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飲食の業務アプリ

飲食店の損益管理アプリで、何が分かるようになるのか

損益管理アプリが引き受けるのは、売上・仕入・人件費・固定費を同じ月にそろえ、営業利益と黒字に必要な売上を出すところまでです。締めを待たずに数字を見たい飲食店に向けて、必要な記録と計算を整理しました。

この記事でわかること

  • アプリが担当するのは、入力を1か所にまとめること、月ごとに費用をそろえること、黒字に必要な売上を計算することの3つです。値上げするか、営業時間を見直すかは人が決めます。
  • 月の営業利益に必要な数字は4つです。売上高、売上原価、人件費、それ以外の費用(家賃・水道光熱費・リース料など)。売上原価には、月末に残った在庫の分を反映します。
  • 費用は支払った月ではなく、債務が確定した月に入れます(国税庁タックスアンサーNo.2210)。月末締めの請求書が翌月に届く仕入をそのまま翌月へ入れると、月ごとの利益が波打ちます。
  • 黒字に必要な売上=固定費÷(1−変動費率)。中小機構のJ-Net21は、変動費を売上規模に応じて増減する費用、固定費を売上規模に関係なく一定額が発生する費用と説明しています。
  • 飲食店で判断が分かれるのは時間給の人件費です。変動費と固定費のどちらに置くかで営業利益の見え方が変わるため、先に決めて毎月同じ扱いにそろえます。

損益管理アプリは、どの作業を引き受けるのか

損益管理アプリが引き受けるのは、数字を集めて並べるところまでです。売上、仕入、人件費、家賃などの費用を同じ月にそろえ、営業利益と、黒字にするために必要な売上を計算して画面に出します。

値上げするのか、仕入先を変えるのか、営業時間を短くするのか。ここは客層と店の方針を知っている人が決めます。アプリから出てくるのは、その判断に使う数字です。

既製のサービスを比べるときも、独自に作るときも、次の3つに対応しているかを先に確認してください。

入力を1か所にまとめる

納品書は取引先・日付・金額を入れるだけ、売上はレジの日計を写すだけにします。紙の伝票と表計算に分かれた記録を、月末にまとめて突き合わせる作業がここで減ります。

月ごとに費用をそろえる

仕入は業者別に、人件費は社員と時間給に分けて集計します。締めの前でも、その時点までの合計が出る状態にします。

黒字に必要な売上を出す

固定費と変動費率から損益分岐点売上高を計算し、今月の売上がそこに届きそうかを見られるようにします。金額と、1営業日あたりの売上の両方で表示すると現場で使えます。

月の営業利益を出すのに、どの数字がいるのか

必要なのは4つです。売上高、売上原価(食材と飲料)、人件費、それ以外の費用(家賃・水道光熱費・リース料・通信費など)。売上高からこの3つを引いた残りが営業利益です。項目を増やすのは、この4つが毎月そろうようになってからで間に合います。

売上原価には、月末に残った在庫の分を反映します。冷蔵庫や倉庫に残っている食材は、翌月へ持ち越されるためです。計算のしかたは原価管理アプリの記事に分けて書きました。

費用をどの月に入れるかも、先に決めます。国税庁のタックスアンサー「必要経費の知識」は、必要経費となる金額はその年に債務の確定した金額であり、支払った年でも債務が確定していないものは必要経費にならないと説明しています。月次でも考え方は同じです。月末締めの請求書が翌月10日に届く仕入を、届いた月の費用として入れると、利益が月ごとに波打ちます。

買った月に全額を費用にしない項目もあります。国税庁の「減価償却のあらまし」は、減価償却資産の取得に要した金額は取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくものだと説明しています。内装工事や厨房機器のように長く使う設備は、1か月分の配分額として毎月の損益に入れておかないと、利益が実態より多く見えます。

仕入は税率が混ざる

国税庁の説明では、軽減税率8%の対象は飲食料品(酒類を除く)の譲渡で、外食は対象に含まれません。食材と酒類が同じ納品書に並ぶため、入力画面では品目ごとに税率を選べるようにし、税率ごとに区分して記帳できる形にします。

人件費に何を入れるかを固定する

社員給与だけを見るのか、時間給、賞与、法定福利費まで含めるのか。範囲を決めて毎月同じにします。月によって範囲が変わると、推移そのものが読めなくなります。

「あといくら売れば黒字か」は、どう計算するのか

中小機構が運営するJ-Net21の解説は、費用を2つに分けるところから始めます。変動費は売上規模(販売量)に応じて金額が増減する費用、固定費は売上規模に関係なく一定金額が発生する費用です。同じ解説では、店舗賃借料や販売員の給与が固定費の例として挙げられています。

