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飲食店のFL比率は、何%なら大丈夫なのか

FL比率は、食材費(Food)と人件費(Labor)の合計を売上で割った数字です。金融庁が公表する資料では60%以下がひとつの目安です。一方で、小企業の実測平均は約68%。この差の読み方と、毎月の計算のやり方を整理しました。

この記事でわかること

  • FL比率=(食材費+人件費)÷売上。金融庁公表の『業種別支援の着眼点』飲食業編は、60%を適正値のひとつの目安とし、FLコスト60%・その他経費30%・営業利益10%を理想的な形として示しています。
  • 実測は目安より高めです。日本政策金融公庫の2025年度調査では、一般飲食店の売上原価は約35%、人件費率は32.9%。合わせて約68%で、営業利益率の平均はマイナスでした。
  • 費用は待っていても上がります。食料の消費者物価は前年同月比プラス3.5%(2026年7月)。北海道の最低賃金は現行1,075円で、2026年度は1,131円への引き上げが答申されています。
  • 家賃や光熱費は削れる幅が小さいため、経営改善は食材費と人件費に集中することになります。ただし片方だけ削ると、もう片方や売上に跳ね返ります。
  • 計算は月1回、先月の売上・仕入・給与の3つの合計から始めれば十分です。ページ内に試算できる画面を置きました。

60%という目安は、どこから来たのか

FL比率のFはFood(材料費)、LはLabor(人件費)です。計算式は、FLコスト(材料費+人件費)÷売上高。金融庁が公表している『業種別支援の着眼点』飲食業編(金融庁の委託事業として日本生産性本部が作成した資料)は、この数字を飲食業の費用割合をつかむ基本的な指標と位置づけています。

目安の数字も同じ資料にあります。60%が適正値のひとつの目安で、60%以下を目指していくことが内部でできる経営改善のポイントだという記載です。理想的な損益の形として、FLコスト60%、その他経費30%、営業利益10%という構成も示されています。

なぜ家賃や光熱費よりFLを見るのか。理由も書かれています。その他経費は家賃や水道光熱費のような固定費が多く、交渉や工夫で減らせる幅が限られる。一方でFLコストは日々の店舗運営に直接つながる費目で、この割合の適正化が経営改善のポイントになる場合が多い、という整理です。

実際の店は何%なのか

日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(2025年度調査)に、従業者50人未満の法人企業の実測があります。一般飲食店464社の平均は、売上高総利益率65.0%。裏返すと売上原価は約35%です。人件費対売上高比率は32.9%。合わせると約68%になります。

つまり、小さな飲食店の平均は目安の60%を8ポイントほど上回っています。同じ調査で、一般飲食店の売上高営業利益率は平均マイナス2.2%でした。売上の3分の2が食材と人で消え、家賃や光熱費を払うと利益が残らない。平均像はそういう形です。

この平均には赤字の店も含まれます。だから「68%なら普通」と読むより、「平均どおりだと利益が出ていない」と読むほうが実態に合います。業態でも変わります。同じ金融庁の資料は原価率の目安を商材によって20%・30%・35%と幅で示し、平均的な飲食業は30%前後に収めたいとしています。ドリンク中心か、食事中心か、高級かで、目指す置き場所は違います。

背景の数字も1つ添えます。東京商工リサーチの集計では、2025年の飲食業の倒産は1,002件で、1996年以降の30年間で初めて1,000件を超えました(民間の信用調査会社による調査です)。要因には食材費や水道光熱費、人件費の上昇が挙げられています。

何もしなくても、FL比率は上がっていく

まずFの側。総務省の消費者物価指数では、食料は前年同月比プラス3.5%です(2026年7月・全国)。同じ統計の内訳で、外食の価格はプラス1.7%。仕入は3%台で上がっているのに、売る側の値段は1%台しか上げられていません。この差の分だけ、店の原価率は静かに上がります。

次にLの側。北海道の最低賃金は現在、時間額1,075円です(2025年10月発効)。2026年度については、北海道地方最低賃金審議会が1,131円への引き上げ(56円増)を答申しています。発効すれば、時給を最低賃金の近くで設定している店は、シフトを変えなくても人件費が約5%増えます。

FL比率は、何もしなければ分子(費用)の側だけが増えていく数字です。年1回、決算書で見るだけでは上がり始めに気づけません。毎月出すことに意味があるのは、このためです。

食材費と人件費、どちらから下げるのか

先に注意点です。Fだけを見て仕入を削ると、品数や盛りが寂しくなって客数に跳ね返ることがあります。Lだけを見てシフトを削ると、ピークタイムに回らなくなり、機会損失と離職につながります。FとLを1つの数字に足して見るのは、この綱引きを1枚で眺めるためです。

金融庁の資料にも、経営改善の代表的な手法や創業時に留意する項目は、結局は材料費と人件費を合わせたFLコストの話に集約される、という趣旨の記載があります。片方を削るのではなく、合計をどこに置くかを決める。それがFL比率の使い方です。

Fの下げ方の実務は、レシピ原価と棚卸の話になります。仕入額を足すだけでは原価率が出ない理由も含めて、原価管理アプリの記事に分けて書きました。Lの側は、時間帯ごとの必要人数の決め方がほぼすべてです。こちらはシフト作成AIの記事で整理しています。

毎月のFL比率は、どの数字で計算するのか

必要な数字は3つだけです。先月の売上、食材と飲料の仕入の合計、人件費の合計。まずはこの3つを月1回並べるところから始めてください。細かい精度より、毎月同じ条件で計算して推移を見ることを優先します。

