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飲食店アプリ・飲食DX

飲食店の原価管理アプリは何を引き受けるか

自動になるのは、レシピごとの原価計算、仕入単価が変わったときの一括更新、棚卸から原価率を締めるところまでです。値付けを決めるのは店の側に残ります。スタッフ数人から20人ほどの飲食店向けに整理しました。

この記事でわかること

  • 引き受けるのは、レシピ原価の計算、食材単価の一括更新、棚卸の集計と原価率の締めの3つです。どのメニューをいくらにするかは人が決めます。
  • 売上原価は、その月の仕入額ではなく「期首の棚卸高+仕入高−期末の棚卸高」で決まります(国税庁「青色申告の決算の手引き」)。棚卸を通さないと原価率は出ません。
  • 在庫を日々記録し、毎年一定の時期に実地棚卸で正否を確かめている場合は、年末の実地棚卸を省略できると同じ手引きにあります。
  • 仕入は食材が8%、酒類が10%で税率が混ざります。税抜経理なら棚卸高も税抜で計算するため、原価表の単価をどちらでそろえるかを先に決めます。
  • 外食産業の食品ロスは2024年度推計で70万トン、前年度から増えました(農林水産省)。レシピどおりの原価との差は、ここに現れます。

原価管理アプリは、どの作業を引き受けるのか

原価管理アプリと呼ばれているものは、3つの作業を肩代わりします。レシピごとの原価を計算すること、食材の単価が変わったときに関係するメニューの原価をまとめて直すこと、棚卸の数字を集めて原価率を締めることです。

いちばん効くのは2つ目です。レシピ原価の表そのものは表計算ソフトでも作れます。続かなくなるのは、油が上がった、鶏が上がったと言われるたびに、その食材を使う料理の行を探して直す作業のほうです。

逆に、アプリが決めない仕事もあります。原価率が上がったときに、値上げするのか、量を見直すのか、その料理をやめるのか。ここは客層と店の方針を知っている人にしか決められません。

レシピごとの原価計算

食材と分量を登録すると、1皿あたりの原価と原価率、売価との差が出ます。仕込み品を1つの材料として扱えると、タレを使う料理もまとめて計算できます。

食材単価の一括更新

単価を更新すると、その食材を使うメニューの原価率がすべて動きます。目標を超えた料理をその場で並べられます。

棚卸の集計と原価率の締め

期首と期末の在庫、その月の仕入を突き合わせて、実際の売上原価と原価率を出します。月末の集計がここでなくなります。

仕入額を足すだけでは原価率が出ないのはなぜか

原価管理の相談で最初にずれるのが、ここです。今月の仕入の合計を売上で割った数字を原価率だと思っている店は、けっこうあります。

国税庁の「青色申告の決算の手引き」は、必要経費になる売上原価を次の式で計算すると書いています。売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高−年末(期末)の棚卸高。つまり、月末に冷蔵庫へ残っている食材は、その月の原価ではありません。翌月に持ち越されます。

飲食店でこの差が大きく出るのは、仕入にまとまりがあるからです。米や酒を月末にまとめて入れた月は、仕入額だけを見れば原価率が跳ね上がり、使い切った月は逆に下がって見えます。棚卸を通していない数字で値付けを動かすと、この上下に振り回されます。

棚卸の対象は、商品や原材料にとどまりません。同じ手引きは、半製品、仕掛品、副産物、仕損じ品に加えて、まだ使っていない包装材料も挙げています。飲食店なら、仕込み中のスープ、切って冷蔵した食材、テイクアウトの容器がここに入ります。

評価の方法も決まっています。あらかじめ税務署へ届け出た方法(先入先出法や総平均法など)で評価し、届け出ていない場合は最終仕入原価法によると手引きにあります。期末の棚卸高は実際に数えて出すので、ここが狂うと原価率も粗利も動きます。

レシピどおりの原価と、実際の原価がずれるのはどこか

レシピと出数から計算した原価を理論原価、棚卸で締めた原価を実際原価と呼びます。この2つは必ずずれます。ずれること自体は失敗ではなく、ずれ幅を毎月測れているかが分かれ目です。

ずれの中身は3つに分かれます。歩留り、廃棄、記録に乗らない消費です。どれも売上に結びつかないまま、食材だけが減っていきます。

廃棄は業界全体で見ると増えています。農林水産省の推計では、2024年度の外食産業の食品ロスは70万トンで、前年度の66万トンから増えました。事業系全体では237万トンあり、内訳は規格外品、返品、売れ残り、食べ残しとされています。個店の1皿は小さくても、捨てた食材の代金は仕入額に含まれたまま残ります。