分けたあとの式は2つです。損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動費率)。目標の利益を乗せるときは、必要売上高=(固定費+目標利益)÷(1−変動費率)となります。

試算例で置いてみます。食材と飲料の仕入が売上の34%、時間給の人件費が売上の14%で、この2つを変動費として扱うと変動費率は48%です。固定費は家賃30万円、社員給与45万円、水道光熱費18万円、その他22万円で合計115万円とします。損益分岐点売上高は115万円÷0.52で約221万円。営業日が26日なら、1日あたり約8.5万円の売上でトントンです。月20万円の営業利益を残したいなら(115万円+20万円)÷0.52で約260万円、1日あたり約10万円になります。

飲食店で判断が分かれるのは、時間給の人件費をどちらに置くかです。同じ試算例で、時間給の人件費32万円を固定費に移すと、変動費率は34%、固定費は147万円になります。売上が221万円前後なら結果はほとんど変わりませんが、売上が180万円まで落ちた月の営業利益は、変動費として扱うと約21万円の赤字、固定費として扱うと約28万円の赤字です。売上に合わせて営業時間や人数を動かしている店は変動費、人数をほぼ固定している店は固定費に寄せると実態に近くなります。どちらを選んでも構いませんが、毎月同じ扱いにそろえてください。

DEMO

黒字に必要な売上を、その場で試算する

固定費・変動費率・目標利益と、今月ここまでの売上を入れると、必要な売上と着地見込みの差が出る画面を用意しました。

損益分岐点シミュレーター|黒字に必要な売上と、今月の着地見込み

月の固定費、変動費率、目標の営業利益、営業日数を動かすと、損益分岐点売上高と目標利益に必要な売上が、月額と1営業日あたりの両方で出ます。経過日数とそこまでの売上累計を入れると、同じペースで進んだ場合の着地見込みと、必要な売上との差も並びます。

触って動かせます
触れるところ
月の固定費、変動費率、目標の営業利益、月の営業日数、経過した営業日数、そこまでの売上累計です。
出てくる数字
損益分岐点売上高、目標利益に必要な売上高、それぞれの1営業日あたりの金額、同じペースで進んだ場合の着地見込みと差額です。
決めるのは人
画面は値上げも人員の見直しも提案しません。出るのは必要な売上と現在のペースとの差だけで、どの対策を選ぶかはお店で判断します。

※ 初期値を含め、画面の数値はすべて架空の試算例です。損益分岐点売上高=固定費÷(1−変動費率)、目標利益に必要な売上高=(固定費+目標利益)÷(1−変動費率)で計算しています。売上・費用はいずれも税抜でそろえた前提です。

月の途中で着地を見るには、何を毎日入れるのか

毎日入れるのは2つだけで足ります。レジの日計(その日の売上)と、その日に届いた納品書の金額です。人件費は、シフトの実績時間に時給を掛けた概算を週1回入れておけば、月の途中の判断には間に合います。

先ほどの試算例で、営業日26日のうち15日を終えた時点の売上累計が128万円だとします。1日平均は約8.5万円なので、残り11日を同じペースで進むと着地は約222万円。損益分岐点の221万円とほぼ同じで、営業利益はほとんど残らない見込みです。目標の260万円に届かせるには、残り11日で132万円、1日12万円の売上が必要になります。

この見込みは動きます。1日の売上は、給料日の前後や連休の位置で変わるからです。数字を出す目的は、いまのペースで足りるのか足りないのかを、月の途中で知ることにあります。足りないと分かった月は、当月の打ち手より、翌月の仕入条件やシフトの組み方を先に見直したほうが効きます。

確定した数字は、棚卸と請求書がそろってからです。月の途中の数字と確定値は別の欄に並べ、どちらを見ているかが分かるようにしておきます。

表計算で足りるのは、どこまでか

月に1回、締めてから振り返るだけなら表計算で足ります。売上、仕入、人件費、その他の費用を月ごとに1行ずつ並べ、営業利益の列を1つ足す。まずはこの形で3か月続けてみてください。

仕組みに切り替えるかどうかを考えるのは、次のどれかが起きたときです。月の途中で今月の着地を知りたくなった。店舗が増えて表がファイルごとに分かれた。入力が続かず数か月止まった。集計できるのが1人だけで、その人が休むと数字が出ない。

