EvoQuest
EvoQuest Food食数予測AI 執筆:水上貴洋(取締役) 2026.07

SCENARIO ── DAILY LUNCH FORECAST CASE

日替わりを何食作るか。
先に決めるのは、何時まで出すかのほう。

札幌の22席の定食屋向けに、日替わりの食数を30分ごとの出方から予測し、朝7時半に「きょうは13時まで出す」と決め切る開発プランです。予約も券売機もない店なので、材料は自分の店のレジ記録と天気と暦だけ。予測は幅で出して、昼の出足で見直します。

想定領域
時間帯別の食数予測 / 仕込み量の決定 / 飲食店の業務改善
担当範囲
要件整理・食数予測の設計・画面設計・実装
想定対象
昼のみ営業の定食屋・食堂(20〜30席・個人店)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

日替わりが早く売り切れる日もあれば、閉店前まで残る日もあります。ところが、何時に売り切れたか、何食残ったかを記録していないと、月末に分かるのは全体の原価率だけです。「どの日に、どれだけ作りすぎたか」「何食足りなかったか」を振り返れません。しかも定食は、主菜だけでなく副菜と汁物も同じ食数に合わせてまとめて仕込むため、日替わりを8食多く作れば、小鉢や味噌汁も8食ぶん余ります。

この店には予約がないので、朝の時点で確定している食数はありません。頼りになるのは、これまで何時に何食売れたかという自分の店の記録です。1日の合計だけでは、昼前に集中したのか、13時以降まで続いたのかが分かりません。そこで販売数を30分ごとに記録し、曜日や天気によって売れ方がどう変わるかを見ます。時間ごとの流れが分かれば、きょうは何時ごろ売り切れそうかまで予測できます。

朝はまず「きょうは13時まで日替わりを出したい」と目標の時刻を決めます。食数は、過去の売れ方から逆算して出します。営業中も実際の出方を見て、追加で仕上げるか、そのまま終えるかを判断できます。売り切れた時刻と残った数も毎日記録するため、翌朝の食数を少しずつ店の実情に合わせられます。

CHALLENGE

課題

  • 01 予測が外れた日が、数字として残らない。12時40分に売り切れた日も、8食まかないに回った日も、記録は店主の記憶だけ。月末に原価率を見て「今月は捨てたな」と分かる頃には、どの日をどう外したのかは思い出せない。予測を見直すための記録も残らない。
  • 02 定食は副菜と汁物をまとめて仕込むので、日替わりの食数を見誤ると、主菜以外も余ったり不足したりする。主菜を8食見誤れば、小鉢と味噌汁も8食ぶんずれる。翌日に回せる品と、その日で終わる品の線引きも人の頭の中にある。
  • 03 予測の材料が少ないうえ、雨の日に混むかどうかは店によって違う。雨の日は外に出たくないぶん昼の客が減る店と、同じビルの中にあって雨だからこそ混む店がある。一般論の「雨は客が減る」を持ってきても、自分の店に当てはまるとは限らない。自分の記録から出すしかないが、1日の合計だけでは、どの時間帯の売れ行きが変わったのか分からない。

APPROACH

課題への対応

予測の単位から決めます。学習の単位を30分ごとに取り、11時台・12時台・13時台の出方をそれぞれ予測します。材料は自分の店のレジ記録、曜日、暦、天気、それに近所の事情。時間帯ごとの販売数を比べ、曜日や天気によって昼前・ピーク時・昼過ぎの売れ方がどう変わるかを調べます。

予測は1つの数字にしません。過去の似た条件の日が中央からどれだけ散ったかを見て、38食から46食のような幅で出します。幅の作り方は「10日のうち8日はこの中に収まる」という置き方で、記録が少ない間は余裕を持たせ、実績とのずれを検証しながら幅を見直します。そして予測は朝の1回では終わりません。11時半と12時20分に、その日の出足を材料に足して予測し直します。けさの出足が平常の1.27倍なら、残りの時間帯もその倍率で引き延ばす。朝の予測と昼の予測は別物として扱います。

