EvoQuest
EvoQuest Foodメニュー分析 2026.07

SCENARIO ── MENU ANALYSIS CASE

品書きに足すのは簡単で、外すのは怖い。
その「外す判断」に、材料を並べる。

常連に頼まれて足した一品、季節で入れてそのまま残った麺、開店当時からの思い入れの皿——個人店の品書きは、放っておくと増える一方です。POSにはABC分析のレポート機能があるのに、月に一度眺めて終わり。そんな店のメニュー改定を、出数×粗利×仕込み負担で全品を仕分けする棚卸しボードと、外す前に「誰が頼んでいるか」まで見る品のカルテで、季節ごとに回る型にする業務システムを、こう設計します。決めるのは店主。仕組みが受け持つのは、決めるための材料を並べるところまでです。

想定領域
メニュー分析 / 飲食店DX
担当範囲
要件整理・分析設計・UI設計・実装
想定対象
個人店〜小規模店 1〜2店舗
想定期間
設計〜初回の改定会議まで 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

メニュー分析の定番はABC分析です。品ごとの売上や出数を並べて、構成比の上位からA・B・Cに区切る——やり方は検索すればいくらでも出てきますし、いまどきのPOSレジなら標準機能で表が出ます。それでも個人店で回らないのは、表を出すことと、「この品を外す」と決めることのあいだに、大きな距離があるからです。Cランクの品にも、毎週それを目当てに来る常連がいるかもしれない。数字だけで切ると、静かにお客さんが離れる。それが怖いから結局なにも外せないまま品書きは増え、仕込みは重くなり、冷蔵庫には出ない品のための専用食材が増えていきます。

この想定シナリオがゴールにするのは、きれいな分析レポートではなく、「残す・磨く・外す」を決める改定の会議が、季節ごとにちゃんと回ることです。出数と粗利に「仕込みにどれだけ手がかかるか」を重ねて全品を棚卸しし、外す候補には「誰が頼んでいるか」——一緒に出る品、注文する客の来店頻度——を添える。決めた結果はそのまま新旧の品書き対比になり、改定から4週間の答え合わせまで追いかけます。EvoQuest Foodの伴走として、初回の改定会議を一緒に回すところまでを想定した設計です。

CHALLENGE

課題

  • 01 品書きが増える一方。常連に頼まれて足した一品、フェアで入れてそのまま残った品。足すきっかけはあるのに外すきっかけがなく、気づけば45品。仕込みの段取りと専用食材だけが積み上がっていく。
  • 02 POSのABC分析は「表を出して終わり」。月に一度眺めても、Cランクの品を外すと決める勇気までは出てこない。売上構成比の表と「外して大丈夫」のあいだの材料が足りない。
  • 03 よく出る品と儲かる品が別物なのに、頭の中で混ざっている。看板のホッケ定食は仕入が上がって薄利のまま。逆に、出ないけど粗利の厚い一品が、品書きの隅で眠っている。
  • 04 改定の答え合わせをしていない。「あの品を外してから、あのお客さんを見ない気がする」が感覚のまま。値上げや入れ替えの結果を確かめる場がないから、次の改定もまた感覚に戻る。

APPROACH

アプローチ

使うデータは派手なものではありません。POSに残っているレシート単位の出数(どの品が、どの品と一緒に、昼か夜か)、料理ごとのざっくりした粗利、それに「仕込みにどれだけ手がかかるか」の3つです。直近90日の出数で全品をボードに仕分けしますが、ここでABC分析の弱点を設計に織り込みます。数字の下位=外していい品、ではない。だから外す候補の札には、機械がレシートから拾える範囲で「誰が頼んでいるか」を必ず添えます。単品注文の8割が瓶ビールと一緒に出る夜のアテなのか、毎週来る常連の目当てなのか。それが分かれば、「品書きから消す」だけでなく「夜のみ残す」「裏メニューにする」という中間の答えが選べます。切る・切らないの二択にしないことが、この仕組みの肝です。

もうひとつの肝は、分析を眺めるレポートではなく、会議の道具にすることです。画面の主役は、店主が札を動かして「残す・磨く・外す」を確定していく棚卸しボード。決めた結果はそのまま新旧の品書き対比になり、品数・専用食材・朝の仕込み時間がどれだけ軽くなるかが同じ画面に出ます。そして改定して終わりにせず、4週間の定点観測で「値上げした品の出数は落ちたか」「外した品の常連は来ているか」を確かめ、そこで残したメモが次の改定会議の最初の材料になる。分析→改定→答え合わせが一周つながって、はじめて「型」になります。

