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需要予測・AI

受注を待って作るか、先に作っておくか

取引先が求める納期より、材料の手配から出荷までにかかる日数が長い品目だけ、注文を待たずに先に作ります。その差の日数ぶんが、見込みで数量を決める範囲です。小規模な食品卸・製造業向けに整理しました。

この記事でわかること

  • 品目ごとに、取引先が求める納期と、自社が材料の手配から出荷までにかかる日数を比べます。納期のほうが長い品目は、注文を受けてから作れます。
  • 自社の日数のほうが長い品目は、その差の日数ぶんを先に進めます。先に作る数量は、差の日数に1日あたりの平均出荷数を掛け、出荷が多い日のぶんを足して出します。
  • 全品目を先に作る必要はありません。受注の回数と1回あたりの量で分け、注文がまれな品目は受注を待って作ります。
  • 先に作れる量には上限があります。食品なら取引先の納品期限、どの業種でも保管の費用と資金繰りが上限になります。
  • 見込みの材料は受注の記録です。出荷した日と数量を1品目ずつ残しておけば、そのまま計算に使えます。

納期と、自社が作るのにかかる日数を比べる。差が出た日数だけ先に作る

出荷数を先に見込む必要があるかどうかは、会社単位では決まりません。品目ごとに、取引先が注文してから納品を求めるまでの日数(納期)と、材料の手配・製造・出荷に自社がかかる日数(リードタイム)を比べます。

中小企業基盤整備機構のビジネスQ&A「現場での在庫管理の方法と、適正な在庫量の考え方」は、適正な在庫量は基本的に「注文の受注から納期までの期間」と「生産のリードタイム」によると説明しています。生産に時間がかかるもので短納期のものは、ある程度の見込み生産は仕方がないとし、納期までに現在の生産リードタイムで十分間に合うものは、極力、受注生産に切り替えるよう勧めています。

卸売業でも同じです。取引先が翌日の納品を求めるのに、産地からの入荷に3日かかる品目なら、注文が来る前に手元へ寄せておく日数が生まれます。この差の日数に出る数量が、見込みで決める部分です。

同じQ&Aは、見込みで作る数量についても、台帳にある現在の在庫量の数字が基本になるとしています。これまでの受注実績や顧客の生産計画を参考にして、在庫期間(たとえば今後3ヵ月分など)を明らかにし、生産量を決めると書かれています。

納期のほうが長い品目

注文を受けてから作ります。先に作る数量を考える必要がありません。

自社の日数のほうが長い品目

差の日数ぶんだけ、注文が来る前に着手します。この日数ぶんの出荷数が見込みの対象です。

差が大きい品目

先に決める数量が増えるぶん、外れたときの影響も大きくなります。日数を短くできないかを先に確認します。

全品目を先に作らない。受注の回数と1回の量で4つに分ける

差の日数がある品目でも、すべてを在庫で持つと余りが増えます。同機構のビジネスQ&A「多品種少量生産における効率的な生産方法」は、精密プレス部品の製造を例に、受注の特徴を受注頻度とロットサイズから分析する方法を示しています。

分け方は2つの軸です。受注頻度は「平均して月に3回以上受注がある製品は多頻度受注」というように数値で条件を決めます。ロットサイズは、1回当たりの平均受注金額に基準を設け、上回れば大ロット、下回れば小ロットと判別します。組み合わせると、品目は4つに分かれます。

同Q&Aは、多頻度大ロットの製品は専用ラインを設けるか在庫で持ち、多頻度小ロットの製品は在庫で持ち、少頻度の製品は受注生産で対応するとしています。理由は段取りの回数です。金型を取り付ける段取りに時間がかかるため、注文が多い品目を毎回作ると生産が非効率になり、小ロットでは段取りの費用を1回の受注で回収できない恐れがあると説明されています。

食品の製造や卸なら、段取りは釜や包装機の切り替え、洗浄、荷ぞろえの手間にあたります。毎週何度も注文が入る定番品は先に作る側、季節品や一部の取引先しか頼まない品目は注文を待つ側です。この仕分けで、見込みで数量を決める品目が数点から十数点に絞られます。

