業務アプリ・DX
受けた注文は、どこに一度だけ入力すれば済むか
受注管理でまず決めるのは、注文を最初に書き留める場所を一つにして、出荷・請求・入金の確認をそこから引くことです。取引先数十社、商品数百点ほどの卸売業・小規模販売業を想定し、Excelで続けられる範囲と注文データの保存で決まっている条件を整理します。
この記事でわかること
- 見直しは製品選びから始めません。1件の注文で同じ数量を何回書き写しているかを1週間数えると、先に直す工程が決まります。
- 受注の記録は品番ごとに1行にします。注文1件を1行にすると、1品番だけ欠品して後日出荷になった日に、その行の状態を書けなくなります。
- メールやWebの発注画面で受けた注文は、電子帳簿保存法第2条第5号にいう電子取引にあたります。Excelに転記したあとで元のデータを消すと、保存したことになりません。
- 検索できる仕組みを別に用意しなくてよい場合があります。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、同法施行規則第4条第1項により検索の要件から外れます。
- 受け取った注文書の保存期間は起算日から7年です(法人税法施行規則第59条)。起算日は受け取った日より後ろにずれます。
同じ数量を1件の注文につき何回書き写しているか
受注管理の見直しは、製品を比べるところからは始めません。1件の注文が入ってから入金を確認するまでに、同じ数量と品番を何回書き写しているかを先に数えます。ここが見えないまま製品を入れても、入力の回数は減りません。
数え方は単純です。届いた注文書に在庫を書き込み、受注のExcelに品番と数量を入力し、倉庫へ渡す出荷の指示に同じ数量を書き、納品書に書き、請求のExcelにもう一度入れる。この流れなら、1件の注文で同じ数量を5回書いています。
1週間ぶんの注文で1件あたり何回書き写したか、書き間違いが見つかったのはどの工程かを記録してください。回数が多い工程と間違いが見つかる工程は一致しないことがあります。両方を控えると、先に直す場所が決まります。
数える対象
品番・数量・単価・希望納品日・取引先名の5つです。この5つが紙と画面の何箇所に現れるかを数えます。
あわせて控えるもの
書き間違いが見つかった件数と見つかった工程。出荷前に気づいたのか、取引先からの連絡で気づいたのかまで分けます。
受注の1行に何を入れておけば、あとの工程で書き直さずに済むか
受注の表は、注文1件で1行にせず、品番ごとに1行にします。3品番の注文のうち1品番だけ在庫がなく後日出荷になったとき、1件を1行にしていると、その行を出荷済みとも未出荷とも書けません。
1行に持たせる項目は、受注日、取引先、注文が届いた経路、先方の注文番号、品番、数量、単価、希望納品日、出荷予定日、実際に出荷した日、請求した月、入金を確認した日です。先方の注文番号を最初に入れておくと、問い合わせの電話で相手の書類と同じ番号を言えます。
列を埋める人は工程ごとに変わります。受注の担当が受注日から希望納品日まで、倉庫が実際に出荷した日、事務が請求した月と入金を確認した日。こう決めておくと、空欄がそのまま「まだその工程まで進んでいない」という意味になり、未出荷の一覧を別に作らなくても、出荷した日が空の行を並べれば済みます。
注文のデータは、届いた経路によって残し方が変わる
電子帳簿保存法第2条第5号は、注文書や見積書に通常記載される事項を電磁的方式でやりとりする取引を電子取引と定め、第7条が、所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)と法人税の保存義務者に、その電磁的記録の保存を求めています。メールに添付された注文書、取引先のWeb発注画面から届いた注文、EDIで受けた注文がこれにあたります。
受注のExcelへ品番と数量を転記したあと、元のメールやファイルを消してしまうと、保存したことになりません。反対に、紙で届いたFAXや電話で受けた注文は電子取引にあたらないため、紙の書類として保存します。複合機で紙に出さずデータのまま受け取っているFAXは、定義に照らすと電子取引の側に入ります。判断に迷う経路は、顧問の税理士か所轄の税務署に確認してください。
