EvoQuest
EvoQuest DX業務システム / 業務効率化 2026.08

SCENARIO ── FOOD MAKER SALES CASE

バイヤーが聞くことは決まっている。
決まっていないのは、誰がいつ返すか。

石狩で干物と味付け切身を作る水産加工メーカーを想定します。従業員12名、うち製造が9名で、営業は社長ともう1名。年に3〜4回の商談会に出て、そのたびに名刺が30枚ほど増えます。商談そのものは短く、20分の枠に会社紹介と試食と質疑が入ります。最後に必ず宿題が出ます。規格書を送ってください、道外への発注リードタイムは何日ですか。この開発プランは、その宿題を期限つきの1行にして1つの台帳に集め、毎週月曜9時に今週返す分を確定する仕組みです。送った書類は商品と版と送り先の表で持ちます。

想定領域
取引先・商談管理システム / 食品メーカーの販路開拓
担当範囲
業務ヒアリング・いまの名簿の棚卸し・画面設計・実装・商談会1回の並行運用
想定対象
従業員12名の水産加工メーカー(営業は社長ともう1名、年3〜4回の商談会出展)
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

北海道の食品メーカーには、道内外のバイヤーと会う場が公的に用意されています。北海道経済部が募集している道産食品オンライン個別商談会は、主要原材料が道内産の自社商品を持つ中小・小規模事業者が対象で、4日間の会期のなかで日程を調整して個別に商談します。前回の商談バイヤー数は13社でした。参加の前には準備セミナーと事前リハーサルが組まれています。会う場と、会う前の練習は、費用をかけずに手に入る状態になっています。

会ったあとの段取りも公表されています。日本政策金融公庫の商談会ガイドブックは、商談会後のアプローチを時期で区切っています。24時間以内にお礼と、入手した名刺や商談内容の整理と優先順位づけ。1週間以内にフォローアップの電話やメールで追加の要望を確認。2週間以内に検討状況を伺って次回の商談を要請。3週間目以降に反応がなければ、将来の取引見込み先としてリスト化する。同じガイドブックは、商談会後に振り返る6つの点のひとつに「フォローアップ体制(リード管理・追客の成功率)」を挙げています。

バイヤーが知りたいことも、すでに整理されています。農林水産省のFCP展示会・商談会シートは、出展者が伝えたい情報とバイヤーが知りたい情報を1枚にまとめた統一シートで、項目は30個。賞味期限、保存温度帯、1ケースあたりの入り数、発注リードタイム、最大・最小のケース納品単位、一括表示とアレルギー表示、衛生管理への取組み、危機管理体制まで並びます。つまり聞かれることは事前に分かっていて、答える段取りも日数まで示されているということです。それでも商談が止まるのは、20分の枠のなかで答えきれなかった項目が、名刺の裏と社長の手帳に散らばるからです。

CHALLENGE

課題

  • 01 宿題が名刺の裏で止まる。1日の商談会で名刺が30枚、その場で答えられなかった質問が20件ほど出ます。書き留める先は名刺の裏か、シートの余白。会場を出た時点で全部が同じ束になり、どれが1週間以内の分でどれが2週間以内の分かを、分けられる形になっていません。
  • 02 送った書類の版が残らない。規格書はメールに添付して送るので、控えは送信済みフォルダの中です。同じ干物でも、塩を替えた前と後、包装を変えた前と後で中身が違います。誰にどの版を送ったかを一覧で出せないため、2026年4月1日にカシューナッツが特定原材料に加わったときのように表示の決まりが変わっても、差し替えを送る先を名簿から出せません
  • 03 社長が製造に入る週は、返事が全部止まります。いつどこで会ったか、先方が気にしていたのは値段だったのか納品の頻度だったのか。経緯が手帳にしかないので、事務の担当者は当たり障りのない返事しか書けず、結局は社長の手が空くのを待つことになります。

APPROACH

アプローチ

動かさない一点は、毎週月曜9時の30分です。今週返す宿題を取引先ごとに並べ、誰がいつまでに出すかをその場で決めます。月曜に置くのは、バイヤーの側も週のはじめに商談の予定を組むためで、金曜に決めると土日をはさんで2日が消えるからです。商談会に出た週だけは例外にします。会場を出たその日の夜に24時間の段が来るので、月曜を待たずに当日の宿題を締めます。

