EvoQuest
EvoQuest AI需要予測AI 2026.08

SCENARIO ── PHARMACY WORKLOAD CASE

処方箋の山は、隣の医院で決まる。
薬局が動かせるのは、仕事の置き場所だけ。

札幌市内、内科医院の門前にある調剤薬局を想定します。管理薬剤師とパート薬剤師、医療事務2人。処方箋は1日45枚前後で、9割は隣の医院から来ます。午前の診察が引けると11時から13時に山が来て、夕方の診察のあとにもう一度来る。月曜と連休明けは60枚を超えます。この波は薬局の側では動かせません。診察の予定を組んでいるのは医院だからです。いっぽう薬局の中には、いま渡す必要のない仕事がまとまってあります。施設26名ぶんの一包化は配達日まで2日ある。あす来る見込みの定期患者の薬は、朝のうちに取りそろえておける。この開発プランの中心は、レセコンに残る受付時刻の記録から時間帯別の処方箋の枚数をAIが幅で予測し(EvoQuest AI)、急がない仕事を山の外に配置した「あすの段取り表」を前日18時半に確定する仕組みです。決めるのは管理薬剤師で、画面はEvoQuest Appsのアプリ開発と組み合わせて、調剤室のパソコンで毎日使える形にします。

想定領域
処方箋の繁閑予測AI / 調剤薬局の業務改善
担当範囲
要件整理・データ整備・予測AI設計・画面設計・実装
想定対象
医院の門前で薬剤師2人・事務2人が回す調剤薬局(処方箋 1日40〜60枚規模)
想定期間
設計〜納品 約 3 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

調剤薬局とAIで検索して出てくるのは、医薬品の在庫と発注のシステムです。どの薬を何錠仕入れるかを予測するサービスはすでに複数あり、薬歴の入力を助けるAIもあります。いっぽうで、処方箋がいつ何枚来るかという波を予測して、人と仕事の段取りに落とす仕組みは見当たりません。あるのは患者向けの「薬局が混む時間帯」の解説と、経営向けの計数管理の記事が「1時間あたりの枚数まで見るとシフトの組み方が変わる」と指摘するところまで。指摘のとおりで、そこから先が仕組みになっていません。

門前薬局の忙しさには、ほかの商売と違う事情が2つあります。ひとつは、山を自分で動かせないこと。処方箋は医院の診察が終わった人から順に来るので、薬局の山は医院の山の30〜60分後ろにできます。飲食店なら予約を分散させる、クリニックなら健診の枠を空いた日に移すという手がありますが、薬局には需要の側を動かす手段がありません。人を増やす手も限られます。調剤には薬剤師の資格が要り、処方箋1日平均40枚につき薬剤師1人という決まりもあるので、「混んだから今からもう1人」ができない仕事です。

もうひとつは、急ぎの仕事と急がない仕事が、同じ手と同じ機械を取り合っていること。窓口で待っている患者の調剤は10分が勝負です。ところが施設の一包化は配達日まで2日あり、納品された薬の検品は今週中で構いません。締切がまるで違うのに、置き場所を決めていないので、急がない仕事が山の時間に流れ込み、夕方に窓口を待たせて、閉局後の残業で帳尻を合わせることになります。動かせないものを予測して、動かせる仕事を山の外へ置く。この開発プランがやるのはそれだけです。

CHALLENGE

課題

  • 01 混む時間が、隣の医院で決まる。月曜の午前と連休明けに山が来ることは、薬局の全員が知っている。医院の休診カレンダーを見れば谷も分かる。分かっているのに、段取りは毎日同じで、山の日も谷の日も同じ順番で仕事をしている。
  • 02 枚数を数えても、忙しさが分からない。ふつうの錠剤の処方箋は数分で終わるが、一包化は分包機と鑑査で1件20〜40分かかる。同じ45枚でも、一包化が3件入る日はまったく別の日になる。薬剤師1人あたり40枚という決まりも、枚数でしか数えていない。
  • 03 締切の違う仕事が、同じ分包機を取り合う。窓口で待っている患者の一包化はいま必要で、施設26名ぶんの一包化は配達日まで2日ある。急がないほうをいつやるかを決めていないので、気がつくと山の時間に分包機が施設のぶんで塞がっている。
  • 04 あす来る患者の半分は、薬歴を見れば見込みが立つ。28日処方の定期の患者は、前回の来局日に28を足した日の前後に来る。取りそろえを朝のうちに済ませておける相手なのに、そのリストを作る時間が誰にもなく、全員をその場で受けている。
  • 05 待たせた記録が、どこにも残らない。「後で取りに来ます」と言った患者は預かりの処方箋の束になるだけで、待たせて帰した数としては数えられない。閉局後に分包機を回した残業も、施設のぶんとして月末の給与に紛れる。損の側の数字がないので、段取りを直す話が始まらない。

