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AIの基礎・活用

AIの予測は、なぜその数字になったか分かる?

売上や来客数を予測するAIでも、数字に理由を付けて見せる方法はあります。AIが全体で重く見ている材料や、その日の数字を何が押し上げたかを示す方法です。どんな説明が要るかは、使う側が導入前に作る側へ伝えておきます。

この記事でわかること

  • 機械学習の予測にも、理由を示す方法があります。総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、各材料が予測にどれだけ寄与したかを評価する方法(SHAP値)や、AIが重視している材料を可視化する方法などを挙げています。
  • 見せ方は、AIが全体で重く見ている材料、その日の数字の内訳、条件を変えたときの数字の動き、似た過去の日の4つに分けると選びやすくなります。
  • 生成AIに「理由も書いて」と頼んで返ってくる文章は、同ガイドラインによれば、AI内部の決定の仕組みを説明したものではありません。結果ともっともらしい根拠の組み合わせです。
  • 内訳はAIの計算の説明で、実際の原因を確かめたものとは限りません。内訳を見て数字を直すかどうかは、人が決めます。
  • どんな説明が必要かは、使う側が作る側へ伝えるものだと同ガイドラインは書いています。誰が、いつ、何を見て数字を直すかを先に決めておきます。

予測の理由を示す方法は、いくつもある

「AIは中身が見えないから、なぜその数字になったのか分からない」と言われることがあります。たしかに、たくさんの計算を重ねるAIの中身を、人がそのまま読むことはできません。それでも、出てきた数字に理由を付けて見せる方法はいくつも研究され、使われています。

総務省・経済産業省のAI事業者ガイドライン(第1.2版)は、別添のAI開発者向けの部分で、説明しやすくする方法を挙げています。できるだけ単純な仕組み(ロジスティック回帰や決定木など)を選ぶこと、特定の予測を説明する方法(LIMEなど)、各材料が予測にどれだけ寄与しているかを評価するSHAP値、AIが重視している材料を可視化するグラフ、入力を少しずつ変えたときの出力の変化を見ることなどです。

ここで言う材料は、AIに渡すデータの項目のことです。来客数の予測なら、曜日、祝日かどうか、天気予報、予約の数、近くの催しなどが当たります。

同じガイドラインは、説明しやすさを高める方法を検討するときは、開発とのトレードオフが生じる懸念にも注意するよう書いています。説明を重視して仕組みを単純にするか、手間をかけて説明の機能を足すか、どちらにしても何かと引き換えになります。

説明の見せ方は、4つに分けると選びやすい

説明といっても、見せ方によって分かることが違います。仕事で使う場面に合わせて、次の4つから選びます。

AIが全体で重く見ている材料

「このAIは、曜日と予約の数を特に重く見ている」のように、材料ごとの重要度をグラフで示します。店の実感と比べて、思いもしない材料が上位に来ていたら、データの入力ミスなどを疑うきっかけになります。

その日の数字の内訳

「平均的な日なら120食。そこから土曜で増え、雨の予報で減った」のように、1つの予測を材料ごとの増減に分けて示します。ガイドラインが挙げる、特定の予測を説明する方法やSHAP値がこれに当たります。

条件を変えたときの数字の動き

雨の予報を晴れに変えたら何食変わるか、予約が10人増えたらどうなるかを試します。ガイドラインの「入力パターンを少しずつ変化させたときの出力変化の観測」に当たり、AIがどの材料にどれだけ反応するかが分かります。

似た過去の日

「去年の同じような雨の土曜は118食だった」のように、条件の近い過去の日と実績を並べます。ガイドラインはAI提供者向けの部分で、過去の入出力事例を示すなど、AIの典型的な動きを例で示す方法も挙げています。

内訳があると、どの分を直せばいいか分かる

次は説明のための想定例です。定食屋で、ある土曜の昼に出る食数の予測が140食と出たとします。内訳は、平均的な日の昼が120食、土曜で25食増、雨の予報で15食減、近くの催しで10食増でした。

