EvoQuest
EvoQuest Food需要予測AI 執筆:水上貴洋(取締役) 2026.07

SCENARIO ── DISH MIX FORECAST CASE

あすは30人。
それでも、ポテトサラダを何食ぶん仕込むかは決まらない。

札幌の路地にある席数40ほどの居酒屋。あすの来客が30人と分かったところで、仕込み場で決める必要があるのは煮込みを何リットル炊くか、ポテトサラダを何食ぶん作るかです。同じ30人でも、二次会の二人連れが続く夜と、8名の宴会が1組入る夜では出る品が入れ替わります。レジには品目ごとの出数が何年ぶんも残っているのに、仕込み量を決めるときに使われているのは月平均の構成比か、料理長の記憶のどちらか。品目ごとの出数を、幅を持たせて予測し、前夜のうちに仕込み数指示書を確定して厨房に貼るところまでを、EvoQuest Foodの業務システムとして形にします。

想定領域
品目別の需要予測 / 飲食店の業務改善
担当範囲
要件整理・予測設計・画面設計・実装
想定対象
席数40前後の個人店(品書き60品ほど)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

売上予測にメニューの構成比を掛けて、品目ごとの仕込み数を出す。手順そのものは検索すればいくらでも出てきますし、レジにも売れ行きを分析する画面がついていて、どの品がよく出ているかは表になります。それでも個人店の仕込み場でその表が開かれないのは、構成比に月平均の値を使っているからです。実際の構成比は日ごとに動きます。8名の宴会が1組入れば大皿と揚げ物に寄り、二人連れが続けば刺身と一品物に寄る。月平均を掛けて出した数は、どの日にも少しずつ合いません。

当社がこのシナリオで目指すゴールは、よく当たる予測そのものではありません。前夜22時半、料理長があすの仕込み数指示書を確定して厨房に貼る。この一つの決定が毎晩確実に終わることです。読む品は絞ります。品書き60品のうち、仕込みが要る12品ほどだけ。読まない品を先に決めてしまうほうが、指示書を確定する手間を減らせます。

CHALLENGE

課題

  • 01 読めているのは客数までで、仕込みは品目でしか動かせない。来客30人に対して各品目をどれだけ仕込むかは、料理長が経験から決めています。その根拠が残らず、休みの日は代わりの担当者が判断できません。
  • 02 毎日の計算に同じ月平均の構成比を使っている。8名の宴会が入る夜と二人連れが続く夜では、出る品が入れ替わります。予約表を開けば分かるはずのことが、仕込み数の計算に入っていない。
  • 03 切れた品と残った品が、どこにも記録されない。残って捨てた分は目に入るので翌週の仕込みが減る。20時半に切れてお断りした分は誰の目にも残らないので、翌週も同じ数のまま。品切れで売れなかった分を考慮せず、仕込み量だけが減っていきます。

APPROACH

課題への対応

起点に置くのは、前夜22時半の一度の確定です。あすの仕込み数指示書に品目ごとの数を入力して確定します。決めるのは料理長、期限は閉店前の片付けが始まる時間。予測を確認する時刻と担当者を、あらかじめ決めておきます。画面は数字を眺めるためではなく、この仕込み表を確定するために作ります。

予約で決まっている食数と、予測が必要な食数を分けます。コースが2組と宴会が1組入っていれば、その夜に出る品のいくらかはもう確定しています。予約分を確定食数として確保し、残った席の注文分だけを予測します。画面では確定の分と予測の分を塗り分け、その品の指示数のうち何割を予測が担っているかを出します。担う範囲が狭い品ほど、予測が外れたときの影響を限定しやすい。

予測は一つの数字ではなく幅で出します。ポテトサラダなら18〜24食。真ん中の21が指示数の初期値として入っていて、料理長はその場で書き換えられます。書き換えた事実は記録に残り、翌週の材料になる。予測が外れた夜には理由を一言だけ選んでもらいます。団体が入った、雨で流れた、近所の祭り。仕込み数は厨房の担当者が決め、システムは予測の根拠と確定期限を示します

効果の見かたは、当たった外れたから離します。切れた品はその時刻を打ってもらい、残りの営業時間に売れた可能性がある食数を推計します。残った品は繰越・まかない・廃棄に分けて記録し、廃棄分の原価を集計します。週に一度、この二つを品目ごとに金額で並べます。予測が何時間前に「そろそろ切れます」と示せていたかも、同じ表に出します。

