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外国人スタッフへの連絡、AI翻訳だけで伝わる?

外国人スタッフへの連絡や手順書は、生成AIや翻訳アプリで母国語にできます。訳す前に、元の日本語を短く、時刻や数字のぼかしがない文に直すと誤解が減ります。安全に関わる内容は国の多言語教材も使い、本人に内容を確かめてもらいます。

この記事でわかること

  • 翻訳の仕上がりは、元の日本語に左右されます。一文に一つの内容、時刻や数字を「ごろ」でぼかさない、二重否定を使わない、といった直し方を、国の「やさしい日本語ガイドライン」がまとめています。
  • 生成AIには、元の文をやさしい日本語に直す作業と、母国語に訳す作業を分けて頼めます。訳した文を日本語に戻してもらうと、意味が変わった箇所に気づきやすくなります。
  • 機械の安全や事故の防ぎ方は、厚生労働省が11言語の教材や注意の表示を公開しています。自分で訳す前に、使えるものがないかを探します。
  • 伝わったかは、スタッフ本人に読んでもらい、分からない言葉や意味を聞いて確かめます。同じガイドラインも、作った文を外国人に確認してもらう手順を入れています。

訳す前に、元の日本語を直す

「お手すきの際に」「なるべく早めに」のような書き方は、日本語でも人によって受け取り方が変わります。そのまま翻訳に通すと、あいまいさも一緒に訳されます。

出入国在留管理庁と文化庁の在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン(2020年8月、2026年10月20日確認)は、自治体などが日本に住む外国人に情報を伝えるための手引きです。日本人にも分かりやすい文に整える、言葉や表記を外国人向けにやさしくする、作った文が伝わるかを日本語教師や外国人に確かめる、の3つの手順を示しています。

同じガイドラインは、インターネットで発信するときは機械翻訳にかけられることを考えて、ふりがなを付けない文書もできる限り用意するよう勧めています。翻訳を使う前提で日本語を整えておく考え方です。職場の連絡に向けた資料ではありませんが、直し方はそのまま参考になります。

元の文の直し方

ガイドラインが挙げる直し方のうち、職場の連絡で使う場面が多いものを選びました。カッコ内の例文は当社が考えたもので、実際の店の文書ではありません。

一文に言いたいことは一つ

「明日は棚卸のため、通常より早めに出勤できる方はご協力いただけますと幸いです」は、理由とお願いが一文に入っています。「あしたは、店の在庫を数えます。午前9時に来ることができる人は、きょうの午後5時までに店長に言ってください」のように分けます。元の文に無い期限や時刻は、先に決めてから書き足します。

3つ以上あるときは箇条書き

閉店後の作業のように手順が並ぶ連絡は、文でつながず、番号を付けて1行に1つずつ書きます。

時刻や数字をぼかさない

ガイドラインは「くらい」「ごろ」を多用しないよう求め、「9時ごろ」を「午前8時30分から午前9時30分まで」と書き換える例を載せています。時刻は午前・午後を付け、「〜」を使わず「から」「まで」で書くことも挙げています。

二つの意味に取れる言葉を避ける

ガイドラインは「結構です」を例に、「良いです」と「要りません」の二つの意味があるため誤解を生むことがあると説明しています。二重否定(「〜しないわけではない」)も避けます。敬語は尊敬語・謙譲語を使わず、文末を「です」「ます」にそろえます。

店の中だけの言葉には説明を付ける

「バッシング」「まかない」「仕込み」のような現場の言葉は、翻訳に通しても意味が伝わらないことがあります。ガイドラインは、知っておくとよい言葉はそのまま使い、後ろに説明を加える書き方を紹介しています。(例:まかない<=店で食べる、スタッフの食事>)

生成AIに頼むときは、作業を分ける

生成AIのチャットには、文章の書き換えと翻訳のどちらも頼めます。一度に「訳して」と頼むより、次の3回に分けると、どこで意味が変わったかを追いやすくなります。この進め方は当社の提案です。

