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飲食の業務アプリ

飲食店の原価管理アプリでできること

原価管理アプリは、レシピごとの原価計算や仕入単価の更新、棚卸の集計を支援します。必要な機能は、お店のメニュー数や仕入の管理方法によって変わります。この記事では、アプリに任せられる作業と、お店で判断することを整理します。

この記事でわかること

  • 引き受けるのは、レシピ原価の計算、食材単価の一括更新、棚卸の集計と原価率の計算の3つです。どのメニューをいくらにするかは人が決めます。
  • 売上原価は、その月の仕入額ではなく「期首の棚卸高+仕入高−期末の棚卸高」で決まります(国税庁「青色申告の決算の手引き」)。実際原価率を確認するには、在庫の増減を反映した売上原価を売上高で割ります。レシピから求める理論原価率とは区別します。
  • 在庫を日々記録し、毎年一定の時期に実地棚卸で正否を確かめている場合は、帳簿から年末の棚卸高を計算することで、年末の実地棚卸を省略できると同じ手引きにあります。
  • 仕入は食材が8%、酒類が10%で税率が混ざります。税抜経理なら棚卸高も税抜で計算するため、原価表の単価をどちらでそろえるかを先に決めます。
  • 理論原価と実際原価に差があれば、歩留りや廃棄だけでなく、仕入単価の更新漏れや在庫の記録も確認します。差のすべてが食品ロスとは限りません。

原価管理アプリは、どの作業を引き受けるのか

原価管理アプリを選ぶときは、次の3つの作業に対応しているかを確認します。レシピごとの原価を計算すること、食材の単価が変わったときに関係するメニューの原価をまとめて直すこと、棚卸の数字を集めて原価率を計算することです。

仕入単価の変更が多いお店では、2つ目の機能が役立ちます。レシピ原価の表そのものは表計算ソフトでも作れます。負担になりやすいのは、油や鶏肉の仕入単価が上がるたびに、その食材を使う料理の行を探して直す作業のほうです。

逆に、アプリが決めない仕事もあります。原価率が上がったときに、値上げするのか、量を見直すのか、その料理をやめるのか。ここは客層と店の方針を知っている人にしか決められません。

レシピごとの原価計算

食材と分量を登録すると、1皿あたりの原価と原価率、売価との差が出ます。仕込み品を1つの材料として扱えると、タレを使う料理もまとめて計算できます。

食材単価の一括更新

単価を更新すると、その食材を使うメニューの原価率がすべて動きます。目標を超えた料理をその場で並べられます。

棚卸の集計と原価率の計算

期首と期末の在庫、その月の仕入を突き合わせて、実際の売上原価と原価率を出します。集計を自動化しても、仕入や売上の入力漏れ、棚卸数の確認は必要です。

仕入額を足すだけでは原価率が出ないのはなぜか

今月の仕入額を売上高で割った比率と、在庫の増減を反映した原価率は異なります。比較するときは、どちらの数字かを確認します。

国税庁の「青色申告の決算の手引き」は、必要経費になる売上原価を次の式で計算すると書いています。売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高−年末(期末)の棚卸高。つまり、月末に冷蔵庫へ残っている食材は、その月の原価ではありません。翌月に持ち越されます。

飲食店でこの差が大きく出るのは、仕入にまとまりがあるからです。米や酒を月末にまとめて入れた月は、仕入額だけを見れば原価率が跳ね上がり、使い切った月は逆に下がって見えます。価格を見直すときは、仕入額の増減だけでなく、在庫を反映した原価率も確認します。

棚卸の対象は、商品や原材料にとどまりません。同じ手引きは、半製品、仕掛品、副産物、仕損じ品に加えて、まだ使っていない包装材料も挙げています。飲食店なら、仕込み中のスープ、切って冷蔵した食材、テイクアウトの容器などが該当します。ただし、通常の年に比べて特に増えていない消耗品などは、棚卸を省略できる場合があります。

評価の方法も決まっています。あらかじめ税務署へ届け出た方法(先入先出法や総平均法など)で評価し、届け出ていない場合は最終仕入原価法によると手引きにあります。期末の棚卸高は実際に数えて出すので、数量や評価額に誤りがあると、原価率や粗利の計算にも影響します。

レシピどおりの原価と、実際の原価がずれるのはどこか

レシピと出数から計算した原価を理論原価、棚卸で締めた原価を実際原価と呼びます。この2つに差が出ることがあります。毎月の差額を確認し、その理由を調べることが大切です。

差の原因には、食材の歩留り、廃棄、まかないや試作のほか、仕入単価・レシピの更新漏れ、棚卸の数え間違いなどがあります。調理に必要な消費も含むため、差のすべてを無駄と考えず、内訳を確認します。