注文が多く、1回の量も多い

在庫で持つか、その品目だけ流れを固定します。切り替えの回数を減らせます。

注文が多く、1回の量は少ない

在庫で持ちます。毎回作ると切り替えの手間が数量に見合いません。

注文がまれな品目

1回の量が多くても少なくても、注文を受けてから作ります。先に作ると余りやすい側です。

仕分けの見直し

取引先が増減すると受注の回数が変わります。四半期に1回、実績で分け直します。

先に作っておく数量の試算例。差の3日分に、出荷が多い日のぶんを足す

試算例です。実在の会社の数字ではありません。取引先が注文から2日後の納品を求める品目で、自社は材料の手配から出荷まで5日かかるとします。差は3日です。この3日ぶんは、注文が来てからでは間に合わないため、先に進めておきます。

直近3ヶ月の出荷実績から、1日あたりの平均出荷数が120個、出荷が多い日で160個だったとします。3日分の平均は360個です。多い日が続いたときのために、1日あたりの差40個を3日ぶん、120個足します。合わせて480個が、手元に用意しておきたい数量です。

次に、いま持っている分を引きます。在庫が200個あり、そのうち180個は出荷日が決まっている注文に充てる分だとします。自由に使えるのは20個です。480個から20個を引いた460個が、これから着手する数量になります。100個単位でしか仕込めない工程なら、切り上げて500個、5回ぶんです。

数量を二重に数えないでください。出荷日が決まっている180個は、在庫から引く側にだけ入れます。1日あたりの平均出荷数は、その注文を含まない通常の出荷で計算しておきます。

差の日数ぶんの平均

360個。3日 × 120個です。差の日数が1日縮むと120個減ります。

出荷が多い日のぶん

120個。(160個 − 120個)× 3日です。切らしたくない品目ほど広く取ります。

自由に使える在庫

20個。在庫200個から、出荷日が決まっている180個を引いた残りです。

DEMO

納期と自社の日数を変えて、先に作っておく数量を見る

取引先が求める納期、自社が材料の手配から出荷までにかかる日数、1日あたりの平均出荷数、出荷が多い日の数量、在庫、出荷日が決まっている注文、1回に作れる単位を入れると、差の日数と、これから着手する数量を表示します。納期のほうが長い品目では、先に作る数量がゼロになることも確認できます。

先に作っておく数量|納期と自社のリードタイムから

本文の試算例(納期2日、自社5日、平均120個、多い日160個、在庫200個、出荷日が決まっている注文180個、100個単位)を初期値にしています。自社の日数を2日に縮めると、先に作る数量はゼロになります。

触って動かせます
計算の中身
差の日数は、自社のリードタイムから納期を引いた日数です(0より小さいときは0)。用意しておきたい数量は、差の日数 × 1日あたりの平均出荷数に、(出荷が多い日の数量 − 平均)× 差の日数を足した数。着手する数量は、そこから自由に使える在庫(在庫 − 出荷日が決まっている注文)を引き、作る単位で切り上げた数です。
使っている前提
1日あたりの平均出荷数には、出荷日が決まっている注文を含めていません。同じ数量を二重に数えないためです。日持ちの上限、取引先の納品期限、保管できる量は計算に入れていません。
確かめてほしいところ
初期値では、差の日数3日、用意しておきたい数量480個、自由に使える在庫20個で、着手する数量は500個(100個単位で5回ぶん)になります。自社の日数を5日から3日に縮めると、差は1日になり、用意しておきたい数量は160個、着手する数量は200個です。自社の日数を2日にすると差はゼロになり、注文を受けてから作れる品目になります。