生成AIは、もっともらしい文章を作るぶん、言葉を補ったり抜かしたりすることがあります。理由と確かめ方は生成AIの答えが間違っているのはなぜ?で説明しています。

1回目:やさしい日本語に直してもらう

「次の連絡を、日本語を勉強中のスタッフ向けのやさしい日本語に直してください。一文を短くし、時刻は午前・午後を付けて、尊敬語や謙譲語は使わないでください」と、上の直し方を条件として書きます。返ってきた文は、日本語として意味が変わっていないかを先に確かめます。

2回目:母国語に訳してもらう

直した日本語を渡し、訳す言語を指定します。店の中だけの言葉は、説明と一緒に渡します。

3回目:訳を日本語に戻してもらう

別の会話で、訳した文だけを渡して日本語に戻してもらいます。時刻・数字・「〜してください」「〜しないでください」が元の文と同じかを見比べます。戻した文が合っていても、訳が正しいとは言い切れないので、最後は本人に確かめます。

安全に関わる内容は、公開されている多言語教材から探す

機械の扱い方や事故の防ぎ方は、誤訳があると困る内容です。厚生労働省の外国人労働者の安全衛生管理のページ(2026年10月20日確認)は、日本語そのものの理解が不十分なことや、コミュニケーション不足で職場の危険が伝わらないことを、外国人労働者の労働災害の要因として挙げています。

同じページでは、漫画で学ぶ安全衛生の教材を11言語(日本語、英語、中国語、ベトナム語、タガログ語、クメール語、インドネシア語、タイ語、ミャンマー語、ネパール語、モンゴル語)で、8業種と業種共通に分けて公開しています。食料品製造業などに向けた、イラストと外国語の注意の文を組み合わせる表示もあります。

自店の機械や手順に合う教材が無ければ自分で作ることになりますが、まずは公開されているものを探し、足りない部分だけを上の手順で訳します。安全衛生教育の進め方は、同じページで案内されている外国人特別相談・支援室に無料で相談できます。

話して伝えるときの翻訳アプリ

立ち話の連絡には、話しかけると訳して読み上げる翻訳アプリも使えます。たとえば情報通信研究機構(NICT)のVoiceTraは33言語に対応し、無料で使えます。ただしNICTは、個人の旅行者の試用を想定して作った研究用のアプリと説明し、VoiceTraの技術を使った民間のサービスも検討するよう案内しています(2026年10月20日確認)。仕事で毎日使うなら、民間のサービスの利用規約や料金を確かめて選びます。

生成AIや翻訳アプリに、スタッフの名前・住所・在留カードの番号のような個人の情報を入れないことも決めておきます。社内のルールの作り方は社員が生成AIを使い始めたら、何を決めておく?にまとめています。

伝わったかは、本人に確かめる

ガイドラインは、書き換えた文ができたら、日本語教師や外国人に、分かりやすいか、伝わるかを確かめてもらうよう勧めています。職場なら、確かめる相手はスタッフ本人です。

新しい手順書を渡したら、読んでもらったあとに「最初に何をするか」を自分の言葉で話してもらいます。分からなかった言葉に印を付けてもらい、次に書くときの言い換えの一覧にしていきます。同じ言葉で何度も聞かれるなら、元の日本語のほうを直します。

最初の一歩は、今週貼り出す連絡を1枚

次に掲示板やグループのメッセージに出す連絡を1つ選び、上の直し方で日本語を整えてから訳します。最初の数回は、直す前と直した後の文を並べて残しておくと、店の連絡でよく使う言い回しの言い換え方がたまっていきます。

連絡が増えてきたら、よく使う連絡の型と用語の説明を一つにまとめておき、毎回同じ条件で訳せるようにする方法もあります。生成AIへの頼み方の基本は生成AIにうまく頼むには?で紹介しています。

この記事を書いた人

立石伊吹代表取締役 / DX・AIアドバイザー

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

スタッフへの連絡や手順書を、もっと伝わる形にしたい方へ。

生成AIの使い方を工夫すれば足りるのか、用語の説明や連絡の型をまとめて毎回同じ条件で訳せる仕組みを作るのがよいのかを、一緒に整理します。手順書の提出は要りません。どんな連絡で困っているかを伺います。

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