EvoQuest
EvoQuest AI需要予測AI 2026.08

SCENARIO ── FLOWER SHOP CASE

ふだんの仕入れは、次のセリまでの2日ぶん。
盆の前だけ、7日ぶんを一度に決める。

札幌の住宅街で、店主とパート1人が回す生花店を想定します。売上の柱は仏花と墓参りの花、それに供花やアレンジの注文。仕入れは花市場のセリで、月・水・金の朝に買います。ふだんはこれで困りません。1回の仕入れでまかなうのは次のセリまでの2日ぶんで、外しても2日後に直せるからです。ところがお盆と彼岸は、市場が休みに入る直前のセリ1回で、山の全部を決め切ることになります。同じ日に相場は上がり、買った花は冷蔵ケースの中で日ごとに古くなっていく。1年でいちばん大きな仕入れの判断が、いまは「去年もこのくらい買ったはず」という記憶だけで行われています。注文と活け込みで確定した本数を先に固め、店頭ぶんを品種別の幅で予測して、セリ前日17時に仕入れ表を確定する。そこまでの仕組みの描き方を、この開発プランにまとめました。

想定領域
切り花の仕入れ量予測AI / 生花店の業務改善
担当範囲
要件整理・データ整備・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
店主とパート1人の生花店(仏花・注文の花が中心/仕入れは花市場のセリ)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月(秋の彼岸を1回はさむ)

OVERVIEW

プロジェクト概要

花屋の仕入れで検索して出てくるのは、開業したい人向けの「市場・仲卸・ネット仕入れの違い」の解説と、生花店向けPOSレジの紹介です。POSレジはその日の仕入れと売上を記録してくれますが、あすのセリで何をどれだけ買うかまでは教えてくれません。切り花は流通の過程で3〜4割が廃棄されるといわれる商材なのに、店が仕入れの本数を決める場面を扱ったページは見当たりません。決め方はいまも、セリ台に並んだ花を前にした店主の感覚です。

この商売の時間の構造は、市場のカレンダーが決めています。セリは月・水・金。1回の仕入れが受け持つのは次のセリまでの2日ぶんで、多少外れても2日後のセリで直せます。ところが盆の前は違います。想定する市場の盆休みは8月11日から16日まで。8月10日の最後のセリで、盆の山の7日ぶんを決め切ることになります。そしてその日は全国の花屋が同じ理由で買いに来るので、相場も上がっています。本数を外すことと、高い日に外すことが重なる。1年の廃棄の大半は、この数回の山で出ます。

ここにAIの予測を入れます。ただし、予測に任せる範囲は先に絞ります。供花の注文や、お寺への納め、定期の活け込みのように先に決まっている本数は確定として固め、幅のある予測を当てるのは店頭で売れるぶんだけです。出口はセリ前日17時の一点。品種別の本数と上限単価を仕入れ表として確定し、翌朝は市場でその表のとおりに買う。決めるのは店主で、AIが出すのは本数の根拠と締切です。画面はEvoQuest Appsのアプリ開発と組み合わせて、帳場のパソコンとレジ横のタブレットで毎日使える形にします。

CHALLENGE

課題

  • 01 山の全部を、市場が休む前に決め切ることになる。ふだんの仕入れは次のセリまでの2日ぶんで、外しても2日後に直せる。盆・彼岸・年末は市場が休みに入るため、直前のセリ1回が山の7日ぶんを受け持つ。1年でいちばん大きな判断ほど、あとから直せない。
  • 02 同じ日に、相場も上がっている。盆前のセリは全国の花屋が同じ花を取り合うので、小菊や輪菊の単価はふだんより3〜5割高くなることがある(想定例)。去年と同じ本数を書いても、去年と同じ仕入れ額では済まない。本数の判断と金額の上限を、同じ表で決める必要がある。
  • 03 買った花は、店で日ごとに古くなる。盆の6日目に売る花も、最後のセリの日に買っておくことになる。夏の切り花の日持ちは品種で差が大きく、菊は1週間以上もつが、ガーベラやバラは3〜5日が目安。何を買うかは、何日目に売るかとセットでしか決められない。
  • 04 売り逃した記録が、どこにも残らない。余って捨てた本数は目に入るが、切らした日に仏花を買えず帰った客は数字にならない。仏花は毎年同じ日に要る花なので、その日スーパーやホームセンターで済ませた客は、来年からそちらへ行くかもしれない。損の大きい側ほど、記録がない。

