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「残りいくつになったら頼むか」の線はどう引くか。発注点と安全在庫を数字で置き、週ごとに引き直す手順

「残りがこの数まで減ったら頼む」という線は、届くまでに使う数に安全在庫を足した数です。1日に使う数と届くまでの日数が分かれば、線は品目ごとに計算できます。毎日の発注を店長以外にも任せたい、飲食店や小売店の経営者向けの記事です。

この記事でわかること

  • 線(発注点)は「届くまでに使う数」と「安全在庫」の合計です。1日3kg使い、頼んでから届くまで2営業日なら、届くまでに使う数は6kg。安全在庫を2kg置くなら、線は8kgです。
  • 線を引くのは、使う量が安定していて日持ちする品目に向きます。中小企業基盤整備機構の資料は、在庫が一定水準まで減ったら決まった量を頼む方式を売れ筋商品向き、決まった周期で量をその都度決める方式を買い回り商品向きとしています。
  • 安全在庫は、届くまでの期間に使う量が平均より多かった日の記録から出せます。自店の記録で「平均より最大でいくつ多かったか」を見て、切らしたくない品目はその全部、余っても使える品目は一部を置きます。
  • 線は固定の数ではありません。「届くまでに使う数」は曜日と季節で動くので、忙しい週の前に引き直します。過去の日付と数量の並びから翌週の使う数を見込めると、線の引き直しを毎週の作業にできます。

線は「届くまでに使う数」に「安全在庫」を足した数

「残りがこの数まで減ったら頼む」という線を、在庫管理の言葉で発注点と呼びます。線の位置は、頼んでから届くまでの間に使う数と、その間に使う量が見込みより多かったときのための安全在庫の合計です。鶏もも肉を1日3kg使い、業者に頼んでから届くまで2営業日かかるなら、届くまでに使う数は6kgです。安全在庫を2kg置くなら、線は8kgになります。

閉店後に数えた残りが8kg以下なら頼み、9kg以上ならまだ頼みません。この判断には、勘も経験も要りません。線を品目ごとに紙に書いておけば、店長が休みの日にアルバイトが数えても、頼む・頼まないの判断は同じになります。

この記事で説明するのは、線を引く品目の選び方、安全在庫を自店の記録から出す方法、線が合っているかを確かめる2つの数字、忙しい週の前に線を引き直す手順です。線を切ったときに「いくつ頼むか」の決め方は、発注量を決める3つの数字の記事で説明しています。

届くまでに使う数

1日に使う数に、頼んでから届くまでの営業日数を掛けた数です。業者の締め時間と配達日で日数が決まります。

安全在庫

届くまでの間に、使う量が見込みを上回ったときのための上乗せ。品目ごとに違ってよい数です。

線(発注点)

上の2つの合計です。数えた残りがこの数以下になった日に頼みます。

線を引く品目と、曜日ごとに量を決める品目を分ける

全品目に線を引く必要はありません。中小企業基盤整備機構の起業マニュアルは、発注を「いつ、どのくらいの量を、どこへ」頼むかを標準化した補充発注の仕組みとして、2つの方法を挙げています。1つは、在庫が一定水準まで減ったら決まった量を頼む方法(定量発注)。もう1つは、決まった周期で、必要な量をその都度決めて頼む方法(定期発注)です。同機構の小売業向けの資料は、前者を売れ筋商品向き、後者を買い回り商品向き、必要なつど頼む方法を高額商品向きとしています。

飲食店や食料品店に置き換えると、線を引くのは、毎日ほぼ同じ量を使い、余っても翌週に持ち越せる品目です。米、油、調味料、冷凍品、ドリンク、包材がここに入ります。線を切ったら決まった量を頼むだけなので、数える人が誰でも同じ結果になります。

