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AIの基礎・活用

お客さんを「似た人同士」に分けるAIとは?

来店の回数や使った金額が近いお客さんを集めてグループに分ける使い方を、クラスタリングと呼びます。AIは正解を教わらずに記録の近さだけで分けるため、グループに名前を付けて使い道を決めるのは店の人です。

この記事でわかること

  • クラスタリングは、正解の付いていない記録を、似ているもの同士のグループに分ける機械学習の使い方です。お客さんのグループ分けは代表的な使い道の一つです。
  • よく使われる方法では、いくつのグループに分けるかを人が先に決めます。分けたあと、それぞれが「どんなお客さんか」を見て名前を付けるのも人です。
  • 何で比べるか(来店回数、最後に来てからの日数、1回の金額など)を決めることが、結果の使いやすさを大きく左右します。
  • 項目が2〜3個なら、表計算で並べ替えて手で分けるだけで足りることがあります。会員の記録を分析するなら、何に使うかを具体的に示しておきます。

正解を教えずに、似ているもの同士を集める

売上の予測や写真の判別のようなAIは、過去の記録と「正解」の組み合わせを学習させて作ります。クラスタリングはこれと違い、正解を付けていない記録をそのまま渡し、似ているもの同士をまとめてグループに分けます。機械学習の中では「教師なし学習」と呼ばれる種類です。

Google Cloudの解説(教師なし学習とは)は、クラスタリングを、ラベルのないデータを類似点や相違点に基づいてグループに分ける手法と説明し、使い道の例に顧客セグメンテーションを挙げています。

「常連」「新規」のように、分け方が先に決まっているなら、ふつうは条件を決めて仕分ければ済みます。クラスタリングが役に立つのは、どんな分け方があるかを記録から見つけたいときです。予測のAIと生成AIの関係は機械学習と生成AIは何が違う?で説明しています。

グループの数と名前は、人が決める

よく使われるK平均法(K-means)という方法は、前述のGoogle Cloudの解説によると、データを利用者が決めた数(K個)のグループに分けます。3つに分けるか5つに分けるかは、AIではなく使う人が指定します。

同じ解説は、アルゴリズム自体はグループの意味を理解しておらず、利用者がグループを調べて分類を試みる、という趣旨の説明をしています。AIが返すのは「グループ1」「グループ2」という区切りだけです。「月に何度も来るが1回の金額は少ない人たち」のような説明と名前は、中身を見た人が付けます。

当社では、グループの数をいくつか変えて分け、スタッフが中身を見て説明できる数を選ぶようにしています。きれいに分かれていても、店の人がどう扱えばよいか分からないグループは、使われずに終わるためです。

先に決めるのは「何で比べるか」

クラスタリングは、渡した項目が近いかどうかで分けます。来店回数と1回の金額を渡せば、その2つが近い人同士が集まります。時間帯や頼む品の種類を渡せば、別の分け方になります。どの項目を渡すかは、分けたあと何に使いたいかから逆に決めます。

お知らせの送り分けに使いたい

最後に来てからの日数、来店の回数、1回あたりの金額。しばらく来ていない人と、よく来る人を分けやすくなります。

営業時間やメニューの見直しに使いたい

よく来る曜日や時間帯、頼む品の種類。昼に一人で来る人と、夜に複数人で来る人のような違いが出やすくなります。

項目ごとの数字の大きさに気をつける

金額は数千円、回数は数回というように、項目によって数字の大きさが違います。記録の近さを距離で測る方法では、数字の大きい項目の差が結果に強く影響するため、当社では項目ごとに値の幅をそろえてから分けています。

こんな場面で使えます

次は当社が考えた使い方の例です。導入した実績の紹介ではありません。

飲食店や美容室の会員へのお知らせ

来店の間隔と金額でグループに分け、しばらく来ていないグループには近況のお知らせ、よく来るグループには新メニューの先行案内、というように文面を変えます。

教室やジムの通うペース

通う曜日や間隔が似た会員をまとめ、振替の案内やクラスの時間を考える材料にします。退会の前にどんな通い方の変化があったかを見るきっかけにもなります。

商品を売れ方でグループに分ける

分ける対象はお客さんに限りません。週ごとの売れ方が似た商品をまとめると、「毎日少しずつ売れる品」「週末にまとめて出る品」のように、発注や陳列の扱いを分ける材料になります。

ネットショップの購入者を知る

買う時期と金額、使った割引でグループに分け、どんな人がどのくらいいるかを知ります。セールのときだけ買う人が多いのか、定価で買い続ける人が多いのかで、次の打ち手が変わります。

AIの前に、表計算で3列並べてみる

最初の一歩に、AIの開発は要りません。会員ごとに「来店回数」「最後に来てからの日数」「合計の金額」の3列を表計算ソフトに並べ、列ごとに並べ替えて、店の感覚で区切りを決めて分けてみます。

項目が2〜3個で、分けた結果に店の人が納得できるなら、それで十分です。毎月同じ区切りで分け直せば、グループの人数の増減も追えます。

項目が増えて手で区切りを決められない、商品が数百品あって一つずつ見られない、という段階になったら、クラスタリングを試す時期です。そのときも、手で分けた結果と見比べると、AIが見つけた分け方に意味があるかを判断しやすくなります。購入の記録を使う別の仕組みとして、「おすすめ」を出すAIとは?も参考になります。

会員の記録を分析するなら、何に使うかを具体的に示す

レシート単位で品名を数えるだけなら誰が買ったかは出てきませんが、会員ごとの来店や購入の記録をグループに分けるのは、一人ひとりの行動を分析することにあたります。

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編の「利用目的の特定」)は、本人から得た情報から行動・関心等を分析する場合、どのような取扱いが行われているかを本人が予測・想定できる程度に利用目的を特定しなければならないとしています。同じ箇所で「マーケティング活動に用いるため」という書き方は、具体的に特定していない事例として挙げられています。

会員の規約やプライバシーポリシーに、来店や購入の記録を分析してお知らせに使うことが書かれているかを確かめてから始めます。書き方に迷う場合は、専門家に確認してください。

グループの名前を、お客さんへの決めつけにしない

「離れそうなお客さん」「安いものしか買わない人」のような名前は、AIの判断ではなく、人が付けた解釈です。名前が先に立つと、そのグループの一人ひとりの事情を見なくなるおそれがあります。

記録が増えたり、渡す項目を変えたりすると、グループの分かれ方は変わります。一度分けた結果を固定せず、季節やメニューを変えたあとに分け直して、前回と比べながら使うことを当社はすすめています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

手元の会員や商品の記録で、どんなグループ分けができるか知りたい方へ。

表計算で分けるだけで足りるのか、クラスタリングを試す価値があるのかを整理する段階から相談できます。最初の相談で会員の記録を送っていただく必要はありません。どんな記録が残っていて、分けたあと何に使いたいかを伺います。

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