※ この画面は数量の計算だけを行っています。日持ちの上限、取引先ごとの納品期限、保管できる量、材料の在庫は含めていません。実際の記録に置きかえてお使いください。

先に作れる量には上限がある。日持ちと、在庫が生む費用で決まる

計算で出た数量を、そのまま作れるとは限りません。食品では、取引先が受け取れる期限が上限になります。農林水産省の「商慣習検討」のページは、サプライチェーンには賞味期間の3分の1以内で小売店舗に納品する慣例、いわゆる3分の1ルールがあると説明しています。日持ちの長さが、そのまま作り置ける日数にはなりません。

この慣例は見直しが進んでいます。同ページによると、令和7年10月時点で納品期限を緩和(または予定)している食品小売事業者は377事業者で、前年度から38事業者増えました。賞味期限の延長に取り組む食品製造事業者は393事業者です。条件は取引先ごとに違うので、業界一律の日数として扱わず、自社の主要な取引先が何日前までの製造分を受け取るかを確認してください。

日持ちが長い品目でも、持ちすぎれば費用がかかります。同機構のビジネスQ&A「在庫を多めにもつことの悪影響」は、売れ行き以上に生産した製品は値下げして販売するか廃棄することになり、投入した資金の元本も回収できないと説明しています。保管には倉庫の賃借料、光熱費、保険料、固定資産税がかかり、在庫は棚卸資産であるため、抱えるほど自由に使える資金が減って資金繰りを圧迫するとも書かれています。

同Q&Aは、会社の方針としてどちらを重視するか、どの程度の在庫を保有するかを明確に決めておくことが重要だとしています。先に作る数量を計算する前に上限を決めておくほうが、現場の判断は早くなります。

受け取ってもらえる期限

食品では、製造日から何日前までの分を取引先が受け取るかが上限です。取引先ごとに確認します。

置き場と費用

倉庫の賃借料、光熱費、保険料、固定資産税、入出庫の手間。持てば必ず発生します。

上限を先に決める

「この品目は最大で何日分まで」と決めてから計算します。順番が逆だと、毎回その場の判断になります。

見込みの材料は受注の記録。出荷した日と数量を1品目ずつ残す

先に作る数量を出す計算は、1日あたりの平均出荷数がなければ始まりません。前出のビジネスQ&Aは、入出荷台帳を整備し、1つの製品ごとに製品名を明記して、どの製品がいつ何個動いたかを正確に記録するよう勧めています。担当者を決めて記録を続けることで、現在の在庫量が常に分かる体制になり、アイテム数が非常に多い場合は市販の販売管理や在庫管理のソフトを活用するとよいと書かれています。

記録を並べる基準は、受注日ではなく出荷日にそろえてください。同じ注文でも、受注日で数えると月末に山ができ、出荷日で数えると翌月の頭に分かれます。数量を決めたいのは出荷する日なので、出荷日の側で数えます。

出荷日と数量が1行ずつ並んでいれば、曜日ごとの平均や、月末に増える波はその場で計算できます。当社が開発中の「手軽に使える需要予測AI」も、必要なのは日付と数量の2列です。CSVを入れて列を選ぶと、28日先までの出荷数の見込みを幅つきで表示します。リリースの時期は未定ですが、手元のデータが使えるかを確かめる先行相談とデータ確認は無料で受け付けています。

取引先ごとの発注サイクルも記録に足してください。毎月第2週にまとまった注文が入ると分かっていれば、その週の手前で数量を増やせます。

残す項目

出荷日、品目、数量、取引先。この4つがあれば平均も波も計算できます。

そろえる基準

出荷日でそろえます。受注日で数えると、山の位置が実際の出荷とずれます。

数が増えたとき

品目が数百点を超えたら、台帳を手で書く方法から販売管理のソフトへ移す段階です。

表計算ソフトで始められる範囲と、仕組みにするときに決めること

最初は紙1枚か、表計算ソフトの1シートで足ります。列は、品目、納期、自社のリードタイム、差の日数、1日あたりの平均出荷数、出荷が多い日の数量、先に作る数量の7つです。差の日数がゼロの品目は外して構いません。対象が10点から20点なら、月に1度、30分ほどの更新で回せます。