内訳を見た店長は、近くの催しが中止になったと知っています。その場合、直すのは催しの分の10食だけで、予測は130食前後と考えられます。内訳がなければ、140食という数字全体を勘で減らすことになります。

予約の数や催しの予定のように、店の人が先に知っている情報は、AIに渡す材料に入っていないこともあります。内訳を見れば、AIが何を材料にしていて、何を知らないのかも分かります。

生成AIが書く「理由」は、計算の中身の説明とは別もの

ChatGPTのような生成AIに数字を出させ、「理由も書いて」と頼むと、それらしい理由が文章で返ってきます。AI事業者ガイドラインの別添は、生成AIで結果とその根拠を出力させることはできるが、AI内部の決定の仕組みを説明しているわけではなく、結果と根拠のもっともらしい組み合わせを出している点で、従来型のAIの説明とは別に検討すべきだと注意しています。

文章で書かれた理由は、話の筋が通って見えても、その数字を実際に計算した過程とは限りません。数を予測する仕事では、自社の売上や来客の記録から計算する仕組みのほうが、根拠をたどりやすくなります。二つのAIの違いは機械学習と生成AIは何が違う?、生成AIが間違える理由は生成AIの答えが間違っているのはなぜ?で説明しています。

内訳は、AIの計算の説明

先の想定例の「雨の予報で−15食」は、このAIが計算の中でそう扱ったという意味です。雨の日に実際に15人減ると確かめたわけではありません。内訳はAIが数字を出したときに各材料をどう使ったかを示すもので、来客が減った本当の原因を証明するものとは限りません。

それでも、内訳は確かめる材料になります。店の実感と大きく違う内訳が出たら、記録の入力ミスや、予測する時点では手に入らない情報が混ざっていないかを確かめます。後者の注意点はAIの「精度95%」は何を表している?で取り上げています。

ガイドラインはAI提供者向けの部分で、AIの出力に対して人が最終判断をする場合には、AIから得られる説明を前提として、人が判断すべき項目を事前に明確にしておくことを挙げています。予測は外れるものとして、範囲で持つ考え方は発注は多めにするか少なめにするかで紹介しています。

導入前に、作る側へ伝えておくこと

AI事業者ガイドラインの本編は、AIを使う側がAIを作る側・提供する側に、どのような説明が必要になるかを共有することを挙げています。説明の機能は後から足すより、最初に決めておくほうが選べる方法が多くなります。専門の言葉を知らなくても、次の4つを伝えれば十分です。

誰が、いつ説明を見るか

前日の夕方、発注を決める前に店長が見る、のように場面を決めます。毎日見るなら画面の内訳、月に一度の見直しなら重要度のグラフが合います。

説明を見て、何を直すか

予約や催しのように人が先に知っている情報を、どこで書き換えるかを決めます。直した数字と理由を残すと、AIを見直す材料にもなります。

どの見せ方が要るか

材料ごとの重要度、その日の内訳、条件を変えたときの動き、似た過去の日のうち、どれが判断に使えるかを伝えます。全部を最初からそろえる必要はありません。

説明のためにかけられる手間

説明を重視して仕組みを単純にするか、手間をかけて説明の機能を足すかは、予算と使い方で変わります。先に希望を伝えておくと、作る側が方法を選べます。

まずは、外れた日の記録から

予測の理由を見たくなるのは、多くの場合、数字が外れた日です。外れた日に何が起きていたかを残しておくと、AIの内訳と照らし合わせて、材料が足りていたかを確かめられます。記録の残し方は仕込み量が外れた日に何を記録するかで紹介しています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

予測の数字に、どんな説明が要るかから整理します。

AIの導入を決めていない段階でも相談できます。データの提出は要りません。どの判断に予測を使いたいか、誰がいつ数字を見て直すかを伺い、必要な説明の見せ方を一緒に考えます。

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