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飲食の業務アプリ

棚卸を早く終わらせる。数える単位と順番を先に決める

棚卸に時間がかかる原因は、数える作業そのものより、数え方をその場で決め直していることにあります。品目ごとの単位、店内を回る順番、どこまで数えるかの3つを先に決めると、月末の夜は短くなります。個人店から数店舗の飲食店の経営者に向けて書きました。

この記事でわかること

  • 先に決めるのは3つです。品目ごとに数える単位を1つに固定する、棚卸表の行を店内を回る順に並べ替える、毎月数える品目を絞る。決まっていない店では、数えるたびに担当者が判断するため、時間も数字もぶれます。
  • 棚卸表に書く項目は決まっています。所得税法施行規則第60条第3項は、棚卸資産の種類・品質・型などの異なるごとに、数量・単価・金額を記載すると定めています。開封したボトルを何刻みで数えるかは法令になく、店が決めて統一する部分です。
  • 毎月の範囲は店が決められます。個人事業の青色申告者に法令が求めているのは12月31日時点の棚卸と棚卸表の作成で、月ごとの棚卸は原価率を早く確認するための社内の作業です。金額の大きい品目だけを毎月数える形も取れます。
  • 在庫金額は数量に単価を掛けて出します。所得税法施行令第103条第1項は、購入の代価に引取運賃・荷役費・運送保険料・購入手数料などを加算した金額を取得価額としています。配送料が別請求の仕入先がある店は、この扱いを先に決めます。

棚卸が長引く原因は、数え方をその場で決め直していること

月末の営業が終わったあと、冷蔵庫とドライ棚を回って数を書き、翌日それを表計算ソフトに打ち直す。この形で棚卸をしている飲食店は多くあります。品目が多いほど時間はかかりますが、手が止まる理由はもう1つあります。開けかけの醤油をどう書くか、仕込み中の鍋を数えるか。こうした判断が品目ごとに出てきて、そのつど考えることになります。

先に決めておくのは、単位・順番・範囲の3つです。品目ごとに数える単位を1つに固定し、棚卸表の行を店内を回る順に並べ替え、毎月数える品目を絞る。決めた内容は紙1枚に書き出して、数える人が見られる場所に置きます。作業の速さを上げるより先に、迷う回数を減らします。

この記事では、その3つの決め方と、数えたあとに在庫金額と原価率を出す計算までを説明します。棚卸で出た数字を次の発注量に使う方法は棚卸を発注に活かす記事にまとめました。

単位

品目ごとに、本・kg・ケースのどれで数えるかを1つに決めます。開封したものの刻みも品目ごとに決めます。

順番

棚卸表の行を、保管場所ごと・棚の上段から下段の順に並べ替えます。表計算ソフトの行の並びのままにしません。

範囲

毎月数える品目と、決算期だけ数える品目を分けます。全品を毎月数える形にこだわらなくて構いません。

品目ごとに、数える単位を1つに決める

単位が揺れると、数字を月ごとに比べられません。同じ小麦粉を、ある月は「袋」、別の月は「kg」で書いていると、在庫金額の増減が実態なのか書き方の違いなのか分からなくなります。所得税法施行規則第60条第3項は、棚卸表に「棚卸資産の種類、品質、型等の異なるごとに、数量、単価及び金額を記載」すると定めています。条文はe-Gov法令検索の所得税法施行規則で読めます。

迷いが出やすいのは開封済みのものと仕込み品です。ここは法令に定めがないので、店で決めて統一します。一升瓶のような液体は0.1本刻み、寸胴のタレは容器ごと量って風袋を引く、といった具合に品目ごとに書き方を決めます。刻みを細かくするほど数字は実態に近づき、量る手間も増えます。刻みを細かくするのは金額の大きい品目だけにして、それ以外は粗くします。

開封したものの保管にも決まりがあります。食品衛生法施行規則の別表第十七は、ねずみや昆虫による汚染を防ぐため、原材料などを床と壁から離して容器に入れて保存し、一度開封したものは蓋付きの容器に入れるなどの対策を講じるよう求めています。容器に移して置き場所を決めておくと、衛生管理の要件を満たしながら、数える対象も見つけやすくなります。

液体

未開封は本数、開封済みは0.1本刻み。ボトルに目安の線を引いておくと、量らずに確認できます。

粉・乾物

未開封は袋数。開封済みは重さで量るか「0.5」のような固定値にするかを、品目ごとに決めます。

仕込み品

数えるかどうかをまず決めます。数えるなら容器込みの重さから風袋を引き、容器の重さを表に書いておきます。

棚卸表の行を、店内を回る順に並べ替える

棚卸表の行が作ったときの順番のままだと、数える人は庫内と表のあいだを何度も往復します。ウォークイン冷蔵庫の上段から下段へ、次に冷凍ストッカー、最後にドライ棚と酒類。実際に歩く順に行を並べ替えるだけで、探す時間が減ります。保管場所の列を作っておくと、並べ替えも保管場所ごとの小計も同じ表で出せます。

