EvoQuest
EvoQuest AI食数予測AI 2026.07

SCENARIO ── CARE HOME MEAL COUNT CASE

在籍58名。名簿は動いていない。
それなのに、あすの食数だけが毎日ずれる。

定員60名の特別養護老人ホーム。誰が入所しているかは決まっていて、誰が常食で誰がきざみかも食事箋に書いてあります。それでも厨房が朝いちに聞かされる数は毎日変わる。受診が延びた、熱が出た、まだ寝ている、家族が連れ出した。決まっている数を先に全部引いて、残った十人ほどのぶんだけを人ごとに読む食数予測AI(EvoQuest AI)。それに、ユニットのリーダーが前日15時に食数を締める画面(EvoQuest Apps)を組み合わせる開発プランです。

想定領域
食数予測AI / 厨房オペレーション
担当範囲
要件整理・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
定員40〜100名の特養・老健(施設内に厨房がある)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

施設の食数は、本来なら名簿を見れば出るはずの数字です。定員60名、在籍58名、入院中が3名。食事箋には誰が常食で誰が軟菜かまで書いてある。それでも、厨房が朝の申し送りで聞かされる数は毎日どこか違います。受診の帰りが昼をまたいだ。夜に熱が出た。よく眠っていて起こさなかった。家族がふらっと連れ出した。差はたいてい1食か2食で、金額にすれば数百円です。小さすぎて、誰も数えていません。ひと月積んで、はじめて厨房の実感と釣り合う量になります。

もうひとつ厄介なのは、合計が合っていても足りない朝がある点です。ミキサー食が1食足りないとき、常食が2食余っていても助けになりません。常食を1人ぶん取り分けて、刻んで、ミキサーにかけて、とろみを付け直す。配膳の直前にその工程が割り込むと、フロアの配膳がまるごと遅れます。給食管理のソフトが入っている施設もありますが、あれは決まった食数を集計して食札を出す仕組みで、「あすは何食になりそうか」を読む係はどのソフトにも入っていません。この開発プランは、その空いている係をどう作るかの設計です。

CHALLENGE

課題

  • 01 当日の欠食が、口頭で厨房へ飛ぶ。朝の申し送りで「岡さん受診」「佐々木さんまだ寝てます」が伝わり、厨房が頭の中で引き算する。伝わった内容は記録に残らないので、来月おなじ人がおなじ曜日に抜けても、誰も気づけない。
  • 02 合計が合っていても、形態がずれると現場が止まる。ミキサーが1食足りず、常食が2食余っている。この2つは相殺できない。作り足すには取り分け・刻み・ミキサー・とろみ付けの工程が配膳直前に割り込む。
  • 03 欠食届の締切を「3日前まで」と決めている施設は多い。ところが実際に欠けるのは当日の体調で、届が出るのは入院と数日の外泊くらい。締切に間に合う欠食はごく一部で、残りは全部その外側で起きる。
  • 04 捨てた金額が、どこにも数字として立たない。欠食があっても食費は日額で頂けることが多く、施設の収入は減らない。減るのは材料と、作った手間だけ。帳簿に損として現れないから、改善する対象にもならない。
  • 05 早番の調理員は5時台から仕込みに入る。その時点の食数は前日の紙のままで、朝の申し送りで判明する変更は、もう火が入ったあとに届く。1食ぶん多く炊いたおかゆも、余ったきざみの小鉢も、そこで行き場がなくなる。

APPROACH

アプローチ

読みから始めません。まず、決まっている数を全部引きます。在籍58名から入院中の3名を外す。家族から届が出ている外泊と受診の4名も外す。食事箋に書かれた形態は、そのまま確定として使う。ここまで引くと、あすの昼に要る51食のうち42食が動かない数として先に埋まります。予測が担当するのは、残った9人ぶんだけです。画面もその通りに塗り分けました。緑が確定、青が読み。どこまでがAIの担当かを、数字の見た目で分かるようにしています。

読みの単位は、施設の合計から一人ひとりへ下ろします。58人が一斉に揺れる日はまず来ません。揺れるのはたいてい決まった十人前後で、看取り期に入った方と、受診の多い方。朝が弱い方も、毎週おなじ顔ぶれです。だから画面に出すのは合計の数字より先に名前です。過去の食事摂取量の記録は、ほとんどの施設にもう溜まっています。主食何割・副食何割と毎食チェックしているあの記録が、そのまま「食べた・食べなかった」の実績になります。読みは形態ごとの幅で出し、決めるのは前日15時、ユニットのリーダーです。AIはその時刻までに材料と名前を並べる係で、締めるボタンを押すのは人のほうに残します。

値打ちは、当たった外れたでは測りません。盛らずに残した食数を材料費に直していくらだったか。足りなくて配膳直前に作り足した回数が何回だったか。そして、当日の朝に分かっていたことが何時間前に分かるようになったか。この3つを毎月の画面に出します。外れた日には理由を一言だけ残してもらい、それが次の読みに戻る作りにします。

