EvoQuest
EvoQuest Apps業務DX支援 2026.08

SCENARIO ── TRUCKING RECORDS CASE

同じ4つの時刻が、
請求書の根拠にも、拘束時間の集計にもなる。

石狩と札幌近郊を回る一般貨物の運送会社を想定します。トラック11台(2トン車6台・4トン車3台・10トン車2台)、ドライバー12名、運行管理者と事務が1名ずつ。令和7年4月から荷待ちと荷役の記録は全車両が対象になりましたが、運行記録計の義務は最大積載量4トン以上のままです。台数の半分を占める2トン車は、記録は必要なのに機器の義務がない帯に入りました。この開発プランは、到着・荷役開始・荷役終了・出発の4つの時刻をドライバーのスマートフォンで残し(EvoQuest Apps)、荷主別の待機時間に標準的運賃の単価をあてた金額を毎月5日に確定する仕組みです。同じ記録から、荷待ちが食っている拘束時間も出します。

想定領域
荷待ち・荷役の記録アプリ / 運送業の業務記録と運賃交渉
担当範囲
業務ヒアリング・様式の突き合わせ・画面設計・実装・並行運用
想定対象
トラック11台・ドライバー12名の一般貨物運送事業者(2トン車が半数)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

貨物自動車運送事業輸送安全規則の第8条は、荷主の都合で集貨地点等に待機したとき、到着した日時、荷主から指定されていた到着日時、積込みや取卸しの開始と終了の日時、出発した日時を記録して1年間保存するよう定めています。荷役作業と附帯業務の記録も同じ条文の中にあります。令和7年4月1日から、この記録の対象が「車両総重量8トン以上または最大積載量5トン以上」の車両から全車両に広がりました。2トン車しか持っていない会社も、いまは記録する側です。

いっぽう、瞬間速度と運行距離と運行時間を運行記録計で残す義務は、同じ規則の第9条で車両総重量7トン以上または最大積載量4トン以上のままです。ここに帯ができました。4トン車と10トン車にはデジタコが載っていて、作業の種別を押せば待機時間が残ります。2トン車6台には義務がなく、載っていません。国土交通省のITツール活用ガイドブックは車載端末を1台あたり数万円から数十万円と示していて、義務のない車両に載せる判断は費用の側から見ると簡単につきません。台数の半分が、記録の紙とドライバーの記憶に残ったままになります。

同じガイドブックには、運行管理システムなら荷待ち料金のような実績にもとづく請求もある程度まで自動で計算できる、という記載があります。計算する側の道具はすでにあるということです。足りていないのは、その手前で時刻がそもそも残っていないことのほうです。この開発プランは配車表の置き換えを後回しにして、令和7年4月に増えた記録だけを先に画面にします。

CHALLENGE

課題

  • 01 記録の義務と機器の義務が、車格でずれた。2トン車6台は荷待ちの記録が必要になったのに、運行記録計の義務はない。デジタコを載せた4トン車以上とは、残っているものの粒がまるで違う。同じ社内で2つの方式が並んでいる。
  • 02 待たされた時間が、帰社後の記憶で書かれている。11時前に着いて、荷主の構内で1時間ほど待った。その「ほど」が、夕方に日報を書くころには30分単位で丸められる。丸めた側が記録として1年残り、請求の話をするときの根拠になる。
  • 03 待機時間料を請求していない。標準的運賃の単価は公表されていて、小型車なら30分までごと1,680円と決まっている。それでも請求書に載らないのは、何月何日の何時から何時まで待ったかを示すものが手元にないため。荷主に確認を求められた時点で話が終わる。
  • 04 荷待ちが拘束時間を食っていることが、月末まで見えない。改善基準告示の拘束時間には手待ち時間が含まれる。荷主の構内で待った1時間も、走った1時間と同じように月284時間の枠を減らす。減り方が分かるのが給与計算のあとでは、配車の組み替えが間に合わない。

APPROACH

アプローチ

動かさない一点は、毎月5日の荷主別集計です。先月ぶんの待機と荷役の時間を荷主ごとに確定し、請求書に載せる分、交渉の材料にする分、今回は見送る分の3つに仕分けます。5日に置くのは月初が暇だからではありません。月末で締めた請求書を翌月10日までに荷主へ出す社内の段取りがあり、そこに間に合う最後の日が5日だからです。ここを過ぎると、先月の待機は数字としてはあっても、請求としては言えなくなります。

