EvoQuest
EvoQuest Food需要予測AI 執筆:水上貴洋(取締役) 2026.08

SCENARIO ── WAGASHI DAILY BATCH CASE

普段の棚は、大福45個の商売。
彼岸の中日だけ、おはぎが400個出る。

札幌の住宅街で、店主夫婦とパート1人が回す和菓子店を想定します。棚に並ぶのは豆大福・草大福・みたらし団子といった朝生菓子。朝に作った数がその日の全部で、閉店時に残ったぶんは廃棄します。じつは製造数は前日の夕方、餅米を研いで水に浸す時点でほぼ決まっているのに、決め方は「きのうと同じくらい」。そして彼岸や節句には、普段と桁の違う数を決めることになります。その日の記録は、去年のノートに「おはぎ よく出た」とあるだけ。品目別の製造数を前日16時半に確定する製造指示書と、行事の結果を翌年へ残す行事台帳を、EvoQuest Foodの業務システムとして形にする開発プランです。

想定領域
生菓子の製造数予測 / 菓子店の業務改善
担当範囲
要件整理・予測設計・画面設計・実装
想定対象
従業者3人ほどの和菓子店(朝生菓子中心・当日売り切り)
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月(秋の彼岸を1回はさむ)

OVERVIEW

プロジェクト概要

この開発プランでは、前日の夕方に翌日の製造数を決め、当日中に売り切る和菓子店を想定しています。レジに残る販売数に加え、予約や行事の記録を確認し、「あす、いくつ作るか」を品目別に決められる画面を設計します

朝生菓子の製造数を決めるときは、材料の保存期間と行事の日程を考える必要があります。あんは炊いてから数日もつので、まとめて炊けます。餅は当日限りなので、毎朝つきます。そして餅米は一晩水に浸けてから蒸すので、必要な米の量は前日の夕方に決めます。また、彼岸や節句などの行事には注文が集中します。彼岸のおはぎ、節句の柏餅、正月の餅。行事の時期はあらかじめ分かっていても、その日の売れ数のデータは年に1、2回ぶんしか貯まりません。

この設計のゴールは2つです。米を研ぎ始める前の16時半までに、翌日の品目別の製造数を決めること。そして年に数回の行事の日に、去年と一昨年の記録が数字で手元にあることです。

CHALLENGE

課題

  • 01 朝生菓子は当日限り。閉店時に残ったぶんは廃棄し、売り切れたら閉店まで棚が空く。作り足すには餅を蒸してつき直すことになり、店を回しながらでは間に合わない。朝の数がその日の全部になる。
  • 02 量は前日の夕方、米を浸す時点で決まっている。翌朝に「きょうは多めに」と思っても、浸かった米のぶんしかつけない。売上や予約を見直す時間が取れず、前日と同じ量の米を研いでしまう。
  • 03 行事には注文が集中するが、過去の販売数が残っていない。彼岸の中日はおはぎが普段の棚の何倍も出る。同じ日は年に2回しか来ないので、3年続けても記録は6日ぶん。去年の個数は、ノートに「おはぎ よく出た」とあるだけで数字が残っていない。
  • 04 予約分と店頭販売分を分けて計画できていない。予約ぶんを棚から取り置くと店頭に並べる数が減り、ふらっと来た客が買えずに帰る。予約と店頭を分けて数えていないので、売り切れた日にどちらが原因だったのかも分からない。

APPROACH

課題への対応

設計の要は、前日16時半の一度の決定です。品目別の製造数を製造指示書で確定すると、夕方に研ぐ米の量を計算します。締切を16時半に置くのは画面の都合ではなく、米を水に浸け始める時刻に合わせるためです。餅米は一晩浸けるので、米を浸け始めたあとの増量は難しくなります。決めるのは店主で、画面には品目ごとの予約数や販売予測を示し、16時半までの確定を促します。

