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飲食の需要予測・AI

「店の在庫を見て発注する」をやめられるか。発注量を決める3つの数字

冷蔵庫や棚の残りを見て、減ったぶんを頼む。このやり方が外れるのは、届くまでの間に使う量が数に入っていないからです。発注量は「今ある数」「届くまでに使う数」「余裕」の3つで決まり、このうち予測が必要なのは「届くまでに使う数」です。個人店から数店舗の飲食店の経営者に向けて書きました。

この記事でわかること

  • 残りを見るだけの発注が外れるのは、頼んでから届くまでに使う量が引き算に入っていないからです。金曜に数えて月曜に届く品目なら、土日の2日ぶんが抜けます。
  • 発注量は「今ある数」「届くまでに使う数」「余裕」の3つで決まります。今ある数は棚卸で確認し、届くまでに使う数は予測します。余裕の数量は、欠品や廃棄のリスクを比べて決めます。
  • 余裕は、余ったときの損と足りないときの損を比べて品目ごとに置きます。農林水産省の推計では、2024年度の外食産業の食品ロスは70万トンです。
  • 「届くまでに使う数」は、レジや仕込み表に残った日付と数量の並びから出せます。3ヶ月分の記録があれば試せて、最初はExcelの4列で足ります。

棚の在庫だけで発注すると、届くまでに使う量を見落とす

「店の在庫を見て発注する」は、閉店後に冷蔵庫や棚を開けて、減ったぶんを頼むやり方です。多くの個人店がこれで回っていますし、品目が少なくて毎日納品があるなら、それで困りません。

困るのは、頼んでから届くまでに1日以上あく品目です。きょう数えた残りは、あすの営業で減ります。あさって届く荷物は、あすのぶんを使ったあとの残りに足されるのに、数えた瞬間の残りだけを見て頼むと、その1日ぶんが引き算から抜けます。金曜に数えて月曜に届く品目なら、抜けるのは土日の2日ぶんです。

中小企業基盤整備機構の起業マニュアルは、小売業の仕入について「発注から納品までのリードタイムを考えたうえで、必要な時期と量を予測し、無理な発注や無駄な発注を避ける」と書いています。リードタイムは、頼んでから届くまでの日数のことです。飲食店の発注も同じで、数える作業より先に、届くまでの日数を品目ごとに書き出す作業があります。

発注量は「今ある数」「届くまでに使う数」「余裕」の3つで決まる

発注量を式にすると、届くまでに使う数から今ある数を引き、余裕を足した数です。たとえば鶏もも肉が今4kgあり、届くまでの2日で1日3kgずつ使う見込みなら、2日で6kg使うので2kg足りません。余裕を1kg持つなら、頼む量は3kgです。

今ある数は棚を数えて確認します。「届くまでに使う数」は、業者の締め時間と配達日を確認し、その間の使用量を予測します。余裕として何個・何kgを上乗せするかは、欠品と廃棄のリスクを比べて店の人が決めます。

棚を見て頼むやり方は、今ある在庫を目で確認し、納品までの使用量や余裕の数量は頭の中で見積もっています。慣れた店長ならそれで合いますが、休みの日に代わりの人が頼むと合いません。3つを紙に分けて書くだけで、誰が頼んでも同じ数に近づきます。

今ある数

閉店後の残り。開封済みの袋や仕込み済みのぶんをどう数えるかを、品目ごとに先に決めておきます。

届くまでに使う数

発注の締めから次の納品までの営業日に出る量。3つのうち、ここだけが見込みです。

余裕

実際の使用量が見込みを上回ったときのための上乗せ。在庫管理の教科書では安全在庫と呼びます。品目ごとに違ってよい数です。

DEMO

3つの数字を動かすと、発注量と外れたときの金額がどう変わるか

今ある数、届くまでの日数、1日に使う数の見込みとその幅、余裕を入れると、発注量が出ます。発注時に見込んだ使用量と、実際の使用量の組み合わせごとに、余剰・不足の数量と金額を比較できます。

発注量の試算|3つの数字と幅の使い方を試す

品目1つぶんの数字を入れる画面です。見込みの幅の下側・中央・上側で頼んだとき、実際の使用量が下側・中央・上側だった場合にそれぞれ何個余り、何個足りないかを表で並べます。仕入単価と1個あたりの粗利を入力すると、余剰在庫の仕入額と、品切れで得られなかった粗利の目安を確認できます。

