EvoQuest
EvoQuest AI業務システム / 製造計画・在庫管理 執筆:水上貴洋(取締役) 2026.09

SCENARIO ── FOOD FACTORY CASE

注文が来てから作れる品目と、
来る前に作る品目を、先に分ける。

札幌近郊、従業員9名で漬物と珍味を作り、地場スーパー3社と道の駅・土産店12店へ卸す食品製造業を想定します。定番14品目のうち、先に作る必要があるのはどれか。その数を何から出すか。受注と在庫と製造計画を1枚に並べる開発プランです。

想定領域
業務システム / 受注・製造計画・在庫の管理
担当範囲
業務整理・品目の仕分け・画面設計・開発・定着支援
想定対象
従業員9名・定番14品目・卸先15社の食品製造業
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

この規模の工場で毎朝いちばん迷うのは、きょう何を何個作るかです。注文が入っている品目はその数を作ればいい。困るのは、注文が来る前に作らなければ間に合わない品目のほうです。中小企業基盤整備機構のビジネスQ&Aは、適正な在庫量は基本的に「注文の受注から納期までの期間」と「生産のリードタイム」によるとしています。取引先が求める納期より自社がかかる日数のほうが長い品目だけ、注文を待たずに着手することになります。この想定の会社では、原料の手配から漬け込み、包装までに5日かかる松前漬けが該当し、前日に発注が届く浅漬けは該当しません。

いま、この判断は工場長の頭の中にあります。朝、ホワイトボードに品目と数を書き、事務が受けた注文はノートから口頭で伝わる。在庫は冷蔵庫の棚を見て決め、正確に数えるのは月1回の棚卸のときだけ。この開発プランで作るのは、受注を1回入力すれば製造計画表と出荷予定と納品書に同じ数が届く仕組みと、先に作る品目を絞り込む仕分けの画面です。予測の画面は1枚だけで、先に作る数を決めるときに開きます。

CHALLENGE

課題

  • 01 先に作る品目と、注文を待てる品目が分かれていない。14品目ぜんぶを「だいたいいつも通り」の数で作るので、注文の少ない品目まで棚に残る。逆に、月に何度も出る品目が金曜の午後に切れて、翌週へ回してもらう電話をかけている。
  • 02 受注はFAX・電話・メールの3通りで届き、事務がノートに書き写したあと、工場長のホワイトボード、出荷のリスト、手書きの納品書へ同じ数を3回書いている。どこか1か所を直し忘れた日は、納品書の訂正が翌週に返ってくる。
  • 03 在庫の数が、棚卸をした日にしか分からない。製造した数と出荷した数を引き算していないので、作る前に「いま何個あるか」を数えに行く。冷蔵庫の奥に古いロットが残り、手前の新しいロットから出ていく。
  • 04 賞味期限が残っていても、取引先に納められなくなる在庫がある。農林水産省は、賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する「3分の1ルール」と呼ばれる慣例を挙げ、この期限を過ぎた商品は賞味期限まで日数を残していても行き場がなくなる可能性があると書いています。どのロットがどの取引先にあと何日出せるかは、いま箱のシールを見て数えています。

APPROACH

課題への対応

最初にやるのは、開発ではなく品目の仕分けです。同機構のビジネスQ&Aは、多品種少量生産の受注を「受注頻度」と「ロットサイズ」の2つで分けるやり方を示しています。月に3回以上受注がある製品は多頻度受注、1回当たりの平均受注金額に基準を設けて上回れば大ロット、というように数値で条件を決めます。そのうえで、多頻度の製品は在庫で持ち、少頻度の製品は受注生産で対応するとしています。理由は段取りの回数です。注文が多い品目を毎回そのつど作ると切り替えが増え、1回が小さい注文では段取りにかかった手間を回収できません。この会社では、釜と漬け込み槽の洗浄、包装機のフィルム交換が段取りにあたります。

想定では、直近13週の受注記録を品目ごとに数え、月3回以上を多頻度、1回あたりの平均受注金額2万円以上を大ロットとして14品目を4つに分けました。先に作る側に入ったのは7品目です。残りの7品目は、注文を受けてから作ります。品目を絞ると、見込みで数を決める対象が半分になり、外れたときの損も半分の品目に限られます。この仕分けは1回で終わりません。受注の記録がたまるほど条件を見直せるので、画面の上で基準の数字を変えて振り分け直せるようにします。

