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需要予測・AI

薬局は、どの薬を何箱頼むか。次回来局の見込みと包装単位から発注量を出す

薬の発注量は、次の納品までに来局する見込みの患者の処方量を足し、手元の在庫と発注済みの分を引いてから、包装単位で箱数にします。開封した箱は返品しない前提で、残る端数が何日分になるかも確かめます。調剤薬局の管理薬剤師・経営者向けの記事です。

この記事でわかること

  • 多くの患者に出る品目は、1日あたりの調剤量の平均と幅から発注量を決めます。数人の患者にしか出ない品目は、患者ごとの次回来局の見込み日と処方量を並べて足します。
  • 次回来局の見込み日は「前回の調剤日+処方日数」で出せます。療担規則は投薬量を予見できる必要期間に従うものとし、処方箋の使用期間を交付の日を含めて4日以内としています。
  • 箱数は、必要量から手元の在庫と発注済みの分を引いた不足分を、包装単位で割って切り上げます。流通改善ガイドラインは開封した医薬品の返品を慎むよう求めているため、箱を開けたあとの端数は薬局の在庫として残ります。
  • 限定出荷・供給停止の品目は、厚生労働省が一覧で公表しています。同じガイドラインは、供給が不足しているときは過剰な発注を控え、当面の必要量に見合う量だけを購入するよう求めています。
  • 最初は動きの遅い品目10品目ほどを選び、患者ごとの次回来局の見込み日をExcelに並べるところから始められます。

発注する箱数は、必要量から在庫を引き、包装単位で割って出す

1品目の発注量は、4つの数字で決まります。次の納品までに調剤する見込みの錠数、手元の在庫、発注済みでまだ届いていない数、包装単位(1箱に入っている錠数。100錠、500錠など)です。必要量から在庫と発注済みの数を引いた不足分を包装単位で割り、端数を切り上げた数が発注する箱数になります。

難しいのは、1つ目の「調剤する見込みの錠数」です。この数の出し方は、その薬が何人の患者に出ているかで変わります。毎日のように多くの患者に出る品目は、過去の1日あたりの調剤量から平均と幅を出し、在庫がいくつになったら発注するかの基準(発注点)を決めておく方法が使えます。考え方は発注点と安全在庫の記事に書いています。

いっぽう、特定の数人の患者にしか出ない品目は、1日平均で考えると判断を誤ります。28日分や56日分をまとめて受け取る患者が1人来るだけで、その日の調剤量が平均の何十倍にもなるからです。この記事では、こうした品目を患者ごとに積み上げて発注量を出す手順を説明します。

数人にしか出ない薬は、患者ごとの次回来局の見込み日と処方量を並べる

保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第20条は、投薬量は予見することができる必要期間に従ったものでなければならないとしています。定期的に同じ薬を受け取る患者なら、前回の調剤日に処方日数を足した日の前後に、次の処方箋を持って来る見込みが立ちます。

見込み日にはずれが出ます。同じ条文は、処方箋の使用期間を交付の日を含めて4日以内としているため、受診した日から最長で数日遅れて来局することがあります。リフィル処方箋(3回まで繰り返し使える処方箋)の2回目以降は、前回の使用による必要期間が終わる日の前後7日以内が使用期間です。見込み日は1日に決めず、前後の日数を持たせて扱います。

使う記録は、レセコンの調剤履歴にある患者ごとの調剤日・品目・1日量・処方日数です。これを品目ごとに並べ、次の納品までに見込み日が来る患者を拾います。拾った患者の「1日量×処方日数」を足したものが、その期間に調剤する見込みの錠数です。

この表から分からないこともあります。処方の変更、受診の間隔の変化、転院は、過去の記録には出てきません。見込み日を過ぎても来局しない患者や、前回と処方が変わった患者は、発注の前に管理薬剤師が確かめてください。同じ条文にある通り、厚生労働大臣が定める一部の薬は1回に処方できる量が14日分・30日分・90日分までと決まっているので、処方日数が区切られる品目もあります。

試算例:1日2錠・1日1錠の患者が次の7日間に3人来るとき、100錠箱を何箱頼むか

ここからは架空の薬局・品目での試算例です。ある錠剤(以下A錠)には、1箱100錠(10錠×10シート)と、1箱500錠(バラ)の2つの包装があるとします。今日発注すると、次の定期の発注分が届くまでの7日間をこの発注でまかなう前提です。

調剤履歴から、この7日間に次回来局の見込み日が来る患者は3人でした。1日2錠・28日分の患者が56錠、1日1錠・30日分の患者が30錠、1日2錠・56日分の患者が112錠で、合計198錠です。見込み日が8日目以降の患者2人は、今回の計算に入れません。

