EvoQuest
EvoQuest FoodAI業務システム 執筆:水上貴洋(取締役) 2026.09

SCENARIO ── ORDER SHEET CASE

在庫と次の納品日を確認し
必要な発注量を決める

閉店後に在庫を入力し、納品までの使用量と予備在庫をもとに発注量を計算するアプリの開発案です。30席の洋食店で毎日14品目を確認する想定と約2ヶ月の進め方を紹介します。

想定領域
業務アプリ / 飲食店の発注量の決定
担当範囲
作業と記録の確認・管理画面の開発・導入時の説明
想定対象
席数30・厨房2名・仕入先4社の個人店(昼はランチ、夜はアラカルト)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

どんな仕組みをつくるか

品目ごとの在庫数と納品日を確認し、次の納品までに必要な発注量を決めるアプリです。発注書の送信は発注管理アプリ、月末の全品目の集計は棚卸アプリ、来客数から数量を計算する方法は来客予測の開発案で紹介しています。

在庫が一定量まで減ったら発注する定量発注法と、決まった周期で数量を確認する定期発注法を組み合わせます。中小企業基盤整備機構の起業マニュアルが示す標準化・ルール化の考え方をもとに、発注時刻・数量の計算方法・仕入先を品目ごとに登録します。

CHALLENGE

課題

  • 01 納品までに使う数量が発注計算に含まれていない。市場の休市日で納品が翌々日になる場合は、その間に使う食材も在庫から確保する必要があります。
  • 02 発注量を決める基準が店主にしか分からない。予約分や納品日を考慮する方法を共有できず、ほかの担当者が同じ数量を計算できません。
  • 03 余裕の置き方が全品目「多めに」で揃っている。日持ちする玉ねぎと2日で傷むレタスを同じ気持ちで頼んでいるので、廃棄が出るのはいつも日持ちしない側。農林水産省の推計では、2024年度の外食産業の食品ロスは70万トンで、事業系の合計は前年度より6万トン増えている。
  • 04 品切れの回数が記録されていない。廃棄と品切れを同じ基準で確認できず、予備在庫の量を見直す材料が不足しています。

APPROACH

課題への対応

閉店後に在庫数量を確認する品目を絞ります。この想定では、毎日使い、納品間隔より日持ちが短い14品目を対象にします。担当者が数量を入力すると、予約分と使用量の見込みを使って翌日の不足を確認します。

業者ごとの発注締切と配達曜日、店の定休日、市場のカレンダーから納品日を確認します。札幌市中央卸売市場の業務規程は、日曜日と水曜日、祝日、年始と大みそかを原則の休業日にしています。例外の週は市場が公表する年間カレンダーを取り込みます。納品までに現在の在庫から使う数量と、今回の発注で次の納品までに必要な数量を分けて計算します。発注量は、納品後に必要な使用量から納品時点の残りを引き、安全在庫を加えた数を、業者の発注単位に切り上げます。計算式を表示し、店主以外の社員も確認して確定できるようにします。

使用量の予測は下限・中央・上限を表示し、店主が品目ごとに採用する数量を選びます。最初は直近4週の同じ曜日の平均とばらつきを使い、予約で確定している数量は別に加えます。日持ちする品目は多め、日持ちしない品目は少なめにし、不足時に買い足す店も登録します。記録が3ヶ月たまった段階で、当社が開発中の手軽に使える需要予測AIの28日先までの予測へ変更できる構成にします。廃棄した食材の原価と、品切れで断った皿数に粗利を掛けた損失の推計を月に1回比較し、安全在庫を見直します。中小企業基盤整備機構の資料が示す受注機会と在庫費用のバランスを考えた適正在庫の考え方を、店の記録に合わせて使う想定です。

CONSULTATION

在庫確認と発注の手順を一緒に整理します

閉店後に棚を見て頼む発注を、店主以外の人にも任せたい。
休市の前夜に何が足りなくなるかを前もって知りたい。
直近の棚卸表と業者ごとの締め時間を見せていただくところからご相談ください。

SCREENS

主要画面

想定する主要画面です。閉店後に厨房で開くのは1枚目だけで、あとの4枚は頼む数の根拠を確かめるときと、月に1回の見直しで開く画面です。店名・業者名・品目・数量・金額はすべて席数30の洋食店の規模感に合わせた想定例です。

01. 当日の発注表

担当者が閉店後に14品目の在庫数を入力します。納品日・納品までの日数・使用量の見込み・発注点・発注量を表示します。休市日で納品が遅れる場合は、不足分の買い足しも確認できます。