続けにくくなるのは、計算が難しくなったときではなく、集計の量が増えたときです。品目が増えて表の行が3桁になった、受注がFAXと電話とメールに分かれていて出荷実績を1枚に集めるだけで半日かかる。このあたりが、仕組みを考える目安です。

当社に相談する場合、費用と期間を見積もるために確認するのは4点です。対象の品目数、取引先ごとの納期と受注の締切、出荷の記録がどこにあるか(販売管理・Excel・紙の納品書)、そして誰がどの画面で数量を見て決めるか。金額も期間も、品目数とつなぐ範囲で変わります。先にこの4点を決めてから、金額と期間の範囲をお出しします。

受注の入力そのものが分かれていて、出荷実績を集めるところで止まっている場合は、見込みの前に受注と在庫の記録を1つにまとめる話になります。その形は卸売・販売業向け受発注システムの開発プランにまとめています。

表計算ソフトで足りる範囲

品目10〜20点、取引先が数社まで。月1回の更新で続けられます。

CSVの確認

出荷日と数量の2列にそろえた1ファイルで、見込みが立つ記録かを確認します。この確認は無料です。

画面にする場合

品目ごとの先に作る数量と、その根拠になった日数・平均・在庫が並ぶ画面です。品目数と連携範囲で金額が変わります。

まとめ

見込みで決めるのは、取引先が求める納期と、自社が材料の手配から出荷までにかかる日数の差です。差が無い品目は、注文を受けてから作れます。

先に作る数量は、差の日数に1日あたりの平均出荷数を掛け、出荷が多い日のぶんを足し、自由に使える在庫を引いて出します。出荷日が決まっている注文を、在庫と平均の両方に入れないでください。

まず、主要な品目について納期と自社の日数を並べた表を1枚作ってください。差の日数がある品目だけが、数量を見込む対象になります。

よくある質問

取引先ごとに求められる納期が違います。どれに合わせて計算しますか?

品目ごとに、いちばん短い納期を求める取引先に合わせます。ただし、その取引先の出荷数だけを先に作る対象にしてください。全社の出荷数を最短の納期で計算すると、注文を待てる分まで先に作ることになります。表に取引先の列を足し、納期が短い取引先の平均出荷数を別に出しておきます。

受注がFAXと電話で、記録が1か所にありません。それでも見込みは立ちますか?

立ちます。出荷伝票か納品書の控えが残っていれば、そこから出荷日と品目と数量を書き出せます。3ヶ月分あれば、1日あたりの平均と多い日の数量は計算できます。手で書き出すのが重いなら、売上の大きい10品目に絞ってください。全品目をそろえるより、先に作る対象の品目だけを正確にしたほうが早く使えます。

在庫を持たずに、すべて注文を受けてから作る形にできませんか?

自社のリードタイムを納期より短くできれば可能です。前出のビジネスQ&Aも、生産リードタイムの短縮が在庫量を減らす最良の方法だとしています。材料の在庫だけを持って製造を短くする、段取りの回数を減らす、取引先と受注の締切を早める、といった順で検討します。それでも差が残る品目は、その日数ぶんだけを見込みで持ちます。

新しく扱い始めた品目は、平均出荷数が出せません。どうしますか?

最初の数週間は、取引先から聞いた予定の数量を使います。似た条件の既存品の出荷数を参考にする方法もあります。どちらの場合も、実際の出荷数が出そろうまでは先に作る量を少なめに置き、週ごとに見直してください。販売実績が無い品目の数量の置き方は、新商品・新店の最初の発注量の記事にまとめています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

受注の締切と、作るのにかかる日数から相談できます

取引先から翌日納品を求められるが、作るには数日かかる。定番品だけ先に作っているが、数量は担当者の感覚で決めている。品目が増えて、どれを在庫で持つべきか分からなくなった。そんな状態でご相談いただけます。品目ごとの納期と自社の日数を伺い、見込みで決める範囲を分けるところから始めます。資料や完成した仕様をそろえてからでなくて構いません。

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