EvoQuest
EvoQuest AI需要予測AI 2026.07

SCENARIO ── SUPERMARKET DELI CASE

夕方の棚を空にせず、閉店のゴミ袋も重くしない。
その「ちょうどいい数」を、AIと一緒に読む。

地場スーパー2店舗・惣菜は各店のバックヤードで内製。朝5時半、チーフが炊飯器のスイッチを入れながら「きょうの数」を決める——その頭の中にしかなかった読みを、POSの売れ数・曜日・天気・チラシ・地域の暦から学ぶ需要予測AIに写し、バックヤードのタブレットに「何時に・何を・何個作り足すか」を出す業務システムを、こう設計します。予測AI(EvoQuest AI)に現場アプリ(EvoQuest Apps)を組み合わせ、作った数字を現場が毎日使うところまで持っていくシナリオです。

想定領域
需要予測AI / 惣菜部門の製造計画
担当範囲
要件整理・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
地場スーパー 1〜3店舗・惣菜内製
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

惣菜は、スーパーの中でいちばんロスが出やすい部門だと言われます。その日に作って、その日に売り切るのが基本。作りすぎれば閉店後のゴミ袋が重くなり、かといって早く売り切れば良いわけでもありません。仕事帰りのお客さんが夕方6時に来て棚が空だったら、その人は次から別の店に行く。廃棄も怖い、欠品も怖い。だから多くの店は「多めに作る」ほうに倒れて、そのぶんを値引きシールと廃棄で吐き出しています。

「何個作るか」を決めているのは、たいてい惣菜チーフの経験です。土曜は白飯を一釜多く、雨の日は弁当を減らして揚げ物を厚く、年金支給日の週は赤飯が動く——どれも正しいのに、ノートにも引き継ぎ書にも残っていない。チーフが休んだ日、若手は前日と同じ数を作るしかなく、雨の土曜に唐揚げが山ほど残ります。大手チェーンはAI発注やAI値引きを入れ始めましたが、あれは数十〜数百店で使う前提の仕組み。地場の2店舗が「うちもやりたい」と問い合わせて、届く値段では返ってきません。この想定シナリオは、その「うちの規模じゃ無理」を外すための設計です。

CHALLENGE

課題

  • 01 「きょう何個作るか」がチーフの頭の中にしかない。土曜は多め、雨なら弁当を減らす、行事の日は巻き寿司——判断は正しいのに言葉になっておらず、チーフが休んだ日は若手が前日と同じ数を作って、雨の土曜に揚げ物の山が残る。
  • 02 廃棄と欠品、どちらも怖くて「多めに作る」に倒れている。惣菜はただでさえロスが出やすい部門なのに、夕方の棚を空にできないから強気に作る。結果、閉店後の廃棄と値引きで粗利が細る。どこが「ちょうどいい」のか、数字の根拠がない。
  • 03 値引きシールの判断が、貼る人の性格で変わる。早くから2割引を貼って売り切る人と、ぎりぎりまで粘って廃棄を出す人。何時に・どの品に・何割貼るのが得だったのか、あとから確かめる材料が残っていない。
  • 04 レジ(POS)には単品ごとの売れた時刻まで残っているのに、見ているのは月次の部門売上だけ。データはあるのに、あしたの製造計画にも値引きにもつながっていない。大手向けのAI発注・AI値引きは規模も値段も合わない。

APPROACH

アプローチ

予測AIといっても、突拍子もないデータを使うわけではありません。使うのは、いまレジに残っている単品×時間帯の売れ数、曜日、天気予報(気温と雨雪)、チラシ特売の予定、それに地域の暦——小学校の運動会、町内の祭り、年金支給日。この組み合わせで「あす、唐揚げは16時までに何パック・閉店までに何パック」を品目ごとに読みます。ここで大事にしているのは、予測を1個の数字で出さないこと。「96〜128パック」のような幅で出し、強気と弱気のどちらに寄せるかは人が決める。予測は外れる日が必ずあるからです。運動会が雨で流れた日、テレビで唐揚げ特集が流れた日——外れた日の理由を画面から一言残してもらい、それが次の読みに戻る作りにします。

もうひとつの肝は、AIの答えを現場の単位に丸めることです。白飯は「何合」ではなく釜の数、揚げ物はフライヤーのバッチ、寿司は巻き簾の本数。「唐揚げ112パック」と言われても現場は動けませんが、「昼の便で2バッチ、15時の便で1バッチ」なら手が動きます。予測の画面をパソコンの中に閉じ込めず、粉と油の飛ぶバックヤードのタブレットで、濡れた手袋のまま見られるボードにする——AIの設計(EvoQuest AI)と、現場が毎日触るアプリの設計(EvoQuest Apps)を、うちがまとめて面倒を見る理由はそこにあります。