CONSULTATION

朝の申し送りで初めて分かる欠食を、前日15時の締め表へ。

盛らずに残したおかゆと、配膳直前にミキサーへかけ直した1食。
読みの材料は、介護記録に毎食入れている摂取量のチェック。もう施設の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、厨房とユニットが毎日見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。前日の締めは事務室のパソコン、当日朝はユニットのタブレットで使う前提の作りです。施設名・入所者名・食数・金額はすべて想定例で、実在の施設・実績ではありません。

01. あすの食数を締める

前日15時までに開く看板画面。朝食・昼食・15時のおやつ・夕食を縦、常食・軟菜・きざみ・ミキサーの形態を横に取ったマス目で、緑の帯が届と食事箋で確定している食数、青の帯がAIの読みの幅です。締切までの残り時間と、この数字で動くもの(厨房の仕込み・食札の印刷・翌々日の食材発注)が同じ画面に出ます。

締め表
設計のポイント
確定と読みを1つの数字に混ぜない。緑がどこまでで青がどこからかを、マスの中で見せる。
形態ごとに出す
合計は最後に足し上げるだけ。ミキサーが1食足りない朝は、常食が2食余っていても解決しない。
締切を画面に置く
「15:00まで あと1時間12分」と、締めるのが誰かを常に表示。過ぎたら当日朝の差し替え扱いに切り替わる。

02. きょう揺れる人

58名を全員並べる画面ではありません。読みが揺れている十名ほどだけを名指しで出します。右側は選んだ1名の食事記録で、直近14日の朝昼夕を残した割合の濃さで並べたもの。AIが「この人は揺れる」と見た根拠が、記録のどこから来ているか一目で分かります。職員はその場で丸か×を付けられます。

名指し
設計のポイント
読みの主語を施設の合計から一人ひとりへ下ろす。名前が出ていれば、職員は自分の知っていることで直せる。
使うのは既存の記録
主食何割・副食何割の食事摂取量チェックをそのまま実績として読む。新しい入力は増やさない。
直した理由が戻る
丸×を直したときに理由を1タップで選ぶ。受診・傾眠・体調・家族の外出。それが翌週の読みに反映される。

03. 6時50分までなら、まだ間に合う

当日の朝、ユニットのタブレットで開く画面。申し送りで出た変更が時刻つきで積まれ、厨房にいま出ている食数との差分が右側で動きます。中央の縦線は工程の締切で、盛り付け開始の6時50分より前の変更は数の修正で受け、それ以降は配膳後の差し替えで受ける。どちらになるかがその場で分かります。

けさの差し替え
設計のポイント
変更を受け付けるか断るかを人の判断にしない。工程の時刻が線を引き、画面が「間に合う・間に合わない」を言う。
厨房の側も同じ画面
フロアが打った変更が厨房のモニタに即座に映る。伝言と電話をやめて、同じ数字を両方が見る。
記録が勝手に残る
誰が何時に何を変えたかがログになる。この履歴が翌月の読みの材料になるので、記録のための入力は要らない。

04. 常食からミキサーへ、静かに動いている

食形態の構成比が3ヶ月でどう動いたかを週ごとに積み上げた画面。誰がいつ常食から軟菜へ、軟菜からきざみへ移ったかの履歴と、そのきっかけが並びます。日々の欠食とは時間の尺度が違う動きで、こちらは翌月の食材発注ととろみ剤の量に効きます。

形態の推移
設計のポイント
日ごとの読みと、月単位の構成比の動きを別の画面に分ける。効く先が仕込みと発注で違うため。
移行のきっかけ
肺炎で入院したあと、義歯が合わなくなってから。変更のきっかけを履歴に残し、管理栄養士のカンファ資料にそのまま使える形にする。
来月の下地
この傾きが続くと来月ミキサーが何食増えるか。発注量ととろみ剤の消費を、推移から見積もる。

05. 盛らずに残した食数を、金額にする

月次の答え合わせ画面。読みの幅に収まった日と外れた日をカレンダー状に並べ、外れた日には残した理由が付きます。上段には測り方をそのまま出しました。盛らずに残した食数とその材料費、配膳直前に作り足した回数。その隣に、当日の朝に分かっていたことが何時間前倒しになったかが並びます。

先月の勘定
設計のポイント
的中率を出す画面にしない。追うのは捨てた金額と、配膳直前に作り足した回数の推移だけ。
形態別のずれも見る
合計が合っていた日でも、ミキサーだけ外していれば外れた日として数える。現場が困った日を取りこぼさない。
理由が資産になる
「金曜は入浴日で朝食が遅れる」のような施設固有の癖が、外れた日のメモから言葉として貯まる。

OUTCOME

変わったこと

朝の申し送りをやめる話ではありません。申し送りで初めて分かっていたことを、前日の15時にどこまで前へ倒せるか。狙いはそこだけです。

01

確定している数を先に使い切り、読みが担当するのは残った十人ほどだけ

Before名簿の合計から頭の中で引き算して、厨房のホワイトボードに数字を書く。どこまでが確かな数でどこからが勘か、書いた本人にも分かれていない。
After届と食事箋で埋まる42食は緑、読みが担当する9人ぶんは青。締める人が、何を疑って何を信じればいいか画面の色で分かる。

