EvoQuest
EvoQuest Food需要予測AI 2026.08

SCENARIO ── HANDMADE SOBA BATCH CASE

3鉢で39杯、4鉢で52杯。
40杯出る日に、ちょうどいい鉢数がない。

札幌の住宅街にある、席数26の手打ちそば店。昼だけの営業で、そばが終わったらその日は店を閉めます。二八のそばは朝のうちに打ち切りで、昼に足すことはできません。打つ量は鉢という単位でしか増えず、粉1.5kgの鉢が1つで13杯ぶん。3鉢なら39杯、4鉢なら52杯です。しかも鉢を1つ足すと、店に入る時刻が35分早くなる。あすの鉢の割りと店に入る時刻を前夜のうちに決め切るところまでを、EvoQuest Foodの業務システムとしてこう設計します。

想定領域
麺の仕込み量の予測 / 飲食店DX
担当範囲
要件整理・予測設計・画面設計・実装
想定対象
席数26ほどの手打ちそば店(昼営業・出前あり)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

そば屋の仕込みは、量を決める仕事であると同時に、時間を決める仕事です。朝に打った分がその日の全部で、昼に打ち足すことはできません。のし台は1つしかなく、水回しから切りまでの35分は厨房を離れられないからです。昼に混みはじめてから足せる店は、手打ちの店にはまずありません。

そのうえ、打つ量は連続した数字になりません。そばは鉢という単位でしか増えないからです。粉1.5kgに水を45%回すと生地は2.1kgを少し超え、端の切り落としと台に残る分を引いて、1杯150gに切っていくと13杯ほど残ります。3鉢で39杯、4鉢で52杯。40杯出る日に3鉢では1杯足りず、4鉢では12杯余ります。そして余った玉は、翌日の品書きには載せられません。

この設計のゴールは一つです。前夜21時20分、片付けの終わったカウンターで、あすの鉢の割りと店に入る時刻を決める。この一回が毎晩きちんと終わること。予測の精度を上げるのは、そのための手段です。

CHALLENGE

課題

  • 01 粉は重さで量り、そばは杯で売る。朝の厨房で量るのは粉の1.5kgで、レジに残るのは「もり」「天ぷらそば」の杯数です。この2つをつないでいるのは店主の暗算だけで、1鉢が何杯になるかを他の人は言えません。
  • 02 打てる鉢数の上限は、朝に使える時間で決まる。1鉢は水回しから切りまで35分。鉢を1つ増やすと、店に入る時刻が35分早くなります。その35分を数字にして杯数と比べたことは、たぶん一度もありません。
  • 03 早じまいした日の記録が、どこにも残らない。余った玉は当日限りなので目に入り、翌日の鉢数は自然と少なめになります。いっぽうで「本日終了」の札を何時に出したかは、誰も書き留めていません。余った日だけが記録に残るので、鉢数は年々減っていきます。

APPROACH

アプローチ

設計の中心に置くのは、前夜21時20分の一回の確定です。あすの鉢の割りを決めて、店に入る時刻を出す。決めるのは店主で、期限は片付けが終わって記録を閉じるまで。朝5時に起きてから決めるのでは、決めた時点でもう遅い。4鉢に増やす判断は、前の晩に寝る時刻を変える判断でもあるからです。うどんの生地は夜のうちに踏んで寝かせるので、そちらも同じ画面で決めます。

予測するのはあすの杯数で、答えとして出すのは鉢の割りです。粉1.5kgの本鉢に、粉1.0kgの半端鉢を混ぜられるようにします。半端鉢は9杯ぶん。3鉢+半端で48杯、本鉢だけなら39杯か52杯なので、刻みが13杯から4杯まで細かくなります。のし台に乗る大きさと麺棒の長さで、1鉢に使える粉はおよそ0.8kgから1.6kgまで。この範囲でしか割れないという制約を、先に画面へ固定して置きます。

予測を当てにいく前に、決まっている杯数を引き算します。近所の事業所へ毎日届ける定期の出前、お土産用の生そばの取り置き、そば会席の予約。前夜の時点でこれらは動きません。先に引いて、残りにだけ幅を当てます。画面では確定の分と予測の分を塗り分けて、その日の鉢割りのうち何割を予測が受け持っているかを出します。法要の折詰が入った日は、予測が受け持つ杯数が大きく減ります。

外れる前提も設計に入れます。予測は幅で出し、店主はその場で鉢数を書き換えられる。書き換えた事実は記録に残り、翌週の予測に反映されます。昼の営業中は、いまの出方から「そばは13時40分ごろ終わります」と先に伝える。うどんの生地は残っているので、そばが終わっても店は閉めずに済みます。札は二段にして、そばの終了と本日の終了を分けます。決めるのは打つ人で、仕組みが受け持つのは杯数と時刻を出すところまでです。