APPROACH

アプローチ

動かさない一点は、前日18時半の段取り表です。あすの時間帯別の処方箋の枚数と、山の外に置く仕事の割り付けをここで確定します。締切を前日の夕方に置くのは、情報が締まる時刻だからではありません。あすの朝、開局前の30分がこの薬局の最大の空き時間だからです。定期患者の取りそろえも施設の分包も、その30分を使うには前の晩にリストが決まっている必要があります。朝、処方箋が来始めてから考えたのでは、空き時間はもう終わっています。

予測の前に、先に決まっている仕事を予測の外に出します。施設の定期処方は日付も人数も確定しています。在宅の訪問は曜日で決まっています。FAXやアプリで先に届いた処方箋は、もう手元にあります。さらに定期の患者は、前回の来局日と処方日数から再来の見込みが立ちます。AIの幅の予測が受け持つのは、残りの医院の外来ぶんだけです。材料はレセコンに残っている受付時刻の記録で、これは開局初日から全部貯まっています。曜日、祝日の並び、医院の休診カレンダー、季節の流行を突き合わせると、時間帯ごとの枚数の幅が出ます。

枚数と別に、手間の重い処方の件数を予測します。一包化・粉砕・軟膏の混合は、枚数の上では1枚でも、手の上では10枚ぶんです。ここでも定期の見込みが効きます。一包化の患者はほとんどが定期なので、あすの一包化が何件になりそうかは薬歴からかなり分かります。分包機の予定は締切から逆算して組みます。施設のぶんは配達日の2日前に処方箋が届くので、あいだにある谷、たとえば医院が休診の木曜午後に割り付けます。

予測は外れる前提で組みます。定期患者の予製は取りそろえまでにして、分包はしません。処方が変わったり来なかったりしたら、棚へ戻すだけで済ませるためです。戻す期限は見込み日から4日と決めておきます。外来の山が幅の上に出た日は、施設の分包を途中で止めて窓口に戻ります。施設のぶんには2日の余裕を残してあるので、止めても配達には間に合います。外れた日には理由を一言だけ残します。医院の代診、近くの学級閉鎖。それが次の予測の材料に戻ります。

効果は的中率の点数にしません。閉局後に分包機を回した時間、受付からお渡しまで20分を超えた人数、「後で取りに来ます」の件数、開局前に取りそろえが済んでいた日の割合。この4つを月次で並べます。残業と待ち時間はどちらもレセコンと機械の記録から拾えるので、数えるための新しい入力はほとんど増やしません。並んだ数字は、パート薬剤師の出勤時間を山に寄せる相談の根拠にもなります。

CONSULTATION

「夕方はいつもバタバタ」を、前日18時半の段取り表に。

処方箋の受付時刻は、レセコンが開局初日から全部記録しています。
山の形を数字にするところまでは、いまあるデータだけでできます。
まずは受付時刻の記録を一緒に眺めるところから、ご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。前日の夕方に締める段取り表を中心に、調剤室のパソコンで使う前提の構成です。薬局名・患者名・枚数・時刻はすべて想定例で、実在の薬局・医院・実績ではありません。

01. あすの処方箋の波と、山の外に置いた仕事を1枚で締める

毎日、前日の18時半に必ず開く画面。あすの時間帯ごとに、施設・FAX済み・定期の再来見込みの内訳と、外来ぶんの予測の幅が並びます。右には開局前の30分と昼の谷に割り付けた仕事が置かれ、確定ボタンを押すと予製リストが印刷されます。あすの一包化の見込み件数も、枚数とは別に上に出ます。

段取り表
設計のポイント
予測を眺める画面にしない。18時半の締切つきで、山の外に置く仕事まで割り付けて確定する画面にする。
確定と予測を分ける
施設・FAX済み・定期の見込みを先に固め、幅を当てるのは医院の外来ぶんだけ。どこからが予測かを隠さない。
締切の実体
18時半に締めるのは、あすの朝いちの空き30分を使うにはリストが前夜に要るから。締切には理由を書いておく。

02. あす来る見込みの定期患者を、開局前に取りそろえる

朝いちで開く画面。前回の来局日と処方日数から、きょう来る見込みの定期患者が並びます。2回続けて処方が変わっていない患者だけが取りそろえの対象になり、前回変更のあった患者は対象から外れます。取りそろえは分包せず、処方箋を受けたら鑑査だけで渡せる状態で止めます。

予製リスト
設計のポイント
予製は取りそろえまで。分包はしない。処方が変わっても来なくても、棚へ戻すだけで済む深さで止める。
見込みの立て方
前回来局日+処方日数の前後2日を見込みの窓にする。28日処方は月の同じ週に来るので、窓はかなり狭い。
戻す期限
見込み日から4日来なければ棚へ戻す。処方箋の有効期限と同じ長さにして、迷う余地を残さない。