曜日ごとに量を決めるのは、使う量が日によって大きく動き、余ると廃棄になる品目です。生の魚、葉物、当日仕込みの品がここに入ります。この品目に線を引くと、暇な週に合わせた線では忙しい週に切らし、忙しい週に合わせた線では暇な週に余ります。決まった曜日に、翌週の見込みを見て量を決めるほうが合います。宴会用の特別な食材のように、予約が入ったときだけ頼む品目は、線も周期も置かず、必要なつど頼みます。

線を引く品目

使う量が安定していて、日持ちする。線を切ったら決まった量を頼む。数える人が変わっても判断が同じになる。

曜日ごとに量を決める品目

使う量が日ごとに動き、余ると廃棄になる。決まった曜日に、翌週の見込みから量を決める。

必要なつど頼む品目

予約や催しが入ったときだけ使う。線も周期も置かず、予約が確定した時点で頼む。

安全在庫は、自店の記録の「平均より多かった分」から出す

中小企業基盤整備機構の資料は、安全在庫を「発注日から納品日までの期間内で、出庫スピードが早くなった場合を想定して数量を決定する」ものと説明しています。つまり安全在庫の大きさは、届くまでの期間に使う量が、ふだんよりどれだけ多くなり得るかで決まります。

自店の記録から出すには、届くまでの日数と同じ長さの期間で使った量を、直近の8回ぶん並べます。2営業日で届く品目なら、2日間で使った量を8組です。たとえば5・6・6・7・5・8・6・9kgなら、平均は6.5kg、いちばん多かった回は9kgで、平均より2.5kg多い日がありました。この2.5kgが、安全在庫を置くときの目安になります。

2.5kgをそのまま置くか、一部だけ置くかは品目で変えます。切らすと看板メニューが止まる品目や、当日に近くで買い足せない品目は、上振れの全部を置きます。余っても翌週に使える品目や、買い足せる品目は、半分ほどで足ります。安全在庫を厚くすると品切れは減りますが、同機構の資料が挙げるとおり、在庫には仕入代金のほかに保管費用、減耗費用、金利、保険料がかかります。厚くする根拠は、品切れで失う粗利と、余りで失う仕入額のどちらが大きいかです。

包装された加工食品なら、安全在庫を厚く持っても期限内に使い切りやすい品目です。農林水産省の商慣習検討のページによると、賞味期間の3分の1以内に小売へ納品するのが業界の慣例で、店に届いた時点で賞味期間の3分の2以上が残る計算です。この納品期限を緩和した小売事業者は、2025年10月時点で377事業者に増えています。

DEMO

1日に使う数と届くまでの日数を入れると、線がどこに引かれるか

品目1つぶんの数字を入れると、届くまでに使う数、安全在庫、線(発注点)が出て、きょう数えた残りと比べて「頼む・まだ」を表示します。翌週の見込みを切り替えると、忙しい週の線がどこまで上がるかを比べられます。

発注点の試算|届くまでに使う数と安全在庫から線を引き、残りと比べる

1日に使う数の平均、いちばん多かった日の数、届くまでの営業日数、切らしたくない度合い、きょうの残りを入れる画面です。線と残りの位置関係を1本の目盛りで示し、翌週の見込みを「平月」「忙しい週」「暇な週」で切り替えると線が動きます。

触って動かせます
計算の中身
届くまでに使う数は、1日に使う数の平均に営業日数を掛けた数です。安全在庫は、いちばん多かった日と平均の差に日数を掛け、切らしたくない度合いで全部・半分・4分の1を置きます。線はその合計で、残りが線以下なら「きょう頼む」と表示します。
使っている前提
数字はすべて入力例です。翌週の見込みは、平均を1.3倍・0.8倍した仮の値で、実際の需要予測AIが出す幅とは違います。1日に使う数は品目と店で違うので、自店の記録に置き換えてください。
確かめてほしいところ
届くまでの営業日数を1日から3日に増やしてみてください。同じ品目でも線がそのまま3倍になり、数える頻度より届くまでの日数のほうが線を押し上げることが分かります。次に翌週の見込みを「忙しい週」に切り替え、平月の線のままだと何日目に切れるかを見てください。

