EvoQuest
EvoQuest Food需要予測AI 執筆:水上貴洋(取締役) 2026.07

SCENARIO ── YAKINIKU CUT ORDERING CASE

メニューの名前と、
発注する部位の名前が違う。

札幌の郊外にある、席数48ほどの町の焼肉店。品書きの焼肉は28品あって、レジを開けばどの皿が何皿出たかは日ごとに出てきます。ところが卸に送る注文書に並ぶのは、部位の名前とキロ数です。しかも品書きの名前と部位の名前は、必ずしも一対一で対応していません。ロースが出た日にカルビが余る理由も、そこにあります。木曜15時までに、金曜納品ぶんの部位別キロ数を決めて送る。この発注を完了するところまでを、EvoQuest Foodの業務システムに落とし込みます。

想定領域
発注量の予測 / 飲食店の業務改善
担当範囲
要件整理・予測設計・画面設計・実装
想定対象
席数48ほどの焼肉店(焼肉28品 / 仕入は正肉とホルモンの2社)
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

来客数は予約や曜日から見積もれます。レジの記録から、どの商品が何皿売れたかも分かります。品目ごとの出数予測は、 居酒屋向けの開発プラン でも紹介しています。ただし、皿数の予測を発注に使うには、部位ごとの必要な重量に換算する必要があります。

品書きの「カルビ」という商品名だけでは、発注する部位を特定できない場合があります。使うのはバラのあたりで、肩バラの三角バラを特上に回す店もあるし、前バラを厚めに切って出す店もある。ロースも同じで、肩ロースとリブロースのどちらを指すかは店が決めています。焼肉で使う正肉の部位は、細かいものを含めれば数十に分かれます。同じ部位が何品にもなり、同じ品が何部位からも取れるので、皿数の合計をそのままキロに置き換える計算式は成り立ちません。

だから、この開発プランで先に作るのは予測ではなく、皿と部位をつなぐ台帳です。そのうえで目指すゴールは一つ。木曜の15時、店長が金曜納品ぶんの部位別キロ数を決めて卸に送る。この送信が毎週きちんと終わること。予測は、発注量を決めるための判断材料として使います。

CHALLENGE

課題

  • 01 品書きの名前と、伝票の部位名が合っていない。カルビもロースも品書き側の呼び名で、卸に頼むときは部位で書きます。頭の中の変換表は店長にしかなく、書き出されていません。
  • 02 頼むのは掃除前のキロ、出すのは掃除後のグラム。ブロックから筋と余分な脂を落とすと使える量は減り、減る割合は部位ごとに違います。歩留まりを担当者の感覚で見積もっているので、同じ4キロが何皿になるかが日によって動きます。
  • 03 日持ちが部位ごとに違う。真空のブロックなら冷蔵で5日ほど、スライスすると3日ほど。生のホルモンは2〜3日で、下ゆですれば1週間。ひとまとめの発注ルールにすると、使い切れない部位が出る恐れがあります。
  • 04 卸の単位はブロックで、しかも1本の重さが揃わない。肉のブロックは1本ごとに重さが異なり、3.8キロと4.6キロが同じ「1本」として届きます。キロで決めた注文が、納品されるときには別の数字になっています。
  • 05 売れ残りと売り切れの損失を把握できない。余った肉は盛り合わせや切り落としに振れるので、捨てた量としては表に出ません。振った時点で単価は落ちているのに、原価率だけでは、単価を下げた影響を区別できません。売り切れて断った皿は、最初から数字になりません。

APPROACH

課題への対応

この設計では、木曜15時までに発注を済ませる流れを作ります。金曜納品ぶんの部位別キロ数を決めて、卸に送る。決めるのは店長、期限は卸の受付が閉まる時刻。予測は、発注の締切までに確認できる形で表示します。画面は、この発注を完了するための道具として作ります。

その手前に、皿と部位の対応台帳を作ります。1皿を何グラムにするか、どの部位から取るか、第一希望が足りないときに何で代えるか。歩留まりは部位ごとに実測してから入れます。世間の目安を借りてくると、掃除の仕方が店ごとに違う分だけずれるためです。予測の対象は仕込みが必要な18品と、それらに使う9部位に絞ります。対応する部位と換算方法を台帳に登録し、担当者が毎回計算し直す手間を減らします。

