AIの基礎・活用
教師あり学習・教師なし学習・強化学習とは?
3つとも機械学習の学び方の種類です。違いは、学ぶときに正解を渡すか、正解なしで似たもの同士を探すか、試した結果に報酬を与えるか。手元の記録にどんな答えが残っているかで、作れるAIと準備の手間が変わります。
この記事でわかること
- 教師あり学習は、正解のラベルを付けた記録から学びます。総務省の情報通信白書は、文字や画像の認識、売上の予測などを使い道に挙げています。
- 教師なし学習は、正解を付けない記録から、似たもの同士のまとまりや普段と違う動きを見つけます。お客さんのグループ分けが代表的な使い道です。
- 強化学習は、試行錯誤した結果に報酬を与えることを繰り返して、長い目で見て良い行動を学びます。ゲームやロボットの制御で使われています。
- 売上や来店数の記録は、残っている数字そのものが正解になります。写真の良し悪しのように、正解を人が1件ずつ付ける必要がある記録は、その作業が準備の大半を占めることがあります。
3つの違いは、学ぶときに何を渡すか
総務省の令和元年版 情報通信白書(AIに関する基本的な仕組み)は、機械学習の学習法を「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」に大別しています。どれもAIの名前や製品名ではなく、過去の記録からパターンを見つけるときの学ばせ方の違いです。
「教師」は、正解を教える役のたとえです。Google Cloudの解説(強化学習とは)は、教師あり学習を、正解を提供する教師と一緒に学ぶようなもの、教師なし学習を、教師なしでデータを独自に理解しようとするようなもの、とたとえています。
教師あり学習
正解のラベルを付けた記録で学びます。白書の図では、文字や画像の認識(分類)や売上の予測(回帰)が使い道の例です。
教師なし学習
正解を付けない記録で学び、似たもの同士を集めます。白書の図では、顧客のグループ化が使い道の例です。
強化学習
ある環境の中で試行錯誤し、結果に報酬を与えることを繰り返して学びます。白書の図では、戦略ゲームやロボットの制御が使い道の例です。
教師あり学習の「正解」は、記録に最初から残っていることがある
Google Cloudの教師あり学習とはによると、教師あり学習に使うデータには、入力(特徴)と正しい出力(ラベル)の両方の例が含まれます。同じ解説は、教師あり学習を、種類を当てる「分類」と、数量のような連続した値を当てる「回帰」に分けています。迷惑メールかどうかを見分けるのは分類、経験から給与を予測するのは回帰の例として挙げられています。
売上の予測に当てはめると、日付・曜日・天気が入力で、その日に売れた数が正解です。レジや販売管理に販売数が残っていれば、正解はすでに記録の中にあります。来店数、予約数、問い合わせの件数も同じです。
写真の場合は事情が変わります。製品の写真から傷の有無を見分けたいなら、過去の写真の1枚ずつに「傷あり」「傷なし」を人が付ける必要があります。白書は、教師あり学習では学習用データにラベルを付けること(アノテーション)が必要で、その分データ活用の難しさが上がると書いています。
記録に残っている数字が、そのまま知りたい答えとは限らない点にも注意が必要です。たとえば品切れになった日の販売数は、お客さんが欲しかった数より少なく記録されます。当社では予測の相談を受けたとき、品切れや臨時休業の日をどう扱うかを最初に確かめます。
教師なし学習は、分け方が決まっていないときに使う
白書は、教師なし学習ではネコの画像に「これはネコ」という情報を与えずに学ばせても、ネコと他の生き物を区別できるようになる例を挙げています。ただし、それがネコと呼ばれるものかどうかまでは判別できません。この特徴から、クラスタリングによる顧客のグループ化に使われると説明しています。
Google Cloudの教師あり学習と教師なし学習は、教師なし学習の使い道として、異常の検出や顧客のセグメンテーション(グループ分け)を挙げています。
店や会社の仕事に置きかえると、会員を来店の間隔と金額でグループに分ける、いつもと違う売れ方や機械の動きに気づく、といった使い方です。AIが返すのは「グループ1」「いつもと離れている」という区切りまでで、グループの意味や、その違いが問題かどうかは人が判断します。詳しくはお客さんを「似た人同士」に分けるAIとは?と「いつもと違う」に気づくAIとは?で説明しています。
強化学習は、何度も試せる場所がないと始めにくい
白書は強化学習の例として、二足歩行ロボットが歩く速さや脚の曲げ方を試し、長い距離を歩けたら報酬を与えることを繰り返して、倒れずに歩けるようになる過程を挙げています。正解の記録を渡すのではなく、試した結果そのものが学習の材料になります。
前述のGoogle Cloudの強化学習の解説は、課題として、効果的に学ぶには大量のやり取りのデータが必要になることが多いこと、望ましい動きを正しく表す報酬の決め方が難しい場合があること、ロボットのように現実で動かす場合は学習中の安全を確保する必要があることを挙げています。
店の発注や人の配置で同じことをしようとすると、わざと品切れを起こしたり人を減らしたりする試行錯誤を、現場で何度も繰り返すことになります。そのため当社は、中小の店や会社が最初に作るAIとしては強化学習をすすめていません。過去の記録が残っている作業なら、教師あり学習か教師なし学習で始められるかを先に確かめます。
手元の記録がどれに当たるかを見分ける
どの学び方を使うかは、AIの側よりも、手元の記録と知りたいことで決まります。次の順に確かめると、自分の作業に当てはめやすくなります。
知りたい答えが、記録にそのまま残っているか
販売数・来店数・作業時間のように残っているなら、教師あり学習の材料がすでにあります。品切れや休業の日のように、答えが正しく残っていない日を分けておきます。
答えを人が付ける必要があるか
写真の良し悪し、問い合わせの種類、書類の区分などは、過去の記録に人が正解を付ける作業が先に必要です。まず数十件に付けてみると、1件にかかる時間と、人によって判断が分かれる記録の割合が見えます。
分け方そのものを見つけたいか
正解が決まっておらず、どんなまとまりや例外があるかを知りたいなら、教師なし学習が候補です。分けたあとに何に使うかを先に決めておきます。
少しだけ正解がある場合
白書とGoogle Cloudの解説は、教師あり学習と教師なし学習を組み合わせた「半教師あり学習」にも触れています。Google Cloudは、少量のラベル付きデータで初めのモデルを作り、ラベルのないデータに付けた予測のラベルと合わせて学習を繰り返す方法と説明しています。
生成AIとの関係
白書は、深層学習(ディープラーニング)も機械学習の手法の一つで、3つの学習法と組み合わせられると説明しています。文章や画像を作る生成AIは、この深層学習を土台に生まれたAIです。3つの言葉は、生成AIを含むAIの作り方を説明するときにも出てきます。
仕事でどう使い分けるかは、機械学習と生成AIは何が違う?で場面ごとに整理しています。言葉の違いが分かったら、手元の記録を1つ選び、知りたい答えがその中に残っているかを見てみてください。
手元の記録で、どんなAIが作れるか知りたい方へ。
どの学び方が合うかは、残っている記録と知りたいことで決まります。最初の相談で記録そのものを送っていただく必要はありません。どんな記録がどの形で残っていて、何を知りたいかを伺い、AIを使う作業と人が判断する作業を一緒に整理します。