※ 線は「頼む・まだ」を決めるためのもので、頼む数量そのものではありません。数量は、届くまでに使う数、今ある数、発注の単位を見て決めてください。安全在庫の置き方は品目の日持ちと買い足しの可否で変わります。

線が合っているかは、届いた日の朝の残りと、数えた数の正しさで確かめる

線を引いたあとに残す数字は2つです。1つ目は、線を切って頼んだ品目が届いた日の朝に、いくつ残っていたかです。残りが0なら線が低く、安全在庫の2倍以上が残る日が続くなら線が高すぎます。届いた日の残りを日付つきで残しておけば、月に1回、線を上下させる根拠になります。

2つ目は、数えた数そのものの正しさです。線と比べるのは棚の残りなので、開封済みの袋や仕込み済みのぶんをどう数えるかが人によって違うと、線は機能しません。同機構のビジネスQ&Aは、製品ごとに入出荷の台帳を作り、記録する担当者を決めて継続することを在庫管理の出発点に置いています。同じ起業マニュアルは、棚卸の目的の第一に「帳簿と現品の実数を合わせること」を挙げています。月末の棚卸で帳簿と現品の差が出る品目は、数え方をそろえるところから直します。棚卸の数字を使用量の計算に使う手順は、棚卸を発注に活かす記事に書いています。

届いた日の朝の残り

0なら線が低い。安全在庫の2倍以上が続くなら線が高い。日付つきで残し、月に1回線を動かす。

数え方の統一

開封済み・仕込み済みの数え方を品目ごとに決める。棚卸で帳簿と現品がずれる品目は、線より先に数え方を直す。

線は固定しない。忙しい週の前に、届くまでに使う数を見込んで引き直す

線の片方の「届くまでに使う数」は、1日に使う数に日数を掛けた数です。この1日に使う数は、曜日と季節で動きます。金曜と土曜で1.5倍になる品目や、12月に平月の2倍出る品目で、平月に引いた線をそのまま使うと、忙しい週の途中で切らします。線は一度引いて終わりではなく、翌週の使う数を見込んで引き直す数です。

引き直しの材料は、レジの販売数か仕込み表の使用量を日付と一緒に並べた記録です。過去の日付と数量の並びから、曜日の差と季節の波を織り込んで先の使う数を見込む計算があり、当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列のCSVから28日先までの見込みを幅つきで出します。翌週の「届くまでに使う数」を幅の上側で取り、安全在庫を足したものが、翌週の線です。見込みの幅をどう読むかは、発注は多めにするか少なめにするかの記事で説明しています。

見込みは外れます。だから線には安全在庫を残し、届いた日の朝の残りを記録して、外れた週の理由(団体の予約、近隣の催し、天候)を日付と一緒に残します。見込みが出すのは線の位置までで、頼む・頼まないの判断は、数えた人が線と残りを比べて決めます。線を品目ごとに毎晩引き直す発注表の形は、飲食店の発注表アプリの開発プランに、直売所で補充の目安を出品者と共有する形は農産物直売所の開発プランに書いています。

平月の線

直近8回の平均から出した「届くまでに使う数」に、安全在庫を足した数。

忙しい週の線

翌週の見込みの上側から出した「届くまでに使う数」に、同じ安全在庫を足した数。週の前に引き直す。

外れた週

届いた日の朝の残りと、外れた理由を日付つきで残す。次の見込みの材料になる。

紙の5列から始められる。仕組みにする費用は品目数とつなぐ範囲で決まる

最初は紙かExcelの5列で足ります。品目、1日に使う数、届くまでの営業日数、安全在庫、線の5つです。線は式で出るので、Excelなら1列に式を入れるだけです。線を引く品目は10〜20に絞り、閉店後に残りを数えて線と比べます。線を切った品目だけ発注書に写せば、その晩の作業は数分です。