先に作る数は、決まっている数から先に使います。松前漬け200gを例にすると、リードタイム5日に対して納期は1日なので、差の4日ぶんが見込みで決める範囲です。今後4日間で、すでに注文が確定しているのは45点(点はパックや袋の数です)。直近8週の実績から、4日間の出荷は152〜176点の幅に収まっています。予測が担当するのはこの幅のうち確定分を除いた107〜131点だけで、確定した45点を予測で置き換えることはしません。引き当てられる在庫が62点あるので、上限側で決めるなら114点、仕込みの単位が10点刻みなので120点になります。最後に数を入れるのは工場長です。画面が出すのは、確定分と幅と在庫という根拠と、刻みで切り上げた候補までにします

幅のどちら側に寄せるかは、あとから足せるかどうかで決めます。リードタイムが5日ある品目は、足りないと気づいてからでは間に合わないので上限側に寄せます。1日で作れる浅漬けは下限側に置き、注文を見てから足します。外れたときは、なぜ外れたかを選んで残します。土産店の催事、スーパーの特売、天候による客足の変化。この記録は自動で予測に反映しません。四半期ごとに当社と一緒に見直し、幅の置き方と仕分けの基準を変えるかどうかを人が決めます。効果は的中率で測りません。品目別の廃棄数量とその原価、欠品で断った件数、納品期限を過ぎて出せなくなった在庫の金額、そして受注の転記にかかっていた時間を数えます。

CONSULTATION

製造計画と在庫の持ち方を、いまの受注ノートから相談する。

受けた注文を、ホワイトボードと出荷リストと手書きの納品書に3回書き写している。
注文が来る前に作る品目と、注文を待てる品目が分かれていない。
品目の数と取引先の数、それと紙の受注記録が何か月分あるかを伺うところから始めます。

SCREENS

主要画面

想定する主要画面です。毎朝いちばん開くのは1枚目の製造計画表で、先に作る数を決めるときだけ5枚目を開きます。取引先名・品目・数量・金額・日数はすべて従業員9名・定番14品目の食品製造業の規模感に合わせた想定例です。

01. 今週の製造計画表

月曜8時、工場長が朝いちばんに開く画面。今週作る品目が日別に並び、1行ごとに確定している受注数、見込みで積んだ数、引き当てた在庫、きょう仕込む数が出る。まだ確定していない行には印がつき、確定のボタンを押すと作業指示と原料の手配リストになる。

毎日開く画面
設計のポイント
見込みで作る品目と、受注を待って作る品目を同じ表に並べ、どちらの扱いかを行の左に出す。注文が入っていない品目が計画に載っているときは、その根拠が同じ行から開ける。
在庫の引き当て
作る数は、必要な数から引き当てられる在庫を引いて出す。引き当てに使えるのは、納品期限を満たすロットだけ。期限が足りないロットは在庫があっても引き当てない。
仕込みの刻み
漬け込み槽と包装の単位で刻みが決まる。想定例では10点刻みで、松前漬け200gの必要数176点から在庫62点を引いた114点は120点に切り上がる。切り上げた差は画面に出す。

02. 受注入力と出荷予定

FAXで届いた発注書、電話で聞いた追加、メールの注文を、事務がその場で1回入力する画面。取引先・納品日・品目・数量を入れると、製造計画表の必要数と、納品日別の出荷予定と、納品書の下書きに同じ数が入る。受けた時刻と方法が行に残る。

受注入力
設計のポイント
書き写す場所を無くす。入力した数がそのまま製造計画表と出荷予定と納品書になるので、3か所に手で書いていた作業が1回になる。
締切の扱い
品目ごとのリードタイムから、その納品日に間に合う締切が出る。締切を過ぎた注文は「間に合わない」と表示し、受ける場合は納品日をずらす候補を出す。
取引先ごとの条件
納品曜日、発注の締め、納品期限の基準(賞味期間の3分の1か2分の1か)を取引先ごとに持つ。入力のたびに思い出さなくてよい形にする。

03. 在庫・ロット別の納品期限

製造した日ごとのロットが、品目別に新しい順で並ぶ画面。ロットごとに製造日、賞味期限、残数、そして取引先別に「あと何日出せるか」が出る。3分の1の基準を採る取引先と2分の1に緩和した取引先で残り日数が変わるので、両方を並べて出す。

在庫と期限
設計のポイント
賞味期限までの残り日数と、取引先へ納められる残り日数を別々に出す。後者が先に切れるロットが、棚に残る原因になる。
出す順
期限の近いロットから引き当てる。新しいロットを先に出そうとすると確認が出る。特売のように大量に出る日は、古いロットをまとめて充てられる。
数の合わせ方
製造した数と出荷した数の差が在庫になる。月1回の棚卸で実際に数えた数と差が出たら、差の理由を選んで記録し、在庫の数を実地の数に合わせる。