APPROACH

アプローチ

動かさない一点は、セリ前日17時の一度の決定です。品種別の本数と上限単価を仕入れ表として締め、市場の前売り注文に出す品種はそのまま送信し、残りは翌朝のセリで表のとおりに買います。締切を17時に置くのは、市場の前売り注文の受付がそこで閉まる想定だからです。この一回はふだんは週3回、任されるのは2日ぶん。盆と彼岸だけ、同じ画面のままその持ち場が7日ぶんに伸びます。判断の場面は増やさず、判断の重さだけが変わる形にします。

予測の前に、確定している本数を使い切ります。供花やアレンジの注文は受取日つきで表へ自動で入り、医院・美容室・飲食店の定期の活け込みは曜日で入り、お寺への納めは行事の日付で入ります。幅のある予測が引き受けるのは、店頭にふらっと来る客に売れるぶんだけです。盆の店頭ぶんは、日別に割って予測します。墓参りの集中は暦と曜日と天気でかなりの部分が説明できるので、13日の山、雨の日に翌日へずれるぶんまで含めて、日ごとの幅で出します。

7日ぶんの中身は、品種の日持ちで前半と後半に分けます。後半に売るぶんは、夏でも1週間もつ輪菊・小菊・りんどうを中心に組み、日持ちの短いトルコキキョウやガーベラは、13日までに売り切れる本数で止めます。相場への備えは上限単価です。品種ごとに「ここまでなら買う」の線と差し替え先を決めておき、セリで上限を超えたら本数を削るのではなく、小菊からスプレー菊へ、と品種を振り替えます。

外す方向は、品種の逃げ道で決めます。菊類は多め側です。盆が明けても仏花の定番として毎日売れるので、余りは翌週の仕入れを減らして吸収できます。日持ちの短い洋花は少なめ側です。余りの逃げ道が値下げしかなく、足りないときは次のセリで買い直せばいい。どちらへ倒すかは品種ごとに表へ書いておき、決定は毎回店主が行います。予測は「68〜92束」のような幅で示し、店主がその場で直した数字と、直した結果は記録に残します。

効果は、金額と時刻で測ります。捨てた花は本数にその日の仕入単価を掛けた廃棄額で、値下げで売った花は下げた差額の目減りで、切らした品種は売り切れ時刻とその後の来店数からの推計で残します。それから、実績が予測の幅に収まった日の割合。この4つを月次レポートに並べ、幅と倒す方向を毎月直していきます。精度を売り物にはしません。外れたときの損を、品種ごとに小さくしていく仕組みです。

CONSULTATION

「去年もこのくらい」を、品種別の仕入れ表に。

盆の仕入れの記録は、いまは店主の記憶の中にしかありません。
品種別の売れ方と相場の動きは、レジの記録と市場の伝票から復元できます。
品種と日持ちの一覧づくりから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。セリ前日の夕方に締める仕入れ表を中心に、帳場のパソコンとレジ横のタブレットで使う前提の構成です。店名・品種・本数・単価・市場の日程はすべて想定例で、実在の店舗・市場・実績ではありません。

01. セリ前日の17時、品種別の本数と上限単価を締める

セリの前日に必ず開く画面。品種ごとに、店に残っている本数、注文と活け込みで確定した本数、店頭ぶんの予測の幅が並び、右端の仕入れ本数と上限単価を確定します。確定と同時に、前売り注文に出す品種は市場へ送信されます。この仕入れが何日ぶんかを、画面の上に常に表示します。

仕入れ表
設計のポイント
予測を眺める画面にしない。17時の締切つきで、品種別の本数と上限単価を確定して前売り注文まで送る画面にする。
確定と予測を分ける
注文・活け込み・納めの確定ぶんを緑で先に固め、幅を当てるのは店頭ぶんだけ。どこからが予測かを隠さない。
上限単価の役割
セリの値段は行ってみないと分からない。上限と差し替え先を決めておけば、市場で迷う場面が減る。

02. 最後のセリで買う7日ぶんを、日別に割って決める

盆・彼岸・年末の前だけ使う画面です。一度に背負う7日間の店頭の売れ方を日別の幅で示し、13日の山と天気予報、取り置きと注文の確定ぶんを並べます。品種の構成は日持ちで前半と後半に分かれ、去年の同じ行事の仕入れ・廃棄・切らした時刻と、そのときの相場も同じ画面で確かめられます。