先に決めておくことが2つあります。1つ目は消費税のそろえ方です。売上と仕入・給与を税込と税抜で混ぜると、比率が実態からずれます。経理の方式に合わせてどちらかに統一してください。2つ目はLに入れる範囲です。正社員の給与だけか、アルバイト給与、賞与、法定福利費まで含めるか。資料によって幅があるので、自店の範囲を決めて固定し、毎月同じ範囲で計算します。

厳密には、Fは仕入額そのままより、月初と月末の在庫(棚卸)を通した売上原価で見るほうが正確です。ただ、最初からそこまでやると続きません。第1段階は仕入額で毎月出す、第2段階で棚卸を通す。この順で十分です。

売上と客数だけなら、無料で使えるPOSレジでも自動で集計できます(たとえばAirレジは、レジ機能と売上集計を0円で提供しています)。そこに仕入と人件費を重ねてFL比率まで出す部分は、自動では出てきません。最初は表計算に月1回、3つの数字を写すだけで作れます。

DEMO

自分の店のFL比率を、その場で試算する

売上・食材費・人件費の3つを動かすと、FL比率と、目標に収めるために必要な金額の差が変わる画面を用意しました。

FL比率シミュレーター|3つの数字で目標との差を金額で見る

月の売上・食材費・人件費をスライダーで動かすと、FL比率、食材費率と人件費率の内訳、目標(55・60・65%)との差が金額で出ます。費用を保ったまま必要になる売上と、売上を保ったまま下げる金額の両方を並べます。

触って動かせます
触れるところ
月の売上、食材費、人件費の3つのスライダーと、目標FL比率(55・60・65%)の切り替えです。
出てくる数字
FL比率、F率とL率の内訳、目標に収まるFLコストの上限、超過や余裕の金額です。
決めるのは人
画面は値上げも人員の削減も提案しません。出るのは目標との差の金額だけで、どの手を選ぶかは店の判断に残ります。

※ 初期値を含め、画面の数値はすべて架空の例です。FL比率=(食材費+人件費)÷売上で計算し、家賃などその他の費用は含みません。

表計算で足りるのはどこまでか

月1回、締めてから振り返るだけなら、表計算で足ります。切り替えを考えるのは、次のどれかが起きたときです。月の途中で今月の着地を知りたくなった。店舗が増えて表が分かれた。入力が続かず3か月で止まった。

当社は、札幌市内の飲食店(株式会社Bluendless様)向けに、納品書を入力すると売上・食材費・人件費・営業利益とFL比率がその場で出る損益管理アプリを開発し、納品しました。月末の締めを待たずに数字が見える状態にすることが、この仕組みの目的です。画面と作りは実案件の紹介ページに載せています。

作るかどうかの前に、既製のサービスで足りるかを先に見ます。POSレジの売上データと、会計ソフトの仕入・給与のデータをどうつなぐかで手間が決まるため、相談では今使っているレジと会計ソフトの名前から伺います。

まとめ

FL比率は、食材費と人件費の合計を売上で割った数字です。金融庁公表資料の目安は60%以下。小企業の実測平均は約68%で、平均どおりでは利益が残りにくい形です。

食料の物価と最低賃金が上がり続けているため、FL比率は年1回ではなく月1回の数字として見ます。消費税のそろえ方とLの範囲を先に決めて、毎月同じ条件で計算します。

次にやることは1つです。先月の売上・仕入合計・給与合計の3つを並べて、FL比率を1回計算してみてください。下のデモ画面に入れれば、目標との差が金額で出ます。

よくある質問

飲食店のFL比率は何%が目安ですか?

金融庁が公表する『業種別支援の着眼点』飲食業編では、60%が適正値のひとつの目安とされ、FLコスト60%・その他経費30%・営業利益10%という構成が理想的な形として示されています。ただし業態で変わります。ドリンク比率が高い店は低めに、食材にこだわる業態は高めに出るため、他店との比較より自店の推移を毎月見ることが先です。

FL比率の人件費には、社会保険料やまかないも含めますか?

含める範囲は資料によって幅があります。決めておくべきなのは、自店でどこまで含めるかを固定して、毎月同じ条件で計算することです。正社員給与・アルバイト給与・賞与を核にして、法定福利費を入れるなら毎月入れる、と決めてください。月によって範囲を変えると、推移が読めなくなります。

家賃はFL比率に入りますか?

入りません。家賃や水道光熱費はその他経費の側です。家賃まで含めた割合をFLR比率と呼ぶ整理もあります。立地の関係で家賃負担が重い店は、FL比率と、FLに家賃を足した割合の両方を並べて見てください。

FL比率は毎日計算するべきですか?

まずは月1回で十分です。毎日や毎週で見たくなるのは、仕込みやシフトの判断に使い始めた段階で、そこまで来ると入力の手間を仕組みで減らさないと続きません。月次で3か月続けて、判断に使えた実感が出てから細かくしてください。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市手稲区の会社です。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

先月の3つの数字を持って、そのまま相談できます。

売上・仕入・給与の合計でFL比率を出してみたら、目安よりだいぶ高かった。どこから下げればよいか分からない。月末にならないと数字が見えない。そのどれかに当てはまるなら、今使っているレジと会計ソフトを伺いながら、表計算で続ける形にするか仕組みにするかを一緒に選びます。北海道内は訪問、道外はオンラインで対応します。

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