必要な食数は、提供したい時刻から逆算します。朝7時半に店主が選ぶのは「きょうは13時まで出す」という目標時刻です。食数はそこから逆算して出る数字という扱いにします。時間帯ごとに予測しているので、目標の時刻を13時半に動かせば必要な食数も入れ替わる。その幅を、決め切る分と、途中まで仕込んで昼に仕上げて追加できる分に分けます。主菜の下ごしらえは上限の46食ぶんまで進めておいて、仕上げは38食ぶんで止める。11時半の見直しで出が早ければ、そこから足せる。予測の幅に合わせて、朝に仕上げる量と追加用の量を分けることで、売れ行きに合わせて仕上げる量を調整できます。

効果の測り方は、当たった外れたの採点にはしません。予測そのものの確かめ方としては、予測の幅に実績が収まった日の割合を見ます。10日のうち8日に収まっていれば、幅の作り方は狙いどおり。目標より高い割合が続く場合は、記録を増やして確かめたうえで、幅を狭められるか検討します。そのうえで、店として見るのは2つです。1つは捨てた分の金額で、主菜だけでなく副菜と汁物まで含めて日ごとに積み上げます。もう1つは「日替わり終わりました」と言った時刻と、そのあとに入ってきた人数。前者だけを見ていると余りを減らそうとして仕込み量を下げすぎ、早い時間に売り切れるおそれがあります。両方を並べて初めて、きょうの予測が低すぎたのか高すぎたのかが分かる。予測が外れた日には理由を一言だけ残してもらいます。「向かいのビルの改修が終わった」「雨、うちは通りに面しているので減る側」。この一言が貯まると、雨の日にこの店の食数が増えるのか減るのかが、自分の記録から出てきます。

CONSULTATION

日替わりの食数を、勘だけでなく記録をもとに決めませんか。

12時40分に「終わりました」と言った日と、8食まかないに回った日。
どちらも同じ月に起きているのに、数字として残っているのは原価率だけ。
何時まで出すかを決めて、そこから食数を出す。その形からお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。朝の仕込み表は厨房のタブレット、昼の残数はレジ横の同じ端末で見る前提の作りです。店名・食数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. 朝7時半の、仕込み表

毎朝いちばん最初に開く画面。上に「きょう決めること」が締切つきで出て、下に日替わりの食数の予測が幅で並びます。決め切る分と、途中まで仕込んで昼に足せる分が最初から2段に分かれていて、押すと厨房の仕込み表に反映されます。

仕込み表
設計のポイント
決めるのは「何時まで出すか」。時刻を選ぶと、その時刻までに必要な食数の予測を幅で表示する。
締切
7時40分。副菜の火入れが始まると下限は動かせなくなるので、そこを画面の締切にする。
幅の扱い
38〜46食のように幅で出す。10日のうち8日が中に収まる置き方。下限まで仕上げ、上限までは下ごしらえ。

02. 13時まで持たせるための、逆算

目標の時刻を動かすと、要る食数が入れ替わる画面。過去の似た条件の日の出方が30分刻みで重なり、11時台に何食出て、12時台にどう跳ねるかが見えます。薄い帯は過去12回の散らばり、濃い棒はその真ん中です。

何時まで
設計のポイント
「20食限定」の掲示をやめて「13時までのご提供予定」に変えられるよう、時刻を主役に置いた画面にする。
学習の単位
30分ごとに予測する。300営業日・1日3時間なら1800区間に分けて記録でき、混む時間帯の違いを確認できる。
昼の山
12時00分から12時30分に山が来る日は、その30分を作り足しで支えられるかを朝のうちに確かめる。

03. 11時半からの、残数と作り足し

営業中にレジ横で開く画面。日替わりの残数と、いまのペースで何時に切れるかが出ます。朝に下ごしらえした分がどれだけ残っているかも同じ画面にあり、足すと決めたらその場で数が動きます。切れたら店頭の掲示を差し替える合図も出ます。

昼の残り
設計のポイント
数えるのを増やさない。用意した食数からレジの販売数を引き、残数を自動で表示する。
昼の見直し
朝の予測を、その日の出足で見直す。けさは平常の1.27倍なので、残りの時間帯も同じ倍率で伸ばして12時46分に切れると出す。
掲示の切り替え
終わったら店頭の札を差し替える合図が出る。断る言葉を、その場で考えなくていいようにする。

04. 捨てた分と、断った時刻を並べる

予測の効果を測る画面。捨てた分の金額を主菜・副菜・汁物まで含めて日ごとに積み、その隣に「終わりました」と言った時刻と、そのあとに入ってきた人数を並べます。片方だけを見ると予測が偏っていくので、必ず対で出します。