宿題の種類は4つに絞ります。規格書、サンプル、見積と取引条件、それ以外の質問。台帳の入力欄はFCPシートの項目番号と同じ並びにして、その場で答えられなかった項目番号を選ぶだけで1行になるようにします。自由に文章を書かせると、あとから読み返したときに何を求められたのか分からなくなります。番号で選べば、同じ質問が別の取引先からも来ていることに気づけます。

送った書類は、商品と版と送り先の3つで持ちます。規格書を1件送るたびに、どの商品のどの版を、いつ、誰に送ったかが1行増えます。原材料の仕入先を替えたとき、包装を変えたとき、表示の決まりが変わったときに、差し替えの対象になる取引先がその場で並びます。カシューナッツの経過措置は2028年3月31日までなので、いま出回っている版がいつまで使えるかも同じ行から分かります。表示の中身を当社が判断することはしません。差し替えが要る先を漏らさず出すところまでです。

入力のタイミングは業務のなかに埋めます。商談会では、会場でシートの項目番号を押すだけ。通常の訪問では、帰りの車を止めて3分。この3分に何を入れるかを最初に決めておいて、それ以外は入力させません。名簿が続かなくなるのは道具の出来よりも、誰がいつ入れるかを決めないまま始めた場合のほうが多いためです。既存の名刺入れとメールはそのまま残します。

効果は成約率で測りません。取引が決まるかどうかは相手が決めることで、こちらの手元にあるのは止めた日数のほうです。宿題が出てから返すまでの平均日数、期限を過ぎた宿題の件数、3週間動いていない取引先の数、社長以外が返した宿題の割合、差し替えの対象を洗い出すのにかかった時間。この5つを月に一度並べます。

CONSULTATION

まず、名簿がどこに何件あるかを数えるところから。

商談会でもらった名刺が、返事をしないまま束になっている。
去年送った規格書がどの版だったか、探さないと分からない。
いまの名刺入れとExcelを見せていただくところから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプルです。事務所のパソコンと、商談会の会場で使うタブレットの組み合わせを想定しています。会社名・取引先名・担当者名・件数・金額はすべて想定例です。実在の企業やバイヤーとは関係ありません。

01. 月曜の朝に開いて、今週返す分を上から決める

社長と事務が毎日いちばん開く画面です。宿題が期限の近い順に並び、行ごとに取引先、種類、出てからの日数、担当が入ります。24時間以内と1週間以内の段は色を分けて上に固め、期限を過ぎた行には印が付きます。月曜の30分でこの画面を上から順に見て、今週やる分に担当と日付を入れます。

今週の宿題
設計のポイント
件数を出さない。何件あるかより、今週どれを返すかが決まる並びにする。担当と日付が入っていない行は上に残る。
商談会の週
会場を出た当日の夜に締める段を別に置く。月曜を待つと、24時間以内の分が最初から間に合わなくなる。
過ぎた宿題
消さずに残す。期限を過ぎた件数そのものが、この仕組みで直したい数字になる。

02. 1社の経緯と、出した書類を1枚にまとめる

返事を書く前に開く画面です。いつどこで誰と会ったか、そのとき何を聞かれたか、送った書類と日付、伝えてある取引条件が上から時系列で並びます。先方が気にしていた点は、値段・納品の頻度・ロット・日持ちのように選んで残すので、経緯を知らない人でも読み取れます。次に返す宿題が右側に出ます。

取引先カルテ
設計のポイント
商談メモを自由記述だけにしない。気にしていた点は選択にして、あとから同じ観点の取引先を横に並べられるようにする。
引き継ぎ
この画面だけで下書きが書ける状態を目標にする。社長が製造に入っている週でも、事務が途中まで進められる。
残すもの
名刺の画像とFCPシートの控えを同じ行にぶら下げる。紙の名刺入れは捨てずに残す。

03. どの取引先に、どの版を送ったかを表にする

商品を縦、送り先を横に置いた表です。升目には送った版と日付が入ります。原材料や包装を変えて版が上がると、古い版のままの升目に印が付きます。表示の決まりが変わったときは、対象になる原材料を選ぶと、差し替えが要る取引先だけが抜き出されます。経過措置の期限も同じ画面に置きます。