時刻の取り方はボタン4つに絞ります。集貨地点等に到着、荷役開始、荷役終了、出発。ドライバーのスマートフォンには次に押すボタンだけが大きく出て、それ以外は表示しません。位置情報と時刻から候補の時刻が先に入っていますが、確定するのはドライバーが押した操作です。機械が自動で決めた時刻を記録にすると、構内の外で待っている場合や、荷主の指示で並び直した場合に実態とずれます。荷主の確認が得られたか得られなかったかも、規則が記録項目に挙げているのでその場で選びます。

打刻は抜けます。抜ける前提で、埋める場所と期限を決めておきます。帰社後の業務後点呼のときに、運行管理者が当日の記録を1画面で確認します。穴のある運行には、位置情報の滞在時間から出した候補が薄く入っていて、ドライバーに聞いて確定します。この確認を当日にするのは、記憶が残っているのがその日だけだからです。3日以上前の穴は埋めずに、空欄のまま「記録なし」として残します。あとから思い出して書いた時刻を、請求の根拠にはできません。

金額のあて方には線を引きます。画面は標準的運賃の単価を使って計算しますが、出てくるのは請求できると確定した金額ではなく、交渉に持っていける材料の金額です。待機時間全体から30分を差し引くこと、到着から2時間を超えた部分は上がった単価を使うことなど、国土交通省がQ&A集で示している計算の順序をそのまま実装します。ドライバーが自分で積み込んだ場合の積込料は待機時間とは別の単価になるため、荷役の記録から分けて出します。荷主との契約で別途決めている場合は、その単価を登録して使います。

同じ記録から、拘束時間の側も出します。荷待ちの時間は改善基準告示の拘束時間に入るので、記録が揃った時点で「今月このドライバーの拘束時間のうち何時間が荷待ちか」が分かります。月284時間の線と、12か月ぶんを足すと年3,300時間を超えてしまう関係を画面に並べ、月の途中で見られるようにします。配車を機械が組み替えることはしません。どのドライバーが月の後半に苦しくなるかを、まだ動かせる時期に運行管理者へ見せるところまでです。

効果は書類が減ったことでは測りません。記録が揃った運行の割合、荷主都合で30分を超えた待機の回数と金額、そのうち請求できた金額と交渉中の金額、日報を書き起こしていた事務の時間、拘束時間が月270時間を超えたドライバーが分かった日。この5つを月次で並べます。1年たてば、どの荷主にどれだけ待たされているかが12か月ぶんの数字になります。

CONSULTATION

まず、荷待ちの4つの時刻からです。

2トン車も記録の対象になったと聞いたが、何を足せばいいのか分からない。
「あの荷主はいつも待たされる」を、月に何回で何分かで言えるようにしたい。
いまの運転日報の様式を見せていただくところから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。ドライバーのスマートフォンと、事務所のパソコンで見る画面の組み合わせです。会社名・荷主名・時刻・金額はすべて想定例で、実在の運送会社・荷主・実績ではありません。

01. 次に押すボタンだけを、荷主の構内で大きく出す

ドライバーが1日に何度も開く画面です。きょうの配送先が上から順に並び、いま向かっている先だけが開きます。到着、荷役開始、荷役終了、出発の4つが順番に1つずつ出て、押した時刻がその場で記録されます。荷役をドライバー自身がやったのか荷主側がやったのか、荷主の確認が得られたかどうかも、その場で選びます。

運行記録
設計のポイント
手袋のまま片手で押せる大きさにする。次の1つだけを出し、選択肢を並べない。入力欄は最後まで出さない。
候補と確定を分ける
位置情報から出した候補の時刻は薄く入れておくが、記録になるのは押した操作。ずれていればその場で直せる。
荷主の確認
規則が記録項目に挙げているので、得られた場合と得られなかった場合の両方を残せるようにする。

02. 帰社後の点呼と一緒に、その日の穴をふさぐ

運行管理者が夕方に開く画面です。きょうの全運行が1行ずつ並び、4つの時刻が揃っていない運行に印が付きます。位置情報の滞在時間から出した候補が薄く入っているので、ドライバーに確認して確定します。3日以上前の穴は候補を出さず、記録なしとして残ります。業務後点呼の記録と同じ画面から続けて入れる作りです。

当日の記録確認
設計のポイント
穴を翌日に持ち越さない。当日に聞けば思い出せるが、翌週に聞くと丸めた時間しか出てこない。
埋めない範囲を決める
3日以上前は空欄のまま残す。あとから書いた時刻を請求の根拠にはできないので、無理に埋めない。
既存の様式
いま使っている運転日報の様式をそのまま印刷できるようにしてから移す。運輸支局への説明で困らないため。

03. どの荷主で何分待ったかを、金額の並びにする

毎月5日に確定する画面です。荷主ごとに、荷主都合で30分を超えた待機の回数、平均と合計の時間、標準的運賃の単価をあてた金額が並びます。行ごとに請求済みか交渉中かを選んでから確定します。前月までの推移が横に並ぶので、待機が伸びている荷主と、話し合いのあと短くなった荷主が見分けられます。