捨てたと断った
設計のポイント
精度の点数は出さない。出すのは予測の幅に収まった日の割合と、捨てた金額と、早じまいのあとに来た人数。
副菜まで含める
主菜だけでは廃棄額を少なく見積もってしまうため、小鉢と汁物の廃棄額も同じ日の欄に集計する。
偏りの検知
早じまいが続くと画面が知らせる。捨てるのが怖くて予測を下げすぎている状態を、数字で拾う。

05. 予測の材料と、予測が外れた日の一言

AIが何を見て予測しているかと、予測が外れた日に店主が残した一言が並ぶ画面。天気・曜日・暦・近所の予定といった材料ごとに、うちの店では何食ぶん動くかが出ます。雨の日に増えるか減るかなど、この店の記録に基づく傾向を表示します。

うちの傾向
設計のポイント
「AIが決めた」で終わらせない。何がどれだけ影響した予測なのかを、食数の増減で並べる。
店ごとの天気の影響
雨の日に食数が増えるか減るかは、この店の記録から確認する。
幅の出どころ
±4食は、同じ条件の日の実績が真ん中からどれだけ散ったか。記録が少ない間は余裕を持たせ、実績とのずれを見て幅を調整する。

OUTCOME

導入による変化

提供したい時刻を決めてから必要な食数を予測し、仕込み量を判断する流れに変えます。

01

朝7時半に決めるのは、きょう何時まで出すか。食数はそこから逆算する。

Before「きのうより少し多めに」で仕込み量を決めていた。何を基準に多めなのかは、そのときの気分と前日の残り具合。
After目標の時刻を選ぶと、そこまで持たせるのに要る食数が幅で出る。決め切る分と足せる分も同時に分かれる。

時刻の目安は店で決めていただきます。13時か、13時半か、その日の予定で動かして構いません。画面はそれに合わせて食数を出し直します。

02

予測は1つの数字にせず、下ごしらえは上限まで、仕上げは下限で止める

Before40食と決めたら40食ぶん仕上げていた。昼に出が早くても足せず、遅ければそのまま残った。
After46食ぶんまで下ごしらえして、仕上げは38食で止める。11時半の出方を見て、足すかどうかを昼に決められる。

幅は「10日のうち8日が中に収まる」置き方です。目標より高い割合が続く場合は、記録を増やして検証し、幅を見直します。なお主菜によっては下ごしらえで止められない品もあり、その品は最初から決め切る側に置きます。

03

予測の単位が、1日の合計から30分ごとに変わる。

Before「あすは40食くらい」で止まっていた。何時に何食出るかは頭の中の感覚で、切れる時刻までは分からなかった。
After11時台・12時台・13時台をそれぞれ予測する。時間帯ごとの売れ方を使い、売り切れそうな時刻も予測する。

30分より細かくすると1コマあたりの件数が減って、かえって予測が荒れます。昼だけ3時間の店だと、30分がちょうどでした。

04

捨てた金額と、断った時刻が、同じ画面に並ぶ。

Before見えていたのは月末の原価率だけ。売り逃した側は数字にならないので、予測は年々下がる方向にしか動かなかった。
After捨てた分は副菜と汁物まで含めて日ごとに積む。早じまいの時刻と、そのあとに来た人数も隣に出る。

どちらを重く見るかは店の考え方次第です。画面は両方を出すところまでで、どちらに寄せるかの判断は店主に残します。

05

雨の影響が、うちの記録から数字で出てくる

Before「雨の日は客が減る」と聞いて身構えるが、実際に何食ぶん減るのかは分からないままだった。
After材料ごとに、うちの店では何食ぶん動くかが出る。雨で増えるか減るかなど、この店での傾向を表示する。

記録が少ない間は、天気などの影響を十分に判断できません。3ヶ月ほど貯まってから見ていただくのが現実的です。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌市内なら店舗へ伺います。道外はオンラインです。作るものを日替わりの1品に絞るので、設計から納品まで2ヶ月の想定です。月の区切りで触れるものをお渡しして、朝の使い勝手を翌月に反映します。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + 予測の試作