CONSULTATION

惣菜の「何個作るか」を、勘と度胸から、根拠のある読みへ。

「作りすぎて捨てる」「早く売り切れて夕方の棚が空」「値引きは貼る人まかせ」。
レジに残っている売れ数と、天気と、地域の暦。材料はもう店の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、現場のボード画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。バックヤードに立てたタブレットで使う前提の作りです。店舗名・品目・数字は地場スーパーの規模感に合わせた想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. きょうの作り足しボード

朝の仕込みから閉店までを1本の時間軸にして、品目ごとに「何時の便で何個作り足すか」を並べる看板画面。いまの時刻に線が引かれ、売れ行きが読みより速い品は作り足しの提案が、遅い品は「次の便を減らす」提案が浮かびます。

作り足しボード
設計のポイント
表ではなく時間軸。「いま」から右だけがこれからの仕事で、濡れた手袋のままでも見るだけで動ける。
現場の単位
提案は個数と一緒に釜・バッチ・本数で表示。「2バッチ揚げる」までAIが翻訳する。
読みとのずれ
各品目の帯に予測レンジと実売をならべ、ずれた品だけ色がつく。全部は見なくていい。

02. あすの読みと、チーフの直し

あすの因子(曜日・天気・気温・チラシ・地域の暦)をカードで見せたうえで、品目ごとの予測レンジを提示。チーフは気になる品だけ数字を直し、直した理由を一言選んで残します。直しの記録はそのまま次の学習材料になります。

AIの読み
設計のポイント
AIが何を見てその数字を出したかを因子カードで先に見せる。根拠が見えない数字は現場に信用されない。
幅で出す
予測は「96〜128」のようなレンジ表示。強気・弱気の寄せ方は人の判断として残す。
直しの扱い
直しは上書きではなく「チーフの読み」として予測と並べて保存。あとで答え合わせができる。

03. 夕方の売り切りナビ

16時以降、品目ごとの残数と売れ行きから「このままで閉店までに売り切れる」「18時に2割引で背中を押す」「持ち越し危険」を仕分けする画面。シールを何枚持って売場に出るかが、出る前に決まります。

値引きの目安
設計のポイント
値引きの最終判断は人。AIは「この時刻にこの割引なら売り切れる見込み」という目安までを出す。
早貼りの防止
まだ定価で売れているペースの品には「待つ」が出る。粗利を守る方向の提案も対等に扱う。
記録
実際に貼った時刻と割引率が残り、翌週の「何時に貼るのが得だったか」の答え合わせに使う。

04. 読みと結果の答え合わせ

きのう・先週の予測と実売のずれ、廃棄と売り切れ時刻を品目ごとに一覧する画面。大きく外した日には理由メモ(運動会中止・急な雨など)が並び、「外れたまま忘れる」を防ぎます。月ごとの廃棄の重さも同じ画面で追えます。

ふりかえり
設計のポイント
外れた日を責める画面にしない。理由を残して次に活かすための画面だと最初に決めて設計する。
見る単位
品目別・曜日別・時間帯別の3つの切り口だけに絞る。分析画面を増やしすぎない。
経営との接続
廃棄・値引き・売り切れ時刻の推移を店別に並べ、月次会議の資料をこの画面のまま使える。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、惣菜部門の毎日が3つの軸で変わる想定です。

01

「何個作るか」が
チーフの頭の中から、みんなのボードへ。

Before製造数の根拠はチーフの経験だけ。休んだ日は若手が前日と同じ数を作り、外しても原因が分からない。
After読みの根拠(曜日・天気・暦)とレンジが画面に出て、誰が仕込む日でも同じ基準で始められる。

チーフの勘を否定する仕組みではなく、勘を数字に写して引き継げるようにする設計。直しの権限は現場に残す。

02

作り方が
「多めに作って値引きで吐く」から「幅で作って足す」へ。

Before欠品が怖くて朝に強気の数を作り込み、夕方の値引きと閉店後の廃棄で帳尻を合わせていた。
After朝はレンジの下限寄りで仕込み、売れ行きを見て昼と15時の便で作り足す運びに変わる。

廃棄と欠品の両方を一度にゼロにする話ではなく、「多めに倒れたまま固定されていた振れ幅」を日々の作り足しで縮めていく想定。

03

値引きが
貼る人の性格から、目安のある判断へ。

Beforeシールの時刻も割引率も担当者ごとにばらばら。早貼りで粗利を削る日と、粘って廃棄を出す日が混ざる。
After品目ごとに「待つ・背中を押す・持ち越し危険」の目安が出て、貼った結果が記録に残り翌週の読みに戻る。