予約分と予約外の注文見込みを分けて計算します。宴会のコースは人数と決まった内容から、食べ放題は過去の1人あたりの注文量から、必要な肉の量を見積もります。食べ放題の注文量は当日変わるため、予約人数が確定していても必要量は予測値です。予約分と予約外の必要量を足し合わせ、使用可能な在庫を差し引いて発注量を出します。画面でも両者を色分けし、何を根拠に計算した量なのか確認できるようにします。

頼む量と切る量は、別の判断として分けます。ブロックのまま置けば5日、切ってしまえば3日。保存状態ごとの期限を踏まえて、必要な分を切り出します。木曜に決めるのは次の便までに要る総量と、冷蔵庫に置ける上限。何キロ切るかは、その日の予約を見て朝に決める。生のホルモンは日持ちも便も違うので、同じ表に混ぜず別立てで扱います。

キロで出した答えは、最後にブロックの本数へ丸めます。不定貫なので、実際に届く重さは注文の数字とずれる。ずれることを前提に、丸めたあとの過不足を画面に出し、次の便で調整する形にします。最後に決めるのは店長。画面には判断に必要な数量と発注期限を示します。

予測と実績の差に加え、売上への影響も確認します。余った肉を単価の低い商品に使った場合は、その重量と単価差から売上の減少額を計算します。売り切れで注文を断った場合は時刻・品名・皿数を記録し、販売できなかった分の金額を推計します。この二つを週に一度、同じ表に出します。切り出しの指示が何時に出せていたかも、同じ表に載せます。

CONSULTATION

予測した皿数から、部位ごとの発注量を決める。

出た皿数は分かっていても、注文書は部位の名前で書きます。
その間にある変換表を、頭の中から画面に移すところから始められます。
レジから何が出せるかの確認も含めて、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。木曜の発注は事務室のパソコン、朝の切り出しは仕込み場のタブレットで使う前提の作りです。店の設定・皿数・キロ数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. きょう、どの部位を何キロ切るか

毎朝の切り出し量を決める画面。左に今夜出そうな皿の予測、右に皿数から換算した部位別の重量が並び、真ん中の帯が皿から部位への変換を見せます。冷蔵庫に何が何キロ残っているかも右側に出るので、朝に在庫と予測を見比べながら切る量を決められます。

切り出し表
設計のポイント
左に予測皿数、右に部位別の必要量を表示し、中央に換算の過程を示す。
切りすぎの抑制
スライスにすると日持ちが3日に落ちるため、切る量の上限を「あと何日で使い切れるか」から出す。
朝の入力
予約の変更だけ拾えば、あとは前夜の予測が引き継がれる。手入力は1画面で終わる。

02. 木曜15時、部位ごとに何キロ頼むか

週2回の発注時に使う画面。予約分と予約外の注文見込みを合計し、次の納品までに必要な量を部位ごとに示します。そこから使用可能な在庫を差し引いて発注量を出します。最後にブロックの本数へ丸め、丸めた分の過不足をその場で見せます。

発注
設計のポイント
数字を眺める画面にせず、送信ボタンまで一画面に入れる。締切までの残り時間を右上に固定表示する。
塗り分け
予約分の必要量を濃い色、予約外の注文見込みを斜線で表示して区別する。
不定貫の扱い
「4キロのブロック1本」で届く重さに幅があることを前提に、注文は本数、必要量はキロで並記する。

03. この皿は、どの部位から取るか

皿と部位をつなぐ台帳の画面。1皿の量、第一希望の部位、代わりに使える部位、掃除後に残る割合を1品ずつ持ちます。ここを直すと切り出し表と発注の数字が同時に変わるので、変更した日付と直した人が残ります。

