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飲食の需要予測・AI

給食の献立作成はどこまで自動にできるか|先に決める条件と、栄養士が確認すること

献立作成のうち機械に任せられるのは、決めた条件を満たす組み合わせを探すところと、栄養価・発注する重量・帳票の計算です。何を満たすかを決め、出てきた案を確定するのは人が行います。保育園・高齢者施設・事業所給食で献立を作っている栄養士と、施設の運営者向けです。

この記事でわかること

  • 自動にできるのは、条件を満たす料理の組み合わせを探すことと、そこから先の計算です。条件そのものを決める責任は施設に残ります。健康増進法施行規則第9条が求めている相手は、ソフトではなく特定給食施設の設置者です。
  • 先に決めるのは3つです。栄養の目標量、アレルギーと食事形態の個別対応、1食あたりの食材費。この3つが数字と一覧の形になっていない施設では、ソフトを入れても献立案は出てきません。
  • 献立が決まれば、発注する重量は計算で出ます。1人分の純使用量に食数を掛け、廃棄率で割り戻した数字です。廃棄率は日本食品標準成分表に食品ごとに載っています(キャベツ 結球葉 生は15%、たまねぎ りん茎 生は6%)。
  • 人が確認するのは、個別対応の照合、調理の手順と設備、献立を変えたときの記録です。保育所などの児童福祉施設では、調理はあらかじめ作成された献立に従って行うことが省令で決まっています。
  • 費用と期間は、献立を作る施設の数、食事形態と個別対応の種類、いまのレシピがどの形で残っているかの3つを決めれば見積もれます。始めるのは、よく出す料理のレシピを食品名と純使用量の並びに直すところからです。

自動にできるのは「決めた条件を満たす組み合わせを探す」ところ

献立をソフトに作らせるとき、機械が担当する作業は2つです。栄養の目標量・除去する食品・予算・過去に出した献立との重なりといった条件を全部満たす組み合わせを探すことと、選んだ組み合わせが条件を満たしているかを計算して画面に並べることです。当社が開発した児童クラブ60施設向けのおやつ献立システムも、範囲はこの2つでした。

自動にならないのは、その手前と、その後ろです。手前にあるのは「何を満たすか」を決める作業で、後ろにあるのは「この献立で出す」と決める作業です。健康増進法第21条3項は、特定給食施設の設置者に、厚生労働省令で定める基準に従った適切な栄養管理を求めています。その基準(同法施行規則第9条)は、利用者の身体の状況・栄養状態・生活習慣等を定期的に把握して適当な熱量と栄養素の量を満たす食事を提供するよう努めること、献立は日常の食事の摂取量や嗜好等に配慮して作成するよう努めること、献立表その他必要な帳簿等を適正に作成して施設に備え付けることを挙げています。

ここでいう特定給食施設は、継続的に1回100食以上または1日250食以上の食事を供給する施設です(施行規則第5条)。ソフトを入れても、この責任の所在は動きません。動かせるのは、条件を書き出したあとの手間のほうです。

先に決めるのは、栄養の目標量・個別対応・1食あたりの食材費

献立作成ソフトを入れたのに案が出てこない、という話には共通点があります。条件が数字と一覧の形になっていないことです。ベテランの頭の中にある条件は、そのままでは計算に渡せません。ソフトを選ぶより先に、この3つを書き出す作業が要ります。

栄養の目標量は施設が決めます。学校給食には文部科学省の学校給食摂取基準がありますが、同省は改正の通知で「本基準は児童生徒の1人1回当たりの全国的な平均値を示したもの」であり、適用にあたっては個々の健康や生活活動等の実態、地域の実情に十分配慮して弾力的に運用することとしています。全国の平均値を自分の施設の目標量に直す作業は、利用者を見ている人にしかできません。

個別対応は、人ごとの一覧にします。アレルギーの原因食品と除去の範囲、かむ力や飲み込む力に合わせた食事形態、宗教や嗜好による除外。ここが紙の連絡票に分かれたままだと、ソフトを入れても照合は目視のままです。

栄養の目標量

熱量・たんぱく質・脂質・食塩などを、1食で見るのか、1か月の平均で見るのかまで決めます。見る期間が決まらないと、組み合わせを探す条件になりません。

個別対応の一覧

誰の、どの食品を、どの範囲で除くか。代わりに使う食品まで決めておくと、除いただけで品数が減る献立になりません。

1食あたりの食材費

主食と調味料を含めるかどうかで数字が変わります。月の平均で収めるのか、1食ごとに上限を置くのかも先に決めます。

献立が決まれば、発注する重量は計算で出る

献立が決まったあとの計算には、迷う余地がありません。1人分の純使用量(下処理を済ませて実際に使う重量)に食数を掛けると、必要な純使用量が出ます。これを廃棄率で割り戻した数字が、発注する重量です。皮・芯・根を落とす食材は、使う量より多く頼まないと足りないからです。