提出書類の版
設計のポイント
書類を商品だけで持たない。版と送り先まで持って初めて、差し替える相手が出せる。
線を引くところ
表示の内容そのものは当社では判断しない。抜き出すのは対象の取引先までで、書き換えは専門家と行う。
経過措置
カシューナッツの経過措置は2028年3月31日まで。いつまで古い版で通るかを同じ行に出す。

04. 3週間動いていない先を、見込み先へ落として数える

月に一度開く画面です。最後にやりとりした日から3週間を超えた取引先が並びます。行ごとに、こちらが返していない宿題があるのか、返したうえで反応がないのかが分かれます。前者は今週の宿題へ戻し、後者は将来の取引見込み先として登録して、新商品ができたときの案内先にまわします。

止まった商談
設計のポイント
止まった理由を2つに分ける。こちらが止めた分と、返して待っている分を混ぜると打つ手が決まらない。
見込み先の扱い
落とすのは今週の宿題からで、名簿からは消さない。新商品の案内先として季節ごとに見返す。
商談会の振り返り
出展した会ごとに、会ったバイヤーの数、出た宿題の件数、1週間以内に返せた割合を並べる。次にどの会へ出るかの材料にする。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、この会社の商談まわりが3つの点で変わる想定です。

01

商談で出た宿題が、期限のある1行になる

Before書き留める先は名刺の裏とシートの余白。会場を出ると束の中に紛れ、思い出したときには2週間たっていた。返すのが遅れたことに気づく場所もなかった。
After会場でその場で1行になり、月曜の朝に期限順で並ぶ。想定例では、商談会1回で出た宿題18件のうち何件を1週間以内に返せたかが、翌月には数字で出る。

早く返したから取引が決まるとは限りません。相手の都合も予算の時期もあります。この画面が出せるのは、こちらの側で止めた日数だけです。

02

送った書類の版が、取引先ごとに残る

Before控えは送信済みメールの中。同じ商品の規格書が何版あるかも、誰にどれを送ったかも、探さないと分からなかった。
After商品と版と送り先の表になる。原材料を替えたときも、表示の決まりが変わったときも、差し替えを出す先がその場で並ぶ。

表示をどう書くかは当社の担当範囲の外です。特定原材料の扱いや表示の可否は、保健所や食品表示に詳しい専門家にご確認ください。

03

社長が製造に入っている週も、返事が前に進む

Before経緯が手帳にあるので、事務は当たり障りのない返事しか書けなかった。結局は社長の手が空くまで、どの案件も止まっていた。
After取引先カルテを開けば、いつ誰と会って何を気にしていたかが出る。事務が下書きまで進め、社長は値決めと最後の一読だけを担当する。

取引条件の判断は社長が行います。画面が代われるのは、経緯を思い出す部分と、書類を探す部分までです。

PROCESS

3ヶ月の進め方

石狩・札幌近郊なら工場と事務所へ伺い、道外はオンラインで進めます。3ヶ月にしているのは、最後のひと月を次の商談会に合わせて使うためです。会場での入力が20分の商談のなかで回るかどうかは、実際の会でしか確かめられません。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + いまの名簿の棚卸し

名刺とExcelとメールに、何件あるかを数える

事務所に半日お邪魔して、名刺入れ、Excelの取引先一覧、メールの送信済みフォルダ、社長の手帳を並べます。同じ会社が何か所に出てくるか、どれが新しいかを見て、集めるだけで済むのか入力の流れから作り直すのかを判断します。あわせて過去に送った規格書を集め、商品ごとに何版あるかを数えます。FCPシートの30項目のうち、いま即答できる項目とできない項目も分けておきます。

  • 名刺・Excel・メール・手帳にある取引先の重複と件数の確認
  • 過去に送った規格書の収集と、商品別の版の数え上げ
  • FCPシート30項目のうち即答できない項目の洗い出し
  • 商談会の年間予定と、次に出る会の日程の確認
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MONTH 02 / 台帳と4画面の開発

宿題の並びと、書類の表を先に作る

今週の宿題、取引先カルテ、提出書類の版、止まった商談の4画面を開発します。先に作るのは宿題の並びと書類の表で、カルテの見た目はそのあとに整えます。並行して、前の月に集めた名刺と規格書を取り込みます。取り込みは全部を一度に入れず、直近1年に会った先から始めます。古い名刺まで入れると、どれが生きている取引先か分からない台帳ができあがるためです。