冷凍ストッカーとウォークイン冷蔵庫は、扉を開けている時間が短いほど庫内の温度上昇を抑えられます。庫内で表を探して手が止まると、その時間だけ扉が開いたままになります。数える品目をひとまとまりにしておくと、開けている時間を短くできます。2人で数えるなら、庫内の担当が品名と数を読み上げ、外の担当が表に記入する形に分けます。

決めた順番と担当の分け方は、紙1枚に書き出して次の月も同じ手順でやります。中小企業基盤整備機構の店舗マニュアル作成のポイントは、マニュアルの目的に作業品質の安定と新人の早期戦力化を挙げ、作り方として、内容を具体的にすること、現場が無理なくできる水準にすること、担当者自身が定期的に見直すことを示しています。棚卸の手順書も同じ考え方で作ります。

毎月どこまで数えるかは、金額と欠品の困り具合で線を引く

全品を毎月数えなければならない、という決まりはありません。個人事業の青色申告者に法令が求めているのは、12月31日時点で棚卸を行い、棚卸表を作ることです(所得税法施行規則第60条第1項・第3項)。月ごとの棚卸は、原価率を早く確認して仕入れや売価の判断に使うための社内の作業なので、範囲は店が決められます。法人は決算期の扱いが別にあるため、顧問の税理士に確認してください。

線を引く基準は2つです。在庫金額が大きい品目と、欠品すると営業に響く品目。肉や酒類のように単価が高いものは、数量が少しずれるだけで在庫金額が動くので毎月数えます。割り箸やおしぼりのような消耗品は、金額が小さければ決算期だけにする判断もできます。中小企業基盤整備機構の仕入品を管理するにはは、在庫管理を数量で見るユニットコントロールと、金額で見るダラーコントロールの2面から確認するよう整理しています。毎月は数量で在庫の動きを追い、決算期に金額を締める、と役割を分けて考えます。

範囲を絞ったときに気をつけるのは、数えなかった品目の在庫を0として扱わないことです。対象外と分かる列を用意して集計から外します。そのまま合計すると、在庫金額が実際より小さく出て、原価率が高く見えます。

毎月数える品目

在庫金額の大きいもの、欠品すると営業に響くもの。傷みやすく廃棄が出やすいものも入れます。

決算期に数える品目

金額が小さく、切らしても代わりが利くもの。消耗品や調味料の一部が当てはまります。

DEMO

品目数と作業のやり方を変えると、棚卸の時間がどう変わるか

保管場所ごとの品目数、1品にかける秒数、打ち直しと単価を拾う作業の有無、数える人数を動かすと、月末の棚卸にかかる時間が変わります。あわせて、開封品の数え方が担当者でばらついたときに、期末の在庫金額と原価率がどれだけ動くかも並べます。

棚卸の所要時間と、数え方のばらつきが原価率に与える影響の試算

架空の飲食店の1回ぶんで試す画面です。品目数、1品あたりの秒数、打ち直しの有無、数える範囲を動かすと所要時間が変わります。開封品の品目数と数量のずれを変えると、期末在庫金額と原価率の振れ幅が変わります。

触って動かせます
計算の中身
数える時間=対象品目数×1品あたりの秒数÷人数。打ち直しの時間=対象品目数×1品あたりの秒数。単価を拾う時間=対象品目数×1品あたりの秒数。原価率=(期首在庫+仕入−期末在庫)÷売上。
使っている前提
品目数、秒数、在庫金額、売上はすべて架空の入力例です。1品15秒、打ち直し10秒といった初期値は試算のための仮置きで、実測値ではありません。
確かめてほしいところ
打ち直しをやめた場合と、毎月数える範囲を絞った場合で、減る時間の大きさを比べてください。自店の品目数と秒数に置き換えると、どちらに先に手を付けるかの目安になります。

※ 品目数・秒数・金額はすべて架空の入力例です。所要時間は入力した秒数をそのまま掛けた試算で、移動や確認の時間は含んでいません。

数量から在庫金額と原価率を出すとき、単価に何を含めるか

数え終わったら、品目ごとに数量に単価を掛け、合計すると期末の在庫金額になります。確認したいのが単価の中身です。所得税法施行令第103条第1項は、購入した棚卸資産の取得価額を、購入の代価に、引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税などの購入のために要した費用を加算した金額と定めています。配送料を別に請求される仕入先がある店では、その費用を単価に乗せるかどうかを先に決め、毎月同じ扱いにします。

どの仕入時点の単価で見るかは評価方法の選び方の話で、税務署に届け出ていない場合は最終仕入原価法によります。この点は棚卸を発注に活かす記事で説明しました。実務で効くのは、単価を毎月拾い直すか、品目マスタに登録して変わったときだけ直すかの違いです。納品書の束から120品目ぶんの単価を毎月拾うと、数えるのと同じくらいの時間がかかります。

