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リフォーム業の案件管理で、1か所に集めるもの

案件管理でまとめる価値があるのは、現場の写真と、取り交わした書類と、日付です。とくに日付には、法令で保存年限の起点になるものと、期限の起点になるものがあります。散っていると、あとから探せません。

この記事でわかること

  • 案件管理で1か所に集めるのは、案件の状態、現場の写真、取り交わした書類、期日の4つです。全部を同時に始める必要はなく、この順に足せます。
  • 建設業の許可を受けている会社は、営業所ごとに帳簿を備え、引渡しから5年間保存する義務があります。発注者と結んだ住宅を新築する工事だけは10年間です。
  • 完成図、発注者との打合せ記録、材料費等記載見積書は、引渡しから10年間の保存です。契約書面より長く、いちばん抜けやすい部分です。
  • お客様の自宅で結んだ契約は、法律で決められた書面を渡した日から8日間がクーリング・オフの期間になります。渡した日を案件ごとに持つ必要があります。
  • メールで受け取った見積書や請求書は、データのまま決められた形で保存します。追加の費用をかけずに要件を満たす方法があります。

案件管理で1か所に集めるのは、この4つ

リフォーム・内装の会社から「案件管理をどうにかしたい」とご相談をいただくとき、困っている中身はよく似ています。現場の写真はスマホの中、見積書は事務所のパソコン、職人さんとのやり取りはLINE、入金の予定は手帳。1つの現場の情報が4か所に分かれています。

全部を1つのソフトに入れ替える必要はありません。集める価値が高い順に4つあり、この順で足していけば、途中の段階でも使えます。

案件の状態

見込み、契約済み、着工、引渡し済み、アフター。どの現場がいまどこにいるかが1画面で分かる状態にします。ここだけでも、止まったまま忘れられていた現場が見つかります。

現場の写真

着工前、施工中、完了。あとから説明を求められるのは、たいてい壁や床の下に隠れる部分です。撮った写真が現場名と結びつかないまま端末に残るのが、いちばん困る形です。

取り交わした書類

見積書、契約の書面、追加や変更の書面、完成図。相手に渡した日と、相手から受け取った日を一緒に持ちます。

期日

着工日、引渡し日、請求の締め、入金の予定。日付は保存年限の起点にも、法律上の期間の起点にもなります。

帳簿の義務は、どこからかかるのか

記録の義務は、すべてのリフォーム会社に同じようにかかるわけではありません。建設業法でいう「建設業者」は、第3条第1項の許可を受けて建設業を営む者を指します(同法第2条第3項)。帳簿の義務も、この建設業者に対するものです。

許可が要らないのは、政令で定める軽微な建設工事だけを請け負う場合です。国土交通省の案内では、建築一式工事なら1件の請負代金が1,500万円未満の工事、または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事。建築一式工事以外なら1件500万円未満の工事とされています。この金額には消費税と地方消費税が含まれます。

いまのリフォームだと、水回りと内装をまとめて請けた1件で500万円を越えることがあります。許可を取る前と後で、案件ごとに残す情報が変わります。近いうちに越えそうなら、越えたあとの形で作っておくほうが、あとで作り直さずに済みます。

引渡しのあと、何を何年とっておくのか

建設業者には、営業所ごとに帳簿を備え、帳簿と営業に関する図書を保存する義務があります(建設業法第40条の3)。何を書くかと何年残すかは、建設業法施行規則で決まっています。

帳簿に書くのは、請け負った工事の名称と工事現場の所在地、注文者と請負契約を締結した年月日、注文者の商号・名称・住所、完成を確認するための検査が完了した年月日、引渡しをした年月日です。下請に出した工事は、支払った下請代金の額・支払った年月日・支払手段まで記載します(同規則第26条第1項)。契約のときに取り交わした書面またはその写しを添付します(同条第2項)。

帳簿と添付書類の保存期間は、請け負った工事ごとに、引渡しをしたときから5年間です。発注者と締結した住宅を新築する建設工事に係るものだけが10年間になります(同規則第28条第1項)。