対応台帳
設計のポイント
品から部位へ、部位から品へ、どちらの向きからも引けるようにする。逆引きで「この部位が余ったらどの商品に使えるか」が出る。
歩留まりの入れかた
一般的な目安を初期値にせず、店で何本か掃除して量った実測から入れる。値は後から更新できる。
代替の順序
第一希望が足りない日に何で代えるかを順番で持ち、格落ちになる組み合わせには印を付ける。

04. 入ってから使い切るまで

ブロック1本ごとの記録が並ぶ画面。いつ入荷して、実際の重さが何キロで、いつ開けて、あと何日で使い切るか。日持ちの短い生ホルモンは上の段に分け、正肉と混ぜません。期限が近い順に自然と上がってきます。

部位別在庫
設計のポイント
1本を1本の帯で表し、帯の長さを残り日数にする。真空のまま置いた日数と、開けてからの日数を色で分ける。
入力の手間
納品時に実重量を打つのは1本1回。切り出した量も記録し、棚卸で実在庫と照合する。
期限の扱い
残り1日の帯には振り先の候補が出る。捨てる前に、どの皿へ振るかを選ぶ画面につながる。

05. 格落ちで目減りした額と、断った皿

先週の実績と照らす画面。左に格落ちへ振ったキロと単価差を積み、右に売り切れで断った皿の推計を並べます。同じ部位で値下げと売り切れが起きた週は、入荷量に加えて切り出す量や時刻も見直します。

週の集計
設計のポイント
目減りと売り逃しを左右で対称に並べ、それぞれの影響を比べられるようにする。
推計の見せかた
断った皿数には推計と分かる表記を付け、算出の式を画面から開けるようにする。
打ち手
行から「次の便の三角バラを2キロ減らす」を提案し、承認すると木曜の発注画面に反映される。

OUTCOME

導入による変化

仕組みが運用に乗ったあと、発注と仕込みに次の4つの変化がある想定です。

01

注文書に書く数が
経験だけで決めた量から、予測皿数をもとに計算した量へ。

Before「先週と同じくらい」で部位ごとのキロを書き、ロースが出た日にカルビが余っていた。
After予約分と予約外の予測皿数を部位別の重量に換算し、使用可能な在庫を引いてからブロックの本数に換算する。

1つの部位を複数の商品に使う場合もあります。商品ごとに使う部位と量を計算してから合計し、部位ごとの必要量を求めます。

02

単価の低い商品に回した影響が、金額で分かる。

Before余りは盛り合わせや切り落としに振れるので、損として数えたことがなかった。
After振った時点で単価差が金額になり、週の集計に積み上がる。

捨てていないから損はしていない、とは限りません。振り先の単価が落ちている分は、廃棄と同じように記録しないと見えないままです。

03

切る時刻が
朝いちの一括から、日持ちに合わせた二度切りへ。

Before開店前にその日ぶんをまとめて切り、夕方に足りなくなると慌てて追加で切っていた。
After朝に切る量は使い切れる日数から決め、団体の入る日だけ夕方前にもう一度切る。

ブロックとスライスで日持ちが2日ほど変わります。切る作業を分けるだけで、余った肉をブロックの状態で残せます。

04

担当者が変わっても、1皿の量を確認できる。

Before1皿の量が人の手加減で決まり、多めに盛る人と少なめの人で原価が動いていた。
After台帳に載った1皿の量と部位が切り出し表に出るので、量りながら決められたグラム数にそろえられる。

焼肉は食材費の重い業態です。1皿5グラムのずれが、月の終わりには目に見える金額になって現れます。

PROCESS

3ヶ月の進め方

札幌市内なら店舗へ伺い、道外はオンラインで進めます。皿と部位の対応台帳を店と一緒に作る工程があるため、設計から納品まで3ヶ月の想定です。月の区切りで実際に触れるものをお渡しし、仕込み場で使ってみた感想を次の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 台帳をつくる

「この皿はどの部位から取るか」を、書き出す月。

品書きの28品を店長と一つずつ見て、使う部位と1皿の量を決めていきます。歩留まりは何本か掃除して量り、実測から入れます。予測皿数から発注量を計算するために必要な情報を、最初の月に整理します。

