績の取り出しと日別への整理
  • タイヤ預かり契約の名簿と、車両情報の項目の確認
2
MONTH 02 / 予測の検証 + 5画面の開発と納品

過去のシーズンにさかのぼって外れ方を確かめ、10月に間に合わせる月。

取り出した実績で予測を試作し、去年と一昨年の10月1日にさかのぼって、その時点の材料だけで各週に何台と答えたかを出します。実績と並べて、どの週でどちらへ外れたかを確かめる。あわせて5画面を開発し、初年度は案内を出す対象を店長が全部見てから送る運用で始めます。断った台数の数え方と、増し締めの案内の文面もここで決めます。

  • 過去2シーズンでのさかのぼり検証と、週ごとの外れ方の確認
  • きょうの受付・週別の見込み・案内の対象・増し締め・振り返りの開発
  • 断った台数の記録と、代わりに案内した日の残し方の設計
  • 納品 + 10月第2週からの運用の立ち上げと引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 予約はノートで受けています。過去の作業実績のデータがありません。
    最初の月に、どこまで残っているかを一緒に確かめます。伝票や会計ソフトに日付と作業内容が残っていれば、日別の台数までは戻せることがほとんどです。3シーズンぶん揃わない場合は、初年度を記録を貯める年と決めて、週別の見込みは翌シーズンから出す進め方にします。その場合でも、きょうの受付の画面と断った台数の記録は初年度から使えるので、順番としてはそちらが先です。
  • Q2 案内を出したら、その週に予約が集中して結局同じことになりませんか。
    一斉送信にすると、そのとおりになります。だから案内の画面は、対象を絞って少しずつ送る作りにしました。空いている枠の数を見ながら、その枠に収まる人数ぶんだけ送ります。返事が入って枠が埋まったら、次の対象は別の週の枠で案内する。1回で終わらせず、10月の各週で少しずつ動かす前提の設計です。
  • Q3 早く交換したくないというお客さんが多いのですが。
    全員を動かす想定ではありません。想定例でも、案内で動いたのは動かしたかった台数の半分ほどでした。動くのは、通勤で毎日乗る人や、平日の日中に時間を作れる人です。この層が誰なのかは預かり契約の記録から見当が付くので、案内の対象をそこから選びます。動かない層のぶんは幅に戻して、ピーク週の当日枠として残しておく扱いにします。
  • Q4 増し締めの管理まで仕組みに入れる必要がありますか。
    交換の数が集中する時期ほど、後の作業が抜けやすくなります。国土交通省が示している目安は50〜100km走行後で、これは店から見ると数日以内の再来店です。大型車の統計では、令和6年度の車輪脱落事故120件のうち約45%が脱着作業から1ヶ月以内に起きていて、作業を行ったのがタイヤ専業店だった事例が27%を占めます。乗用車の話とそのまま同じではありませんが、忙しい週に抜けやすい作業だという点は変わりません。一覧に残しておくだけでも、抜けた台数が見えます。
  • Q5 どれくらいの費用がかかりますか。
    金額を左右するのは4つです。過去の作業実績がどんな形で残っているか、預かり契約の名簿を手で入れ直す必要があるか、5画面のうちどこまで作るか、いま使っている予約や会計のソフトから自動でデータを取り込むか。この4つが分かれば概算をお出しできます。実績が表計算データで取り出せて画面を5つ作る想定で、期間は約2ヶ月です。順番を分けることもできて、まず「きょうの受付」と断りの記録だけを作り、1シーズン記録を貯めてから予測の部分を足す進め方なら、初年度の費用はかなり下がります。費用の考え方はAI開発のサービスページに載せています。

11月の山を、10月へ少しだけ動かせませんか。

ピットの本数は増やせません。動かせるとしたら、来る時期のほうです。
材料は、タイヤ預かりの契約名簿と、過去の作業実績。どちらもすでに店の中にあります。
データの確認から予測の設計、受付が毎日見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。