04. 品目の仕分け

14品目を「受注頻度」と「1回あたりの平均受注金額」で4つに分ける画面。縦横の基準の数字を変えると、その場で振り分けが変わる。右に品目ごとのリードタイムと納期、その差の日数が並び、先に作る側に入れるかどうかを品目ごとに切り替える。

設定
設計のポイント
振り分けを自動で確定しない。4つの区分は目安として出し、先に作るかどうかは品目ごとに人が決める。決めた理由を残せる。
差の日数
リードタイムから納期を引いた日数が、その品目で見込みを立てる範囲になる。差が0以下の品目は、注文を待って作れる。
見直しの周期
直近13週の受注記録で数え直す。季節品が入る時期は区分が動くので、四半期に1回、基準ごと見直す前提にする。

05. 先に作る数の確認

松前漬け200gを選んだときの画面。差の4日間について、確定している受注45点が先に積まれ、その上に予測が担当する107〜131点が重なって、合計が152〜176点の幅になる。下に、引き当てられる在庫62点を引いた仕込み数の候補と、工場長が数を直す欄がある。

見込み
設計のポイント
確定している注文と、見込みで積む部分を色と位置で分ける。確定分は幅の計算に混ぜず、最後の必要量には必ず含める。
上限側に寄せる理由
リードタイムが5日ある品目は、足りないと気づいてから作っても間に合わない。だから初期値は上限側に置き、下げた場合は理由を選ぶ。
外れた記録
実際の出荷が幅から外れた週は、理由を選んで残す。記録は自動で予測に反映しない。四半期ごとに見直し、幅の置き方を変えるかどうかを人が決める。

OUTCOME

導入による変化

仕組みが運用に乗ったあと、この工場の朝と月末が3つの点で変わる想定です。効果は的中率ではなく、廃棄した数量とその原価、欠品で断った件数、出せなくなった在庫の金額で測ります。

01

先に作る品目が、14品目から7品目に絞られる

Before14品目ぜんぶを「いつも通りの数」で作っていた。注文の少ない品目まで棚に残り、よく出る品目は週の後半に切れていた。
After受注頻度と1回あたりの金額で4つに分け、差の日数がある品目だけを先に作る。残りは注文を受けてから作る。

数えるのは、品目別の廃棄数量とその原価、それと欠品で断った件数です。仕組みを入れる前の1か月は、いまのやり方のまま廃棄と欠品だけを品目別に数えてもらい、比べる元にします。

02

受注の入力が1回で、3か所に届く

Beforeノートに書き写したあと、ホワイトボード、出荷のリスト、手書きの納品書へ同じ数を3回書いていた。1か所の直し忘れが納品書の訂正になっていた。
After受けた場で1回入れると、製造計画表の必要数、納品日別の出荷予定、納品書の下書きが同じ数になる。

数えるのは、納品書の訂正件数と、受注の転記にかかっていた時間です。時間は最初の3か月、毎週同じ人に計ってもらいます。

03

棚に残る在庫が、出せなくなる前に見える

Before在庫の数は月1回の棚卸のときにしか分からず、取引先ごとの納品期限は箱のシールを見て数えていた。
Afterロットごとに、賞味期限までの残り日数と取引先へ納められる残り日数が並ぶ。期限の近いロットから引き当てる。

数えるのは、納品期限を過ぎて出せなくなった在庫の数量と金額、それとロットが倉庫にとどまった日数です。棚卸のときの実地の数との差も記録に残します。

PROCESS

3ヶ月の進め方

札幌市内・近郊なら工場へ伺い、道外はオンラインで進めます。品目の仕分けに使う13週分の記録を起こすところから始めるので、設計から納品まで3ヶ月の想定です。

1
MONTH 01 / 記録の起こし + 品目の仕分け

13週分の受注ノートと納品書の控えから、品目別の出荷を1日1行にする

受注ノートと納品書の控えを預かり、品目別・日別の出荷数に起こします。同時に、品目ごとのリードタイムを実際に計ります。原料を頼んでから届くまで、漬け込みにかかる日数、包装と出荷の準備。取引先側の納期と発注の締切も1社ずつ確かめます。この2つが揃うと、差の日数が出る品目と出ない品目が分かれます。あわせて、取引先ごとの納品期限の基準(賞味期間の3分の1か2分の1か)を確認します。