期間が長いのは図書のほうです。完成図、工事内容に関する発注者との打合せ記録(請負契約の当事者が相互に交付したものに限られます)、材料費等記載見積書、その見積書の内容に関する注文者との打合せ記録は、引渡しから10年間の保存です(同規則第28条第2項、第26条第5項)。担当した職人さんが会社を辞めたあとも、まだ残っていないといけない書類です。

帳簿と添付書類

引渡しから5年間。発注者と直接契約した新築住宅の工事だけ10年間です。

完成図・打合せ記録・材料費等記載見積書

引渡しから10年間。契約書面より長く残します。発注者から直接請け負う会社が対象で、施工体系図は施工体制台帳を作る規模の元請に求められるものです。

紙で綴じる必要はない

帳簿の記載事項が電子計算機のファイルなどに記録されていて、営業所で紙面または画面に明確に表示できるなら、その記録で帳簿への記載に代えられます(同規則第26条第6項)。

訪問して取った契約は、書面を渡した日から数える

お客様の自宅で契約を結ぶ形は、特定商取引法の訪問販売にあたります。営業所等以外の場所で契約を締結して行う商品の販売や役務の提供がそう呼ばれます(同法第2条)。路上で声をかけて事務所に来てもらった場合や、販売目的を告げずに呼び出した場合も含まれます。

事業者の側には義務が3つあります。勧誘に先立って会社名・勧誘の目的・商品や役務の種類を告げること(第3条)、断られたあとに勧誘を続けないこと(第3条の2)、申込みや契約のときに書面を交付すること(第4条・第5条)です。書面には商品の種類、価格、支払いの時期と方法、引渡しの時期、クーリング・オフに関する事項を記載します。

クーリング・オフができるのは、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内です(第9条)。起点は契約した日ではなく、書面を渡した日のほうです。

案件管理の側でやることは1つで、「法定の書面を渡した日」を案件ごとの項目として持つことです。この日付がメールの送信履歴の中にしかない状態だと、確かめるのに時間がかかります。

メールで受け取った見積書や請求書は、そのままでは保存になっていない

協力会社からの見積書や請求書をPDFで受け取っている会社は多いはずです。所得税法・法人税法で保存が必要な書類を電子でやり取りした場合、そのデータの保存には決められた要件があります。国税庁が公表している電子帳簿保存法の一問一答(電子取引関係)に、要件がまとまっています。

満たすものは3つです。画面と書面に整った形で速やかに出せる機器を備えること。日付・金額・取引先で検索できること。そして訂正や削除を防ぐ措置をとることです。

訂正や削除を防ぐ措置は、4つのうち1つを選びます。タイムスタンプが付いたあとのデータを受け取る、受け取ったあと遅滞なくタイムスタンプを付ける、訂正や削除の記録が残るシステム(または訂正削除ができないシステム)を使う、訂正削除の防止に関する事務処理規程を備え付けて運用する、の4つです。

追加の費用がかからないのは4つめです。国税庁のページに規程のひな形が載っていて、それに沿って運用すれば要件を満たします。バックアップの保存は要件になっていません。検索についても、いま使っているシステムで検索できなくても差し支えないとされています。中小の会社が最初にやるべきなのは、ソフトを買うことではなく、保存する場所と規程を決めることです。

ExcelとLINEで足りるのはどこまでか

ここまで挙げた項目は、Excelとクラウドの共有フォルダでも成立します。同時に動く現場が3件までで、社長が全部の現場を頭に入れている段階なら、作る必要はありません。仕組みが要るのは、次のどれかが起きたときです。