農林水産省の2024年度推計では、外食産業の食品ロスは70万トンです。食品ロスは、本来食べられるのに捨てられた食品を指します。皮や骨などの食べられない部分も含めた廃棄全体とは区別します。お店では、捨てた品名・量・理由を記録し、減らせる廃棄を確認します。

アプリでは、理論原価と実際原価の差額を月ごとに確認します。差が大きい場合は、食材別の使用量や仕入単価、廃棄の記録を照合し、見直す項目を絞ります。

差を減らすには、厨房での作業も見直します。仕込み量を見直し、廃棄を出したらその場で品名と数量を記録する。記録の手間が増えるので、品名と数量を短時間で入力できる形にします。

歩留り

魚をおろす、野菜の皮をむく。使える重さは仕入の重さより軽くなります。歩留りを織り込むかどうかで理論原価の意味が変わります。

廃棄

仕込みすぎ、期限切れ、提供ミス。月いくらになるかを金額で出すと、仕込み量の議論が具体的になります。

記録に乗らない消費

まかないや試作に使った量と、こぼすなどして失った量は、理由を分けて記録します。理論原価との差を確認するときに、それぞれの数量や金額を説明できるようにします。

DEMO

下処理・廃棄・まかないの費用を加えると、原価はどう変わるか

レシピ原価に下処理・廃棄・まかないの費用を加えると、原価がどう変わるかを試算できます。入力例で計算の関係を確認する画面です。

原価差額シミュレーター|追加費用による原価の変化を確認する

架空の店「食堂こみち」(28席・札幌市・月26日営業)の1か月を試算する画面です。主要4品の販売数、食材の値上がり率、下処理・廃棄の追加費用率、まかないの食数を変えると、理論原価と追加費用を含む試算原価、その差額が変わります。売価は固定です。

触って動かせます
触れるところ
主要4品の月間販売数、食材の値上がり率、下処理・廃棄の追加費用率、まかないの食数、月末の在庫増減額です。
仕入・在庫との関係
理論原価に設定した追加費用を加えて試算原価を求め、在庫増減から仕入高を逆算します。実際の仕入・棚卸記録を集計する画面ではなく、数字の関係を確認するための試算です。
決めるのは人
画面は値上げも仕込み量も提案しません。出るのは差額の金額と、どの区分から差が出ているかの内訳です。

※ デモの店舗名、メニュー、数量、単価はすべて架空です。金額は売価・原価とも税抜でそろえています。実際の原価は仕入先や仕込みの手順によって変わります。

仕入データを取り込むときにつまずく2つのこと

原価管理アプリを使うには、仕入データの形式や記録方法も確認が必要です。ここでは、飲食店でつまずきやすい2つの点を確認します。

1つ目は消費税です。国税庁の説明では、軽減税率8%の対象になるのは酒類を除く飲食料品で、外食やケータリング等は含まれません。店から見ると、食材の仕入は8%、ビールや日本酒の仕入は10%で、1枚の請求書に両方が並びます。税抜の原価表に税込単価を混ぜると、税率の違いも含めて比較条件がそろわなくなります。税込経理そのものが誤りという意味ではありません。

どちらでそろえるかは、経理の方式に合わせます。同じ手引きは、棚卸高の計算にあたって、税込経理方式なら消費税等相当額を含め、税抜経理方式なら原則として除いて計算すると書いています。原価表の単価と売価も、比較する際の税込・税抜の条件をそろえます。免税事業者は税込経理を適用します。詳しくは国税庁の経理方式の説明で確認できます。

2つ目は請求書の受け取り方です。電子帳簿保存法では、注文書や領収書、見積書などに通常記載される事項を電子データでやり取りした取引を電子取引と呼び、そのデータを保存しなければならないとされています。メールに添付されたPDFの請求書も、仕入先のサイトからダウンロードした明細も、これに当たります。アプリに数字を打ち込んだら元データを消してよい、とはなりません。

保存の年限もあります。諸帳簿や棚卸表、納品書、請求書などの原始記録は7年間(一定の書類については5年間)保存すると手引きにあります。スキャナ保存の対象からは棚卸表や決算に関して作成した書類が外されているので、紙の棚卸表をスキャンして原本を処分する運用はとれません。最初から電子データで作成する場合も、保存要件に合う方法を確認します。紙の書類の扱いは、国税庁のスキャナ保存の案内を参照してください。