ここでアプリの使い方が決まります。理論原価と実際原価の差額を毎月円で出し、差が大きい月にどの食材が減りすぎたかを在庫の動きから絞る。この順なら、勘で仕込み量を削るより先に直す場所が見えます。

差を埋めるのは現場の手当てです。仕込み量を見直し、廃棄を出したらその場で品名と数量を記録する。記録の手間が増えるので、入力は1皿10秒で終わる形にしないと続きません。

歩留り

魚をおろす、野菜の皮をむく。使える重さは仕入の重さより軽くなります。歩留りを織り込むかどうかで理論原価の意味が変わります。

廃棄

仕込みすぎ、期限切れ、提供ミス。月いくらになるかを金額で出すと、仕込み量の議論が具体的になります。

記録に乗らない消費

まかない、試作、こぼし。必要な消費ですが、売上原価に紛れると原価率が実態からずれます。費目を分けて記録すると差が縮みます。

DEMO

理論原価と実際の原価の差が、月いくらになるか

レシピどおりに作れたときの原価と、棚卸で締めた実際の原価。その差が金額でいくらになるのかを、条件を変えながら確かめられる画面を用意しました。

原価差額シミュレーター|歩留りと廃棄を動かして金額で見る

架空の店「食堂こみち」(28席・札幌市・月26日営業)の1か月を試算する画面です。主要4品の出数と売価、食材の値上がり、歩留り、廃棄、まかないの量を変えると、理論原価、棚卸で締めた売上原価、原価率、その差額が変わります。

触って動かせます
触れるところ
主要4品の月間出数と売価、食材の値上がり率、歩留りの落ち、廃棄の量、まかないに回す量です。
棚卸の式で締める
期首の棚卸高に仕入高を足して期末の棚卸高を引く形で売上原価を出し、レシピから計算した理論原価と並べます。
決めるのは人
画面は値上げも仕込み量も提案しません。出るのは差額の金額と、どの区分から差が出ているかの内訳です。

※ デモの店舗名、メニュー、数量、単価はすべて架空です。金額は売価・原価とも税抜でそろえています。実際の原価は仕入先や仕込みの手順によって変わります。

仕入データを取り込むときにつまずく2つのこと

原価管理アプリを入れて最初に止まるのは、たいてい機能そのものよりデータの形です。飲食店の場合、つまずく箇所は2つに絞られます。

1つ目は消費税です。国税庁の説明では、軽減税率8%の対象になるのは酒類を除く飲食料品で、外食やケータリング等は含まれません。店から見ると、食材の仕入は8%、ビールや日本酒の仕入は10%で、1枚の請求書に両方が並びます。税込の単価をそのまま原価表に入れると、酒を使う料理だけ原価が重く出ます。

どちらでそろえるかは、経理の方式に合わせます。同じ手引きは、棚卸高の計算にあたって、税込経理方式なら消費税等相当額を含め、税抜経理方式なら原則として除いて計算すると書いています。原価表の単価も同じ側にそろえてください。免税事業者は税込で計算します。

2つ目は請求書の受け取り方です。電子帳簿保存法では、注文書や領収書、見積書などに通常記載される事項を電子データでやり取りした取引を電子取引と呼び、そのデータを保存しなければならないとされています。メールに添付されたPDFの請求書も、仕入先のサイトから落とした明細も、これに当たります。アプリに数字を打ち込んだら元データを消してよい、とはなりません。

保存の年限もあります。諸帳簿や棚卸表、納品書、請求書などの原始記録は7年間(一定の書類については5年間)保存すると手引きにあります。スキャナ保存の対象からは棚卸表や決算に関して作成した書類が外されているので、紙の棚卸表をスキャンして原本を処分する運用はとれません。最初から画面で作るほうが、後の扱いが楽になります。

無料のアプリでどこまでできるか

レシピ原価の計算までなら、無料の範囲でも確かめられます。止まるのは、棚卸と仕入の取り込みをつなげたところからです。

無料や低価格の既製サービスで足りるのは、メニュー数が少なく、仕入先が数社で、店舗が1つの場合です。レシピを登録して1皿あたりの原価率が出れば、値付けの見直しは始められます。まず1か月試して、続いたかどうかを見てください。続かなかったときは、機能より入力の手間を疑ってください。

足りなくなる分かれ目もはっきりしています。仕込み品を材料として使い回したい、レジの出数と突き合わせて理論原価を自動で出したい、店舗ごとに違う仕入単価を持ちたい、請求書のPDFから単価を取り込みたい。どれかが出た時点で、既製品を探すか自店に合わせて作るかの検討に移ります。