4つのうち2つ以上が当てはまるなら、探す時間と入力し直す時間が、作る費用を上回りはじめています。

写真が探せない

現場の数より、写真の枚数のほうが先に増えます。撮った人と現場名が結びつかないまま端末に残ると、引渡し後の問い合わせに答えられません。

同じ数字を2回入れている

見積のExcelから請求のExcelへ、手で写している状態です。金額の食い違いは、たいていこの転記のところで起きます。

職人さんが自分の予定を見られない

予定表が事務所のホワイトボードにしかないと、変更のたびに電話がかかってきます。受けた側が伝え忘れると、そのまま現場が止まります。

5年前の書類を出せない

上に書いた保存年限の話です。担当者が変わっても取り出せる形になっているかどうかが分かれ目になります。

費用と期間はどう決まるか

案件管理の仕組みは、作る範囲で金額が動きます。見積・原価・請求・写真・工程を最初から全部つなぐと大きくなり、決めることが増えて着手も遅くなります。当社では、冒頭の4つのうち1つか2つから始めることをおすすめしています。

見積もりを出すために決めるのは、次の4つです。ここが決まれば概算をお出しできます。

期間は、範囲が1つか2つなら1か月から2か月、書類の様式と写真と請求までつなぐと3か月前後を見ています。原価と粗利まで含めた形はリフォーム業の原価管理は何から始めるかにまとめました。画面の構成は工務店・リフォーム業向けの案件原価・粗利管理システムにあります。

誰が入力するか

事務の担当者だけか、現場の職人さんも入れるか。現場が入力する場合は、汚れた手でも3タップで終わる画面が要ります。

今の書類の形を変えるか

いまの見積書の様式をそのまま使うか、この機会に作り直すか。既存の様式を再現するほうが、現場は早く慣れます。

どこまでつなぐか

会計ソフトや請求書サービスと直接つなぐか、CSVの受け渡しで済ませるか。つなぐ相手が増えるほど費用は上がります。

過去の案件を移すか

保存年限の残っている案件を移すのか、今日から始めるのか。移す場合は、その作業のぶんだけ日数がかかります。

まとめ

案件管理で1か所に集めるのは、案件の状態、現場の写真、取り交わした書類、期日の4つです。この順に足していけます。

引渡しのあとに残す記録には年限があります。帳簿と契約書面は5年間、完成図と打合せ記録と材料費等記載見積書は10年間です。訪問して契約した工事は、書面を渡した日が8日間の起点になります。仕組みを決める前に、この3つの日付を確認してください。

次にやることを1つ選ぶなら、いま動いている現場を紙に書き出して、それぞれの写真と書類がどこにあるかを書き足してみてください。散っている場所が見えれば、最初に手をつける範囲が決まります。

よくある質問

建設業の許可がない会社でも、案件管理の仕組みは要りますか?

建設業法の帳簿の義務は許可を受けた会社にかかるものなので、軽微な建設工事だけを請け負っている段階では生じません。ただし、税務のために保存が必要な請求書や見積書は許可の有無に関わらず残りますし、電子でやり取りしたデータの保存要件も変わりません。許可を取る予定があるなら、工事名・契約日・引渡し日を案件ごとに持つ形にしておくと、取得後に作り直さずに済みます。

原価管理と案件管理は、別々に作るものですか?

同じデータの上に載ります。案件管理が持つ「どの現場がいまどこにいるか」に、工種ごとの実行予算と実際にかかった金額を足したものが原価管理です。先に案件の状態と書類の置き場を決めてから原価を足す順番のほうが、現場に頼む入力が一度に増えずに済みます。

画面を見てから決めたいのですが、できますか?

工務店・リフォーム業向けの案件原価・粗利管理システムの開発プランに、想定した画面を置いています。実際のご相談では、その画面を見ながら、御社の見積書といま使っているExcelのどこを当てはめるかを話すところから始めます。仕様書を用意していただく必要はありません。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

進行中の1現場ぶんの書類を、見せていただくところから。

現場の写真がスマホから出てこない。数年前の工事の書類を頼まれて、探すのに半日かかった。許可を取ったので記録の残し方を見直したい。そんな状態でしたら、いま動いている現場を1つ選んで、その現場の見積書・写真・やり取りがどこにあるかを教えてください。集める順番と、最初に作る範囲を一緒に決めます。保存年限そのものの判断は行政書士や税理士の領域なので、当社が引き受けるのは、決まった年限を日々の入力と画面に落とし込むところです。北海道内なら現場にも事務所にも伺います。

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