CONSULTATION

「何を外すか」を決められる店は、品書きも仕込みも軽くなる。

増え続けたメニュー、月に一度眺めるだけのABC分析、思い入れで残り続ける皿。
外す判断に必要なのは勇気ではなく、材料です。
POSデータの確認から改定会議の型づくりまで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。店主とEvoQuestが改定会議で同じ画面を見ながら進める前提の作りです。店名・品名・数字はすべて個人店の規模感に合わせた想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. メニュー棚卸しボード

全45品を「エース」「看板だが薄利」「静かな稼ぎ頭」「外す候補」の4列に仕分けする看板画面。初期配置は直近90日の出数と粗利から機械が置き、店主が札を動かして確定していきます。外す候補の札には「毎週の常連あり」「夜のアテ」の注意書きが付きます。

棚卸しボード
設計のポイント
レポートではなく会議の道具。札を動かして確定した結果が、そのまま改定案の下書きになる。
ABC分析との違い
出数だけでなく粗利と仕込み負担を重ねる。下位=外すではなく「会議で決める」列に置くだけ。
注意書き
数字で切ると危ない品(常連の目当て・夜のアテ)に、札の段階で気づける。

02. 一品ごとのカルテ

外す候補に挙がった品を深掘りする画面。12ヶ月の出数、昼と夜の出方、粗利と仕込み負担に加えて、「誰が頼んでいるか」——一緒に出る品、注文する客の来店頻度——を1枚にまとめます。残す・夜のみ・外すの中間の答えまで、この画面で選べます。

品のカルテ
設計のポイント
「外していいか」に答えるための画面。数字は下位でも、夜の常連のアテなら結論が変わる。
併売の見方
レシート単位で「単品の8割が瓶ビールと一緒」まで読む。目当ての品か、ついでの品かが分かる。
中間の答え
外す・残すの二択にしない。夜のみ・週末のみ・裏メニュー化までを選択肢として扱う。

03. 新旧の品書き対比

ボードで決めた結果を、今の品書きと次の品書き案の見開きで確認する画面。外す品には理由、残る品には値上げ・おすすめ昇格・夜のみの印が付きます。品数・専用食材・朝の仕込み時間がどれだけ軽くなるかが下段に出て、そのまま印刷用の品書きづくりに渡せます。

改定案
設計のポイント
分析の出口を「品書きそのもの」にする。会議の結論が、紙の品書きの改定まで一直線につながる。
軽くなる量
品数だけでなく、専用食材の数と朝の仕込み時間の変化を並べて出す。外す効果が体で分かる。
昇格の扱い
外すだけの改定にしない。静かな稼ぎ頭をおすすめ枠に上げる提案も、同じ画面で扱う。

04. 改定後の答え合わせ

改定から4週間、値上げした品の出数、外した品の影響(一緒に出ていた品の動き・常連の来店)、新入りの定着を定点で追う画面。気づいたことをメモに残すと、次の改定会議の棚卸しボードに最初の材料として出てきます。

定点観測
設計のポイント
改定をやりっぱなしにしない。「外して大丈夫だったか」に答えが出るから、次の会議でも外せる。
新入りの判定
お試し期間と目標の出数を最初に決めてから品書きに載せる。ずるずる残る品を新しく作らない。
メモの行き先
ここで残した一言が次回のボードに表示され、改定が「思いつき」ではなく「型」として回り出す。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、メニュー改定にまつわる判断が3つの軸で変わる想定です。

01

メニュー改定が
「思い立った時」から「季節ごとの型」へ。

Before改定は数年に一度の大仕事。品書きは増える一方で、仕込みと専用食材が積み上がっていた。
After直近90日の出数で棚卸しボードが自動で並び、季節の変わり目ごとに小さな改定会議が回る。

大改定を年1回まとめてやる店もあれば、季節ごとに数品ずつ動かす店もある。回す周期は店の商売に合わせて決める前提。

02

外す判断が
「勘と度胸」から「材料のある会議」へ。

BeforeCランクの品でも常連の顔が浮かんで外せない。結局なにも決まらず、品書きだけが増える。
After誰が頼んでいるか(併売・来店頻度)が札に出て、「夜のみ残す」のような中間の答えも選べる。

数字だけで切ると危ない品を機械が先に知らせる設計。最後の判断は、お客さんの顔を知っている店主に残す。

03

改定の結果が
「やりっぱなし」から「答え合わせ」へ。

Before値上げや入れ替えの影響は体感でしか分からず、「なんとなく客足が」の不安だけが残る。
After4週間の定点観測で出数と常連の来店を確かめ、気づきのメモが次回の会議に引き継がれる。