荷主別集計
設計のポイント
合計時間だけでは交渉にならない。回数と時間と金額を同じ行に置き、荷主ごとの並びにする。
5日という締切
月末締めの請求書を翌月10日に出す段取りから逆算した日。過ぎると先月ぶんは請求として言えなくなる。
見送りの記録
今回は請求しないと決めた分も金額のまま残す。積み上がると、契約を見直す相談の材料になる。

04. 1回の待機が、どう計算されたかを開いて見せる

荷主に出す明細のもとになる画面です。運行1件ごとに、到着から出発までの時刻、待機時間、そこから30分を差し引いた計算、2時間を超えた部分に上がった単価をあてた計算が、上から順に並びます。ドライバーが自分で積み込んだ場合の積込料は別の行になります。荷主の確認が得られなかった運行には印が付き、その状態のまま出せます。

請求明細
設計のポイント
合計金額だけを出さない。差し引く30分と、2時間を境に変わる単価を、計算の途中まで見せる。
単価の扱い
標準的運賃は届出をして用いるもの。契約で別の単価を決めている荷主は、その単価を登録して使う。
積込料との区別
荷主側が積む時間は待機、ドライバーが積む時間は積込料。荷役の記録から自動で振り分ける。

05. 荷待ちが月の枠をどれだけ削ったかを、途中で見る

運行管理者が週に一度開く画面です。ドライバーごとに、今月ここまでの拘束時間と、そのうち荷待ちが占める時間が並びます。月284時間の線と、このペースで12か月続けた場合に年3,300時間をいつ超えるかが同じ画面に出ます。配車の組み替え案は出しません。どの人が月の後半に苦しくなるかを、まだ動かせるうちに見せます。

拘束時間の見通し
設計のポイント
月ごとに284時間へ収めても、12か月続けると年の3,300時間を超える。月と年を同じ画面に並べる。
荷待ちの内訳
拘束時間には手待ち時間が入る。走った時間と待った時間を分けて出すと、交渉すべき相手が見える。
決めるのは人
印が出るのは組み合わせまで。誰にどの便を振り直すかは運行管理者が決め、機械は入れ替えない。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、この会社の1か月が3つの点で変わる想定です。

01

2トン車の待機が、記録として残るようになる

Beforeデジタコの載った4トン車以上は作業の種別まで残るのに、2トン車6台は手書きの日報だけ。同じ会社の中で、記録の粒が車格で分かれていた。
After車格に関わらず、荷待ちと荷役の4つの時刻がスマートフォンから残る。令和7年4月に広がった記録の義務に、機器を追加せずに追いつく。

運行記録計そのものの義務は最大積載量4トン以上のまま変わりません。この仕組みが置き換えるのは業務記録の側で、デジタコの代わりにはなりません。

02

待たされた時間が、荷主ごとの金額として並ぶ

Before「あそこはいつも待たされる」は全員の実感だった。何回で何分かを聞かれると誰も答えられず、運賃の話はそこで止まっていた。
After月5日の集計に、荷主別の回数と時間と金額が並ぶ。想定例では、ある荷主への配送が月18回、平均1時間10分の待機で、小型車の単価をあてると月6万480円になる。

標準的運賃は届出をしたうえで用いるもので、金額がそのまま通るとは限りません。画面が出すのは交渉に持っていける材料です。

03

月の後半に苦しくなる人が、月の半ばで分かる

Before拘束時間の集計は給与計算と同時だったので、超えそうだと気づくのは月が終わったあと。分かったときには配車を動かせなかった。
After週に一度、ドライバーごとの拘束時間と荷待ちの内訳が見える。荷待ちの長い便が特定の人に続いていれば、月の半ばで振り分けを変えられる。

配車を組み替えるのは運行管理者です。この画面が出すのは、外れそうな組み合わせと、その原因が走行と荷待ちのどちらにあるかまでです。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌近郊なら営業所へ伺い、道外はオンラインで進めます。作る範囲を記録と集計に絞っているので、2ヶ月の想定です。配車表そのものの置き換えは含めず、いまの表をそのまま使い続ける前提で組みます。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + 様式の突き合わせ

いまの日報から出ている項目を、1つずつ確かめる

営業所に半日お邪魔して、朝の点呼から帰社後の日報までの流れを見せてもらいます。ドライバー2名に同乗して、荷主の構内で実際にどこで待つのか、電波の入らない場所があるかを確かめます。いま使っている運転日報と業務記録の様式を並べ、規則が求める項目のうちどれが埋まっていて、どれが空欄のまま運用されているかを表にします。荷主ごとの契約書も見せてもらい、荷役作業が明記されている荷主とそうでない荷主を分けます。