手元の在庫は、開封済みの箱の残りが64錠です。発注済みで届いていない分はありません。不足分は198錠−64錠=134錠で、100錠箱なら2箱(200錠)になります。3人に渡したあとの在庫は、64錠+200錠−198錠=66錠です。500錠箱を1箱頼むと、同じ計算で366錠が残ります。

残る錠数が何日分かは、過去の調剤量で見ます。A錠の過去90日の調剤量が450錠(1日あたり5錠)なら、66錠は約13日分、366錠は約73日分です。100錠箱を1箱だけにすると164錠で34錠足りず、56日分の患者に全量を渡せません。その場合は、次の納品まで待ってもらうか、急ぎの配送を卸に頼むことになります。

必要量

次の7日間に見込み日が来る3人の「1日量×処方日数」の合計。56錠+30錠+112錠=198錠(試算例)。

不足分と箱数

198錠−在庫64錠−発注済み0錠=134錠。100錠箱で切り上げて2箱。

渡したあとに残る錠数

在庫64錠+入荷200錠−調剤198錠=66錠。過去90日の1日あたり5錠で割ると約13日分。

DEMO

患者の処方量と在庫を動かすと、何箱頼むかと、残る錠数がどう変わるか

患者ごとの1日量・処方日数、次の納品までに来る見込みかどうか、手元の在庫、発注済みの数を動かすと、100錠箱と500錠箱それぞれで頼む箱数と、渡したあとに残る錠数が変わります。

1品目の発注する箱数の試算|患者ごとの必要量の積み上げと包装単位

架空の薬局のA錠1品目で試す画面です。次の納品までに来局する見込みの患者の処方量を足し、在庫と発注済みの数を引いた不足分から、包装単位ごとの箱数と残る錠数を出します。

触って動かせます
計算の中身
必要量=次の納品までに来る見込みの患者の「1日量×処方日数」の合計。不足分=必要量−手元の在庫−発注済みの数。箱数=不足分÷包装単位(切り上げ)。残る錠数=在庫+発注済み+入荷−必要量。
使っている前提
包装単位は100錠と500錠の2つ。残る錠数の日数は、過去90日の調剤量を90で割った1日あたりの量で換算します。錠数・人数はすべて架空の入力例です。
確かめてほしいところ
56日分の患者を「来る見込み」から外すと、100錠箱の箱数が変わることを見てください。

※ 薬局・品目・患者・錠数はすべて架空の入力例です。

大きい箱にするか小さい箱にするかは、開けたあとの端数で決める

包装単位は、薬ごとに添付文書の「包装」の欄に書かれています。厚生労働省の記載要領の留意事項は、包装形態に応じた単位ごとの個数を書き、シート包装では1シートあたりの個数とシート数が分かるように、バラ包装品ではその旨を書くよう定めています。同じ成分・規格でも、包装の選び方で発注の単位が変わります。

「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」(令和6年3月改訂)は、卸と保険薬局の双方が慎む返品として、開封された医薬品の返品と、在庫調整を目的とした返品を挙げています。箱を開けた時点で、残りは薬局が使い切るか、別の方法で動かす在庫になります。

そのため、包装の大きさは「開けたあとに残る錠数が何日分か」を使用期限と並べて決めます。試算例の366錠・約73日分なら、その間に患者の処方が変わったり、転院したりしないかも考えに入れます。動かなくなった在庫の扱いは薬局の不動在庫の記事に書いています。

限定出荷の薬は、多めに確保せず当面の必要量だけを頼む

厚生労働省は、製造販売業者から届出を受けた供給状況を「医療用医薬品供給状況」として一覧で公表しています。令和8年9月25日現在の一覧に載っている16,403品目のうち、「出荷対応」が限定出荷の品目は983(自社の事情493、他社品の影響416、その他74)、供給停止は929でした。限定出荷は全ての受注に対応できない状況、供給停止は供給を停止している状況と定義されています。

同じ流通改善ガイドラインは、供給量が不足しているときは、必要な患者に必要な医薬品が行き渡るよう、過剰な発注を控え、当面の必要量に見合う量のみを購入するよう求めています。保険薬局には、自らの店舗で不足している医薬品を、系列店舗や地域の連携で調整するよう努めることも求めています。

患者ごとに積み上げた必要量は、この「当面の必要量」を説明する数字になります。一覧にはYJコードが載っているので、自分の薬局の採用品目と突き合わせ、限定出荷の品目だけは次の納品までの必要量で頼みます。足りない見込みの品目は、発注の前に卸と相談し、近隣の薬局との調整も並行して進めます。

多くの患者に出る品目は、日付と調剤量の記録から見込みを出す

患者ごとの積み上げは、数人にしか出ない品目や、限定出荷の品目で使う方法です。毎日多くの患者に出る品目まで同じことをすると、拾う患者が多すぎて手間に見合いません。こうした品目は、過去の日付と1日あたりの調剤量の並びから、曜日や季節の増減を反映した見込みを出し、その幅で発注点を決めます。

