EvoQuest
EvoQuest Food需要予測AI 2026.08

SCENARIO ── SELF-SERVICE UDON BOIL CASE

茹でるのに12分、もつのは20分。
釜前の判断は、1日に30回。

札幌郊外の幹線道路沿いにある、席数40のセルフ式のうどん店。注文を受けてから茹でていては列が流れないので、釜前の担当は客が来る前に茹で、水で締めた玉を番重に並べておきます。茹で上がりまで12分、締めた玉のコシがもつのは20分ほど。足りなければお客さまを待たせ、多ければ捨てるしかありません。次の釜に何玉入れるか。この判断が昼のあいだにおよそ30回あり、いまは店長の勘だけで回っています。15分刻みの客数予測で次の釜の玉数を提案し、確定・廃棄・玉切れの記録までを、EvoQuest Foodの業務システムとしてこう設計します。

想定領域
ゆで玉数の予測 / 飲食店の業務改善
担当範囲
要件整理・予測設計・画面設計・実装
想定対象
席数40ほどのセルフ式うどん店(昼中心・自家製麺)
想定期間
設計〜納品 約 2 ヶ月

OVERVIEW

プロジェクト概要

セルフのうどん店は、提供の速さで成り立っています。食券を買い、麺を受け取り、天ぷらを取って席に着くまで、列が流れ続けるのが前提の商売です。その速さを支えているのが茹で置きで、釜前の担当は客が来る前に茹で始めます。注文ごとに釜をかけていたら、この列は作れません。

ところが、茹で置きには寿命があります。締めた玉のコシは、20分ほどで落ちます。この店では上げてから20分たった玉は捨てると決めており、多く茹でた分はそのまま廃棄になります。逆に足りなければ、次の釜が上がるまで最長12分、麺の受け渡しが止まります。セルフの列は途中で止まると全体が止まるので、駐車場で引き返す車も出ます。

つまり釜前の判断には、締切が15分ごとに来ます。予測が受け持つ範囲は狭く、いま釜に入れる玉が客に渡るまでの、およそ12分から30分先だけ。そのかわり判断の回数が多く、昼のあいだに約30回あります。この30回を店長の勘から降ろし、誰が釜前に立っても同じ材料で決められるようにするのが、この設計のゴールです。

CHALLENGE

課題

  • 01 判断の持ち時間が、1分しかない。釜が空いたらすぐ次を入れないと、供給に穴があきます。行列と駐車場を横目で見ながらの1分は経験の浅いスタッフに任せられず、店長は昼のあいだ釜前を離れられません。
  • 02 捨てた玉が、記録に残らない。20分を過ぎた玉は番重ごと下げて捨てますが、何時に何玉捨てたかは書き留めていません。月末の棚卸で粉の使用量と売上の差として見えるだけで、どの時間帯の茹ですぎかは分かりません。
  • 03 玉切れの損は、廃棄よりさらに見えない。切らしていた9分のあいだに帰った客は、数字になりません。捨てた玉は目の前に残るので、釜前の判断は自然と少なめに寄り、ピークの立ち上がりで切らす日が続きます。
  • 04 ルールが「20分で廃棄」しかない。何玉茹でるかの基準がなく、混み方の印象で釜ごとにぶれます。同じ晴れの土曜なのに、茹でた総数が1割以上違う週がありました。

APPROACH

アプローチ

設計の中心に置くのは、釜が空くたびに来る確定の1回です。決めるのは釜前の担当で、期限は釜が空いてから1分。画面は「次の釜 20〜26玉」という幅と提案を出し、担当が玉数を確定します。釜に入れる玉数をAIが決めるのではありません。判断の材料と締切を出すところまでが仕組みの受け持ちで、駐車場に観光バスが入ってきたのに気づいて玉数を足せるのは、釜の前に立っている人だけです。

予測の刻みは15分にします。玉の寿命が20分しかないので、1日の合計を当てても釜前では使えないからです。予測が受け持つのは、いま釜に入れる玉が客に渡るまでの12分から30分先だけ。刻みを細かくすると1日1件だった記録が1日16件になり、少ない営業日数からでも曜日や天気の影響を取り出せるようになります。開店からの売れ方は15分ごとに予測へ折り返し、出足が速い日は残りの時間帯を自動で引き上げます。

幅のどちら側に倒すかは、時間帯で変えます。ピークの立ち上がりは上限側。ここで切らすと、次の釜が上がるまで列が止まったままになるからです。ピークの下りは下限側。この時間帯に余った玉は、次の客が来る前に20分の寿命が尽きるからです。切り替えの時刻も店の記録から出して、画面の提案に折り込みます。