毎晩開く画面
使い方のポイント
入力するのは残りの数だけ。頼む数は式で出るが確定ではなく、店主が行ごとに直せる。数量を直したときは、選んだ理由と変更内容が記録に残る。
発注量の選択
計算した発注量が予測範囲の下限・中央・上限のどれに近いかを表示し、品目ごとの方針と比較できるようにする。
状態の表現
持たせる日数ぶんが今の残りで足りない品目は、頼む数とは別に「あす買い足し」の印を出す。頼んでも間に合わないぶんを頼む数に混ぜない。

02. 納品日と発注締切の管理

業者ごとの配達日・市場の休市日・店の定休日を1週間のカレンダーで確認する画面です。今夜発注した場合の納品日、現在の在庫で対応する営業日数、今回の発注分が対象とする営業日数を表示します。発注締切と連絡方法も管理します。

一覧
使い方のポイント
市場のカレンダー・業者の配達曜日・店の定休日から納品までの日数を計算する。担当者が祝日による変更を確認できるようにする。
参照した資料
札幌市中央卸売市場の業務規程が定める休業日(日曜・水曜・祝日・年始と大みそか)を既定にし、例外の週は市場が公表する年間カレンダーで上書きする。
状態の表現
今回と次回の納品日を区別し、今回の発注で用意する営業日数を表示する。

03. 品目ごとの使用量の予測

品目を1つ選ぶと、直近14日の実際に使った数と、これから7日の見込みが幅で並ぶ。予約で確定しているぶんは幅とは別の色で上に積む。幅のどこで頼むかの設定とその日の理由(天気・近隣の催し)を残す欄がある。

見込み
使い方のポイント
予測の下限・中央・上限に合わせて発注した場合の余りと不足を表示し、店主が数量を選べるようにする。
予測が担当する範囲
予約の確定分は見込みに混ぜず、先に足す。幅が扱うのは確定していない来店ぶんだけ。
段階
最初は直近4週の同じ曜日の平均と上下の幅。記録が3ヶ月たまったら、日付と数量の2列のCSVから28日先までの幅を出す仕組みに置き換える。

04. 品目・発注点・予備在庫の設定

対象の14品目について、仕入先・発注単位・数え方・保存日数・代替品・不足時に買い足す店・安全在庫・予測範囲から採用する数量を登録します。納品日と使用量の見込みから再計算した発注点を確認できます。

設定
使い方のポイント
納品までの日数と使用量の予測から、発注が必要になる在庫数を毎晩計算して表示する。
数え方
開封済みの袋を0.5袋と数えるか1袋と数えるかを品目ごとに決めて残す。担当者による数え方のばらつきを抑えるための欄。
週1回の品目
毎晩数えない乾物・冷凍品はこの画面の下段にまとめ、数える曜日だけを持つ。

05. 廃棄・品切れの月次集計

品目ごとに、廃棄した食材の原価、品切れを記録した回数と断った皿数に粗利を掛けた額、実績が予測幅に収まった日数を並べる。右には余裕を動かす候補が出て、店主が採用するかを決める。

月次
使い方のポイント
品目ごとに廃棄額と品切れによる損失の推計を比較し、店主が予備在庫を増やすか減らすかを判断する。
記録の出どころ
廃棄は閉店後の数え入力から、品切れは発注表の「品切れを記録した」ボタンから。振り返りのために新しく入力する項目は作らない。
提案の扱い
「余裕を1kg減らしても切らさなかった」のような候補は出すが、採用する場合は店主が承認する。承認するまで設定は変わらない。

OUTCOME

この仕組みで改善したいこと

仕組みが運用に乗ったあと、この店の発注が3つの点で変わる想定です。効果は的中率ではなく、店主以外が頼めた日数と捨てた額・断った額で測ります。

01

担当者が変わっても同じ基準で発注量を計算する

今の作業店主が予約や納品日を考慮して数量を決めているが、計算方法を共有できていない。
導入後の使い方担当者が在庫数量を入力すると、確定済みの予約と納品日を考慮して発注量を計算する。社員が数量を確認し、変更する場合は理由を記録する。

店主以外が発注表を確定した日の割合とその翌日の品切れ回数を確認します。導入前の1ヶ月で、社員が発注した日の品切れ回数を記録して比較します。

02

休市日を含む納品までの必要量を確認する

今の作業休市日で納品が遅れる場合の必要量を担当者の記憶で判断している。
導入後の使い方火曜の夜の発注表に「水曜は納品なし」と出て、水曜ぶんが今の残りで足りない品目には買い足しの印がつく。必要な買い足しを前夜に判断し、手配できる。