無料のアプリでどこまでできるか

無料プランや試用版で確認できる範囲は、サービスによって異なります。レシピの登録数、利用人数、仕入データの取り込み、棚卸の集計が対象に含まれるかを確認します。

試すときは、普段使っているレシピと仕入単価を登録し、原価計算だけでなく単価の変更や棚卸の入力まで進めてみます。必要な機能があるか、担当者が無理なく入力を続けられるかを確かめます。

仕込み品を材料として登録する、レジの販売数と照合する、店舗別に仕入単価を管理する、請求書から単価を取り込む。こうした機能が必要なら、候補サービスの対応範囲と追加料金を調べます。既製サービスで対応しにくい部分が分かってから、個別開発を検討します。

比べるときは、月額だけでなく、店舗が増えたときの料金の増え方、登録したデータを外に出せるか、棚卸の入力がスマホでできるかを見てください。料金体系は変わるので、金額は各社の公式サイトで確認してください。当社も、相談ではまず既製品で足りるかから一緒に見ます。

作る場合、何を決めれば見積もれるか

自店に合わせて作る場合、決まった定価はありません。金額は範囲で決まるので、次の4つが決まると概算が出せます。相談時に未定の項目があっても構いません。必要な機能を一緒に整理し、見積もりの対象を決めます。

期間の目安は、範囲を絞れば設計から納品まで2か月から3か月です。絞り方は、レシピ原価と月1回の棚卸に限り、レジ連携と複数店舗を後回しにする形です。途中で実際の月末棚卸に使ってもらい、使い勝手を直してから納品します。

費用を抑えるなら、進める順番を変えます。最初に主要メニューのレシピ原価だけを作り、次に棚卸の入力、その次に仕入の取り込み、最後に出数との突き合わせ。段階ごとに使える状態で納品する計画にすれば、効果と負担を確認してから次の機能を追加できます。

相談の入口は、いまの原価表と直近1か月ぶんの請求書を見せてもらうところからで足ります。メニュー数、仕入先の数、いまの入力方法を確認し、既製サービスで対応できる範囲と個別開発が必要な範囲を調べます。

画面にすると業務がどう変わるかは、メニュー原価管理アプリの開発プランにまとめています。棚卸そのものを速くする話は、飲食店の棚卸を早く終わらせるに分けて書きました。

1. メニュー数と仕込み品の数

原価を管理したい料理が何品あるか。タレやスープのような仕込み品をいくつ持つか。登録作業の量がここで決まります。

2. 仕入データの入り方

手入力か、納品書の写真から取り込むか、仕入先のデータをそのまま受けるか。仕入先の数と請求書の形式で変わります。

3. 棚卸の細かさ

全品を毎月数えるのか、主要食材だけか。開封済みのボトルや仕込み中の鍋の数え方も先に決めます。

4. レジとのつなぎ方と店舗数

出数を自動で受けるか、月次の売上だけ手で入れるか。店舗ごとに仕入単価が違うなら、レシピは共通にして単価だけ分けます。

まとめ

アプリが引き受けるのは、レシピ原価の計算、食材単価の一括更新、棚卸から原価率を計算するところまでです。値上げするか量を見直すかは、お店で判断します。

仕入額だけでは、在庫の増減を反映した実際原価率は分かりません。期首の棚卸高に仕入高を足して期末の棚卸高を引き、売上高で割って計算します。日々の在庫を記録して毎年一定の時期に実地棚卸で確かめていれば、帳簿から年末の棚卸高を計算して、年末の実地棚卸を省略できると国税庁の手引きにあります。

理論原価と実際原価の差には、歩留りや廃棄、まかないのほか、単価や数量の記録漏れなども影響します。差額と原因を確認し、仕込み量や記録方法を見直します。

次にやることを1つ挙げるなら、よく出る料理を10品選んで、食材と分量、いまの売価を紙に書き出してみてください。既製のサービスを選ぶときも作るときも、最初に要るのがこの表です。

よくある質問

原価管理アプリを入れると、原価率は下がりますか?

入れただけでは下がりません。理論原価と実際原価の差を確認し、仕込み量や廃棄の原因を見直すための情報が得られます。実際の改善幅は、仕入価格や運用によって変わります。まず差額を金額で出し、次に差が大きい食材を絞り、仕込み量や歩留りを直す。画面が担うのは最初の2つまでです。

棚卸は毎月やらないといけませんか?

税の計算だけなら、実地棚卸が要るのは期末です。ただ月ごとの原価率を出すなら月末に締めます。国税庁の手引きには、商品出入帳などで毎日の在庫量を明らかにし、毎年一定の時期に実地棚卸で正否を確かめている場合は、その帳簿から年末の棚卸高を計算することで、年末の実地棚卸を省略できるとあります。

レシピを全部登録しないと使えませんか?