盆・彼岸の計画
設計のポイント
合計の束数ひとつにまとめない。13日に切れるのと16日に余るのは、合計が同じでも別の失敗になるため。
日持ちで組む
後半に売るぶんは夏でも1週間もつ菊類で組み、日持ちの短い洋花は13日までに売り切れる本数で止める。
相場への備え
品種ごとに上限単価と差し替え先を決めておく。上限を超えたら、本数を削らず品種を振り替える。

03. 残りの本数と入荷からの日数を、売り場で見る

レジ横のタブレットで毎日開く画面。品種ごとにケースの残り本数、入荷日からの経過日数と日持ちの目安、けさからの出た数が並びます。売れるペースが予測の幅を超えると、切れる時刻の見込みと打ち手の候補が出ます。売り切れ・値下げ・廃棄はボタンひとつで時刻つきの記録になります。

店頭在庫
設計のポイント
盆の売り場は忙しい。記録は品種のボタンを押すだけにして、時刻は自動で付ける。文章は書かせない。
切れそうなときの打ち手
仏花の組みを小菊3本から2本+スプレー菊1本に変える、のような組み替え候補まで画面が出す。決めるのは店主。
経過日数の見え方
入荷日からの日数を品種の日持ちの目安と並べて出す。値下げの判断を、見た目の記憶だけに頼らせない。

04. 確定した本数の出どころを、一覧で持つ

供花・アレンジ・取り置きの注文と、定期の活け込み・お寺への納めの一覧です。受取日と花材の本数が仕入れ表へ自動で入るので、注文を取るほど予測に頼る範囲が狭くなります。盆の注文の積み上がりは去年の同じ時点と比べられ、計画画面の参考になります。

注文・定期
設計のポイント
注文は確定を増やす打ち手として扱う。電話で受けたら受取日と内容をここへ入れるだけで、仕入れ表に反映される。
突発の注文の扱い
葬儀の供花は予測しない。受けた時点で確定として表へ入り、足りないぶんは仲卸での当日調達で埋める。
積み上がりの比べ方
受付開始から何日目かでそろえて去年と重ねる。盆の日付は毎年同じでも、曜日の並びが違うため。

05. 廃棄額と、売り逃しの推計を同じ画面に並べる

月に一度見る画面です。品種別の仕入れ・売れ・廃棄額・値下げの目減りと、売り切れ後の来店からの推計が並びます。盆のあった月は、山のふりかえりと来年への直しがここに残ります。実績が幅に収まった日の割合を品種別に出し、幅と倒す方向を毎月直します。

月次レポート
設計のポイント
廃棄と売り逃しを同じ画面に並べる。捨てた花は目に入るが、買えずに帰った客は数えなければ残らない。
廃棄額の出し方
本数にその日の仕入単価を掛ける。「相場の高い日に外した廃棄は重い」が金額でそのまま見える。
直しの残し方
「来年の盆は小菊を1ケース増やす」のような直しを、行事とセットで残す。翌年の計画画面に引用される。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、店の決め方が3つの点で変わる想定です。

01

山の仕入れが、記憶ではなく去年の数字から始まる

Before盆の仕入れは「去年もこのくらい買ったはず」で決めていた。何本捨てて、何時に何を切らしたかは、どこにも残っていない。
After品種別の仕入れ・売れ・廃棄・切らした時刻・その年の相場が行事ごとに残り、翌年の計画はその画面を開くところから始まる。

盆と彼岸は年に3回しか来ないので、記録が厚くなるまで数年かかります。始めるのが早いほど、効き始めも早くなります。

02

注文が増えるほど、予測の持ち場が狭くなる。

Before注文の花と店頭の花を分けずに仕入れていたので、注文をこなすと店頭が薄くなり、どちらが原因で切れたのかも分からなかった。
After注文・納め・活け込みは受取日つきで仕入れ表に自動で入り、幅のある予測が当たるのは店頭ぶんだけになる。

確定は、増やしにいける数字です。盆の注文の受付を早めに案内するだけで、予測に頼る範囲は目に見えて狭くなります。

03

捨てた花と売り逃した客が、同じ画面で数字になる。

Before廃棄は「花屋だから仕方ない」の一言で終わり、切らした日のことは覚えているのに、比べる数字がなかった。
After廃棄は本数×その日の仕入単価の金額で、売り逃しは売り切れ時刻とその後の来店からの推計で、月次レポートに並ぶ。