在庫金額が出ると、売上原価は「期首の在庫金額+当月の仕入金額−期末の在庫金額」で計算でき、これを売上で割ると原価率になります。試算例として、期首35万円、仕入120万円、期末32万円、売上380万円の月なら、売上原価は123万円、原価率は約32.4%です。開封品の在庫金額が3万円あり、数量が担当者によって2割ずれるなら、少なめに数えた人と多めに数えた人で1万2千円の差になり、この月の原価率は約0.3ポイントの幅で動きます。単価の高い品目ほど影響が大きいので、刻みを細かくする順番は金額の大きいものからになります。

表計算ソフトで足りる範囲と、アプリにするときの費用

まずは、いま使っている棚卸表に手を入れるところから始められます。保管場所の列を足して回る順に並べ替え、品目ごとの単位と刻みを列に書き込む。単価を品目マスタの列に持たせておけば、毎月拾い直すのは値上がりした品目だけで済みます。ここまでは費用をかけずにできます。

仕組みにする目安になるのは、紙に書いてから打ち直す作業が残っているかどうかです。数える人と入力する人が同じで、翌日にまとめて打ち直しているなら、その時間がまるごと削れます。店舗が複数あって同じ品目を別々の表で管理している場合も、単位と単価の統一が手作業では続きません。

当社の飲食店向け棚卸アプリの開発プランでは、個人店から小規模店を対象に、設計から納品まで約2〜3ヶ月を想定しています。費用を見積もるために決めるのは3つです。品目数と保管場所の数、単価を手入力にするか仕入記録から取り込むか、棚卸表までで止めるか原価率の締めまで作るか。この3つが決まると概算を出せます。初回の相談と概算の見積もりは無料で、いま使っている棚卸表を見ながら整理するところから始められます。メニュー単位の原価は棚卸とは別の仕組みになるので、原価管理アプリの記事もあわせて読んでください。

表計算ソフトのままでよい場合

品目が数十で、数える人が1人。打ち直しの時間が短く、原価率が翌日には出ている状態。

仕組みにする目安

打ち直しが毎月残っている。担当者で数え方が違う。店舗ごとに表が分かれている。このどれかに当てはまる場合。

費用が決まる3つ

品目数と保管場所の数、単価の取り方、棚卸表までか原価率の締めまでか。この3つで概算が出せます。

まとめ

棚卸が短くなるかどうかは、手を動かす速さより、判断で手が止まる回数で決まります。品目ごとの単位、店内を回る順番、毎月数える範囲を先に決め、紙1枚の手順書にして次の月も同じやり方でやります。

棚卸表に書く項目と、年末に棚卸を行うことは所得税法施行規則で決まっています。開封品の刻みや毎月の範囲は法令になく、店が決める部分です。決まっている部分と決める部分を分けると、どこを変えてよいかが見えます。

まずは、いまの棚卸表に保管場所の列を足して、実際に歩く順に並べ替えてみてください。次の月末に、数える時間と打ち直す時間を別々に計ると、どちらを先に減らすべきかが分かります。

よくある質問

棚卸を早く終わらせる方法はありますか?

数える速さを上げるより、判断する場面を減らすほうが効きます。品目ごとの単位と開封品の刻みを表に書いておき、棚卸表の行を店内を回る順に並べ替え、毎月数える品目を絞ります。紙に書いてから打ち直している場合は、その打ち直しをなくすのがいちばん大きい削減になります。

飲食店の棚卸は、どこまで数えればいいですか?

毎月の範囲は店が決められます。個人事業の青色申告者に法令が求めているのは、12月31日時点の棚卸と棚卸表の作成です(所得税法施行規則第60条)。月ごとの棚卸は原価率を確認するための社内の作業なので、在庫金額の大きい品目と欠品すると困る品目を毎月数え、金額の小さい消耗品を決算期に回す形も取れます。

冷蔵庫の中身は、どの単位で数えますか?

品目ごとに1つに決めて、毎月同じ単位で数えます。未開封は本・袋・ケースのように数えられる単位、開封済みは0.1本刻みのような刻みを決めます。仕込み品は、数えるかどうかをまず決め、数えるなら容器込みの重さから容器の重さを引きます。開封品の刻みに法令の定めはないので、決めた内容を棚卸表の列に書いておくと、担当者が代わってもぶれません。

無料の棚卸アプリで足りますか?

品目数が少なく、数えて記録するだけなら無料の範囲で足りることがあります。確認したいのは、品目ごとの単位と刻みを登録できるか、単価を持たせて在庫金額まで出せるか、表計算ソフトに書き出せるか、来年も同じデータを見られるかの4点です。原価率まで締めたい場合は、いま使っている棚卸表の項目が入るかを先に確かめてください。

この記事を書いた人

水上貴洋取締役 / 飲食DXコンサルタント

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

棚卸の数え方と集計を、一緒に整理します

月末に紙へ書いた数字を、翌日に表計算ソフトへ打ち直している。担当者によって開封品の数え方が違い、原価率を前の月と比べられない。数えるのに時間がかかり、忙しい月は棚卸を飛ばしている。そのどれかに当てはまるなら、いま使っている棚卸表と品目の一覧を見ながら、単位の決め方と数える範囲を整理するところから始められます。資料が手元になくても、口頭の説明だけで構いません。北海道内は訪問、道外はオンラインで対応します。

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