当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列のCSVから、28日先までの日ごとの予測を幅つきで出す作りです。薬局で使う場合は、品目ごとの1日の調剤量を数量の列に入れます。見込みのどこで発注するか、処方変更や限定出荷をどう反映するかは、これまでどおり管理薬剤師が決めます。

Excelで始められる範囲と、仕組みにする目安

最初は、動きの遅い品目を10品目ほど選び、患者ごとの前回調剤日・1日量・処方日数・次回来局の見込み日をExcelに並べるところから始められます。発注の前に、次の納品までに見込み日が来る患者の分を足し、在庫を引いて箱数を出します。レセコンから調剤履歴を書き出せるかは、機種と契約で違うので販売元に確かめてください。

仕組みにするのを考える目安は3つです。品目が増えて、調剤履歴から患者を拾う作業が毎日の発注に間に合わない。限定出荷の一覧と採用品目の突き合わせを手でやっている。複数の店舗で在庫を融通していて、どの店に何錠あるかを電話で確かめている。どれかが続いているなら、相談の時期です。

当社は、多くの患者に出る品目の見込みを出す部分と、患者ごとの来局見込みと在庫を並べて箱数を出す画面の両方を相談できます。箱数を出す画面は調剤薬局の発注管理の開発プランで、患者ごとの積み上げ、限定出荷の一覧との照合、来なかった患者の理由を残す振り返りまでを設計しています。ほかの薬局の画面の例として、処方箋の繁閑予測の開発プランでは前回来局日と処方日数から定期患者の来局を見込む画面を、不動在庫管理の開発プランでは動かない在庫を拾う台帳を設計しています。費用と期間は、対象の品目数、店舗の数、レセコンから書き出せる項目、限定出荷の一覧との照合を入れるかを確かめると見積もれます。

Excelで足りる範囲

1店舗で、患者ごとに積み上げる品目が10〜20品目ほど。発注の前に表を更新する時間が取れる。

仕組みにする目安

上の3つの目安のどれかが続いているとき。とくに、患者を拾う作業が発注の締切に間に合わない日が出てきたら相談の時期です。

見積もりに必要なこと

最初の相談では、困っている品目の話だけで構いません。品目数や店舗の数は、話を聞きながら一緒に確かめます。

まとめ

発注する箱数は、必要量から手元の在庫と発注済みの数を引いた不足分を、包装単位で割って切り上げて出します。数人にしか出ない品目の必要量は、患者ごとの「前回の調剤日+処方日数」の見込み日と処方量を並べて足します。

開封した医薬品と在庫調整を目的とした返品は、流通改善ガイドラインが慎むよう求めています。大きい箱を選ぶときは、残る錠数が何日分かを使用期限と並べて確かめます。限定出荷の品目は当面の必要量だけを頼みます。

次にやることは1つです。動きの遅い品目を1つ選び、その薬を受け取っている患者全員の前回調剤日と処方日数から、次回来局の見込み日を書き出してみてください。

よくある質問

発注点を決めて機械的に頼む方法と、患者ごとに積み上げる方法は、どちらを使えばよいですか?

品目で使い分けます。毎日多くの患者に出る品目は、1日あたりの調剤量が安定しているので発注点で回せます。特定の数人にしか出ない品目や、長期処方の患者が1人来るだけで在庫が大きく動く品目は、患者ごとに積み上げます。1日平均では、長期処方の患者が来た日にまとめて出る量を表せないためです。どちらに入れるかは、過去3か月ほどでその薬を受け取った患者の人数を見て決めてください。

限定出荷になった薬は、手に入るうちに多めに確保しておいたほうがよいですか?

流通改善ガイドラインは、供給量が不足しているときは過剰な発注を控え、当面の必要量に見合う量のみを購入するよう求めています。次の納品までに来局する見込みの患者の分を積み上げ、その数量で卸に相談してください。足りない場合は、系列店舗や地域の薬局との調整も同じガイドラインが挙げている方法です。

1店舗だけの小さな薬局でも相談できますか?

できます。1店舗なら、まず困っている品目を数品目選び、患者ごとの来局見込みをExcelで並べるところからご一緒します。そのうえで、Excelのまま続けるか、見込みを出す部分だけを仕組みにするかを決めます。北海道内であれば直接お伺いし、道外の方にはオンラインで対応しています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

薬の発注量を、在庫と処方の記録から決めたい薬局のご相談を受けています

長期処方の患者が来るたびに在庫が足りなくなる、開けた箱の残りが棚に溜まっていく、限定出荷の品目をどれだけ頼めばよいか迷う。そんな状況から相談できます。どの品目を患者ごとに積み上げ、どの品目を過去の調剤量から見込むかを一緒に整理し、手元の記録で始められる範囲を確認します。資料が揃っていない段階でも構いません。

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