03. 一包化の仕事を、締切から逆算して谷に置く

分包機を使う仕事の割り付け画面です。施設の一包化・在宅・外来の定期で見込まれる一包化が、今週の半日ごとの枠に締切つきで並びます。施設26名ぶんは配達日の2日前に処方箋が届くので、医院が休診の木曜午後が定位置になります。山の時間帯に未配置の一包化が残っていると印が出ます。

分包機の予定
設計のポイント
分包機は1台しかない。窓口の一包化がいつ来てもいいように、施設のぶんは止めても配達に間に合う枠に置く。
割り込みのルール
窓口の一包化が来たら施設のぶんを止めて先に受ける。この順番を画面に書いておき、人によって迷わせない。
締切の見え方
仕事ごとに「金曜8時半の配達まで」のような締切を出す。急がない仕事に締切がないから山に流れ込む。

04. 連休明けの山と薬剤師の体制を、2週間先まで重ねる

医院の休診カレンダー・施設の定期日・パート薬剤師の出勤時間の上に、日ごとの枚数の予測の幅を重ねた画面です。連休明けが薬剤師1人の時間帯に重なる日や、施設の配達日が山とぶつかる日に印が付き、出勤時間の相談や配達の前倒しを、間に合う日付のうちに決められます。

月間見通し
設計のポイント
日々の段取りで吸収できない山は、シフトと配達日の側を動かす。その相談に間に合う時期にこの画面を見る。
40枚の線
薬剤師1人あたり1日平均40枚という決まりの線を画面に引き、超える見込みの日を体制の相談ごととして出す。
施設の置き直し
連休で施設の受領日や配達日がずれる月は、分包の割り付け案が日付つきで出る。山の日へ持ち越さないのが前提。

05. 残業と待たせた数を、段取りを直す材料にする

月に一度見る画面です。閉局後に分包機を回した時間、お渡しまで20分を超えた人数、「後で取りに来ます」の件数、開局前に取りそろえが済んでいた日の割合が並びます。曜日別の内訳と、予測の幅から外れた日の理由の記録から、幅と仕事の置き場所を翌月に向けて直します。

月次レポート
設計のポイント
残業と待たせた数を同じ画面に並べる。残業は給与に紛れ、待たせた数はどこにも残らないままだから。
数え方
待ち時間はレセコンの受付とお渡しの時刻から、残業は分包機の稼働記録から拾う。新しい入力を増やさない。
シフトの根拠
曜日別の山とずれの記録は、パート薬剤師の出勤時間を直す相談にそのまま使える数字になる。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、薬局の1日が3つの点で変わる想定です。

01

急がない仕事が、山の時間帯から消える

Before施設の一包化も検品も、手が空いたときにやる仕事だった。手が空くのは夕方の山のあと、つまり閉局後で、残業で帳尻を合わせていた。
After締切のある仕事は谷の枠に割り付けられ、施設の分包は医院が休診の木曜午後が定位置になる。閉局後に分包機を回す日が減る。

窓口の波そのものは残るので、残業はゼロにはなりません。締切に余裕のある仕事から順に、山の外へ出していく設計です。

02

あす来る患者の半分が、朝の時点でリストになっている

Before定期の患者も一見の患者も、処方箋を受けてから棚に向かっていた。混む時間帯ほど、毎月来る患者の調剤にも同じ時間がかかった。
After定期の再来見込みが前夜にリストになり、開局前の30分で取りそろえが済む。山の時間帯は、その日でないと分からない処方に手を集められる。

見込みが外れる日はあります。取りそろえは分包まで進めず、棚へ戻せる深さで止めるのが前提です。

03

待たせた数と残業が数字になり、シフトの相談に根拠がつく

Before「夕方がきつい」は全員の実感なのに、数字がないので、パートの出勤時間の相談は「なんとなく大変そうだから」で止まっていた。
After20分超の人数と閉局後の分包時間が曜日別に並び、どの曜日の何時に人が足りないかを数字で話せる。40枚の線を超える見込みの日も先に見える。

シフトを動かすのは月単位の話なので、効き始めはゆっくりです。まず数字が貯まり、翌月の相談から変わり始める想定です。

PROCESS

3ヶ月の進め方

札幌市内なら薬局へ伺い、道外はオンラインで進めます。処方箋の受付時刻はレセコンに最初から残っているので、データ集めの期間は要りません。3ヶ月の想定で、区切りごとに実際に触れるものをお渡しします。