予測の前に、確定している数量を反映します。法事やお祝いの予約、お寺と茶道教室への納品数、彼岸のおはぎの予約。受け付けた数量を指示書に緑で表示し、幅のある予測を当てるのは店頭に並べるぶんだけにします。行事の前は、予約を早めに受け付け、必要な数を把握します。おはぎの予約受付を1週間前から店頭とチラシで案内し、締切を中日の2日前に置く。予約数は確定分として扱い、店頭販売の予測数と分けて足し合わせます。

行事の日は、データの少なさを別の材料で補います。ひとつは行事台帳です。同じ行事の過去の記録を、中日の曜日・天気・製造数・売り切れ時刻・残数まで1枚に並べます。彼岸の売れ数は、去年の9月の平均と比べても手がかりになりません。比べる相手は去年の彼岸そのものなので、暦の行事ごとに記録を束ねておきます。もうひとつは予約の積み上がりです。受付開始からの累計を去年の同じ経過日数の時点と重ねれば、当日の1週間前に予約の増え方を比較できます。店頭ぶんの予測は、この2つを根拠にします。

製造数を少なめにするか、多めにするかは日によって変えます。この例では、普段の日は廃棄を抑えるために少なめに、行事の日は当日に必要な品を買えないお客さんを減らすために多めにします。品目ごとに廃棄と売り切れの影響を比べ、店主と決めた方針を指示書に書いておきます。予測は幅で示し、店主はその場で数を書き換えられて、書き換えた事実と結果は台帳に残します。

効果は、金額と割合で測ります。閉店時に品目別の残数を打てば、原価を掛けた廃棄額が毎日出ます。売り切れた日は、その時刻と以降のレジの客数、通常の同じ時間帯の販売実績をもとに、売り切れがなければ売れたと考えられる数を推計します。それから、行事の売上のうち予約で確定していた割合。この3つを月次レポートに並べ、予測の幅と製造数を決める方針を毎月直していきます。

CONSULTATION

来年の彼岸は、ことしの記録から始められます。

行事の個数は、いまは店主の記憶の中にしかありません。
レジの数字と予約の控えを一緒に見るところから、この設計は始められます。
品目と原価の一覧づくりから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。前日の夕方に確定する製造指示書を中心に、帳場のパソコンとレジ横のタブレットで使う前提の構成です。店名・品目・個数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. 前日16時半、あすの数を品目別に決める

毎日の製造数を決める画面。品目ごとに、予約や納品の確定数、店頭ぶんの予測の幅、きのうの結果が並び、右端の製造数を確定します。製造数を確定すると、あすつく餅米の浸水量が升で出ます。少なめ・多めに作る方針の説明が日付ごとに付き、平日は少なめ、行事の日は多めが基本です。

製造指示書
設計のポイント
予測を眺める画面にしない。16時半の期限付きで、品目別の数を確定して米の量を出す画面にする。
確定と予測を分ける
予約・納品の確定数を緑で表示し、店頭販売の予測数と区別する。
締切の根拠
餅米は一晩浸けるので、米を浸け始めたあとの増量は難しい。締切は浸水を始める時刻に合わせる。

02. 残りの数と、売り切れの時刻を残す

レジ横のタブレットで見る画面。品目ごとの残り数が並び、売り切れたらボタンひとつで時刻が残ります。閉店後には残数をまとめて打ち、その日の廃棄額が確定します。売り切れ後のレジの客数も自動で数え、買えなかった数の推計に使います。

当日の店頭
設計のポイント
閉店後の残数入力は30秒程度を目標にする。品目別の残数を打てば、売れ数は製造数との差から自動で出る。
売り切れの扱い
売り切れの時刻は翌年の判断材料になる。その後の来店数とセットで残す。
廃棄の見え方
残数に原価を掛けた金額で出す。個数のままでは、品目ごとの損失を金額で比べられない。

03. 彼岸のおはぎ予約は、去年と比べて多いか

予約と納品予定の一覧に、行事の予約数の推移を表示する画面です。受付開始からの累計を去年の同じ経過日数の時点と比べ、当日の1週間前に店頭ぶんの参考にします。受付の締切は中日の2日前。締切を過ぎた電話は、店頭ぶんの枠から引き当てます。