答え合わせがあるから、次の改定で思い切れる。外した品を戻す判断も、同じ画面の材料でできる。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインと店舗訪問を組み合わせながら、設計 → 開発 → 初回の改定会議まで3ヶ月で進める想定です。月の区切りごとに、実際に触って確かめられるものをお渡しし、店の感想を翌月の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 品書きとPOSの棚卸し

いまの品書き全品に、数字の名札を付ける月。

POSからレシート単位の出数がどこまで取り出せるかを確かめ、品書きの全品に出数・概算の粗利・仕込み負担を付けていきます。粗利は最初から厳密にやらず、主要な品から概算で。あわせて「思い入れの品」「常連の目当て」など、数字にならない事情も聞き取って札に残します。

  • POSデータ(レシート単位)の取り出し確認
  • 全品への出数・概算粗利・仕込み負担の紐付け
  • 数字にならない事情(思い入れ・常連)の聞き取り
  • 棚卸しボードの下書き
2
MONTH 02 / ボードとカルテの開発

仕分けの物差しと、会議の道具を作る月。

出数×粗利×仕込み負担の仕分けロジックと、レシートから併売・来店頻度を読む分析を作り込みます。並行して棚卸しボード・品のカルテ・品書き対比の画面を開発。月の後半に、実データを入れた動くサンプルで内部デモを行い、札の並びが店の実感と合っているかを確かめます。

  • 仕分けロジックと併売分析の設計
  • 棚卸しボード・品のカルテの開発
  • 新旧の品書き対比画面の開発
  • 実データを入れた内部デモ
3
MONTH 03 / 初回の改定会議 + 納品

実際の品書きで、最初の改定会議を一緒に回す月。

出そろった実データのボードを挟んで、店主と一緒に初回の改定会議を回します。外す・磨く・値上げの判断に画面がちゃんと役立つかをその場で確かめ、足りない材料を手直ししてから納品。改定後4週間の定点観測と、次回会議への引き継ぎ方まで運用に乗せます。

  • 初回の改定会議の伴走
  • 会議で出た違和感の手直し
  • 定点観測の運用設計
  • 納品 + 次回改定への引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 POSにABC分析の機能が付いています。それと何が違うのですか?
    POSのABC分析は「出数や売上で並べた表」を出すところまでです。この仕組みは、その表に粗利と仕込み負担を重ね、外す候補には「誰が頼んでいるか」(一緒に出る品・注文する客の来店頻度)まで添えて、「残す・磨く・外す」を決める会議が回るところまでを受け持ちます。表を見ることと、外すと決められることは別の仕事だと考えています。
  • Q2 料理ごとの原価を出したことがありません。粗利のデータがなくても始められますか?
    始められます。最初は主要な品だけ、レシピを聞きながら概算の原価を一緒に付けるところからで十分です。全品を厳密にやる必要はありません。もっと踏み込んで、食材の仕入単価から原価率を自動で追いかけたくなったら、メニュー原価・収益管理の仕組み(別の想定シナリオで紹介しています)と組み合わせる形に広げられます。
  • Q3 出数の少ない品を外して、常連さんが離れませんか?
    その心配こそ、この仕組みの出発点です。だから外す候補の品には、レシートから読める範囲で「単品の8割が瓶ビールと一緒に出る夜のアテ」「毎週来る3組が出数の6割」といった材料を必ず添えます。そのうえで、品書きから消す以外に「夜のみ残す」「常連にだけ口頭で出す」という中間の答えも選べるようにしています。数字だけで機械的に切る仕組みにはしません。
  • Q4 データはどのくらいの期間ぶんあれば分析できますか?
    目安は直近90日です。季節メニューの影響が混ざらないよう、季節をまたぎすぎない期間で区切るのがコツです。1年ぶんあれば「この品は冬しか出ない」という季節の癖まで読めるので、お試し期間の判定や季節品の入れどきの判断にも使えます。POSにデータが残っていれば、さかのぼって使えます。
  • Q5 メニュー改定は年に何回やるのがいいのでしょうか?
    一般には、大きな作り直しは2〜3年に一度、小さな見直しは年1回程度と言われますが、決まりはありません。この仕組みで想定しているのは、季節の変わり目ごとに数品だけ動かす小さな改定を型として回すことです。一度に大きく変えるより、外した結果の答え合わせをしながら少しずつ動かすほうが、常連の多い個人店には合うと考えています。

「何を外すか」を決められる店は、品書きも仕込みも軽くなる。

増え続けたメニュー、月に一度眺めるだけのABC分析、思い入れで残り続ける皿。
外す判断に必要なのは勇気ではなく、材料です。
POSデータの確認から改定会議の型づくりまで、ひとつの窓口でお手伝いします。