保存のしかたは電子帳簿保存法施行規則第4条第1項が定めています。タイムスタンプを使う方法のほか、訂正と削除を記録に残せるシステムを使う方法、正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理の規程を定めて運用し、あわせて備え付ける方法があります。最後の方法なら、新しい製品を入れなくても要件を満たせます。
検索できるようにする範囲
同規則第2条第6項第5号は、取引年月日その他の日付・取引金額・取引先で検索でき、日付と金額は範囲を指定でき、2つ以上を組み合わせられることを求めています。ただし第4条第1項により、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、電磁的記録の提示や提出の要求に応じられるようにしていれば、この要件から外れます。
売上高が5,000万円を超える場合
出力した書面を日付と取引先ごとに整理して提示でき、あわせて電磁的記録の提示や提出の要求にも応じられるなら、同じく検索の要件から外れます。ファイル名の付け方と保存先の分け方を決める作業がここに当たります。
何年残すか
受け取った注文書の保存期間は、法人税法施行規則第59条第1項第3号と第67条第2項が起算日から7年としています。起算日は、受領した日の属する事業年度が終わった日の翌日から2か月を経過した日です。3月決算の会社が2026年4月に受け取った注文書なら、起算日は2027年6月1日になります。欠損金の繰越しの適用を受ける事業年度は、同規則第26条の3により10年です。
Excelやスプレッドシートを続けられるのは、どこまでか
切り替えの目安を従業員の人数で決めると外れます。3人でも同時に同じ行を直す会社があり、10人でも入力する人が1人なら困りません。
同時に開いて直せるかは、ファイルの置き場所と契約・設定で変わります。「Excelは同時に編集できない」「スプレッドシートなら無料」とひとくくりにせず、いまの保存先で2人が同じ行の数量を同時に直すとどうなるかを実際に試してください。その結果がそのまま判断の材料になります。
次の5つを1か月ぶん確かめると、いまの方法で足りているかが見えます。1つだけなら表の作りと担当の決め方で吸収できることが多く、重なるほどExcelでは持ちこたえにくくなります。
同時に更新する人と場所
事務所と倉庫が別の建物なら、実際に出荷した日を誰がいつ入れるかが問題になります。1日1回まとめて入れるのか、出荷のたびに入れるのかで必要な仕組みが変わります。
見せてよい範囲の違い
取引先ごとの単価を倉庫の担当や短期の応援に見せてよいかどうか。列を隠す運用で足りるのか、そもそも開けないようにしたいのかを確かめます。
誰がいつ直したかを残す必要
出荷後に数量が変わっていて、いつ誰が直したのか分からない。この確認が年に何回あるかを数えます。回数が増えるほど、履歴が残る仕組みが要ります。
転記の回数
最初の節で数えた回数です。受注から請求までで3回を超えていれば、どこか1か所を減らすだけでも入力の時間が変わります。
過去分の量
同じファイルに何年ぶんを置いているか。行が増えると並べ替えと絞り込みに時間がかかり、月末に開くのが遅くなります。
既製のソフトで足りるか、作るか。費用と期間を見積もるために決めること
先に確かめるのは、既製の販売管理ソフトでいまの注文の受け方と商品の数え方を続けられるかどうかです。設定で収まるなら、そのほうが早く始められます。価格も機能の範囲も製品と契約で違うので、候補を2つか3つに絞り、同じ条件で見積もりを取って比べてください。
自社に合わせて作る判断になるのは、ケースとバラで単位が変わる商品を1つの品番で扱っている、取引先ごとに単価表が分かれている、事務所と倉庫で同じ画面を見たい、いまの帳票の様式を変えたくないといった条件が重なるときです。1つだけなら運用を少し変えて吸収できます。