予約受付
設計のポイント
予約受付を早めに案内し、製造数を決める前に注文数を把握する。
去年との比べ方
「受付開始から何日目」でそろえて重ねる。彼岸の日付は毎年ずれるため。
納め先の扱い
お寺と茶道教室の定期の納めは、曜日で自動的に指示書へ入る。毎回の入力はしない。

04. 去年の彼岸に作った数と売れた数を確認する

彼岸・節句・盆・正月ごとに、過去の記録を一覧にまとめた画面です。中日の曜日・天気・製造数・予約数・売り切れ時刻・残数が年ごとに並び、期間中の日別の売れ方も見られます。今年の計画はこの画面から立て、終わった行事の結果は自動でこの台帳に記録されます。

行事台帳
設計のポイント
行事の需要と比べる相手は「去年の同じ行事」。暦の行事を軸に記録を束ねる。
曜日の扱い
中日が平日の年と日曜の年では店頭での売れ方が違う。曜日の並びを台帳に残し、似た年を探せるようにする。
記録がない年
ノートに「よく出た」しか残っていない年は、その旨を台帳に載せる。無い記録を作らない。

05. 廃棄額と、買えなかった数の推計を並べる

月に一度見る画面です。品目別の廃棄額、売り切れた日数と平均の時刻、売り切れ後に来た客からの推計、予約で確定していた割合が並びます。少なめに作る平日と多めに作る行事の日で、それぞれ廃棄や売り切れがどの程度起きたかを確かめ、翌月の製造数の決め方を見直します。

月次レポート
設計のポイント
廃棄と売り逃しを同じ画面に並べる。廃棄は目に見えるが、買えずに帰った客は数えなければ残らない。
推計の見せ方
買えなかった数には推計と明記し、算出のもとになった客数を画面から確かめられるようにする。
幅の直し方
実績が幅に収まった日の割合を品目別に出し、幅が広すぎる品と狭すぎる品を毎月1つずつ直す。

OUTCOME

導入による変化

仕組みが運用に乗ったあと、店の決め方が3つの点で変わる想定です。

01

行事の製造数を、過去の記録から決められる

Before去年の彼岸に何個作って何時に売り切れたか、思い出せなかった。ノートには「おはぎ よく出た」とだけ書いてある。
After行事ごとに製造数・予約数・売り切れ時刻・残数・曜日・天気が残り、翌年の指示書はその1枚を開くところから始まる。

行事は年に1、2回しか来ないので、十分な記録を集めるには時間がかかります。まずは今年の数を残し、翌年の製造数を決める際に参照します。

02

予約分と店頭分を、分けて計画できる

Before予約の取り置きで店頭に並べる数が減り、店頭の客が買えずに帰っていた。予約と店頭のどちらで切れたのかも分からない。
After予約数と店頭販売の予測数を分けて表示する。彼岸のおはぎは受付を早め、予約分を確保したうえで店頭に並べる数を決める。

予約が増えても、店頭で売れる数が同じだけ減るとは限りません。予約数と店頭販売数を別々に記録し、翌年の計画に使います。

03

廃棄額と売り切れによる販売機会の損失を確認できる。

Before廃棄は「まあ、このくらいは出る」という感覚で、売り切れた日の時刻はどこにも残らなかった。
After閉店時の残数を入力すると品目別の廃棄額が出る。売り切れた時刻とその後の客数も記録し、販売機会の損失を推計する。

余りは目に入りますが、買えずに帰った客は数えなければ残りません。両方を並べて初めて、製造数をどう見直すかが決められます。

PROCESS

3ヶ月の進め方

札幌市内なら店舗へ伺い、道外はオンラインで進めます。秋の彼岸に試せるよう、7月に始めて9月末に納品する3ヶ月を想定します。月の区切りで実際に触れるものをお渡しし、店で使ってみた感想を次の作業へ反映します。