効果は、金額と時間で測ります。札を出した時刻を打ってもらい、そこから14時半までに入口で引き返した人数を推計して、金額に直して足し上げる。反対側には、余った玉の数と、そこから逆算した粉の金額を並べます。そしてもう一つ、店に入る時刻を前の月より何分遅くできた日が何日あったかを、同じ表に載せます。早出しせずに済んだ時間も、効果として数えます。

CONSULTATION

鉢を1つ足すかどうかは、35分早く起きるかどうか。

鉢を1つ足すかどうかで、前の晩に寝る時刻まで変わります。
朝の工程を測るところからでも、鉢割りの設計からでも始められます。
レジから何が出せるかの確認から、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。どの画面にも、開店の11時から逆算した朝の段取りが左に並びます。この表を朝の逆算表と呼んでいて、鉢を1つ増やすと帯が下へ伸び、店に入る時刻が早いほうへ動きます。前夜の鉢割りは帳場のノートパソコン、営業中の記録は厨房のタブレットで使う前提の作りです。店名・杯数・鉢数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. 前夜21時20分、3鉢か、3鉢+半端か

毎晩いちばん最後に開く画面。左に、開店から逆算したあすの朝の段取りが縦に並びます。鉢を足したり減らしたりすると、その帯が伸び縮みして、店に入る時刻がその場で動きます。あすの起床時刻を決めて閉じるための画面です。

鉢割り
設計のポイント
鉢数を選ぶと、左の逆算表の帯が伸び縮みして「店に入るのは6時20分」が先頭に出る。
半端鉢
粉1.0kgの鉢を1つ混ぜられるようにして、13杯刻みを4杯刻みまで細かくする。
締切
21時20分を過ぎると確定ボタンが灰色になり、翌朝へ持ち越したことが記録に残る。

02. なぜ44〜53杯なのか

あすの杯数を、足し引きの内訳をたどって確かめる画面。曜日ごとの平常値に、確定している出前と取り置き、天気と気温、近所の催しを足し引きします。冬の札幌は雪の降り方で客数が変わるので、この店の伝票で影響の大きさを測ってから使います。

予測の内訳
設計のポイント
「+6杯:向かいの事業所の定期出前」のように、増減の理由を1行ずつ残す。
確定の扱い
出前・取り置き・会席の14杯を先に緑で埋め、残りにだけ幅を当てる。
雪の扱い
世間で言われる降雪量の目安をそのまま使わず、この店の伝票で測り直した値を当てる。

03. きょうは何時に、どの鉢を打つか

打ち始めてから開店までを1本の帯にした画面。だしを引く、かえしを合わせる、一鉢目、二鉢目と並び、いま何分遅れているかが出ます。遅れが25分を超えると、最後の鉢の粉を減らす案が下に出ます。

朝の進み具合
設計のポイント
予定の帯の下に実際の帯を重ね、ずれがひと目で分かるようにする。
工程の実測
水回し・こね・のし・切りの4つに分け、開始と終了を1回ずつタップして測る。
遅れたときの直し方
削るのは鉢の数ではなく、最後の鉢の粉の量にする。

04. いま何玉残っていて、何時に切れるか

営業中に厨房で見る画面。残りの玉数と、この調子だとそばが終わる時刻が出ます。うどんの残りは別に表示して、そばが終わったあとに何杯まで受けられるかが分かるようにします。札を出す操作も、この画面から行います。

昼の残り
設計のポイント
そばとうどんを別々のゲージで見せ、そばが終わったあとに出せる杯数を切り分ける。
早めの知らせ
昼前から出が早い日は「そばは13時40分ごろ終わります」と、混みはじめる前に出す。
二段の札
「そば終了・うどんはできます」と「本日終了」を分けて記録し、時刻を残す。

05. 断った人数と、早出しせずに済んだ時間

先月の結果を確かめる画面。札を出した時刻と、そこから閉店までに引き返した人数の推計を金額で出します。反対側には余った玉と粉代を置き、いちばん下に、店に入る時刻を前の月より何分遅くできたかを日数で並べます。

月の集計
設計のポイント
売り逃しと余りを左右対称の棒で並べ、どちらに寄った月かがひと目で分かるようにする。
推計の見せかた
引き返した人数は推計だと分かる表記を付け、算出の考え方を画面から開ける。
早出しせずに済んだ時間
前の月より遅く店に入れた日を数え、月あたりの分数として残す。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、朝の段取りが4つの点で変わる想定です。

01

あすの答えが
杯数から、店に入る時刻へ。

Before前の晩は「あしたは混みそうだから多めに」で終わり、朝は決まった時刻に起きて、その日の判断で鉢数を決めていた。
After前夜21時20分に鉢の割りが決まり、そこから逆算した「6時20分に店へ入る」が同時に出る。

鉢を1つ足すのは、35分早く起きる判断でもあります。量と時刻をひとつの画面で決めるのは、そのためです。

02

鉢の刻みが、13杯から4杯まで細かくなる。

Before本鉢だけで割っていたので、答えは39杯か52杯の二択。40杯出る日はどちらを選んでも外れていた。
After粉1.0kgの半端鉢を混ぜて48杯にそろえる。のし台に乗る範囲でしか割らないので、作れない鉢は候補に出てこない。