CONSULTATION

「30人ぶん」の先にある、品目ごとの数まで。

来客数までは読めているのに、鍋の大きさは結局その場で決めている。
仕込みが品目でしか動かないなら、予測も品目で出したほうが使えます。
どの品を読んで、どの品を読まないかの線引きから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。前夜の確定は事務室のパソコン、営業中の記録はカウンター内のタブレットで使う前提の作りです。店名・品名・食数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. あすの仕込み表

閉店前に翌日の仕込み量を決める画面。予測する12品が札の形で並び、1枚ずつに予測の幅・予約で確定している分・指示数の欄があります。右上には前夜22時半までの残り時間。欄がすべて埋まると、そのまま厨房に貼る一枚として印刷できます。

仕込み表
設計のポイント
表を組まず札を並べる形にして、「あと何枚決めれば終わるか」が数で見えるようにする。
確定と予測の塗り分け
1枚の札の中で、予約から確定している食数を濃い色、予測が担う分を斜線で表示。
締切の扱い
22時半を過ぎると未記入の札には予測の中央値がそのまま入り、誰が入れたかが記録に残る。

02. なぜ18〜24食なのか

札を1枚めくると、その幅の出どころが並びます。先週と先々週の同じ曜日の出数、あすの予約の中身、気温、一緒に注文されることが多い品。読む12品と読まない48品の線引きも、この画面で入れ替えます。

予測の内訳
設計のポイント
幅の理由を「+2食:8名の宴会」のように1行ずつ分解し、足し引きの跡を残す。
読まない品
注文が入ってから作る品は予測の対象から外し、外した理由を画面に明示する。
併売
この品と一緒に出やすい品を並べ、片方を切らしたとき、もう一方の注文数がどう変わったかを確認できるようにする。

03. 切れた時刻を打つ

カウンター内のタブレットで、切れた品を1タップで打つ画面。打った時刻から、残っていた営業時間ぶんの売り逃しを推計します。閉店後は残った数を打ち、あすへ繰り越すのか捨てるのかをその場で選ぶと、捨てた金額がすぐ出ます。

営業中
設計のポイント
営業中に触るのは品名を押す1動作だけ。数量の入力は閉店後にまとめて。
事前通知
出足が速い品は「この調子だと21時前に切れます」と早めに出し、間に合う時間帯のうちに知らせる。
閉店後の記録
残数を打たないと翌日の札が開かない。記録の抜けをその日のうちに止める。

04. 先週、いくら捨てていくら売り逃したか

捨てた金額と売り逃しの推計を、品目ごとに並べて見る画面。どちらか一方だけが大きい品は仕込み数の見直し候補として表示されます。「何時間前に事前通知が出せたか」も同じ表に載せ、予測の効果を時間でも見られるようにします。

週の集計
設計のポイント
捨てた金額と売り逃しを左右対称の棒で並べ、片側だけ伸びている品を目で拾えるようにする。
推計の見せかた
売り逃しは推計だと分かる表記を付け、算出の式を画面から開けるようにする。
打ち手
行から直接「来週の下限を22食に上げる」を提案し、承認すると翌週の仕込み数に反映される。

05. 予測が外れた日の記録と修正案

外れた夜に選んでもらった理由が、この画面に集まります。同じ理由が続いていれば、予測の直し方を候補として出す。直すかどうかは店の判断で、承認するまで予測は変わりません。

予測の修正
設計のポイント
修正案は担当者が承認してから適用する。いつ誰が何を変えたかを履歴に残す。
理由の粒度
選択肢は5つまで。増やすと打たれなくなるため、その他は自由記入の一行で受ける。
効きめの確認
直したあと4週間の外れ幅を並べ、直しが効いたかどうかを後から見られるようにする。

OUTCOME

導入による変化

仕組みが運用に乗ったあと、仕込みまわりの段取りが4つの軸で変わる想定です。

01

仕込みの指示が
「30人ぶん」から品目ごとの数へ。

Before前夜に翌日の客数だけを見当づけ、鍋の大きさと仕込み表の枚数は料理長がその場で決めていた。
After品目ごとに数の入った指示書が前夜のうちに確定し、翌朝そのまま厨房に貼れる。