  • 仕込み場と事務室でのヒアリング(3〜4回)
  • 品と部位の対応、1皿の量、代替の順序の書き出し
  • 部位ごとの歩留まりの実測(掃除の立ち会い)
  • 対応台帳と切り出し表の下書き
2
MONTH 02 / 予測と発注

予測皿数を必要な重量と発注本数に換算する月。

レジの皿数を1年ぶん取り出し、曜日と予約から品ごとの出数を幅で読む仕組みを組みます。コースと宴会の1人あたりのグラム数も同じ資料から拾い、予約分の必要量の見積もりに使います。丸めたあとの過不足の見せ方は、卸の担当者にも確認してから決めます。

  • レジの皿数と仕入伝票の突き合わせ
  • 部位別の必要キロの試作と幅の調整
  • 発注画面(予約分の計算・在庫の差し引き・本数への換算)の開発
  • 卸の受付時刻と納品サイクルの確認
3
MONTH 03 / 切り出しと週の集計

朝の切り出しと、目減りを金額で見る表を作る月。

切り出し表と部位別在庫を仕上げ、格落ちに振ったキロと断った皿を記録する画面まで作ります。3週間はいまの発注のやり方と並走させ、木曜15時までに発注を確定できるかを確かめてから納品します。

  • 切り出し表・部位別在庫・週の集計の開発
  • 生ホルモンの別立て運用の作り込み
  • いまの発注方法との3週間の並走
  • 納品 + 運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 レジから皿数が出せれば始められますか?
    品ごとの日別の皿数が表計算データで出れば足ります。時間帯まで出れば、夕方前にもう一度切るかどうかの判断が早くなります。予約の人数とコースの種類が分かる記録もあると、予約分の必要量を見積もりやすくなります。何が出せるか分からない場合は、レジの画面を一緒に見ながら確認するところからお手伝いします。
  • Q2 「カルビ」に使う部位が、仕入れの都合で日によって変わります。
    そのために台帳には、使用する部位を優先順位つきで登録します。第一希望の部位が入らない日に何で代えるか、その組み合わせが格落ちになるかどうかを持たせておく形です。仕入れの入り具合で第二希望の部位を使った日は、その事実が記録に残るので、同じ組み合わせが続くなら品書きの側を見直す材料にもなります。
  • Q3 一頭買いやセットで仕入れている店でも使えますか?
    使えますが、設計は変わります。買う単位がセットに変わると、決めることは「何キロ頼むか」から「入ってきた部位をどの皿に振るか」の配分側へ移ります。予測は発注量を決めるためではなく、メニュー構成や日替わり商品の検討に使います。同じ台帳を土台に使えるので、どちらの形でも最初の月の作業は共通です。
  • Q4 歩留まりを量る手間はどのくらいですか?
    最初の月に、部位ごとに何本か立ち会って量るだけです。毎回量る運用にはしません。掃除の仕方が変わったときや、仕入れ先を替えたときに更新すれば足ります。手間の割に効くのは、この数字が発注のキロと1皿の原価の両方に効くからです。
  • Q5 生のホルモンはどう扱いますか?
    正肉と同じ表には入れません。日持ちが2〜3日と短く、納品の便も別なので、必要量の予測の仕方も置ける量の考え方も変わります。画面では上の段に分けて置き、下ゆでして日持ちを伸ばした分は別の行として持ちます。予測する対象を欲張らず、出数の多い数品目に絞るのが実務的です。
  • Q6 予測はどのくらい当たるものですか?
    何割当たるかを目標には置きません。注文はブロックの本数に丸まるので、必要な重量の予測が多少ずれても、発注本数が変わらない場合があります。追いかけるのは、格落ちに振って目減りした金額、売り切れで断った皿の推計、切り出しの指示を何時に出せたか。この3つが前の月より良くなっているかを、週の集計で確かめます。

予測した皿数から、部位ごとの発注量を決める。

出た皿数は分かっていても、注文書は部位の名前で書きます。
その間にある変換表を、頭の中から画面に移すところから始められます。
レジから何が出せるかの確認も含めて、ご相談ください。