中小企業基盤整備機構のIT経営サポートセンターには、従業員5〜20人のめん類製造業から「手書きで在庫管理を行っているが、棚卸数量の誤りや在庫切れが発生して困っている」という相談が寄せられ、店とネット販売の在庫を合わせて管理できるレジのシステムが紹介された例が載っています。線を引く前に、数える仕組みのほうが先に限界になることがあります。品目が多く、手書きの数え間違いで在庫切れが起きているなら、線より先に在庫数を記録する仕組みを整えます。

線の引き直しを毎週の作業にするには、翌週の使う数を見込む仕組みが要ります。当社の需要予測AIはリリース前で、レジや仕込み表から書き出したCSVを1つお預かりして、見込みに使える記録かを確かめる相談を無料で受けています。線を発注表の画面まで作る費用は、対象の品目数、レジや業者の発注システムとつなぐかどうか、線を毎晩自動で引き直すか週1回の更新にするか、の3つで決まります。当社の飲食店向けの開発プランでは、要件整理から納品まで約3ヶ月を目安にしています。

紙・Excelの5列

品目、1日に使う数、届くまでの日数、安全在庫、線。10〜20品目に絞って、閉店後に残りと比べる。

CSVの確認

無料。日付と数量の記録から、翌週の使う数の見込みが出るかを確かめる。

発注表の画面

品目数、つなぐシステムの範囲、線を引き直す頻度で費用が決まる。目安は約3ヶ月。

まとめ

線(発注点)は、届くまでに使う数に安全在庫を足した数です。線を引くのは使う量が安定して日持ちする品目で、日ごとに動く生鮮は曜日ごとに量を決めます。

安全在庫は、自店の記録で「平均より最大でいくつ多かったか」から出し、切らしたくない品目は全部、余っても使える品目は一部を置きます。線が合っているかは、届いた日の朝の残りで確かめます。

次にやることは1つです。線を引く品目を10〜20選び、1日に使う数と届くまでの営業日数を紙に書き出してください。その2つの掛け算が、線の土台になります。

よくある質問

発注点と発注量は何が違いますか?

発注点は「残りがこの数以下になったら頼む」という線で、頼むかどうかを決める数です。発注量は、線を切ったときにいくつ頼むかで、届くまでに使う数から今ある数を引いて余裕を足した数です。線だけ決めて量は毎回同じにする品目もあれば、線を切るたびに量を計算する品目もあります。

安全在庫はいくつ持てばいいですか?

決まった数はありません。届くまでの期間に使った量を直近8回ぶん並べ、平均よりいちばん多かった分を目安にします。切らすと困る品目や買い足せない品目はその全部、余っても翌週に使える品目は半分ほどを置きます。届いた日の朝の残りを記録し、0の日が出るなら増やし、安全在庫の2倍以上が続くなら減らします。

発注点はExcelで管理できますか?

できます。品目、1日に使う数、届くまでの営業日数、安全在庫の4列を作り、5列目に「1日に使う数×日数+安全在庫」の式を入れれば線が出ます。閉店後に数えた残りを6列目に入れ、線以下の品目に印が付くようにしておくと、頼む品目の一覧になります。負担になるのは、線を曜日や季節で引き直す作業を品目の数だけ繰り返すときです。

棚卸の数字と発注点は、どうつながりますか?

棚卸で数えた数は、線と比べる「残り」そのものです。月末の棚卸で帳簿と現品の差が大きい品目は、線を引く前に数え方をそろえます。棚卸の記録から1日に使う量を出す方法は、棚卸を発注に活かす記事に書いています。その1日に使う量に届くまでの日数を掛けた数が、線の土台です。

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この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

線を引く品目の記録から、一緒に線の位置を決めます。

店長が休みの日に発注が合わない、忙しい週に決まって切らす品目がある、安全在庫をいくつにすればいいか分からない。そんな状態からご相談いただけます。品目1つの記録を見て、線の位置と、翌週に引き直す方法を一緒に考えます。

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