半端鉢は工程時間も7分短くなります。作業時間の面でも、最後の1つを軽くしておくのは効きます。

03

札が
一度きりから、二段へ。

Beforeそばが尽きた時点で「本日終了」を出していたので、うどんの生地がまだ残っていても店を閉めていた。
After「そば終了・うどんはできます」を先に出し、うどんが尽きてから本日終了へ移る。どちらも時刻が残る。

そばを主力にしている店で、うどんへ振り替えることに抵抗があるのは分かります。二段にするかどうかは、店の考え方に合わせて選べる形にします。

04

早じまいした時刻が、翌月まで残る。

Before13時前に札を出した日も、翌朝には話題に上がらなかった。目に入るのは余った玉のほうだけ。
After札の時刻と、そこから閉店までに引き返した人数の推計が積み上がり、余った玉の粉代と並べて見られる。

余った玉は目に入りますが、断った人数は数えなければ残りません。両方を同じように記録しておかないと、鉢数は年々少しずつ減っていきます。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌市内なら店舗へ伺い、道外はオンラインで進めます。予測する対象がそばとうどんの2つだけなので、設計から納品まで2ヶ月の想定です。月の区切りで実際に触れるものをお渡しし、朝の厨房で使ってみた感想を次の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 単位をそろえる + 工程を測る

「1鉢が何杯か」と「1鉢が何分か」を測り直す月。

レジのそば・うどんの杯数を1年ぶん取り出し、粉の仕入伝票と突き合わせて、この店の1鉢あたりの杯数を出します。あわせて朝の工程に立ち会い、水回しから切りまでを4つに分けて時間を測ります。前夜21時20分に何を見て決めるかは、この2つが出てから店主と決めます。

  • 厨房と帳場でのヒアリング(2〜3回)
  • レジの杯数と粉の仕入伝票の突き合わせ
  • 1鉢あたりの杯数と、工程4つの所要時間の実測
  • 鉢割り画面と朝の逆算表の下書き
2
MONTH 02 / 予測の実装 + 札の記録と月の集計

あすの杯数を予測する仕組みと、札の時刻が残る記録を作る月。

曜日と確定分からあすの杯数を幅で出す仕組みを組み、雪と気温の影響はこの店の伝票で測ってから足します。二段の札と月の集計まで作ったら、2週間はいまのやり方と並べて打ち、前夜のうちに画面が閉じるかを確かめてから納品します。

  • 杯数の予測の試作と幅の調整
  • 5画面の開発
  • いまの決め方との2週間の並走
  • 納品 + 運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 打った麺の残りは、本当に翌日へ回せないのですか?
    冷蔵で2日ほどは食べられます。ただ、日が変わると色が黒ずみ、香りも落ちます。打ちたてを売りにしている店で翌日の玉を出す判断はまずしないので、この設計では余った玉を当日限りの扱いにしています。賄いやそばがきへ回した分は別の欄に記録して、捨てた分と混ぜないようにします。持ち帰りの生そばとして早い時間に売る方法もあるので、その入力欄は鉢割りの画面に用意します。
  • Q2 そば粉の在庫や発注は、この仕組みに入りますか?
    入れられます。鉢の割りが決まると使う粉のキロ数も決まるので、そこから週の使用量を積み上げて、次の入荷までもつかどうかを出す形です。ただし最初の2ヶ月では作りません。粉は日持ちがしますし、決める頻度も月に数回なので、毎日の判断が回るようになってから足すほうが、現場の負担が軽くて済みます。
  • Q3 夜も営業していて、宴会も受けている店では使えますか?
    使えます。設計は少し変わって、昼と夜で鉢を分けることになります。夜に打ち足せる店なら、昼の予測が外れても取り返せるので、朝の鉢数はもう少し多めに決められます。宴会の予約が入っている日は確定している杯数がまとまって入るので、予測が受け持つ杯数はむしろ減ります。夜まで店に居る前提で、逆算表の目盛りも夕方まで伸ばします。
  • Q4 レジからそばとうどんの杯数が出れば始められますか?
    日ごとの杯数がCSVで出れば十分です。時間帯まで出れば、営業中の知らせを早く出せるようになります。出前や取り置きの控えが手書きのノートでも構いません。前夜の画面に打ち込む形にすれば、そこから確定分の記録が貯まっていきます。何が出せるか分からない場合は、レジの画面を一緒に見ながら確認するところからお手伝いします。

鉢を1つ足すかどうかは、35分早く起きるかどうか。

鉢を1つ足すかどうかで、前の晩に寝る時刻まで変わります。
朝の工程を測るところからでも、鉢割りの設計からでも始められます。
レジから何が出せるかの確認から、ご相談ください。