読みの範囲を狭く見せることは、AIの手柄を小さく見せることでもあります。それでいいと考えています。担当している範囲がはっきりしているほうが、現場は直しやすくなります。

02

当日の朝に判明していた欠食が、前日15時の締め表に載る

Before火が入ったあとの申し送りで変更を聞き、余ったおかゆときざみの小鉢の行き場を厨房が探す。
After前日のうちに数が動き、5時台の仕込みが最初から正しい数で始まる。当日に出る変更は、6時50分の線で受け方が変わる。

全部が前日に分かるようにはなりません。夜中の発熱も、朝の傾眠も、前日には起きていない出来事です。前へ倒せるのは、受診の予定や続いている食欲の低下のように、きのうの時点で兆しがあったぶんに限られます。

PROCESS

2ヶ月の進め方

オンラインと施設への訪問を組み合わせて、2ヶ月で納品まで進めます。食事摂取量の記録が既にあるぶん、実績を貯めるところから始めなくて済むのが、この案件が短い理由です。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + 既存記録の棚卸し

厨房とユニットに立って、食数がどこで決まっているかを追う月。

前日の締めから朝の申し送り、5時台の仕込み、配膳、下膳までを一日ついて回ります。介護記録システムに入っている食事摂取量と、厨房が毎日書いている食数表。この2つの間に欠食届の紙が挟まっていて、どこでつながっていないかを洗い出します。あわせて、過去1年ぶんの記録を取り出す方法を決めます。並行して、締め表のマス目の切り方を管理栄養士と一緒に固めます。

  • 締め・仕込み・配膳・下膳の同行と聞き取り
  • 介護記録システムからの食事摂取量の取り出し方の確認
  • 食形態の区分と欠食の数え方の取り決め
  • 締め表・名指し画面の下書き
2
MONTH 02 / 予測の検証 + 開発 + 並走納品

過去1年で読みを試し、いつもの締めと2週間並べる月。

取り出した記録で読みを試作し、先月の各日をAIに読ませて実際とどれだけずれたかを検証します。揺れる人の抽出がフロアの実感と合うかを職員に見てもらい、外れ方の癖を調整。画面を開発したら、いつも通りの締めを続けたまま横に並べて2週間走らせ、タブレットの置き場所と文字の大きさを直してから本番へ切り替えます。

  • 過去記録での読みの検証と揺れる人の抽出精度の確認
  • 締め表・名指し・けさの差し替え・月次画面の開発
  • いつもの締めとの並走検証(2週間)
  • 納品 + 外れた日の理由を戻す運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 給食は業者に委託していて、厨房は施設の中にありません。それでも使えますか。
    使えます。委託の場合は締切がもっと手前に来るので、むしろ効き方が変わります。施設外で調理して運ぶ方式だと直前の食数変更が難しく、契約上の締切が前日や数日前に置かれていることが多い。その締切に合わせて締め表の時刻を設定し、締切を過ぎたぶんは「何食ぶんが返せない数として残るか」を画面に出す形にします。委託先へ出す食数の根拠が数字で残るので、月次の精算のやりとりも軽くなります。
  • Q2 食事摂取量の記録は付けていますが、紙のチェック表です。
    過去のぶんは紙のままで構いません。最初の月に、直近数ヶ月ぶんを読み取って実績の形にするところまでこちらでやります。仕組みが入ったあとは、ユニットのタブレットで付ける摂取量の入力がそのまま実績になるので、記録のための作業は増えません。介護記録システムを使っている施設なら、そこからCSVで取り出せることがほとんどです。
  • Q3 AIが「この人はきょう食べない」と決めるのは、抵抗があります。
    決めません。画面が出すのは「この方は最近3日、朝を半分以上残しています」という記録の要約と、丸×を付ける欄だけです。判断はユニットの職員がします。実際、AIより職員のほうが正確な日が多いはずで、そこは前提にしています。仕組みの役割は、58人ぶんの記録を毎日見返す代わりに、見るべき十人ほどを絞って15時までに机の上へ出しておくことです。
  • Q4 食数を絞って、足りなくなるのが怖いです。
    だから全部を読みで絞る作りにはしません。形態ごとに「攻める・守る」を施設が決められるようにして、ミキサー食や治療食のように切らすと代替の効かない区分は、名簿どおりに固定できます。最初に攻めるのは常食のご飯と汁物だけ、というくらいで十分です。外した日の理由が貯まってくると幅は自然に狭まるので、そこから広げるのが現実的な順番だと考えています。

朝の申し送りで初めて分かる欠食を、前日15時の締め表へ。

盛らずに残したおかゆと、配膳直前にミキサーへかけ直した1食。
読みの材料は、介護記録に毎食入れている摂取量のチェック。もう施設の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、厨房とユニットが毎日見る画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。