廃棄率は、文部科学省の日本食品標準成分表(八訂)増補2023年に食品ごとに載っています。本表の廃棄率の欄を見ると、キャベツ(結球葉・生)15%、にんじん(根・皮なし・生)10%、たまねぎ(りん茎・生)6%、じゃがいも(塊茎・皮なし・生)10%、にわとり(若どり・もも・皮つき・生)0%。100食で1人30gのたまねぎを使う献立なら、必要な純使用量は3.0kg、発注する重量は3.0÷(1−0.06)で約3.2kgです。

同じ成分表の数値は、栄養価計算の元にもなっています。料理のレシピが「食品名と純使用量の並び」になっていれば、熱量やたんぱく質の合計も計算で出ます。材料名だけで重量が書かれていないレシピでは、ここから先が自動になりません。紙のレシピを数字の並びに直す作業が、最初の山です。

DEMO

1人分の使用量と食数を動かすと、発注する重量と1食あたりの食材費がどう変わるか

食数、1人分の純使用量、廃棄率、単価、発注の単位を動かすと、必要な純使用量、発注する重量、切り上げで増える重量、1食あたりの食材費と予算との差が変わります。廃棄率の初期値は日本食品標準成分表の値を入れてあります。

献立1食ぶんの発注重量と食材費の試算|純使用量・廃棄率・発注単位

主菜1品ぶんの材料を例に、食数から発注する重量と食材費を計算する画面です。1人分の純使用量、廃棄率、単価を書き換えると、必要な純使用量と発注する重量、1食あたりの食材費が変わります。発注の単位で切り上げたときに増える重量も並びます。

触って動かせます
計算の中身
必要な純使用量=1人分の純使用量×食数。発注する重量=必要な純使用量÷(1−廃棄率)。切り上げ後=発注の単位で切り上げた重量。食材費=切り上げ後の重量×単価。1食あたりの食材費=食材費の合計÷食数。
使っている前提
主菜1品ぶんの5品目だけを並べています。主食・調味料・下処理でのロスは含めていません。廃棄率の初期値は日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の値で、1人分の純使用量と単価は架空の入力例です。
確かめてほしいところ
食数を減らすと、切り上げで増える重量の割合が大きくなることを見てください。少ない食数の施設ほど、発注の単位が食材費に効いてきます。

※ 1人分の純使用量・単価・予算はすべて架空の入力例で、実在の施設の献立や仕入価格ではありません。廃棄率は成分表の値ですが、実際の下処理でどれだけ落ちるかは包丁の入れ方や食材の状態で変わります。

案が出たあとに人が確認するのは、個別対応・調理の手順・変更の記録

条件を満たす組み合わせが出てきても、そのまま出せるとは限りません。確認が残る場所は3つあります。

1つめは個別対応の照合です。除去の対象になる人の一覧と、その日の献立に使う食品を突き合わせ、確認した人と時刻を残します。当社が児童クラブ向けに作ったシステムでも、除外の条件と警告を画面に並べ、担当者が確かめてから確定する形にしました。2つめは調理の手順と設備です。オーブンが1台の厨房に焼き物が2品入った献立は、条件の計算では止まりません。

3つめは、変更したときの記録です。児童福祉施設の設備及び運営に関する基準(省令)第11条は、調理はあらかじめ作成された献立に従って行わなければならないと定めています(少数の児童を対象として家庭的な環境の下で調理するときを除く)。同じ条は、献立ができる限り変化に富むこと、食品の種類と調理方法について栄養と身体的状況や嗜好を考慮することも求めています。材料が入らない日に別の料理へ差し替えるなら、修正した献立表を残す形にします。備え付ける帳簿は、修正後のものです。

個別対応の照合

除去の対象者と当日の使用食品を突き合わせ、確認した人と時刻を残します。ここは自動の警告と人の確認を重ねる場所です。

調理の手順と設備

同じ時間帯に重なる工程、使う機器の台数、下処理に入れる人数。作れるかどうかは、その厨房を知っている人が見ます。

変更の記録

差し替えたら、修正した献立表を残します。あとから食数や食材費を振り返るときの元にもなります。

献立どおりに作れるかは食数しだい。食数は当日まで動く

前の節の計算で「食数」に入る数字は、名簿の人数ではありません。ここが動くと、発注した重量がそのまま余りになります。

動き方は施設の種類で違います。特別養護老人ホームなら入院と外泊と当日の体調、保育園なら朝の欠席連絡、事業所給食なら出社の予定です。共通するのは、前日までの連絡で確定する分と、当日になって決まる分に分かれること。確定する分を先に引いておくと、見込みが要るのは残りの数人だけになります。数え方は特養の食数はどう決めるか配食サービスの翌週の食数に書きました。