両方を並べて初めて、幅をどちらへ直すかが品種ごとに決められます。感覚の代わりに、毎月の数字で直していきます。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌市内なら店舗へ伺い、道外はオンラインで進めます。秋の彼岸を並行運用の期間にはさみたいので、8月に始めて10月に納める約2ヶ月を想定します。区切りごとに実際に触れるものをお渡しし、店で使ってみた感想を次の作業へ反映します。

1
MONTH 01 / 記録の復元 + 品種台帳づくり

レジと市場の伝票1年ぶんから、この店の数字を起こす

レジの売上と市場の仕入伝票を1年ぶんさかのぼり、品種別の売れ方と仕入単価の動きを復元します。あわせて品種ごとの日持ちの目安・上限単価・差し替え先の一覧を店主と作り、注文・活け込み・納めの確定ぶんを棚卸しします。締切を17時に置けるかは、夕方の店の実務を見てから決めます。

  • 店舗でのヒアリング(2〜3回)
  • レジと仕入伝票1年ぶんの整理
  • 品種台帳(日持ち・上限単価・差し替え先)の初版
  • 注文・定期・納め先の棚卸し
2
MONTH 02 / 予測の実装 + 秋の彼岸での検証

5画面を作り、彼岸で1回使ってから納める

曜日・天気・暦から店頭ぶんを品種別の幅で出す予測を組み、仕入れ表・盆彼岸の計画・店頭在庫・注文定期・月次レポートの5画面を開発します。前半は並行運用(2週間)でいまの決め方と並べて確かめ、秋の彼岸で計画画面を実際に使います。彼岸明けに幅と倒す方向を調整し、月次レポートの初回を一緒に見てから納品します。

  • 店頭ぶんの予測の試作と幅の調整
  • 5画面の開発
  • いまの決め方との2週間の並行運用
  • 秋の彼岸での検証 + 納品

FAQ

よくある質問

  • Q1 盆や彼岸は年に数回しかありません。データが足りないのでは?
    その日の売れ数だけを学習の材料にするなら、足りません。そこは隠さずお伝えします。だからこの設計では、山の根拠を売れ数の履歴だけに置かず、注文の積み上がり、暦と曜日と天気による日別の割れ方、去年の行事の記録の3つに分けて持ちます。初年度の幅は広めに出し、多め側へ倒すのは逃げ道のある菊類だけに絞ります。回を重ねるごとに行事の記録が厚くなり、幅は狭められます。
  • Q2 セリは行ってみないと値段が分かりません。表のとおりに買えますか?
    全部そのとおりには買えません。買えない日があることを前提にした表にします。品種ごとに上限単価と差し替え先を決めておくのはそのためで、上限を超えたら小菊からスプレー菊へ、のように品種を振り替えて本数を守ります。値段の確実さが要る品種は、単価は高くても前売りの注文取引で先に固めます。セリで安く買う品種と、注文で確実に押さえる品種の使い分けまで含めて、仕入れ表の設計です。
  • Q3 仲卸やネットの仕入れも使っています。それでも合いますか?
    合います。仕入れ表の中身は変わらず、締切と受け取りの日が仕入れ先ごとに変わるだけです。ネットの前売りは前日の締切時刻、仲卸は当日の買い足し、と仕入れ先ごとの締切を表が持ちます。むしろ日持ちの短い洋花を当日に買い足せる仲卸があるなら、洋花を少なめ側で買う設計はより安全になります。最初の月の棚卸しで、どの品種をどこから仕入れているかから整理します。
  • Q4 葬儀の供花のような突発の注文は、どう扱いますか?
    予測しません。いつ入るか分からないものを幅で当てようとすると、幅がただ広がるだけだからです。供花は受けた時点で確定として仕入れ表へ入り、店の在庫で足りないぶんは仲卸での当日調達で埋めます。予測の仕事は、暦と曜日で動く店頭ぶんだけ。突発を予測の外に置くのは、この設計全体で通している原則です。

「去年もこのくらい」を、品種別の仕入れ表に。

盆の仕入れの記録は、いまは店主の記憶の中にしかありません。
品種別の売れ方と相場の動きは、レジの記録と市場の伝票から復元できます。
品種と日持ちの一覧づくりから、ご相談ください。