数えるのは、休市日に発生した品切れの回数と当日の買い足しの回数です。買い足し自体をゼロにはせず、前夜に分かっていた買い足しと当日に気づいた買い足しを分けて数えます。

03

廃棄と品切れを比較し予備在庫を見直す

今の作業廃棄した食材も品切れで断った料理も十分に記録しておらず、余裕として持つ数量を見直せなかった。
導入後の使い方品目ごとに廃棄原価と、注文を断った皿数に粗利を掛けた損失の推計を月次で表示する。店主が両方を確認し、翌月の安全在庫を見直す。

廃棄額は閉店後の記録から、品切れは発注表のボタン操作から集計します。最初の3ヶ月で傾向を確認し、安全在庫の変更は4ヶ月目から検討します。

PROCESS

開発の進め方

札幌市内・近郊なら店へ伺い、道外はオンラインで進めます。数える品目が14で、レジや業者のシステムとはつながない範囲なので、設計から納品まで2ヶ月の想定です。

1
MONTH 01 / 業務打ち合わせ・品目と納品日の管理づくり

確認する品目と仕入先の納品日を決める

閉店後の発注を2晩確認し、店主が在庫・予約・納品日から数量を決める方法を伺います。棚卸表から在庫日数が納品間隔より短い品目を選び、業者4社の締切・配達曜日と店の定休日、市場の休市日を整理します。Excelの発注表で2週間試し、計算した量と実際の発注量、その差の理由を記録して安全在庫と数量の選び方を決めます。

  • 閉店後の発注の同行(2晩)と、頭の中で足している数の聞き取り
  • 棚卸表からの品目選定(在庫日数が納品の間隔より短い14品目)
  • 業者4社の締め時間・配達曜日・店の定休日・市場カレンダーの表づくり
  • Excelの発注表での2週間の並行運用と差の記録
2
MONTH 02 / 発注表・納品カレンダー・見込み・設定・振り返りの開発・実運用

休市日を含む発注を実際に試す

5つの画面を作り、閉店後の発注をExcelからアプリに移します。確かめるのは3つです。休市の前夜に持たせる日数が正しく出るか、祝日を含む週にカレンダーの表示が変わるか、店主以外の人が残りを入れて確定まで進めるか。月の後半に店主が休む夜を1回つくってもらい、社員だけで発注表を確定してもらいます。振り返り画面は、この月のデータで最初の1枚を一緒に見て、余裕を動かすのは翌々月からと決めて引き渡します。

  • 今夜の発注表・納品カレンダー・使う数の見込み・品目の設定・月次の振り返りの開発
  • 休市の前夜と祝日の週での納品日の確認
  • 店主が不在の夜に社員だけで確定する運用の確認
  • 最初の月次の振り返りを一緒に見る時間と設定変更の手順の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 レジに在庫の警告が付いています。それと何が違いますか?
    在庫が設定した発注点を下回ったときに知らせるレジやアプリもあります。ただし納品日が変わる週や予約のある日は、必要な在庫数も変わります。この開発プランは、納品日と使用量の見込みから発注点を毎晩計算します。お使いのレジに在庫警告の機能がある場合は、計算した発注点を反映できるか、機種と連携方法を確認します。
  • Q2 全部の品目を毎晩数えないと、意味がないのではありませんか?
    毎晩数えるのは、在庫日数が納品の間隔より短い品目だけで足ります。この店の想定では14品目で、閉店後の作業は数分です。乾物や冷凍品は週に1回、決まった曜日に数えて頼む側に回します。品目を選ぶ根拠は月末の棚卸で出す在庫日数なので、棚卸を続けていることが前提になります。棚卸の数字の出し方は棚卸の数字を次の発注に使うの記事に書いています。
  • Q3 需要予測の仕組みが無いと始められませんか?
    最初からAI予測を使う必要はありません。直近4週の同じ曜日の平均とばらつきに、予約の確定数を加えて始めます。閉店後の数量記録が3ヶ月ほどたまった段階で、曜日や季節の傾向を確認し、当社が開発中の「手軽に使える需要予測AI」の28日先までの予測へ変更する想定です。採用する数量は引き続き店主が決めます。
  • Q4 費用はどのくらいかかりますか?
    範囲を決めてから見積もります。費用が変わるのは3か所です。1つめは数える品目の数と業者の数で、この想定(14品目・4社)なら2ヶ月の範囲に収まります。2つめはレジや業者のシステムとつなぐかどうかで、つながない形なら残りの入力だけで動きます。3つめは見込みの出し方で、同じ曜日の平均で始めるか、最初から予測の仕組みを組み込むかで開発量が変わります。相談の場では、まず直近の棚卸表と業者ごとの締め時間を伺います。

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