  • 直近13週の受注ノート・納品書控えからの品目別・日別出荷数の作成
  • 品目ごとのリードタイム(原料手配・仕込み・包装)の実測
  • 取引先15社の納品曜日・発注締切・納品期限の基準の聞き取り
  • 受注頻度と1回あたりの平均受注金額による4区分の試算と、先に作る品目の決定
2
MONTH 02 / 受注入力と製造計画表の開発 + 並行運用

ノートとホワイトボードを残したまま、画面と2週間並べて数を突き合わせる

受注入力と今週の製造計画表を作り、いまのノートとホワイトボードを残したまま2週間並行で使います。確かめるのは3つです。FAXと電話とメールの注文がその場で1行になること、入れた数が製造計画表と出荷予定と納品書に同じ数で届くこと、締切を過ぎた注文を画面が止めること。この時点では見込みの数は入れず、確定した受注と在庫だけで計画表を回します。

  • 受注入力・出荷予定・納品書の下書きの開発
  • 今週の製造計画表と、在庫の引き当ての開発
  • ノート・ホワイトボードとの2週間の並行運用と、数の突き合わせ
  • 品目ごとの締切表示と、納品日をずらす候補の出し方の確認
3
MONTH 03 / 在庫・ロットと見込みの開発 + 実運用

ロット別の納品期限を出し、先に作る7品目の見込みを工場長と合わせる

在庫のロット管理と、取引先別の納品期限の残り日数を作ります。棚卸の日に実地で数えた在庫と画面の数を突き合わせ、差の記録のしかたを決めます。最後に、先に作る7品目の見込みの画面を作り、工場長が実際に数を決める場面に同席します。初期値をどちら側に置くか、どこまで画面に任せ、どこから人が決めるかを、品目ごとにこの場で合わせます。

  • ロット別の在庫・賞味期限・取引先別の納品期限の残り日数の開発
  • 棚卸での実地の数との突き合わせと、差の記録手順の決定
  • 先に作る7品目の見込み画面の開発と、工場長との初期値の調整
  • 外れた記録の残し方と、四半期ごとの見直し手順の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 市販の販売管理ソフトやExcelでは足りませんか。
    足りる場合があります。品目が数点で、取引先の納品曜日と発注の締切が同じで、先に作る品目が無いなら、市販の販売管理ソフトかExcelの入力表で回ります。専用に作る価値が出るのは、品目ごとにリードタイムと納期が違い、取引先ごとに納品期限の基準も違うときです。この想定の会社は14品目・15社で、条件の組み合わせが表計算の関数では追いきれなくなっていました。相談の場では、まず品目数と取引先数を伺い、いまの表で足りる範囲かどうかからお話しします。
  • Q2 取引先のスーパーの発注システムと直接つなげますか。
    つなげるかどうかは、取引先ごとに確認が必要です。小売のチェーンによっては、卸へ発注データを流通BMSなどの決まった形式で渡す仕組みを持っていますが、参加の条件と費用は取引先とその仕組みの運営側が決めます。当社の側だけでは可否を判断できないので、確認が済むまで実装可能とはお伝えしません。つながなくても始められます。FAXと電話とメールの注文を事務が1回入力する形なら、この開発プランの範囲で回ります。つないだ場合との差は、事務の入力の手間だけです。
  • Q3 見込みで作った品目が余ったら、どう扱いますか。
    余った分は在庫として残り、期限の近いロットから次の注文に引き当てます。画面で見るのは、そのロットが取引先へあと何日出せるかです。納品期限を過ぎそうなロットは、期限の緩い取引先や工場前の直売に回すか、値引きして早めに出す判断をします。それでも出せなかった数量と金額は月ごとに残るので、その品目を先に作る側に置き続けるか、注文を待つ側へ移すかを四半期の見直しで決めます。
  • Q4 費用はどのくらいかかりますか。
    範囲を決めてから見積もります。この案件で金額が動くのは4か所です。1つめは品目数と取引先数で、条件の種類がそのまま画面の分岐になります。2つめは13週分の受注ノートと納品書控えを起こす作業の量で、紙の量によって変わります。3つめは在庫をロット単位まで持つかどうかで、品目ごとの合計だけなら開発の量が減ります。4つめは納品書や請求書の様式で、取引先指定の用紙に印刷する必要があるかどうかです。相談の場では、まず品目数と取引先数、それと紙の受注記録が何か月分あるかを伺います。

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品目の数と取引先の数、それと紙の受注記録が何か月分あるかを伺うところから始めます。

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