業務アプリ・DX
お年寄りにも使いやすいアプリにするには?
年配の方向けの別アプリを作るより、スマホの設定で文字を大きくしている人の画面が崩れないこと、指で押しやすい大きさのボタン、色や細かい操作に頼らない表示を最初から作っておくことが近道です。AppleとGoogleも、そのための目安を公開しています。
この記事でわかること
- スマホの設定で文字を大きくして使っている人がいます。アプリがその設定に合わせて文字を大きくし、大きくしても画面が崩れないように作れます。Appleの資料は、文字を200%以上に拡大できるのが望ましいとしています。
- ボタンは指で押しやすい大きさにします。目安はiPhoneで44×44ポイント、Androidで48×48dp。ボタンどうしの間隔も、押し間違いを減らすのに効きます。
- 「赤は未完了、緑は完了」のように色だけで区別しないで、文字や形でも分かるようにします。薄い灰色の文字は読みにくいので、背景との濃さの差にも目安があります。
- スワイプや長押しのような操作だけで使う機能には、同じことができるボタンも置きます。
- 何を優先するかは、実際に使う人を思い浮かべると決めやすくなります。試作の段階で、使う予定の人に触ってもらうのがいちばん確かです。
年配の方向けの「別のアプリ」は、たいてい要らない
町内会の連絡、通いの教室の予約、病院や薬局の順番の確認など、利用者に年配の方が多いアプリを作りたいという話はよくあります。そのとき「お年寄り向けに、文字の大きい別の画面を作るべきか」と考えるかもしれません。
多くの場合、その前にできることがあります。スマホにはもともと文字を大きくする設定があり、見えにくさを感じている人はすでにその設定を使っていることが多いからです。アプリがその設定に合わせて文字を大きくし、大きくしても画面が崩れないように作っておけば、年配の方も若い人も同じアプリを使えます。
年配の方といっても、見え方も、スマホに慣れているかどうかも人によって違います。この記事で紹介するのは、特定の年代向けの特別な機能より、誰にとっても使いやすくなる基本です。
スマホの設定で文字を大きくしている人に合わせる
iPhoneには、画面の文字の大きさを自分で選べる設定があります。Appleの開発者向け資料では、アプリはこの設定に合わせて文字の大きさを変えられるようにし、できれば200%以上まで拡大できるようにすることを勧めています。Androidにも同じように、端末全体の文字の大きさを変える設定があります。
作り方によっては、文字の大きさがアプリの中で固定されていて、設定を変えても変わらないことがあります。反対に、文字だけが大きくなって、ボタンの文字が途中で切れたり、項目どうしが重なったりすることもあります。Googleの開発者向け資料も、端末全体の文字や表示の設定を変えた状態で、画面が崩れたり内容が隠れたりしないか確かめるよう求めています。
文字が大きくなったときに、横に並んでいた項目を縦に並べ直す、長い説明は折り返して全部見せる、といった動きを作るときに決めておきます。標準の文字の大きさも、Appleの資料ではiPhoneの本文の標準が17ポイント、最小が11ポイントとされています。細い書体を使う場合は、それより大きめにするよう勧めています。
ボタンは指で押しやすい大きさと間隔にする
押したいボタンの隣を押してしまう、小さな「×」がなかなか押せない。指先の感覚が細かくない人ほど、こうした押し間違いが増えます。
ボタンの大きさには目安があります。Appleの資料では、iPhoneのボタンの標準を44×44ポイント、最小を28×28ポイントとしています。Googleの資料では、Androidで押せる部品の大きさを48×48dp以上にすることを勧めていて、大きいほど良いとしています。ポイントやdpは画面の大きさの単位で、どちらもおおよそ指先で押せる大きさを表しています。
大きさと同じくらい大事なのが間隔です。Appleの資料は、ボタンどうしの間に十分な余白を取ることで押し間違いが減るとしています。「削除」と「保存」のように押し間違えると困るボタンは、離して置き、削除の前には確認を出すと安心です。
色だけで区別せず、文字の濃さにも気をつける
「赤い丸は未提出、緑の丸は提出済み」のように、色だけで状態を分けている画面は、色の見分けが難しい人には伝わりません。Appleの資料も、色に加えて形やアイコンなどでも違いが分かるようにすることを求めています。「未提出」「提出済み」と文字でも書いておけば、誰にでも伝わります。
薄い灰色の文字や、写真の上に重ねた白い文字は、明るい屋外や画面を暗めにしている時には読みにくくなります。文字と背景の濃さの差には、Webのアクセシビリティの国際的な基準(WCAG)の目安があります。Appleの資料はこの基準の値を目安にしていて、Googleの資料も同じ比を示しています。普通の大きさの文字では、文字と背景の明るさの比を4.5対1以上、大きな文字では3対1以上にするというものです。比は、色の組み合わせを入れると計算してくれる無料のツールで確かめられます。
スワイプや長押しだけにせず、ボタンでも操作できるようにする
「左にスワイプすると削除」「長押しでメニューが出る」といった操作は、慣れた人には便利ですが、知らない人は気づきません。指の動きが難しい人にも負担になります。
Appleの資料は、よく使う操作はできるだけ単純な動きにし、スワイプで閉じる画面なら閉じるボタンも用意するなど、指の動き以外の方法でも同じことができるようにすることを勧めています。画面に見えているボタンを押すだけで、すべての機能が使えるようにしておくと迷いません。
1つの画面でやることを絞るのも効果があります。予約アプリなら「日付を選ぶ」「時間を選ぶ」「確認して予約する」を1画面ずつに分け、いま何番目の手順かを表示する、といった作り方です。
作る前に決めておくと進めやすいこと
ここまでの内容は、作り始めてから足すより、最初の画面を作るときから入れておくほうが手間がかかりません。次のことが分かっていると、どこを優先するかを決めやすくなります。決まっていなくても相談はできます。
いちばん確かなのは、試作の段階で、実際に使う予定の人に触ってもらうことです。どこで指が止まったか、どの文字を見落としたかを見ると、資料の目安だけでは分からない直す場所が見つかります。
誰が使うか
年代、スマホに慣れているか、老眼鏡をかけて使うか。家族が代わりに操作することがあるか。
どこで使うか
屋外の明るい場所、病院の待合室、自宅のテレビの前など。立ったまま片手で使うかどうか。
いちばん大事な操作
予約する、連絡を見る、記録をつけるなど。これだけは迷わず終わらせたい操作を1つか2つ挙げます。
試してもらえる人
試作の段階で触ってもらえる利用予定の人がいるか。数人でも、直す場所の見つかり方が変わります。
使う人を思い浮かべながら、画面を一緒に考えます。
誰が、どこで、何をするアプリか。それが分かれば、文字の大きさやボタンの配置まで含めて、必要な画面と概算の費用と期間をお伝えできます。仕様書や画面の案がなくても大丈夫です。