1
MONTH 01 / 記録の掘り起こし + 品目の一覧化

1年ぶんのレジと大学ノートから、この店の数字を起こす

レジの売上を品目別に1年ぶんさかのぼり、大学ノートと予約の控えから行事の記録を復元します。あわせて品目ごとの原価と、餅・あん・粉のどれで作るかを一覧にして、前日の夕方に動かせる品と動かせない品を分けます。指示書の締切を16時半に置けるかは、夕方の作業の実際を見てから店主と決めます。

  • 店舗でのヒアリング(2〜3回)
  • レジの品目別売上1年ぶんの整理
  • 行事の記録の復元と行事台帳の初版
  • 品目・原価・材料の一覧化
2
MONTH 02 / 予測の実装 + 5画面の開発

指示書と予約受付を作り、いまの決め方と並べて確かめる

曜日と確定分から店頭ぶんを幅で出す予測を組み、製造指示書・当日の店頭・予約受付・行事台帳・月次レポートの5画面を開発します。後半の2週間は、画面の提案と店主のいつもの決め方を並べて記録する並行運用にして、夕方の作業の中で16時半までに製造数を決められるかを確かめます。

  • 店頭ぶんの予測の試作と幅の調整
  • 5画面の開発
  • いまの決め方との2週間の並行運用
  • 彼岸の予約受付の案内準備
3
MONTH 03 / 秋の彼岸での検証 + 納品

秋の彼岸で1回検証してから、納品する

秋の彼岸で、予約受付の前倒しと行事台帳を実際に使います。中日の製造数を指示書で確定し、売り切れ時刻と残数を記録して、結果を台帳に1行追加します。彼岸明けに予測の幅と製造数を決める方針を調整し、月次レポートの初回を一緒に見てから納品します。

  • 彼岸の予約受付の前倒し運用
  • 中日の製造数の確定と記録
  • 彼岸の結果の台帳への反映と調整
  • 月次レポートの初回レビュー + 納品

FAQ

よくある質問

  • Q1 彼岸のような年2回の日は、学習するデータが少なすぎませんか?
    少ないです。そこは隠さずお伝えします。同じ行事の日だけでは、短期間に十分なデータを集められません。だからこの設計では、販売数の履歴だけでなく、予約数の推移と、曜日・天気を含む行事の記録も判断材料にします。初年度の幅は広めに出し、多めに作る方針で使っていただきます。行事のたびに記録を追加し、予測と実績の差を見て幅を調整します。
  • Q2 冷凍庫を使えば、余りは翌日に回せるのでは?
    回せる店もあります。急速冷凍の設備を入れて、余りを翌日以降や通販に回す和菓子店は実際に増えています。その場合は売れ残りによる損失が小さくなるので、少なめ・多めに作る方針から設計が変わります。この開発プランが対象にしているのは、当日売り切りを続ける店です。つきたて・作りたてを看板にしている店ほど、売れ残りと売り切れの両方を考えて、毎日の製造数を決める必要があります。
  • Q3 上生菓子のような注文の品は、どう扱いますか?
    予測の対象から外します。お茶席や法事の上生菓子は受注生産なので、数は注文で確定しています。指示書には確定の数としてそのまま載り、ほかの品目とあわせて朝の作業量を確認できるようにします。予測に回すのは、店頭に並べる朝生菓子だけ。確定している数に予測を混ぜないのは、この設計全体で通している原則です。
  • Q4 レジが品目別に出ない古いレジでも始められますか?
    始められます。この設計で毎日入力するのは、閉店時の品目別の残数だけです。製造数は指示書が持っているので、残数さえ打てば売れ数は差し引きで出ます。品目別の売上履歴がない店では、最初の1ヶ月をこの記録づくりに充て、貯まった数字から幅を組み立てます。レジの買い替えは要りません。

来年の彼岸は、ことしの記録から始められます。

行事の個数は、いまは店主の記憶の中にしかありません。
レジの数字と予約の控えを一緒に見るところから、この設計は始められます。
品目と原価の一覧づくりから、ご相談ください。

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