1
MONTH 01 / 業務ヒアリング + 受付時刻データの棚卸し

レセコンの記録から、この薬局の山の形を起こす

調剤室に半日お邪魔して、処方箋が来てからお渡しまでの流れと、分包機・鑑査・監査の実際を見せてもらいます。レセコンから受付時刻の記録を1年ぶん取り出し、時間帯別・曜日別の山の形を管理薬剤師の実感と突き合わせます。あわせて施設・在宅・定期患者の台帳と、手間の重い処方の分類を作ります。

  • 調剤室での半日の見学と聞き取り
  • レセコンからの受付時刻データの取り出しと整理
  • 施設・在宅・定期患者の台帳づくり
  • 一包化・粉砕・混合など手間の重い処方の分類
2
MONTH 02 / 予測の試作 + 段取り表・予製リストの開発

先月の毎日を予測させて、ずれを一緒に確かめる

曜日・祝日・医院の休診カレンダー・季節を材料に時間帯別の枚数の予測を試作し、先月の実績とどれだけずれたかを検証します。幅の広さはここで薬局と一緒に決めます。並行して段取り表・予製リスト・分包機の予定の3画面を開発し、18時半の締切が夕方の実務に置けるかを確かめて時刻を調整します。

  • 過去データでの予測の検証と幅の調整
  • 段取り表・予製リスト・分包機の予定の開発
  • 締切時刻の妥当性の確認(夕方の波との兼ね合い)
  • 動くサンプルを薬剤師・事務と一緒に確認
3
MONTH 03 / 並行運用 + 納品

いつもの回し方と3週間並べて、置き場所を直す

これまで通りの回し方を続けながら、段取り表と予製リストを横に置いて3週間使います。見込みから外れた日の理由を拾って幅を直し、予製の対象にする患者の条件と棚戻しの運用を現場に合わせて調整します。月間見通しと月次レポートを仕上げ、残業と待ち時間の数え方のルールを決めて引き継ぎます。

  • いつもの回し方との並行運用(3週間)
  • 外れた日の理由の反映と幅の手直し
  • 予製の対象条件と棚戻し運用の調整
  • 月間見通し・月次レポートの仕上げと納品

FAQ

よくある質問

  • Q1 医院から予約や外来の情報をもらうのですか。
    もらいません。医薬分業のたてまえがあるので、医院の中のデータに頼る設計にはしません。材料は、薬局のレセコンに残っている受付時刻と処方内容の記録、医院が公開している診療カレンダー、それに暦と季節です。門前薬局なら処方箋の9割が同じ医院から来るので、自分の側の記録だけで医院の波はかなり再現できます。医院の急な休診や代診のような、記録に出ない事情だけを手入力で足します。
  • Q2 どのくらい当たるのですか。
    予測は「月曜午前 26〜34枚」のような幅で出し、実績がその幅に収まるかで見ます。1枚単位の的中を約束する売り方はしません。作る途中で、先月の毎日を予測させて実績と並べる検証を必ずやり、その結果を見てから幅の広さを一緒に決めます。それと、この設計は外れた日の損が小さくなるように組んであります。予製は棚へ戻すだけ、施設の分包は止めても配達に間に合う枠に置く。当てることより、外れても壊れない置き方を優先しています。
  • Q3 予製した患者が来なかったら、無駄になりませんか。
    取りそろえまでで止めているので、棚へ戻すだけです。分包や調製まで進めると戻せなくなるため、そこまではやりません。戻す期限は見込み日から4日と決めておき、期限が来たらリストが教えてくれます。動くのは薬の置き場所だけで、薬そのものは減りません。対象も、2回続けて処方が変わっていない定期の患者に絞るので、空回りの数自体が少なくなる想定です。
  • Q4 在庫管理や発注のAIとは違うのですか。
    違います。どの薬を何錠仕入れるかを予測するシステムはすでに複数の会社から出ていて、お使いならそのまま併用できます。この開発プランが扱うのは薬の量ではなく、処方箋が来る時間の波と、人と分包機の段取りです。同じ薬局の中の話ですが、予測する対象がまったく別で、既製品が見当たらないのはこちら側です。
  • Q5 うちは門前というより、近くのいくつかの医院から処方箋を受けています。それでも使えますか。
    使えます。医院ごとに診療カレンダーと波の形を持ち、足し合わせる作りになるだけです。ただ、処方箋の出どころが散らばるほど波の説明がつきにくくなるので、幅は門前の薬局より広めに出ます。最初の月の棚卸しで、どの医院からの処方箋が何割かを数えるところから始めて、効きそうかどうかを検証の数字でお見せしてから先へ進みます。

「夕方はいつもバタバタ」を、前日18時半の段取り表に。

処方箋の受付時刻は、レセコンが開局初日から全部記録しています。
山の形を数字にするところまでは、いまあるデータだけでできます。
まずは受付時刻の記録を一緒に眺めるところから、ご相談ください。