当社は、札幌市内の飲食店(株式会社Bluendless様)向けに、納品書を入力すると売上・食材費・人件費・営業利益とFL比率がその場で出る損益管理アプリを開発し、納品しました。月末の締めを待たずに数字が見える状態にすることが目的の案件です。画面は実案件の紹介ページに載せています。

費用と期間は、何を決めれば見積もれるのか

先に見るのは、いま使っているレジと会計ソフトで足りるかどうかです。売上はレジ、仕入と給与は会計ソフトにある店が多く、手間の大きさは「その2つをどうつなぐか」でほぼ決まります。自動で取り込めるなら既製のサービスの組み合わせで足りることもありますし、手で写す作業が月に何時間も残るなら作ったほうが早くなります。

独自に作る場合、見積もりの幅を決めるのは次の4つです。入力する人と回数(誰が、1日に何回入れるか)、既存のデータの取り込み方(CSVで出せるのか、手入力か)、店舗数と権限(店長に何を見せるか)、画面に出す指標(営業利益までか、損益分岐点や着地見込みまでか)。この4つが決まれば、費用と期間の概算を出せます。

決まっていない状態でも相談は始められます。当社では最初に、いまの記録を見ながら「どの数字が、いつ、誰のところで止まっているか」を一緒に書き出します。ここまでで、既製のサービスで足りるのか作るのかの見当が付きます。

小さく始めるなら、1店舗・入力2種類(納品書と日計)から試すのが現実的です。最初の月は表計算のままでも構いません。3か月分そろえてから、続けられる形に作り替えるほうが、使われないまま止まる画面を作らずに済みます。

まとめ

損益管理アプリが引き受けるのは、入力を1か所にまとめること、月ごとに費用をそろえること、黒字に必要な売上を計算することの3つです。何を見直すかは人が決めます。

月の営業利益に必要な数字は、売上高・売上原価・人件費・それ以外の費用の4つ。費用は債務が確定した月に入れ、設備は1か月分の配分額として毎月入れます。

黒字に必要な売上は、固定費÷(1−変動費率)で出ます。時間給の人件費を変動費と固定費のどちらに置くかを先に決め、毎月同じ扱いにそろえてください。

次にやることは1つです。先月の売上・仕入・人件費・固定費を1行に並べて、営業利益を出してみてください。その1行が、仕組みを考える出発点になります。

よくある質問

損益管理アプリを入れると、会計ソフトは不要になりますか?

役割が違うので、両方使うことになります。申告や決算は会計ソフトと税理士の担当で、損益管理アプリは日々の判断に使う数字を早く出すためのものです。両者の数字が食い違うときは、費用をどの月に入れたか、在庫(棚卸)を反映しているか、消費税を税込と税抜のどちらでそろえたか、この3か所をまず確認してください。

店舗が2つあります。1つの画面でまとめて見られますか?

店舗ごとに売上・仕入・人件費を分けて入力すれば、店舗別と合計の両方を出せます。先に決めておくのは共通費の扱いです。本部の家賃や経理の人件費を店舗へ配分するのか、合計だけに乗せるのか。配分するなら売上比か席数比かを決めて固定します。ここを曖昧にすると、店舗別の営業利益が比べられなくなります。

アルバイトの人件費は、変動費と固定費のどちらに入れますか?

決まった正解はありません。売上に合わせて営業時間やシフトの人数を動かしている店なら変動費、人数をほぼ固定して運営している店なら固定費に寄せると実態に近くなります。判断に迷う場合は、直近半年の売上と時間給人件費を並べ、売上が減った月に人件費も減っているかを見てください。連動していれば変動費です。

月の途中に出る数字は、どのくらい当てになりますか?

売上は日計をその日に入れていれば実績なので、そのまま使えます。あやしくなるのは仕入で、請求書が届く前の段階では納品書の金額を足した概算になります。人件費も、締めの前は実績時間からの概算です。月の途中の数字は概算として扱い、確定値は棚卸と請求書がそろってから別の欄に入れてください。

この記事を書いた人

水上貴洋取締役 / 飲食DXコンサルタント

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

「今月いくら残るのか」を、締める前に見られるようにします。

先月の営業利益を出すのに3日かかった。売上はレジ、仕入は伝票の束、人件費は別のファイルにあって、集計できるのが自分だけになっている。店舗が増えてから、店ごとの利益を比べられなくなった。そのどれかに当てはまるなら、いま使っているレジと会計ソフトの名前、入力している人と回数を伺うところから始められます。資料が手元になくても、口頭の説明だけで構いません。北海道内は訪問、道外はオンラインで対応します。

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