  • 4画面の開発と、FCPシート項目番号にそろえた入力欄の実装
  • 直近1年ぶんの名刺と、収集した規格書の取り込み
  • 商品と版と送り先の表の初期登録
  • 月曜9時の30分に何を見るかの手順の作成
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MONTH 03 / 次の商談会に合わせた並行運用

会場で押せるかどうかを、実際の会で確かめる

次の商談会に当社も同席し、会場でのタブレット入力が20分の商談のなかで回るかを見ます。押しにくかった場面と、あとから手で直した項目を洗い出して、その場の入力を軽くします。会が終わったあと、24時間の段と1週間の段を実際に通し、宿題が何日で返せたかを数えます。ここまでを確かめてから、古い名刺の取り込みと、社内での引き継ぎに移ります。

  • 商談会への同席と、会場での入力の観察
  • 押しにくかった項目の修正と、入力欄の削減
  • 24時間・1週間の段を通した宿題の日数の測定
  • 過去の名簿の追加取り込みと、事務担当者への引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 kintoneやZoho CRMのような既製のサービスでは足りませんか。
    足りる場合があります。取引先と担当者と商談メモを1か所に集めたいだけなら、既製サービスの項目を足すだけで回ることが多く、その日から使い始められます。判断が分かれるのは、送った書類を商品と版と送り先の3つで持ちたいときです。ここは商品マスタと送付履歴を結ぶ作りになるので、標準の項目追加では組みにくくなります。当社が相談を受けたときは、まず既製サービスの無料の範囲で手元の取引先を20件ほど入れて1週間使っていただきます。公表価格と無料で試せる範囲は関連ページの解説記事にまとめています。それで足りるなら、作らずに初期設定だけをお手伝いします。
  • Q2 費用と期間はどれくらいですか。
    期間はこの4画面の範囲で3ヶ月を想定しています。費用は画面の数と、取り込む名簿の量で変わるため定価がありません。先に決めていただくのは3つです。書類の版を管理する対象を規格書だけにするか見積と検査結果まで広げるか、会場での入力をタブレットで行うか帰社後にまとめるか、過去の名刺をどこまで遡って取り込むか。この3つが決まると概算が出せます。初回の相談と概算の見積もりは無料で、北海道内であれば工場まで伺います。
  • Q3 規格書そのものを作ってもらえますか。
    作りません。原材料の書き方、アレルゲンの範囲、賞味期限の設定根拠は、商品を作っている側にしか判断できない部分を含みます。当社が担当するのは、できあがった書類をどの取引先にどの版で出したかを残すところと、差し替えが要る先を抜き出すところまでです。書き方そのもので迷われている場合は、保健所や食品表示に詳しい専門家、あるいは北海道よろず支援拠点のような無料の相談窓口を先に使うことをお勧めしています。
  • Q4 名刺の入力が続くか心配です。
    続かなくなるのは、入れる人と入れる時刻が決まっていない場合がほとんどです。この仕組みでは、商談会は会場でその場、通常の訪問は帰りの車で3分と決めて、その時間に入る量まで入力欄を減らします。3ヶ月目に商談会へ同席するのも、20分の商談のなかで実際に押せるかを見て、押しにくい項目を削るためです。入れた情報が翌週の月曜に自分の宿題として戻ってくると、入れる理由が本人の側にも生まれます。
  • Q5 商談会に出ていない会社でも使えますか。
    使えます。宿題が出る場面は商談会だけではありません。飛び込みの引き合い、既存の取引先からの新商品の打診、道の駅や土産店からの問い合わせでも、規格書と見積と条件の確認は同じように発生します。その場合は月曜9時の30分だけを残し、商談会の週の例外を外した形にします。逆に、まだ商談会に出たことがない会社であれば、北海道や札幌市が募集している商談会の日程を最初のひと月で一緒に確認するところから始められます。

まず、名簿がどこに何件あるかを数えるところから。

商談会でもらった名刺が、返事をしないまま束になっている。
去年送った規格書がどの版だったか、探さないと分からない。
いまの名刺入れとExcelを見せていただくところから、ご相談ください。