当日に決まる分は、過去の日付と数量の並びがあれば幅で見込めます。当社が開発中の手軽に使える需要予測AIは、日付と数量の2列のCSVから28日先までの日ごとの見込みを幅つきで出す作りです。献立の側では、その幅の上側と下側で発注する重量がどれだけ変わるかを見て、日持ちする食材は多めに、当日使い切る食材は少なめに頼む、と品目ごとに決めます。見込みが出すのは数量の幅までで、どちら側で頼むかを決めるのは人です。

費用と期間は何を決めれば出るか。Excelで足りる範囲はどこまでか

Excelで足りるのは、1つの施設で、食事形態が2〜3種類までで、個別対応が数人までの場合です。上の試算画面でやっている計算が、そのまま表計算の式になり、発注書までは出せます。

足りなくなるのは、受託先や施設が増えて献立の重なりを追えなくなったとき、個別対応が増えて照合が目視では追いつかなくなったとき、担当者が1人に偏って引き継げなくなったときです。当社が見積もりの前に確認するのは、献立を作る施設や受託先の数、食事形態と個別対応の種類、いまの献立表とレシピがどの形で残っているかの3つです。

期間の目安は、当社が納品した例で言えます。児童クラブ60施設のおやつ献立システムは、除去するアレルゲン・施設ごとの予算区分・過去の献立との重なりの3つを条件に案を作り、担当者が警告を確認して確定する作りで、設計から納品まで約3か月でした。複数の受託先を持つ管理栄養士事務所向けに同じ仕組みを調整する開発プランでは約3〜4か月を見込んでいます。金額は、上の3つで範囲を決めてからお出しします。

食数の見込みのほうは、別の入口があります。手軽に使える需要予測AIはリリース前で、手元のCSVが予測に使える形かどうかの確認を無料で受け付けています。

まとめ

献立作成で自動になるのは、決めた条件を満たす組み合わせを探すことと、栄養価・発注する重量・帳票の計算です。条件を決めるのと、出た案を確定するのは施設に残ります。

発注する重量は、1人分の純使用量に食数を掛け、廃棄率で割り戻すと出ます。栄養価も発注量も、レシピが食品名と純使用量の並びになっていることが前提です。

次にやることは1つです。よく出す料理を10品選び、材料を「食品名と1人分の純使用量(g)」の形で書き出してください。そこまで進むと、ソフトに任せられる範囲と、自分たちで決め続ける範囲が見えます。

よくある質問

管理栄養士がいない施設でも、献立作成の仕組みは使えますか?

使えます。ただし栄養の目標量と個別対応を決める人は必要です。健康増進法第21条では、都道府県知事が指定する特定給食施設に管理栄養士の配置が義務づけられ(指定の基準は施行規則第7条)、それ以外の特定給食施設は栄養士または管理栄養士を置くよう努めることとされています。1回300食または1日750食以上の施設では、置いている人のうち少なくとも1人を管理栄養士にするよう努めることも定められています。自分の施設がどこに当たるかは食数で決まるので、管轄の保健所に確認してください。

AIが作った献立を、そのまま提供してよいですか?

提供する前に人が確認する形をおすすめします。除去の対象になる人と当日の使用食品の照合、その厨房で作れるかどうかの確認は、条件の計算では終わらない部分です。児童福祉施設では、調理はあらかじめ作成された献立に従って行うことが省令で定められているので、確定した献立と実際に作ったものがずれたときは、修正を記録に残す運用にしておきます。

献立表はいつまで保存しておく必要がありますか?

健康増進法施行規則第9条が求めているのは「献立表その他必要な帳簿等を適正に作成し、当該施設に備え付けること」までで、年数は書かれていません。保存する年数は、施設の種類ごとの基準や自治体の指導、衛生管理の記録の扱いで変わります。給食施設の記録の保存については検食簿の記事にも書きました。実際の年数は、管轄の保健所や指導を受けている部署に確認してください。

レシピが紙しかありません。何から手をつければよいですか?

よく出す料理から順に、材料を「食品名と1人分の純使用量(g)」の形で書き出すところからです。この形にしておくと、栄養価の計算にも、発注する重量の計算にも、そのまま使えます。ソフトを選ぶ前に済ませておくと、どの製品を選んでも移行の手間が減ります。何品書き出せば足りるかは、月にどれだけの料理を回しているかで変わるので、まずは主菜から数えてみてください。

この記事を書いた人

水上貴洋取締役 / 飲食DXコンサルタント

北海道札幌市を拠点に、業務アプリやAIの開発を行っています。北海道内は直接うかがい、道外はオンラインで対応しています。専門用語を使わず、相手の言葉で話すことを大事にしています。

献立作成と栄養管理のどこを仕組みに移せるか、相談できます

レシピが紙のまま、アレルギーの確認が目視のまま、受託先が増えて献立の重なりを追えない。こうした困りごとからご相談ください。いまの献立表とレシピを見ながら、計算に回せる部分と人が確認し続ける部分を分けます。最初のお問い合わせに、利用者の氏名やアレルギーの内容を送る必要はありません。

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