  • 営業所での半日の見学と、点呼・日報の流れの確認
  • ドライバー同乗による構内の待機場所と電波状況の確認
  • 現行様式と規則の記録項目の突き合わせ表の作成
  • 荷主別の契約内容の確認(荷役作業の明記の有無)
2
MONTH 02 / 記録アプリと集計画面の開発 + 並行運用

2トン車3台で2週間走らせて、押せるかどうかを見る

記録アプリと当日の記録確認、荷主別集計、請求明細、拘束時間の見通しを開発します。できた時点で2トン車3台に入れ、手書きの日報を続けながら2週間並行して使います。押し忘れの多い場面と、候補の時刻がずれる荷主を洗い出して、ボタンの出し方と滞在の判定を直します。既存の日報様式をそのまま印刷できることを確認してから、全車両へ広げて引き継ぎます。

  • 記録アプリ・当日の記録確認・荷主別集計・請求明細・拘束時間の見通しの開発
  • 2トン車3台での並行運用(2週間)
  • 押し忘れと候補時刻のずれの反映
  • 既存様式での出力確認と、全車両への展開・引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 デジタコを入れるのと、どちらが安いですか。
    台数と車格によります。国土交通省のITツール活用ガイドブックは車載端末を1台あたり数万円から数十万円としていて、4トン車以上は運行記録計の義務があるので、そもそも入れることになります。判断が要るのは義務のない2トン車の側です。この仕組みは車載機器を足さずにドライバーのスマートフォンを使うため、台数が増えても機器の費用は増えません。いっぽうデジタコは速度や運行距離まで自動で残るので、記録の手間はこちらより少なくなります。どちらか一方に寄せる必要はなく、4トン車以上はデジタコ、2トン車はスマートフォンという分け方でも、集計は1つの画面にまとまります。
  • Q2 記録をスマートフォンで残しても、監査で通りますか。
    規則は記録すべき事項と保存期間を定めていて、紙に限る書き方はしていません。ただし実際の扱いは所轄の運輸支局の指導にもよるため、置き換える前に運輸支局や顧問の先生にご確認ください。当社が作る場合は、いまお使いの運転日報と業務記録の様式をそのまま印刷できる形にしてから画面を作ります。最初の月に現行様式と規則の項目を突き合わせる作業を入れているのは、そのためです。並行運用の期間も、手書きの日報を止めずに続けていただきます。
  • Q3 標準的運賃の金額が、そのまま請求できるということですか。
    いいえ。標準的運賃は届出をしたうえで用いるもので、実際にいくら収受できるかは荷主との契約によります。画面が出すのは、記録に単価をあてた場合の金額です。これは請求できると確定した数字ではなく、荷主と話すときに手元に置いておく材料です。国土交通省のQ&A集も、待機時間料の対象は荷主都合による待機であることを前提にしていて、渋滞などで運行が長引いた分は原則として対象外としています。実態に合わない金額を出すと交渉が続かないので、対象になる待機とならない待機を画面の側で分けます。
  • Q4 ドライバーが押してくれるか心配です。
    押し忘れは起きる前提で組みます。当日の記録確認で穴が見えるようにしてあり、帰社後の点呼のときに運行管理者が一緒に埋めます。それと、ボタンを4つに絞って次の1つだけを大きく出すのは、荷主の構内で片手で押せるようにするためです。2ヶ月目の並行運用を2トン車3台から始めるのも、どの場面で押し忘れが起きるかを先に見るためです。押した記録が待機時間料の交渉につながって、その結果がドライバーにも伝われば、押す理由が本人の側にも生まれます。最初の説明の場には当社も同席します。
  • Q5 配車表もこのアプリに移せますか。
    移せますが、この2ヶ月には入れていません。配車表を作り直すとなると、車両、荷主、ドライバー、運賃をすべて登録する話になり、規模が数倍になります。まず令和7年4月に増えた記録だけを画面にして、荷主別の待機が金額で見えるところまでを2ヶ月で作り、配車表はホワイトボードやExcelのまま続けるという順番をお勧めしています。記録が貯まってから配車を扱うほうが、拘束時間の確認まで載せられて仕組みとしても素直になります。

まず、荷待ちの4つの時刻からです。

2トン車も記録の対象になったと聞いたが、何を足せばいいのか分からない。
「あの荷主はいつも待たされる」を、月に何回で何分かで言えるようにしたい。
いまの運転日報の様式を見せていただくところから、ご相談ください。