外れる前提も設計に入れます。外れても、傷は最長で1サイクルです。15分後には必ず次の判断が来て、そこで直せます。だから1回の的中に力を注ぐより、捨てた玉と切らした時間を釜ごとに記録して、翌週の提案に反映するほうが効きます。番重には上げ時刻が付き、20分が近づくと画面が知らせるので、忙しさにまぎれて古い玉が出ていくことも防げます。

効果は金額と時間で測ります。捨てた玉は時刻と数が自動で残るので、原価を掛けて月の廃棄額に。玉切れは切らしていた分数と、そのあいだ食券が止まった幅から売り逃しを推計します。もうひとつ、提供した玉の「上げてからの平均経過時間」を並べます。この数字が短くなることは、茹でたてを売りにする店にとって、廃棄が減ることと同じくらいの成果です。

CONSULTATION

釜前に誰が立っても、同じ材料で決められる店に。

券売機の記録が時刻つきで取り出せるかの確認から始められます。
釜のサイクルを1週間測るだけでも、茹ですぎの時間帯は見えてきます。
いまの釜前の回し方を、そのままお聞かせください。

SCREENS

主要画面

想定する画面のサンプル。釜前の画面は厨房の防水タブレット、前日仕込みと月次レポートは事務所のパソコンで使う前提の作りです。店名・玉数・金額はすべて想定例で、実在の店舗・実績ではありません。

01. 次の釜に、何玉入れるか

釜前の担当が営業中ずっと開いている画面。番重ごとの残り玉数と上げてからの経過時間、次の15分の客数予測、そして「次の釜 24玉」の提案が並びます。確定は1タップで、捨てた・切らしたの記録も同じ画面から残します。

釜前
設計のポイント
番重ごとに経過時間を数え、20分が近づくと色で知らせる。
提案の出し方
幅と提案玉数を並べて出し、確定するのは釜前の担当にする。
記録
捨てた・切らしたを1タップで残し、時刻は自動で付ける。

02. きょうの15分刻みと、いまの出足

きょう1日の客数を15分刻みで見る画面。予測の幅の上に実績が重なっていき、出足が速い日は残りの時間帯が引き上がります。幅のどちら側に倒すかの切り替え時刻も、この画面で確かめられます。

時間帯別予測
設計のポイント
実績が積み上がるたび、残りの時間帯の予測を折り返して直す。
倒す側の表示
立ち上がりは上限側、下りは下限側。切り替え時刻を帯で示す。
補正の内訳
天気・気温・近隣の行事による増減を1行ずつ残す。

03. あすの粉と、だしの量

前日の夕方に開く画面。あすの客数の日次予測から、粉のバッチ数とだしの仕込み量を出します。電話で入った団体はここに登録し、当日の15分刻みの予測に確定分として折り込まれます。

前日仕込み
設計のポイント
日次の予測は仕込みにだけ使い、当日の釜は15分刻みで別に予測する。
団体の扱い
バス・部活動などの連絡は、到着時刻つきの確定として登録する。
仕込みの倒し方
粉とだしは幅の上限で用意する。捨てる損のほとんどは茹でたあとに出るため。

04. きょうの釜を、時系列で締める

閉店後に見る画面。釜入れの時刻・玉数・売れた数・捨てた数・切らした時間が時系列で並び、どの釜の判断が外れたかをその日のうちに確かめられます。外れた釜には一言メモを残せます。

当日実績
設計のポイント
釜の1回を1行にして並べ、外れの理由をその日のうちに一言残す。
廃棄の内訳
捨てた玉は上げ時刻つきで残り、時間帯別に集計される。
玉切れ
切らした分数と、そのあいだの食券の止まり方から売り逃しを推計する。

05. 廃棄額と、玉切れの時間

月に一度、店長が見る画面。廃棄額と売り逃しの推計を並べ、提供した玉の平均経過時間と、店長以外が釜前に立てた日数を下に置きます。判断の基準が育っているかを、この4つで確かめます。

月次レポート
設計のポイント
廃棄と売り逃しを並べて、どちらに寄った月かを見る。
品質の数字
提供した玉の、上げてからの平均経過時間を月ごとに追う。
属人の解消
店長以外が釜前に立てた日数を数え、任せられる範囲を広げる。

OUTCOME

変わったこと

仕組みが運用に乗ったあと、釜前の仕事が3つの点で変わる想定です。

01

釜前の判断が、店長の勘から、共有の基準へ。

Before何玉茹でるかの基準がなく、店長が昼のあいだ釜前に張り付いていた。店長が休みの日は、多めに茹でてしのいでいた。
After幅と提案が画面に出るので、経験の浅いスタッフでも確定できる。店長は混む時間だけ釜前に入り、レジと天ぷら場に回れる。