提供したい時刻と、仕込み量の確定時刻を決める

朝の段取りを一つずつたどります。何時に仕込みを始めて、どの品からどの順に火を入れ、どこを過ぎると量を動かせなくなるか。そこから朝の締切時刻を決めます。並行して、レジから時刻つきの記録が取り出せるかを確かめ、30分刻みに整えたうえで予測の試作を作ります。できた予測は、いまの店主の見込みと2週間並べて見比べます。

  • 朝の仕込み工程と、量を動かせなくなる時刻の聞き取り
  • 日替わりの主菜・副菜・汁物の仕込み単位の整理
  • レジ記録の棚卸しと、30分刻みへの整形・予測の試作
  • 店主の見込みとの並走比較(2週間)と、幅の広さの調整
2
MONTH 02 / 画面の開発 + 納品

仕込み表と残数の画面を作り、店で試す

朝の仕込み表、時刻からの逆算、昼の残数、捨てた分と断った時刻の記録を開発します。厨房のタブレットは手が濡れたまま触ることになるので、文字の大きさとボタンの間隔を実際の置き場所で調整します。予測が外れた日の一言をどう残すかも、この月に運用として決めます。

  • 仕込み表・逆算・残数・記録の各画面の開発
  • レジの記録から残数と昼の見直しを動かす仕組みの実装
  • 厨房での置き場所に合わせた文字サイズ・操作の調整
  • 納品 + 予測が外れた日の一言の残し方の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 予約も券売機もない小さな店です。予測の材料が足りないのでは?
    材料は少ないほうです。ただ、レジに日替わりを何食打ったかの記録が時刻つきで残っていれば、そこが土台になります。日次の合計だけだと1年で300件ほどですが、30分ごとに見れば同じ1年で1800件になる。予約という確定した数字がない代わりに、時間帯ごとの売れ方を確認します。あとは天気と曜日と暦、それに近所の事情を店主が知っている分だけ。材料が少ないうちは幅を広めに出す設計にします。幅が広いと使えないように見えますが、朝に決め切らず昼に足せる構えを取るための幅なので、これはこれで機能します。レジがアナログな店の場合は、日替わりの食数だけを朝と昼に2回入力する形から始めることもあります。
  • Q2 予測が当たっているかどうかは、どう確かめるんですか?
    3つ並べて見ます。1つ目は、予測の幅の中に実績が収まった日の割合。10日のうち8日に収まっていれば、幅の作り方は狙いどおりです。目標より高い割合が続く場合は、記録を増やして検証し、幅を見直します。2つ目は、狙った時刻と実際に切れた時刻の差。当たり外れの○×は使わず、何分ずれたかで見ます。3つ目は、捨てた金額と断ったあとに来た人数です。予測の精度を点数で出すことはしません。点数が上がっても捨てる量が減っていなければ、店にとっては意味がないためです。
  • Q3 予測が外れたら、結局いままでと同じでは?
    外れることを前提に作ります。外れて困るのは、朝の時点で全量を仕上げてしまっているからです。下ごしらえは上限まで進めて仕上げは下限で止める、という構え方に変えると、売れ行きに合わせて仕上げる量を調整できます。ただし、下ごしらえした主菜や、まとめて仕込む副菜・汁物が余る場合はあります。余りをどう扱ったか記録し、廃棄した分の金額も確認できるようにします。
  • Q4 「13時まで出す」と決めても、その通りにはならないのでは?
    その通りにはなりません。ならないことを前提に、ずれた時刻を記録します。12時40分に切れた日が続けば予測が低すぎ、13時半に10食残る日が続けば高すぎる。狙った時刻と実際の時刻の差が、いちばん扱いやすいずれの物差しになります。当たったかどうかで測るより、何分ずれたかで測るほうが、次の朝に何食足せばいいかの話に直せます。
  • Q5 今のレジを入れ替える必要がありますか?
    入れ替えは前提にしません。いまのレジから日替わりの売れた数が取り出せるなら、そこをそのまま使います。取り出せない場合でも、まずは朝に決めた食数と、切れた時刻、残った数の3つを1日1回入れるところから始められます。入力が増えるように見えますが、そのぶん月末に原価率を眺めて理由を思い出す時間はなくなります。1年ほど記録が貯まってからレジの入れ替えを考えても、記録は引き継げます。

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12時40分に「終わりました」と言った日と、8食まかないに回った日。
どちらも同じ月に起きているのに、数字として残っているのは原価率だけ。
何時まで出すかを決めて、そこから食数を出す。その形からお手伝いします。