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AIの基礎・活用

「おすすめ」を出すAIとは?

通販サイトの「この商品を買った人は、こんな商品も買っています」は、購入や評価の記録から、その人が好みそうなものを選んで見せる仕組みです。小さな店でも、注文の記録から「一緒に頼まれている品」を数えるところから試せます。

この記事でわかること

  • おすすめを出す仕組みは「推薦システム」と呼ばれます。商品の特徴をもとに選ぶ方法と、好みが似た人の記録をもとに選ぶ方法(協調フィルタリング)が代表的です。
  • 好みが似た人の記録を使う方法は、多くの人の購入や評価の記録がたまっていることが前提です。記録が少ない店では、商品の特徴をもとに選ぶ方法や、店の人が選ぶおすすめと組み合わせます。
  • AIを入れる前に、レシート1枚ごとの品名を表計算ソフトに並べ、「この品と一緒に頼まれている品」を数えるだけでも、おすすめの候補は見つかります。
  • お客さん一人ひとりの購入の記録を分析しておすすめを出すなら、何のために使うかを、本人が予想できる程度に具体的に示しておく必要があります。

おすすめを出す仕組みは、大きく二つ

商品や情報が多いと、お客さんは自分に合うものを探しきれません。そこで、本人の代わりに好みに合いそうなものを選んで見せるのが推薦システムです。ネット通販、動画や音楽の配信サービス、ニュースアプリの「あなたへのおすすめ」がこれにあたります。

産業技術総合研究所の広報誌に載った解説(AIST Today 2004年6月号)は、推薦システムの手法を、対象の特徴を使う「内容に基づくフィルタリング」と、口コミによる推薦を自動にした「協調フィルタリング」の二つに分けています。

商品の特徴をもとに選ぶ

「辛い」「魚介」「温かい」のように、商品ごとに特徴を記録しておき、その人が選んだ商品と特徴が近いものを出します。新しく加えた商品でも、特徴さえ記録してあれば候補に入れられます。

好みが似た人の記録をもとに選ぶ(協調フィルタリング)

自分と好みが似た人を記録から探し、その人たちが選んでいるものを出します。上の解説の言葉では、口コミと同じように、好みが似た人の推薦を参考にする方法です。商品ごとに特徴を書き込む手間はかかりませんが、多くの人の購入や評価の記録がたまっていることが前提になります。

記録が少ない店では、どう考えるか

好みが似た人を探す方法は、比べる相手の記録が少ないうちは、似た人をうまく見つけられません。開店したばかりの店や、会員登録が少ない店で、通販の大手と同じ仕組みをそのまま入れても、期待したおすすめは出にくいと当社は考えています。

そうした店では、商品の特徴をもとに選ぶ方法や、店主やスタッフが選ぶ「今日のおすすめ」と組み合わせます。記録がたまってきたら、好みが似た人の記録を使う方法を足していけば足ります。

予測や分類のAIと同じく、おすすめの仕組みも、手元にある記録の量と中身で作り方が変わります。AIの種類ごとの違いは機械学習と生成AIは何が違う?で説明しています。

こんな場面で使えます

次は当社が考えた使い方の例です。導入した実績の紹介ではありません。

飲食店の「一緒にいかがですか」

注文の記録から、ある料理と一緒に頼まれることが多い品を調べ、メニュー表やモバイルオーダーの画面で並べて見せます。スタッフが声をかけるときの材料にもなります。

ネットショップの「一緒に買われている商品」

商品ページの下に、同じ注文に入っていることが多い商品を並べます。ギフト用の箱や、替えの部品のように、買い忘れやすい物の案内に向いています。

教室や講座の「次に受ける講座」

入門講座を終えた人がその後どの講座へ進んだかを記録しておき、次の案内に使います。講座の数が多い教室ほど、受講者が迷う時間を減らせます。

雑貨店や書店の「スタッフのおすすめ」の補助

スタッフが選んだ品に、購入の記録から見つけた組み合わせを添えます。選ぶのは店の人で、記録は候補を出す役割にとどめます。

AIの前に、一緒に頼まれている品を数えてみる

最初の一歩に、AIの開発は要りません。レジやモバイルオーダーから注文の記録を書き出し、表計算ソフトに「レシート番号」と「品名」の2列で並べます。1枚のレシートに3品あれば3行です。

次に、気になる品を1つ選び、その品が入っているレシートを抜き出して、一緒に入っている品を数えます。ピボットテーブルを使えば、品名ごとの件数がすぐに出ます。

数えるときは、どの注文にもよく入る品に気をつけます。生ビールやご飯のように全体でよく売れる品は、何と組み合わせても上位に出ます。「この料理を頼んだときに限って多い品」かどうかは、全部のレシートの中でその品が入っている割合と比べて確かめます。

品数が多くて手で数えきれない、ネットショップやアプリでお客さん一人ずつに違うおすすめを出したい、という段階になったら、仕組みを作るかどうかを考える時期です。組み合わせを使ってメニューを見直す画面の考え方は、開発プランのメニュー分析・見直し支援システムでも扱っています。

お客さん一人ひとりの記録を使うときは、使い道を示す

レシート単位で品名を数えるだけなら、誰が買ったかは出てきません。会員番号やアプリのアカウントと購入の記録を結びつけ、その人に合わせたおすすめを出す段階になると、個人情報の取り扱いを考える必要があります。

個人情報保護委員会のガイドライン(通則編の「利用目的の特定」)は、本人から得た情報をもとに行動や関心を分析する場合、どのような取り扱いをしているかを本人が予測・想定できる程度に利用目的を特定しなければならないとしています。具体的に特定している例として「取得した閲覧履歴や購買履歴等の情報を分析して、趣味・嗜好に応じた新商品・サービスに関する広告のために利用いたします。」という書き方が挙げられています。

会員の規約やプライバシーポリシーに、購入の記録をおすすめや案内に使うことが書かれているかを確かめてから始めます。書き方に迷う場合は、専門家に確認してください。

おすすめを出す側が気をつけたいこと

総務省の令和8年版情報通信白書(第1部第1章)は、AIの利用に関するリスク意識を尋ねた調査の項目に「AIのレコメンドや自分の嗜好に沿う回答により、無自覚に判断や考えが偏る」を加えています。おすすめは便利な一方で、受け取る側が気にしていることでもあります。

店で使うなら、「一緒に頼まれることが多い品です」「スタッフのおすすめです」のように、なぜ出ているのかが分かる見せ方にすることを当社はすすめています。在庫を減らしたい品ばかりを、お客さんの好みに合うかのように見せる使い方は、信頼を損ねるおそれがあります。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

手元の注文の記録で、おすすめが作れるか確かめたい方へ。

表計算で数えるだけで足りるのか、仕組みを作る価値があるのかを整理する段階から相談できます。最初の相談で注文データを送っていただく必要はありません。どんな記録が残っていて、どこでおすすめを見せたいかを伺います。

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