触って動かせます
計算の中身
届くまでに使う数(1日の見込み×日数)から今ある数を引き、予備として確保する数量を加えます。表は、頼んだ数と実際に使った数の差を並べています。
使っている前提
数字はすべて入力例です。仕入値と粗利は品目ごとに違うので、自店の数字に置き換えてください。
確かめてほしいところ
届くまでの日数を1日から3日に増やしてみてください。同じ幅でも、外れたときの余りと不足が日数ぶん大きくなります。

※ 余りの金額は、余ったぶんを全部捨てた場合の仕入額です。余った分を期限内に使い切れる場合は、その仕入額がすべて損失になるわけではありません。不足の金額は、足りなかったぶんを全部売り逃したとみなした粗利です。

「届くまでに使う数」は、過去の日付と数量の並びから出せる

使う数を見込む材料は、店の中にあります。レジの単品別の販売数か、仕込み表に残した使用量を、日付と一緒に並べたものです。同じ曜日を4週ぶん並べれば、金曜は月曜の1.5倍、のような曜日の差が見えてきます。中小企業基盤整備機構の資料も、POSで集めた販売データから「どの商品が、いつ・どれだけ・いくらで売れたのか」を分析することを、仕入の情報収集の出発点に置いています。

曜日と季節のように記録そのものに表れる傾向は、過去の並びから先を見込む計算で拾えます。当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列のCSVを入れて列を選ぶと、28日先までの予測を幅つきで出す作りです。3ヶ月分ほどの記録から試せます。

見込みは1点の数字ではなく、幅で受け取ります。「金曜は8〜11kg」のように幅で出れば、余裕をどこまで持つかを人が決められます。予約の団体や近隣のイベントのように記録に表れない事情は、幅の上下どちらに寄せるかを店長が決める材料です。来客数から品目ごとの出数へつなぐ考え方は、飲食店の来客予測の記事に書いています。

余裕は、余ったときの損と足りないときの損を比べて決める

余裕の数量を増やすと欠品を減らせる一方、売れ残りや廃棄が増えるおそれがあります。何個・何kgを予備として持つかは品目ごとに決めます。日持ちする乾物や冷凍品は、余っても翌週に使えるので予備を多めに持てます。生の魚や葉物は余りが廃棄に直結するので予備は少なめにして、足りない日は品切れの札を出すか代わりの品を案内するかを、先に決めておきます。

農林水産省が2026年6月30日に公表した推計では、2024年度の食品ロスは461万トンで、うち外食産業は70万トンです。事業系の合計237万トンは、前年度より6万トン増えました。国は2000年度比で2030年度までに60%減らす目標を置いていて、2024年度の時点で57%減まで来ています。店ごとに予備の在庫量を見直すことも、食品ロスを減らす取り組みの一つです。

中小企業基盤整備機構の資料は、在庫を持つと生じる費用として仕入代金、保管費用、減耗費用、金利、保険料、運搬費用、返品費用の7つを挙げ、適正在庫を「受注チャンスと在庫費用の均衡するポイント」と定義しています。飲食店に置き換えるなら、廃棄した食材の仕入額と、品切れで出せなかった皿の粗利を月に1回並べることが、予備の数量を増やすか減らすかの根拠になります。

予備を多めに持つ品目

日持ちする、代わりが利かない、切らすと看板メニューが止まる。この3つのどれかに当てはまる品目です。

予備を少なめに持つ品目

日持ちしない、当日に近くで買い足せる、代わりの品を案内できる。こちらは売れ残りによる損失のほうが大きい側です。

月に1回並べる2つの金額

廃棄した食材の仕入額と、品切れで提供できなかった皿数に、1皿あたりの粗利を掛けた額。どちらが大きいかで、翌月の余裕を動かします。

毎日数える手間は、品目を2つに分けると減る

全品目を毎日数える必要はありません。中小企業基盤整備機構の資料は、定量・定期・都度の発注方式を商品の特性に応じて使い分けることと、必要なときに必要なものだけを頼む多頻度少量発注を勧めています。飲食店に置き換えると、よく出て日持ちしない品目は毎日数えて頼み、調味料や冷凍品のような動きの遅い品目は週に1回の決まった曜日に数えて頼む、という分け方です。

毎日数える品目は10〜20に絞れることが多く、閉店後の作業は数分で済みます。数えた結果を日付つきで残しておくと、それがそのまま「届くまでに使う数」を見込む材料になります。同じ資料は、入出荷台帳で継続的に記録することを在庫管理の基本に置いています。