比べるときは、月額だけでなく、店舗が増えたときの料金の増え方、登録したデータを外に出せるか、棚卸の入力がスマホでできるかを見てください。料金体系は変わるので、金額は各社の公式サイトで確認してください。当社も、相談ではまず既製品で足りるかから一緒に見ます。

作る場合、何を決めれば見積もれるか

自店に合わせて作る場合、決まった定価はありません。金額は範囲で決まるので、次の4つが決まると概算が出せます。ここが決まらないまま金額だけを聞かれると、どの会社でも幅の広い数字しか返せません。

期間の目安は、範囲を絞れば設計から納品まで2か月から3か月です。絞り方は、レシピ原価と月1回の棚卸に限り、レジ連携と複数店舗を後回しにする形です。途中で実際の月末棚卸に使ってもらい、使い勝手を直してから納品します。

費用を抑えるなら、進める順番を変えます。最初に主要メニューのレシピ原価だけを作り、次に棚卸の入力、その次に仕入の取り込み、最後に出数との突き合わせ。この順なら、途中で止めても前の段階が手元に残ります。

相談の入口は、いまの原価表と直近1か月ぶんの請求書を見せてもらうところからで足ります。メニュー数と仕入先の数が分かれば、既製品で足りるのか作るほうが早いのかは、その場でおおよそ判断できます。

画面にすると業務がどう変わるかは、メニュー原価管理アプリの開発プランにまとめています。棚卸そのものを速くする話は、飲食店の棚卸を早く終わらせるに分けて書きました。

1. メニュー数と仕込み品の数

原価を管理したい料理が何品あるか。タレやスープのような仕込み品をいくつ持つか。登録作業の量がここで決まります。

2. 仕入データの入り方

手入力か、納品書の写真から取り込むか、仕入先のデータをそのまま受けるか。仕入先の数と請求書の形式で変わります。

3. 棚卸の細かさ

全品を毎月数えるのか、主要食材だけか。開封済みのボトルや仕込み中の鍋の数え方も先に決めます。

4. レジとのつなぎ方と店舗数

出数を自動で受けるか、月次の売上だけ手で入れるか。店舗ごとに仕入単価が違うなら、レシピは共通にして単価だけ分けます。

まとめ

アプリが引き受けるのは、レシピ原価の計算、食材単価の一括更新、棚卸から原価率を締めるところまでです。値上げか量の見直しかの判断は、店の側に残ります。

原価率は仕入額からは出ません。期首の棚卸高に仕入高を足して期末の棚卸高を引く順で締めます。日々の在庫を記録して毎年一定の時期に実地棚卸で確かめていれば、年末の実地棚卸は省略できると国税庁の手引きにあります。

理論原価と実際原価の差は、歩留りと廃棄と記録に乗らない消費から生まれます。この差を毎月円で出すと、仕込み量の話が具体的になります。

次にやることを1つ挙げるなら、よく出る料理を10品選んで、食材と分量、いまの売価を紙に書き出してみてください。既製のサービスを選ぶときも作るときも、最初に要るのがこの表です。

よくある質問

原価管理アプリを入れると、原価率は下がりますか?

入れただけでは下がりません。下がるのは、理論原価と実際原価の差が見えて、手当てできる部分に手を打ったときです。まず差額を金額で出し、次に差が大きい食材を絞り、仕込み量や歩留りを直す。画面が担うのは最初の2つまでです。

棚卸は毎月やらないといけませんか?

税の計算だけなら、実地棚卸が要るのは期末です。ただ月ごとの原価率を出すなら月末に締めます。国税庁の手引きには、商品出入帳などで毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地棚卸で正否を確かめている場合は、年末の実地棚卸を省略できるとあります。

レシピを全部登録しないと使えませんか?

全部は要りません。出数の多い順に10品から20品を登録すれば、売上の大半をカバーできる店がほとんどです。仕込み品を使い回しているなら、それを先に1つの材料として登録するとあとが速くなります。

レジのデータと連携しないと意味がありませんか?

連携しなくても原価率は出せます。月次の売上と棚卸があれば、実際の売上原価は計算できます。連携が効くのはメニュー別の理論原価を毎日出したいときで、出数の手入力が負担になった段階で検討すれば間に合います。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

いまの原価表と、先月の請求書を見せてもらうところから。

原価率を仕入額から出していた、レシピの原価表は作ったが食材の値上がりに追いつかなくなった、月末の棚卸に3時間かかっている。そのどれかに当てはまるなら、既製のサービスで足りるのか作るほうが早いのかを、いまの表を見ながら一緒に判断できます。北海道内は訪問、道外はオンラインで対応します。

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