読む品は12品ほどに絞ります。全品を読もうとすると確認する項目が多くなるので、注文が入ってから作る品は最初から外します。

02

朝いちの仕込みが、料理長の出勤を待たなくなる。

Before10時に入ったパートさんが、11時に出てくる料理長を待って何から手を付けるかを聞いていた。
After貼ってある一枚に品目と数が入っているので、手の空いた人から順に始められる。

数の根拠まで印刷面に載せると文字が多すぎて読めないので、紙は品名と数と担当だけ。理由を見たい人は画面で開きます。

03

予測の効果が
点数から、金額と時間へ。

Before「よく当たる」「今日は外れた」で終わり、仕込み数はいつまでも同じ。
After先週いくら捨てて、いくら売り逃したかが品目ごとに出る。品切れの事前通知が何時間前だったかも並ぶ。

廃棄額と売り逃しの推計を並べ、仕込みを減らしすぎていないかも確認できるようにします。

04

予測が外れた理由を
翌週の仕込み数の見直しに使う。

Before大きく予測が外れた夜は話題にはなるが、翌週の仕込み数には反映されないまま流れていた。
After選んだ理由が溜まり、同じ理由が続けば予測の直し方が候補として上がる。承認した修正だけが予測に反映される。

修正した内容と承認者を記録し、変更後に予測と実績がどう変わったかを確認できるようにします。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌市内なら店舗へ伺い、道外はオンラインで進めます。読む品を絞るところから始めるので、設計から納品まで2ヶ月の想定です。月の区切りで実際に触れるものをお渡しし、厨房で使ってみた感想を次の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 読む品を決める + 指示書の形を決める

「どの品を読むか」を厨房と一緒に線引きする月。

レジの販売記録を1年ぶん取り出し、仕込みが要る品と注文を受けてから作る品に分けます。読む対象を12品ほどに絞り、いまの仕込み表を見ながら指示書の一枚に何を載せるかを決めます。

  • 厨房でのヒアリング(2〜3回)
  • レジから販売数を取り出して品目を棚卸し
  • 読む品・読まない品の線引き
  • 指示書と仕込み表の下書き
2
MONTH 02 / 予測の実装 + 記録と週の集計

幅を出す仕組みと、実績と照らす表を作る月。

曜日と予約の中身から品目ごとの出数を幅で出す仕組みを組み、気温の影響は品ごとに後から足します。切れた時刻と残数の記録、週ごとの集計まで作ったら、2週間は紙の仕込み表と並走させ、指示書を22時半までに確定できるかを確かめてから納品します。

  • 品目別の予測の試作と幅の調整
  • 5画面の開発
  • 紙の仕込み表との2週間の並走
  • 納品 + 運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 品目ごとの出数まで読めるものですか?
    全品は読めません。当社が読む対象にするのは、仕込みが要って、1日に何食か以上は出る品だけです。席数40の店だと12品前後になります。それ以外は注文を受けてから作る品なので、読む必要そのものがありません。読む範囲を先に狭めておくと、外れたときの影響も、毎晩の入力の手間も小さく収まります。
  • Q2 レジのデータが古い形式でも始められますか?
    日ごとの品目別の出数が表計算データで出せれば十分です。時間帯まで出れば「何時に切れそうか」の事前通知の精度が上がりますが、無くても始められます。出せる形が分からない場合は、レジの画面を一緒に見ながら確認するところからお手伝いします。
  • Q3 予約が少ない店でも意味がありますか?
    あります。予約が少ないほど予測が担う範囲は広くなるので、幅を広めに出し、下限だけ決めて上は当日に足す形で構えます。逆に宴会やコースの予約が多い店では、確定している分を引き算するだけで予測の範囲が一気に狭くなります。どちらの店かで画面の使い方が変わります。
  • Q4 入力の手間はどのくらい増えますか?
    営業中は切れた品を1タップ、閉店後に残った数を打つのに数分です。前夜の指示書は、予測の数字が初期値として入った状態から直したいところだけ書き換える形なので、慣れれば5分ほどで確定できる想定にしています。手間が増えたと感じた時点で使われなくなるので、そこは並走期間に必ず確かめます。

「30人ぶん」の先にある、品目ごとの数まで。

来客数までは読めているのに、鍋の大きさは結局その場で決めている。
仕込みが品目でしか動かないなら、予測も品目で出したほうが使えます。
どの品を読んで、どの品を読まないかの線引きから、ご相談ください。