月末の実地棚卸とは目的が違います。月末の棚卸は原価率を計算するために全品目を数える作業です。一方、日々の在庫確認では、翌日の発注判断に必要な品目を数えます。棚卸の手順は実地棚卸アプリの開発プランに、業者への伝達と納品の照合は発注管理の開発プランに分けて書いています。

最初はExcelの4列で足りる。仕組みにする費用は3つを決めれば出る

最初の3ヶ月はExcelで足ります。品目ごとに、今ある数、届くまでの日数、直近4週の同じ曜日の平均使用量、余裕の4列を作り、発注量を式で出すだけです。これで誰が頼んでも同じ数になるなら、そこで止まって構いません。

Excelがつらくなるのは、品目が50を超えたときと、曜日と天気と予約が重なる日の見込みを毎回手で直しているときです。そこから先は、レジのCSVから見込みを自動で出し、発注表に幅つきで載せる仕組みが向きます。判断は店長に残り、仕組みが出すのは幅と根拠までです。

費用は3つを決めると見積もれます。対象の品目数、レジや業者の発注システムとつなぐかどうか、見込みを出すだけか発注表の画面まで作るか。当社の飲食店向けの開発プランでは、要件整理から納品まで約3ヶ月を目安にしています。当社の需要予測AIのリリース前でも、CSVファイルを1つお預かりして予測に使えるかを確かめる無料相談を受けています。

試す

レジのCSVファイルを1つお預かりして、データ確認と試験予測を行います。相談は無料で、費用がかかる場合は始める前に金額をお伝えします。

作る

見込みを発注表に載せる画面まで作る場合。金額は品目数と、つなぐシステムの範囲で決まります。

使い続ける

レジから書き出したデータを毎月取り込む運用と、外れた日の理由を残す記録。ここが続くかどうかで、翌年の見込みの質が決まります。

まとめ

発注量は「今ある数」「届くまでに使う数」「余裕」の3つで決まります。今ある数を確認し、届くまでに使う数を予測したうえで、品目に応じた余裕の数量を加えます。

余裕は品目ごとに、余ったときの損と足りないときの損を比べて置きます。廃棄した食材の仕入額と品切れで失った粗利を月に1回比べると、予備の数量を見直す根拠になります。

次にやることは1つです。毎日数える品目を10〜20に絞り、今ある数と届くまでの日数を紙に分けて書くこと。3ヶ月続けば、その記録がそのまま見込みの材料になります。

よくある質問

発注点とは何ですか。店の在庫を見て発注するのと何が違いますか?

発注点は「残りがこの数まで減ったら頼む」という線です。線の位置は、届くまでに使う数に余裕を足した数で決めます。棚を見て頼むやり方との違いは、線を先に決めておくかどうかで、線があれば誰が棚を見ても、頼む・頼まないの判断が同じになります。

データは何ヶ月分あれば「届くまでに使う数」の見込みが出せますか?

3ヶ月分ほどから試せます。曜日の差はその期間で見えてきます。1年分あると、忘年会の時期の伸びや夏の落ち込みのような季節の差まで反映しやすくなります。足りるかどうかは、CSVを見て無料でお伝えしています。

業者ごとに締め時間が違い、まとめて数える時間が取れません。

締めが早い業者の品目だけ営業中に数え、残りは閉店後に回す、という2回に分ける形で足ります。届くまでの日数は業者ごとに違うので、品目の一覧に業者名と締め時間の列を持たせておくと、数える順番もそこから決まります。

見込みが外れて足りなくなった日はどうすればいいですか?

切らすと困る品目は、幅の上側で頼んでおきます。それでも足りない日は出るので、当日に買い足せる店を品目ごとに決めておきます。足りなかった日の理由(団体の予約、天気、近隣のイベント)を日付と一緒に残すと、次の見込みの材料になります。

この記事を書いた人

水上貴洋取締役 / 飲食DXコンサルタント

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

毎日の発注量を、どの記録から決めるか相談できます

閉店後に棚を見て頼む発注を、店長以外の人にも任せたい。品目ごとの余裕をどこに置くか決めかねている。レジの書き出しはあるが、見込みに使えるか分からない。そんな段階で相談していただいて大丈夫です。CSVファイルを1つお預かりして、使える部分と足りない部分を分けるところから始めます。

飲食店の発注量を相談する (新しいタブで開きます)

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