当社の受発注システムの開発プランは、取引先数十社・商品数百〜千点の事業者を想定し、設計から納品まで約3か月を見込んでいます。これは実際の導入実績ではなく、当社が想定して作った開発プランです。数人で使う業務アプリの目安もアプリ開発のページのとおり2〜3か月で、次の条件で前後します。
効果の測り方も先に決めます。作業時間が半分になるといった数字は、いまの状態を測っていなければ確かめようがありません。最初の節で数えた転記の回数、書き間違いの件数、月末の請求作業にかかった時間を、切り替えの前後で同じやり方で数えてください。
注文が届く経路の数
FAX・電話・メール・取引先のWeb発注画面・EDI。いくつの経路を1つの画面にまとめるかで、作る範囲が変わります。
商品の数え方と単価の決まり
ケースとバラの換算、取引先ごとの単価、数量による単価の変わり方。ここに例外が多いほど、確認と設計に時間がかかります。
誰が何を見られるか
単価・粗利・取引先の情報を、どの担当まで見せるか。権限の分け方は、あとから足すより最初に決めるほうが早く済みます。
既存Excelの移行範囲
商品と取引先の一覧だけ移すのか、過去の受注も移すのか。過去分を移すときは、どの年からにするかを決めます。
印刷する帳票
納品書・受領書・請求書の様式と用紙。取引先から指定されている様式があるなら、その用紙に収まるかを先に確かめます。
まとめ
受注の表は品番ごとに1行にして、受注・出荷・請求・入金のどの列を誰が埋めるかを決めます。空欄が工程の進み具合を表すようになると、未出荷の一覧を別に作らずに済みます。
メールやWeb発注で受けた注文は、転記したあとも元のデータを残します。検索の仕組みを別に用意しなくてよい場合があるので、自社の売上高といまのフォルダの分け方を先に確かめてください。
まず1週間、1件の注文で同じ数量を何回書き写しているかを数えてください。Excelを続けるか、既製のソフトを入れるか、自社に合わせて作るかを決める材料になります。
よくある質問
受注・在庫・請求のExcelは、1つのファイルにまとめたほうがよいですか?
まとめる前に、品番ごとに1行を持つ受注の表を固めてください。表が整っていれば、在庫と請求を別ファイルのままにしても、品番と数量のつながりは切れません。ファイルの数より、同じ数量を何回書き写しているかを先に見てください。
メールで届いた注文書は、印刷して紙でとじておけばよいですか?
印刷した紙だけを残す扱いは、2023年12月31日までに行った電子取引までの措置でした。国税庁は電子取引関係のページで、2024年からは保存要件に従ってデータを保存するよう案内しています。印刷した紙を業務で使うのはかまいませんが、元のデータも残してください。
検索できるようにするために、専用のソフトを買う必要がありますか?
必ずしも必要ありません。電子帳簿保存法施行規則第4条第1項により、基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者は、電磁的記録の提示や提出の要求に応じられるようにしていれば、検索の要件から外れます。売上高がこれを超える場合も、出力した書面を日付と取引先ごとに整理して提示できるなら同じ扱いです。ファイル名の付け方と保存先の決め方から着手できます。
既製の販売管理ソフトと自社開発は、どちらから検討すべきですか?
既製のソフトからです。いまの注文の受け方、ケースとバラの換算、取引先ごとの単価表を、設定の範囲で続けられるかを製品側に確認してください。続けられるなら、そのほうが早く始められます。合わない条件が重なったときに、作る側の検討へ進みます。
受注から請求までの転記について、ご相談ください
受注・在庫・請求のExcelが分かれていて同じ数量を何度も入力している、出荷後の数量変更を誰が直したか追えない、月末の請求と入金の確認に丸一日かかっている。こうした状態からご相談いただけます。いまのExcelと帳票を拝見し、既製のソフトで足りるか、作る必要があるかを一緒に整理します。初回に仕様書や取引先の一覧をご用意いただく必要はありません。