値引きの自動化ではなく標準化。最終判断は売場に残したまま、判断の材料と答え合わせを仕組みにする。

PROCESS

3ヶ月の進め方

オンラインと店舗訪問を組み合わせながら、設計 → 開発 → 納品を3ヶ月で進める想定です。月の区切りごとに、実際に触って確かめられるものをお渡しし、現場の感想を翌月の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + データの棚卸し

バックヤードに立って、「読み」の中身を言葉にする月。

朝の仕込みから閉店の廃棄記録まで、惣菜部門の1日を実際に見せてもらいます。POSから単品×時間帯の売れ数がどこまで取り出せるか、廃棄の記録がどんな形で残っているかを確かめ、チーフの読み(曜日・天気・暦の使い方)を聞き取って予測に使う因子の一覧に落とします。

  • 惣菜部門の1日の見学と聞き取り
  • POSデータの中身と取り出し方の確認
  • 廃棄・値引き記録の実態調査
  • 予測に使う因子の一覧化と画面の下書き
2
MONTH 02 / 予測AIの試作 + ボード画面の開発

過去のデータで「読み」を試し、ボードを形にする月。

過去1〜2年の売れ数で予測モデルを試作し、「先月をAIに読ませたら実際とどれだけずれたか」を品目ごとに検証します。並行して作り足しボード・読みの画面・値引きナビを開発。釜・バッチへの丸めや因子カードの見せ方など、現場の言葉に翻訳する部分をここで作り込みます。

  • 予測モデルの試作と過去データでの検証
  • 予測レンジと因子カードの設計
  • 作り足しボード・値引きナビの開発
  • 動くサンプルでチーフと内部デモ
3
MONTH 03 / 店頭での並走 + 納品

1店舗で2週間、チーフの読みと並走させる月。

まず1店舗で、いつも通りの製造を続けながらAIの読みを横に並べて走らせます。ずれた日の理由を拾って調整し、タブレットの置き場所や画面の文字の大きさまで現場に合わせて直してから、2店舗目に広げて納品。外れた日の記録が学習に戻る運用ルールまで引き継ぎます。

  • 1店舗での並走検証(2週間)
  • ずれの原因調整と画面の手直し
  • 2店舗目への展開と運用ルールづくり
  • 納品 + ふりかえり運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 POSが古くて、時間帯別のデータが取れるか分かりません。
    まずはそこから一緒に確かめます。多くのレジは、日次のレポート以外にも単品ごとの販売記録(ジャーナル)を残しています。CSVで取り出せればそのまま使えますし、日次の単品売上しか取れない場合でも、曜日と天気からの予測で始めて、レジ更新のタイミングで時間帯別に広げる、という段階の踏み方ができます。
  • Q2 データはどのくらいの期間ぶんあれば始められますか?
    1年ぶんあれば季節の波まで読めますが、無くても始められます。数ヶ月ぶんなら曜日と天気の癖から予測を出し、そのぶん幅(レンジ)を広めに表示して人の判断を厚めに残す設計にします。運用しながらデータが貯まるほど幅が絞れていく、という育ち方をする仕組みです。
  • Q3 予測が外れたら、現場は結局元のやり方に戻りませんか?
    外れる日は必ずあります。だから予測を1個の数字ではなく幅で出し、最後はチーフが直せる作りにしています。大事なのは外れた日に「なぜ外れたか」を一言残せること。運動会が中止になった、急に暑くなった——理由が貯まるほど読みは店に馴染んでいきます。外れを織り込んだ設計かどうかが、定着の分かれ目だと考えています。
  • Q4 値引きのタイミングまでAIが決めるのですか?
    いいえ、目安までです。「このペースなら定価のまま売り切れる」「18時に2割引なら閉店までに売り切れる見込み」という材料を出すのがAIの仕事で、シールを貼るかどうかの判断は売場に残します。そのかわり、貼った時刻と結果を記録して「どの判断が得だったか」をあとから確かめられるようにします。
  • Q5 惣菜の製造だけでなく、日配や食材の発注にも使えますか?
    広げられます。まず惣菜の製造計画で「読む→作る→答え合わせ」の型を作るのがこのシナリオですが、同じ予測の仕組みは、惣菜の原材料の発注や、牛乳・豆腐など日配品の発注量にもつなげられます。最初から全部門でやろうとせず、いちばんロスの痛い惣菜から始めるのがおすすめです。

惣菜の「何個作るか」を、勘と度胸から、根拠のある読みへ。

「作りすぎて捨てる」「早く売り切れて夕方の棚が空」「値引きは貼る人まかせ」。
レジに残っている売れ数と、天気と、地域の暦。材料はもう店の中にあります。
データの確認から予測AIの設計、現場のボード画面まで、ひとつの窓口でお手伝いします。