一部のメニューから始めることもできます。まず販売数の多い料理や原価を確認したい料理を選び、入力の手間と確認できる内容を試します。仕込み品を使い回しているなら、それを先に1つの材料として登録するとあとが速くなります。

レジのデータと連携しないと意味がありませんか?

連携しなくても原価率は出せます。期首・期末の棚卸高と月間の仕入高があれば売上原価を計算でき、月間売上高で割れば原価率が出せます。連携が効くのはメニュー別の理論原価を毎日出したいときで、出数の手入力が負担になった段階で検討すれば間に合います。

1皿の原価はどう計算しますか?

材料ごとに「仕入単価÷仕入の量×1皿に使う量」を出して足します。鶏もも肉が2kgで2,400円なら1gあたり1.2円、1皿に120g使えば144円。油やタレの分も同じ計算で足した合計が1皿の原価で、それを売価で割ったものが原価率です(数字は想定例)。皮や骨を除く食材は、仕入の量を使える量に置き換えると歩留りを織り込めます。食材の仕入は8%、酒類は10%と税率が混ざるので、単価は税抜か税込のどちらかにそろえてから入れます。アプリが引き受けるのは、この掛け算と、単価が変わったときの全メニューの再計算です。

原価率は何%が目安ですか?

業態やメニュー構成によって異なり、全店共通の適正値はありません。参考として、日本政策金融公庫の2025年度調査では、一般飲食店464社の売上高総利益率の平均が65.0%でした。100%から差し引くと売上原価率は35.0%に相当します。これは調査対象の平均で、お店が目指すべき値ではありません。同じ計算方法で自店の推移を確認し、人件費や家賃も含めて必要な利益が残るかを判断します。

クラウド型と、パソコンに入れる型のどちらがよいですか?

スマホで棚卸の数を入れたい、店と自宅の両方で開きたい、複数の店舗で同じレシピを共有したい。こうした使い方には、インターネット経由でデータを共有するクラウド型が候補になります。パソコン1台で店主だけが使い、外に持ち出さないなら、Excelや買い切りのソフトも候補です。必要な機能、バックアップ、ネット接続の条件を確認して選びます。比べるときは月額のほかに、登録したレシピや仕入データを外に出せるか(乗り換えるときに手元に残るか)を確かめてください。当社が作る場合もクラウド型が基本で、厨房のタブレットと事務室のパソコンから同じ画面を開きます。

原価管理アプリの導入に、補助金は使えますか?

既製のサービスを入れる場合は、条件が合えば使えます。中小企業デジタル化・AI導入支援事業(デジタル化・AI導入補助金2026、旧IT導入補助金)の通常枠は、補助率が2分の1以内(従業員の賃金に関する要件を満たす事業者は3分の2以内)、補助額は業務プロセス1種類以上で5万円以上150万円未満です。ソフトウェア購入費とクラウド利用料(最大2年分)のほか、導入設定や研修、保守サポートも対象に含められます。ただし、登録されたIT導入支援事業者が提供する登録済みのツールに限られるので、検討している原価管理サービスが登録されているかを先に確かめてください。2026年9月11日に確認した通常枠の公式案内では、5次締切は9月29日17時、交付決定の予定日は11月9日です。枠と締切は年度ごとに変わります。自店に合わせて一から作る場合は、この登録ツールの枠組みとは別になるので、見積もりの段階で使える制度があるかも含めてご相談ください。

既製のサービスの月額と、自店向けに作る費用は、どう比べればよいですか?

3年分でそろえて比べてください。既製のサービスは、月額に36を掛けた額に初期費用を足し、店舗や利用人数が増えたときの料金の増え方を確かめます。作る場合は、開発費に公開後の保守費(不具合対応やサーバー代)の3年分を足します。金額のほかに見るのは2つです。登録したレシピや仕入データを外に出せるか(乗り換えるときに手元に残るか)と、自店の仕込み品や棚卸の数え方をそのまま載せられるか。既製のサービスで足りる店のほうが多いので、当社の相談でもまずそこから見ます。作るほうが向いているのは、仕入先ごとの請求書の形が特殊で取り込みに手間がかかる店や、複数の店で単価だけを分けたい店のように、既製の枠に合わせるほうが手間になる場合です。

この記事を書いた人

水上貴洋取締役 / 飲食DXコンサルタント

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

いまの原価表と、先月の請求書を見せてもらうところから。

原価率を仕入額から出していた、レシピの原価表は作ったが食材の値上がりに追いつかなくなった、月末の棚卸に3時間かかっている。そのどれかに当てはまるなら、既製のサービスで足りるのか作るほうが早いのかを、いまの表を見ながら一緒に判断できます。北海道内は訪問、道外はオンラインで対応します。

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