提案どおりに確定するだけでも回りますが、最後に足し引きできる余地は残します。判断を画面に渡し切ると、駐車場のバスに気づいた人が玉数を直せなくなるからです。

02

捨てた玉と切らした時間が、毎日残る。

Before廃棄は月末の棚卸で粉の差として見えるだけ。玉切れは、そもそもどこにも数字がなかった。
After捨てた玉は時刻と数が自動で残り、月の廃棄額になる。切らした分数と売り逃しの推計が、その隣に並ぶ。

廃棄は目の前に残り、玉切れは残りません。片方だけ見て決めていると、茹で数は目に見える損を避ける側へ寄っていきます。

03

上げてから提供までの時間が、短くなる。

Before20分のルールはあっても、経過時間は壁の時計と記憶が頼り。忙しい時間帯ほど、古い玉から先に出ていた。
After番重ごとに上げ時刻が付き、20分の手前で画面が知らせる。提供した玉の平均経過時間が月ごとに出て、茹でたての度合いが数字で残る。

廃棄を惜しんで茹で置きを引っ張るほど、味は落ちます。経過時間が数字になると、「捨てる」が品質を守る側の仕事として扱えるようになります。

PROCESS

2ヶ月の進め方

札幌市内・近郊なら店舗へ伺い、道外はオンラインで進めます。予測の対象がゆで玉の1品目だけなので、設計から納品まで2ヶ月の想定です。月の区切りで実際に触れるものをお渡しし、釜前で使ってみた感想を次の作業に反映します。

1
MONTH 01 / 記録を作る + 釜の実測

1日30回の判断を、まず記録に変える月。

レジの販売記録を1年ぶん取り出し、15分刻みの売れ方に集計し直します。あわせて釜のサイクルに立ち会い、釜入れから提供までの時間と番重の動きを実測します。捨てた玉と玉切れの記録は、この月から紙で先に始めます。予測を組む前に、外れの実態を数字にするためです。

  • 釜前と事務所でのヒアリング(2〜3回)
  • レジ記録の15分刻みへの集計
  • 釜のサイクルと番重の動きの実測
  • 廃棄・玉切れの手書き記録の開始と、釜前画面の下書き
2
MONTH 02 / 予測の実装 + 並行運用

15分刻みの予測を組み、釜前で並行運用する月。

15分刻みの客数予測を組み、幅のどちら側に倒すかの切り替え時刻を1ヶ月目の記録から決めます。5画面を作ったら、2週間はいまのやり方と並行運用して、釜前の1分で画面が判断の役に立つかを確かめてから納品します。

  • 15分刻みの予測の試作と幅の調整
  • 5画面の開発
  • 釜前での2週間の並行運用
  • 納品 + 運用の引き継ぎ

FAQ

よくある質問

  • Q1 茹でたてを売りにしたいので、茹で置き自体を減らしたいのですが。
    この仕組みは、むしろその方向で使えます。提供した玉の平均経過時間が数字で出るので、「置く時間を短くする」を目標に置けます。予測が細かく当たるほど、釜の1回あたりの玉数を減らして回数を増やす回し方に寄せられ、茹で置きの山は低くなります。ただし釜の回数を増やすと光熱費と釜前の手間が増えるので、どこまで寄せるかは店の考え方に合わせて決めます。
  • Q2 天ぷらやおにぎりの数は予測に入りますか?
    最初の2ヶ月では麺だけに絞ります。天ぷらは揚げ置きの寿命も作る場所も麺と違うので、同じ画面に混ぜると釜前の1分に情報が増えすぎます。客数の15分刻みの予測そのものは共通で使えるので、麺の運用が落ち着いてから、天ぷら場用の画面を足す拡張が現実的です。
  • Q3 自家製麺ではなく、製麺所から生麺を仕入れています。使えますか?
    使えます。当日の釜前の設計はそのままで、前日仕込みの画面が「あす何玉ぶんを発注するか」の画面に変わります。仕入れの麺には納品の単位と期限があるので、日次予測の幅が発注の上限・下限にそのまま効いてきます。粉から仕込む店より融通が利かないぶん、日次側の予測を丁寧に作ることになります。
  • Q4 客数のデータは食券の券売機しかありません。それで足りますか?
    券売機の販売記録が時刻つきで出れば十分です。15分刻みへの集計はこちらで行います。玉数と客数のずれ(2玉の注文・お子さま連れなど)は、最初の実測で係数を測って吸収します。券売機が古くて記録を取り出せない場合は、記録が残る形をつくるところからお手伝いします。

釜前に誰が立っても、同じ材料で決められる店に。

券売機の記録が時刻つきで取り出せるかの確認から始められます。
釜のサイクルを1週間測るだけでも、茹ですぎの時間帯は見えてきます。
いまの釜前の回し方を、そのままお聞かせください。