EvoQuest

AIの基礎・活用

「いつもと違う」に気づくAIとは?

過去の記録から普段の状態を学び、そこから外れたものを知らせるAIを異常検知と呼びます。故障や不良の例が少なくても、普段の記録が多ければ試せるのが特徴です。ただし、決まった上限で判断できることならルールで足ります。

この記事でわかること

  • 異常検知は、普段の記録から「いつもの範囲」を学び、外れ具合を点数にして、決めた基準を超えたものを知らせる仕組みです。機械学習の使い方の一つです。
  • 不良や故障の例はめったに集まりません。そこで、集めやすい普段の状態のデータだけで学習する方法が研究され、点検の分野で有効性が報告されています。
  • 「冷蔵庫が決めた温度を超えたら」のように1つの数字で判断できるなら、ルールで知らせれば足ります。AIが役立つのは、普段の値が曜日や季節で変わる場合や、決めていない種類の変化にも気づきたい場合です。
  • 知らせる基準を下げれば見逃しは減り、問題のない知らせが増えます。どちらをどこまで許すかと、知らせを誰が確かめるかを先に決めます。
  • 最初の一歩は、手元の記録をグラフにして、過去に「おかしかった日」が目立つかを確かめることです。

普段の状態を学び、外れたものを知らせる

異常検知は、過去の記録から普段の状態を学び、新しく入ってきたデータがその範囲からどれだけ外れているかを調べる方法です。外れ具合を点数にし、決めた基準を超えたものを「いつもと違う」として知らせます。

自社の記録から学ぶ点で、売上予測などと同じ機械学習の仲間です。文章を作る生成AIとの関係は機械学習と生成AIは何が違う?で整理しています。

AIが返すのは「いつもと違う」という知らせまでです。それが故障なのか、たまたま売れた日なのかを確かめ、どう対応するかを決めるのは人です。

不良や故障の例が少なくても始められる

「良品」「不良品」のような正解を付けたデータで学ばせる方法では、見つけたい不良の例をたくさん集める必要があります。ところが、不良や故障はめったに起きないため、例が集まりにくいのが普通です。

橋などのコンクリート表面の点検を題材にした研究(土木学会論文集A2、2019年)は、異常に関するデータの整備が実用上の障壁になっていると指摘しています。そのうえで、集めやすい健全な表面の画像だけで学習する異常検知を試し、ひび割れや表面のはがれなどの変状の検出に有効だったと報告しています。

中小企業でも、故障した日の記録はほとんど無いけれど、普段の温度や売上の記録は何年分もある、という状態から検討を始められます。

ルールで足りる場合と、AIが向く場合

先に、AIが要らない場合を確かめます。判断の基準が1つの数字で決まるなら、その数字を超えたら知らせるルールを作れば済みます。Excelの条件付き書式や、機器に付いている警報で足りることもあります。

AIを検討する価値があるのは、次のような場合です。

ルールで足りる場合

冷蔵庫の温度が決めた上限を超えた、在庫が決めた数を下回った、のように「この数字を超えたら」と言い切れる場合です。

普段の値が曜日や季節で変わる

日曜の昼と平日の夕方では、売上の「普段」が違います。上限を1つだけ決めると、忙しい日は毎回知らせが出て、暇な日の異常は見逃します。

いくつかの数字を組み合わせて見たい

温度だけ、電気の使用量だけを見ると普段どおりでも、両方を合わせると普段と違う、という変化があります。1つずつ見るルールでは気づきにくい変化です。

どんな異常が起きるか、全部は決められない

機械の軸受(ベアリング)の振動を題材にした研究(第64回自動制御連合講演会、2021年)は、振動の周波数ごとの強さを監視する一般的な方法には、未知の異常に対応できない問題があると述べています。普段を学ぶ方法は、あらかじめ決めていない種類の変化に気づける可能性があります。

手元の記録で考える使い方のアイデア

次は当社が考えた使い方の例で、導入事例ではありません。どれも、すでに日々残している記録が材料になります。

売上や注文数がいつもと違う日に気づく

曜日や季節ごとの普段の範囲と比べて、大きく外れた日を朝の一覧に出します。レジの打ち間違い、品切れ、近くの催しなど、理由を書き残しておくと次の判断材料になります。

冷蔵・冷凍設備の温度の動きを見る

上限を超えたら知らせる仕組みはルールで作れます。そのうえで、上限内でも普段より温度の戻りが遅い、といった変化を点検のきっかけにする使い方です。食品の安全の判断は、引き続き決めた温度基準と記録で行います。

機械やポンプの音・振動を見る

センサーや録音で普段の状態を集め、普段と違う音や振動を点検のきっかけにします。止まる前に気づければ、修理の手配を営業の都合に合わせやすくなります。

製品や設備の写真を見る

正常な状態の写真を集めて学習させ、違う部分がある写真だけを人の確認に回します。写真を使うAIの全体は写真を見て判断するAIで、何ができる?で紹介しています。

請求書や経費の入力を見る

取引先ごとの普段の金額や回数と比べ、大きく違う入力を確認に回します。二重入力や桁の間違いに気づくきっかけとして使う考え方です。

知らせが多すぎても、少なすぎても使われない

外れ具合の点数のどこから「いつもと違う」とするかは、人が決めます。基準を低くすると見逃しは減りますが、問題のないものまで知らせる誤検知が増えます。基準を高くすると、その逆になります。

先のコンクリートの研究でも、基準を上げると正常な画像を異常とする誤りは減った一方、ひび割れのような細かな変状は見つかりにくくなりました。研究では、見逃しのほうが重大だとして、誤検知をある程度許す基準を選んでいます。

同じ研究では、学習に使った画像に含まれていなかった斜めの継ぎ目や汚れにも、高い点数が付きました。普段の状態として学ばせる記録には、季節や作業内容の違いなど、起こりうる普段の姿を幅広く含めておく必要があります。

仕事で使う前に、見逃しと誤検知のどちらが困るか、1日に何件までなら確かめられるか、知らせを誰がいつ見るかを決めておきます。知らせが多すぎると、やがて誰も見なくなります。

最初の一歩は、手元の記録をグラフにすること

気づきたい「いつもと違う」を1つ決め、関係する記録を集めます。売上なら日別の数字、設備なら温度の記録表など、すでにあるもので構いません。

記録を日付順にグラフにし、過去に「おかしかった」と覚えている日に印を付けます。その日がグラフで目立っていれば、まず決まった上限のルールで足りるかを試します。普段の値が曜日や季節で大きく動いて目立たない場合は、普段の範囲を学ぶ方法を検討する価値があります。

印を付けた日は、AIを試すときに「知らせるべき日を知らせたか」を確かめる材料にもなります。必要な記録の期間は、普段の値がどの周期で変わるかによります。考え方は需要予測に必要なデータ期間で、予測を例に説明しています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

気づきたい「いつもと違う」から、一緒に整理します。

ルールで足りるのか、AIを試す価値があるのかを知りたい段階でも相談できます。データや仕様の提出は要りません。どんな変化に早く気づきたいかを伺いながら、手元の記録で何を確かめられるかを一緒に考えます。

AIで何ができるか相談する (新しいタブで開きます)

メールでのお問い合わせ:info@evoquest.jp 解説記事一覧へ戻る

EvoQuest

AI相談窓口

EvoQuestについて、
気になることを聞いてください。

サービスの内容や制作実績、
費用の目安などをご案内します。

AIが回答します。個人情報・機密情報は入力しないでください。入力内容は回答のためにAI提供元へ送信されます。利用について(新しいタブ)

直接お問い合わせ

会話はこのタブに一時保存されます。